己の正義と罰   作:ミネラルいろはす

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ゴライアス

迷宮都市オラリオ

 

この都市は数多くの人種が集まり、世界で一番栄えていると言っても過言ではない都市である。

その栄えている理由の最大の理由が都市の中央に存在する天まで届きうる構造物「バベル」。

その構造物の地下には「ダンジョン」と呼ばれる地下迷宮が広がっており、こちらも同じく、いったいどこまで続いているのか誰にも分かっていない。

そして、そんなダンジョンに希望、夢、欲望、各々が求めるものを探しに地下深くへと歩を進めるのだ。

 

そして、何の因果か俺はこのオラリオで正義と秩序を司るアストレアファミリアの一員として、冒険者として暮らしていた。

俺に正義なんて似合わないって?うるせぇそんなの俺が一番思ってることだっての、俺だってそんなファミリアだなんて知ってたらこのファミリアに所属するなんてことは無かった。

全てはこのアストレアファミリアの団長であるアリーゼのせいである。

オラリオに来たばかりの頃は、オラリオの暗黒期半ばであったこともあり、見知らぬ人に対しての警戒が特にひどかったのだ。

そうでなければ初対面でいきなり闇派閥と間違われ、壁にめり込むほどのパンチを喰らうことになるわけはないのだ。

その後、治療を受け、誤解は解けたものの、行く当てもない俺を主神であるアストレア様のご厚意でファミリアの一員に入れていただくことになったのだが、その辺の話はまた後日話すとしよう。

 

そんなこんなで俺は俺の正義の元今日も活動します。

 

「というわけで、今日の俺の正義は睡眠をとることなので、今日はダンジョンに行くことは出来ないのでお引き取りください」

 

そういって、俺を起こしに来た覆面のエルフに告げ再び眠りにつこうとしたのだが、突如目の前に現れた小太刀によって眠りを妨げられる。

 

「ハチマン、私はあなたの教育係をアストレア様から任されています。そんな私がさぼること許すと思いますか?それと余談ですが私はいつもやりすぎてしまうのですが・・・」

 

 

「お待たせしました!!!それじゃあ今日も迷宮探索頑張りましょうかリオンさん」

 

聞くやいなや俺は布団を引っぺがしてすぐさま起床する。

この人はやると言ったらやるそういうエルフだ。

以前もこの人の訓練をさぼった時に翌日に普段の十倍の訓練をさせられる羽目になり、そのせいでランクアップするなんていうとんでもない話になったぐらいである。

あの時は本当に何回死期を悟ったことだろうか。

ちなみにそのせいで俺のレベル2の時の二つ名が「妖精の尻尾(フェアリーテイル)」だったのはオラリオ中に知れ渡り酒のつまみとして笑いの種とされている。

 

「・・・その切り替えの早さは素直に称賛しますが、それを最初から行ってくれればいいのですが」

 

 

「俺無駄なことは極力しない主義なので、できるだけ楽をして生きていきたいので無理ですかね」

 

直後、俺の頬に小太刀が掠る。

皮膚を切ったようで、ツーと血が頬を伝って床に滴り落ちる。

 

「ほう、ハチマンあなたは私の訓練が無駄な物だと・・そう言いたいのですね?」

 

やばい、これは非常にやばいぞ。

これはリオンさん完全に切れていらしゃっる。

覆面をしているからどんな表情をしているかわからないけどこれは完全に切れてますね。

 

「いやいやいや、そんなわけないですよ。さ、最近はほら、俺も強くなったので今までの訓練なら楽勝だって意味で、決してリオンさんの訓練が無駄何てこと思っていないですよ!!」

 

「・・・ほう、そうですか。なら今日はいつもより下の階層まで潜りに行くとしましょうか」

 

やっちまったー!!!

この状況を乗り切るためとは言え適当な事言いすぎて余計に自分の首を絞めてしまった。

 

「・・・はい」

 

今の俺にはそう答えることしかできなかった。

哀れなり俺。

 

 

 

 

----------------------------

 

 

『ウォォォォォ!!!!!』

 

十七階層から十八階層へと続く唯一の通路である「嘆きの大壁」を守り安全階層(セーフティポイント)を目指す冒険者を潰す階層主が俺の目の前に立ちふさがっていた。

 

「リオンさん!?流石に階層主の討伐は厳しくないですか!!」

 

そう言ってここに来る羽目になった元凶に目を向ける。

向けられたほうは気まずいのか俺から目をそらす。

 

「・・・・私はいつもやりすぎてしまう」

 

「それを言えば何でも許されると思ってるんですか!?」

 

 

そう今日に限って何故かモンスターと遭遇する機会が全くと言っていいほどなく、十五階層まで来たところで、迷宮の楽園(アンダー・リゾート)まで行って一休みしてから帰還しようと提案され、それを了承した俺も俺だが、ゴライアスのインターバルにはまだ時間があるはずだと思っていた俺たちは運悪くゴライアスの生誕などという一生出会いたくない瞬間に立ち合うことになってしまったというわけだ。

 

「・・で、どうするんですかこのゴライアス?流石に俺たち二人では荷が重いですよ。一度戻ってギルドにでも報告しますか?」

 

