艦隊これくしょん 前日譚  海の咆哮に答えしもの   作:マツケン-2

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第五章 喪失、第六章 劣勢

第五章 喪失

 

 艦娘による水上打撃艦隊が編成されると、その存在を隠すための地下母港が艦娘が出現した国で建設されていった。日本では舞鶴、横須賀、呉、佐世保など旧日本海軍の鎮守府があった地で作られ、それと並行して試行錯誤しつつではあるが訓練も行われ始めていた。そしてその努力が各地で深海棲艦による被害が減少し始める、という形で姿を現し始めていた。

 

 その一方で深海棲艦にも今までの魚のような姿をしたような艦から、より人間に近づいた上位種の存在と、深海棲艦側も艦娘同様集団を組むようになっていることが確認されており、今後組織的な攻撃を仕掛け来る可能性は非常に大きくなっていた。そして艦娘自体にも謎が多く、深海棲艦撃滅のためにもその力の解明に全力が注がれていた。

 

 その中で、妖精との協力の元、艦娘達の艤装を製作、修復を行う建造、入渠ドックや高速修復材(通称バケツ)、高速建造材(通称バーナー)など艦娘達が戦うために必要な支援設備も、順次整えられていった。

 

艦娘達の艤装はそれぞれ推進機関などの海を掛けるために必要な機器をまとめた「船台(プラットホーム)」、そこに乗せる砲や魚雷と言った実在した兵器を小さくしたような兵装「装備」に分かれており、艦種によって載せられる物や数が決まっていたがこの「装備」を載せ替えることによって、予想される敵の編成などに柔軟に対応できるようになっていた。

 

 また、艦娘は敵からの攻撃を受けると、艤装とともに艦娘が身につけている衣服が艦娘の体へのダメージを防ぐ代わりに損傷してゆき、3段階に分類されていたダメージレベルの2番目、「中破」になると、艦娘の能力が大幅に低下することがわかっていた。しかし大破の損傷を受けるとどうなるのかは、この時点では判明していなかったのである。というのも艦娘は貴重な人材であり、危険な実験は倫理的な面でも戦力へのリスクから見ても無闇にできない、という事情があったからに他ならなかった。

 

 そんな中、とある事件が起こる。深海棲艦によって軍事施設を有するとある小島が包囲される事態が発生。直ちに艦隊が編成され、事態の収拾に向かったのであった。

 

 そして最後と思われるある深海棲艦の集団との戦闘にて、ある駆逐艦娘の一人が「大破」に分類されるほどの損傷を負ってしまったのであった。しかし時の司令官は、もうこの海域に深海棲艦はいないと見られていたこともあり、すぐに帰還させずにそのまま島にいる職員を一時退却するための船の護衛を就くようにに指示をしていた。

 

 その護衛中、突然一隻の深海棲艦が現れ、退避する職員を載せた船を攻撃し始めるのであった。幸いその深海棲艦の練度が良くなかったのか、なかなか攻撃が命中しない状況であった。しかし放置するわけにはいかなかったのだが、その深海棲艦に一番近かったのは、あの大破した駆逐艦娘であった。その艦娘はすぐに応戦し始めたが、能力の低下が著しいためか、なかなかその深海棲艦を撃沈できなかった。

 

 苦戦している様子を見た他の艦娘が応援に駆けつけたそのとき、敵の攻撃が応戦していた艦娘の艤装に直撃したのであった。そのときの爆炎で見えなくなったすきにに応援の艦娘が敵を撃破して、救援しようとしたときには、その艦娘は海に沈み始めていた。慌てて手をつかんが、手を掴んでいられないほどの重さを感じてしまい、思わず手を離してしまったのである。そして助けようとしていた艦娘は海中に引き寄せられるかのように姿を消したのであった。すぐにダイバーがその箇所に潜水したがすでにその姿を確認することはできなくなっていた。

 

 艦隊が母港に帰還し、報告を受けた司令官はひどく落ち込んでいた。姿を消した艦娘はその艦隊で一番練度が高く、指揮官もその艦娘を娘のようにかわいがっていた娘であったのだ。後にこの司令官とあの時助けようとしていた艦娘はPTSDを発症し、軍を去ることになるのであった。

 

 この事件により、船台に深刻なダメージを受けると現実の船同様海中に没し、その状態になればいかなる手段を持っても救うことができない、後に「轟沈」と言われることになるこの事実が、人類に初めて突きつけられたのであった。また元となる艦船の魂に魅入られた人物は世界中探しても一人しかいないことがわかっていたため、艦娘の喪失は回復不可能な戦力の低下に他ならないことも判明してしまったのであった。

 

 そのため大破と認定された艦娘が出てきた場合、その艦娘の護衛を兼ねてすぐさま艦隊ごと帰還させるように定められることになり、あの轟沈事件からすぐに艦娘を轟沈から救うことが出る使い捨ての装備「応急修理要員」が開発され、大破以上の損害を被りすぐに帰還することができない可能性がある作戦の場合、装備枠を圧迫し、戦闘能力の低下を容認してでも乗せることが推奨されるようになった。後にこの装備はダメコンとも呼ばれる様になり、幾多の艦娘を救うことになった。 

 

 

第六章 劣勢

 

 艦娘出現から4年がたった2010年、時には血の犠牲を払うこともあったものの、徐々にではあるが艦娘の性質や運用方法の確立を進めることができていた。しかし現状艦娘の元となっている艦艇は、第一次世界大戦時代以前のものであり、技術的には相当原始的なものであった。

 

 その一方で深海棲艦側は徐々に戦術的、戦略的な洗練が進んでいることが確認されていた。まだ優勢を保っていたものの、このままではいずれ勢力が逆転するのは誰が見ても明らかであった。対策を進めようと艦娘としての適正がある人物の捜索や装備開発をしても、出来上がる装備は同じ世代の装備、発見される適正ある人物も同じ世代の艦船に適正のある人物であり、大幅な戦力向上にはつながらなかった。

 

 そんな中、年の瀬も迫ったある日、ある海域での戦闘でついに決定的な事件が起こっていまう。艦娘側の艦隊が大敗を期してしまったのだ。

 

 その戦闘では、数の上では同一であったが、艦娘側には戦艦や巡航戦艦がいたため、戦力では圧倒していたはずであった。しかし、奇襲を掛けられてしまった上に、そのために不利な陣形を強いられ、無線装置の不調などが悪条件が重なってしまった結果、艦隊の艦娘全員が中大破の損傷を受け、撤退せざる負えなくなっていた。

 

 その後、他の海域いた艦娘も動員し、その攻撃してきた深海棲艦の艦隊を撃破することはできたものの、この大敗の衝撃は全世界に伝わるのであった。危惧されていた勢力の逆転が現実ものとなり、深海棲艦に制海権を奪われるという最悪の可能性まででてきてしまったのである。

 

 またその中で、ある事実が判明することになる。撃破後の海域が回収された深海棲艦の残骸の中に数年前に轟沈した艦娘の装備品と身につけていた装飾品が紛れ込んでいたのである。この事実は伏せられたがこれは轟沈した艦娘が深海棲艦として再び現れ、敵となる可能性があることを示していた。これ以降、艦娘の轟沈対策はより重要な案件と位置づけられるようになるのであった。

 

 

 

 

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