艦隊これくしょん 前日譚 海の咆哮に答えしもの 作:マツケン-2
深海棲艦と名付けられたその生物が発見されてから40年が経過したが、依然としてその生態や成り立ちを解明することができていなかった。
1964年以降、まれに似たような生物が発見され続けていたが、いずれも死んでいるものであり、生態の解明につながっていなかった。
また既存の生物と違い、生物の設計図であるDNAの解読はおろか、発見すらされていなかった。そして世界の関心が薄れていったことからの予算の縮小もあり、研究は遅々として進まなかったのであった。
そんなもどかしい中の2004年12月26日、インドネシア西部にあるスマトラ島の北西のインド洋でMw9.1からMw9.3と言われる超巨大地震が発生したのであった。最低値であるMw9.1は、東日本大震災のM9.0と比べても数字上では0.1しか変わらないがそのエネルギー量は、東日本大震災で放出されたエネルギー量を40%も上回っている。
地震や津波という災害にあったことがなく、対策が取られていない地域にこの莫大なエネルギーから生じた地震と津波が容赦なく襲いかかり、死者22万8千人という有史以来三本の指にも入る甚大な被害をもたらした。
しかしこの中には地震や津波、それを起因する災害では亡くなってわけではない人も含まれていた。
なんと津波に紛れて今まで確認されていなかった生きている深海棲艦が人のいる浜辺に流れ着いており、そして口内にあった砲らしきもので、高い所に避難して津波からなんとか逃げおおせた人々を無差別に攻撃していたのであった。
その攻撃自体は攻撃していた深海棲艦が数発の発泡したあとに死亡したことにすぐに収まったが、その攻撃によって数百人の尊い犠牲が生まれてしまっていた。数としては地震のよる死者と比べれば圧倒的に少ないが、これは深海棲艦による初めての被害であった。
この模様は、生存者のビデオカメラに記録されてしまい、政府が血眼になってそのカメラ映像の回収、封印する事態になってしまった。中には政府の手を逃れ、動画配信の黎明期であったインターネットに公開されてしまったものもあったが、あまりに非現実な映像であったのか、フェイクと捉えられて、誰も見向きもされずにことなきを得ていた。
各国の首脳と深海棲艦の研究機関は、深海棲艦を人類の存在を脅かす敵であると認定し、深海棲艦の研究と対策を今までの遅れを取り戻すために一気に加速させていた。
しかし、深海棲艦の対策に関しては大きな壁があった。深海棲艦の装甲は非常に固く、人が単独で運搬出来る兵器では到底太刀できないことが過去の研究でわかっており、スマトラ島沖地震の時の映像から推定された口内の砲の威力と飛距離は、深海棲艦自身の大きさと合わせて考えると、目視で発見していたのでは手遅れになる可能性が高いことを示していた。
艦艇用の砲弾での殺傷は可能で、レーダーにも反応はしているのだが、大型の魚ほどの大きさしかない深海棲艦の前では、現実的にはレーダーでは上手く捉えられず、明白な熱源もないため人類の叡智で作られた兵器でも当てるのは容易ではなかった。そのことから深海棲艦を撃退するのは、実質的に既存の兵器では困難であった。
そんな中スマトラ沖地震以降、大規模な海難事故が徐々に増え始めていた。目撃した人は、いずれも船らしき物体を一切見ていないと語っており、機雷などによる攻撃の痕跡は一切確認できなかった。深海棲艦によって引き起こされているのは明らかであった。
人類にはもはや一刻の猶予もなかったのであった。