艦隊これくしょん 前日譚 海の咆哮に答えしもの 作:マツケン-2
その生物が始めて確認されたのは、1960年5月22日に発生したチリ地震の直後であった。
地震の際、km単位の大きさの断層が生じるが多くは数十kmほどの大きさである。しかしこの地震では長さ800kmという検討もつかない長さの断層が生じ、これによりMw9.5という科学的観測だけでなく、歴史資料、地質学的な過去の地震の調査においても確認されていないほどの超巨大地震が引き起こされていたのであった。
そんな人類史上経験のない地震後の海洋生物の状態を調査のため、派遣されたアメリカの調査員がとある浜辺を調査していた時であった。標準的なメバチマグロほどとある大型の魚が打ち上げらているを見つけて、確認のため近寄った所、あることに気が付く。
その魚の外側には金属のような光沢を持つ非常に硬い板のようなものが付いていたのである。その板は手では剥がれることがないほど固く張り付いていた。さらに口の中を見た所、ライフルのような銃身が顔を覗かせていた。これも手で取れることはできなかった。
不審に思った調査員がその生物を研究室に持ち帰り、解剖を行った。その結果、口内の銃身のようなものや体の外側に付いていた板状のものは、完全に体に癒着していることが確認された。これは海の漂流物が衝突、もしくは飲み込んでこの様な事態になったことを否定するものであった。
さらに外側についていた板状のようなものには消えかかっている文字があり、調べてみると第二次世界大戦で沈没したアメリカの駆逐艦の鑑番号であった。そしてその文字に人為的に付けられた痕跡は全くなかったのであった。
これに驚いた研究員は、政府の高官に連絡して、それからまもなく各国の首相が集まり、対策が協議された。
各国がこの生物の本格的な調査を意欲的であった中、自国の調査員は発見したにもかかわらず、アメリカだけはこの生物に懐疑的であり、国際的な取り組みにも否定的な立場を示していた。そのせいかこの時はこの生物の詳しい調査が行われることはなく、一時忘れられることになってしまった。
しかし1964年3月27日、Mw9.1を記録し、アラスカ州の中心地であるアンカレッジに大きな被害をもたらしたアラスカ地震が発生し、その調査にてチリ地震で発見された個体より大きな個体が発見される。しかも口内の銃身の後ろには発射機構のようなものがあり、体内からは銃弾のようなものが発見されていた。
国内でこの生物が発見されただけでなく、進化していることが確認された事実は、アメリカ政府に大きなショックをもたらすことになる。そしてそれまでの姿勢を180度転換し、国際協力の体制が一気に構築されることになった。
そして極秘で世界的な研究機関が発足され、この謎の生物の危険性と生理学的な調査を国際的に行われることになった。
その時、この生物の呼称も決められた。戦闘艦のような特徴と魚のような特徴を併せ持つことから深海に棲む艦艇「深海棲艦」と名付けられた。