俺の意見に少し考えるリオンさん。

ゴライアスの推定レベルは4、そしてこちらにはレベル4のリオンさんとレベル3の俺のみ。

そして、リオンさんはともかく、俺には遠距離からの攻撃手段はなく、近距離での攻撃方法しか持ちえていない。

ゴライアスを討伐するには少しどころか、大幅に戦力が足りていない。

だが、そんなに付き合いが長くないとはいえ、彼女の答えは何となくわかってしまう。

 

「・・・いえ、ここは我々でゴライアスを討伐しましょう。私達みたいにゴライアスの周期を知らずに訪れる冒険者もいるでしょう。ゴライアスの目の前で満身創痍の冒険者などすぐさま土へと還ることになります。そんな事態を見逃したとなれば我々は正義の代行者などと名乗ることは出来ないでしょう。」

 

やはりな、彼女はそういうエルフだ。

 

「はぁ、まあそういうとは思ってましたけど、実際問題どうするんですか、戦力は圧倒的に不足していますし、正直厳しいと思いますけど?」

 

しばらく、考えに更け終わったリオンさんはビシッと俺のほうを指さしありえないことを告げた。

 

「ハチマン貴方が、ゴライアスを倒しなさい。私が貴方を援護します。」

 

 

「は?本気で言ってますそれ?俺にゴライアスをやれと?俺には近距離しか攻撃方法がないんですよ。近距離なんて一歩間違えたら即死ですよ俺なんて」

 

「あなたを信じています。それに、私が育てたあなたならゴライアスの攻撃に当たらず攻撃を当てることができるでしょう?」

 

ほんとにこの人は俺に変な期待を持ちすぎなんだよ。

俺なんてそんな大層な人間じゃない。

そもそも正義なんてもん俺にはわからないし、入ったファミリアは俺以外全員女なんていう地獄だし。

いいことなんてなくて、いつも振り回されてばかりでその尻ぬぐいをするのはいつも俺だし。

だけど、まあやれることぐらいはやりますよ、俺だって正義の翼を持つアストレアファミリアの一員なんだから。

 

「・・・・危なくなったら離脱して地上に戻ります。それでいいならやりましょう、こんなとこで死にたくないですしね」

 

「ハチマン、私のわがままに突き合わせて申し訳ありません。」

 

俺は愛用の武器である短剣をホルスターから取り出し、ゴライアスの元まで一直線に走りこむ。

レベル3の俺の現在のステータスで一番伸びているのは俊敏であり、その速さはリオンさんに一歩及ばずともそれなりに早いほうであると自負している。

むしろ、それ以外ないともいえるが、そうしていると目の前へとたどり着くとゴライアスもこちらに気づいたのかこちらに拳を振り下ろして潰そうとしてくるが、俺はそれを加速することでその攻撃を避けそのままゴライアスの足元まで潜り込む。

 

短剣での一撃をゴライアスに叩き込むが、手ごたえなんてものはない。

いくら攻撃をしてもゴライアスの頑丈な皮膚によって弾かれてしまう。

 

だが、そんなことは想定内だ。

俺にはゴライアスを倒すことは出来ない。

それでも、短剣での攻撃をやめることはしない。

ゴライアスの体を縦横無尽に飛び回り。何度も何度も短剣をふるう。

 

そんな俺を鬱陶しく思ったのか自らの体を回転させることで振り落とそうと、めちゃくちゃに動き回るゴライアスだが、それを紙一重で避けながら体中を飛び移る。

 

ゴライアスと戦うのは初めてではないからできた行動だ。

以前にもアストレアファミリアでゴライアスと相対したことがあるがゆえに、ゴライアスのスピードの限界は把握していた。

それのおかげ次への行動へと移るインターバルを知っていたおかげで、ゴライアスが行動を起こす寸前で回避することができたのだ。

 

「っつ!!」

 

だが敵もそう甘くはない。

ゴライアスが壁を砕いた破片が体に当たり、出血する。

腐っても階層主、本来二人だけで倒せるような代物ではないのだ。

ゴライアスに知能はないといっても、本能的に俺自身を振り落とすことを諦め、点での攻撃から、面での攻撃へと移り替えたというわけか。

 

こうなると先ほどまでのアドバンテージは無いに等しくなる。

 

ここから先は俺が倒れるのが先か準備が終わるのが先かの二択になる。

 

「やってやるよ、階層主。どっちが先に倒れるか我慢比べと行こうぜ」

 

短剣を再び握りしめ飛び移る。

 

リオンさんの準備はおそらくできている。

だから、あとは俺が見つけるだけだ、こいつの弱点を。

 

右肩、左足、右胸、右足と移動しては回避し、そしてついに左胸に短剣を差し込んだ時、感触が違った。

 

今までのびくともしない感覚とは違い、短剣がすんなりと左胸の筋肉を切り裂いた。

 

それを発見したのと同時にホルスターから短剣を一本を残しすべてを左胸へと投降する。

グチャグチャと投げたすべての短剣がささる。

だが、これでは致命傷にはなりえない。

 

それと同時に唄が紡がれる。

「今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々。

 

 

だが、今のままではゴライアスを倒しきることはできない。

傷が浅すぎる。

だが、彼女の唄は止まらない。

なら、俺がすべきことは・・

 

 

愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を。来れ、さすらう風、流浪の旅人。

 

 

 

唄の終わりよりも疾くゴライアスの胸元まで走れ。

最後の一押しをするために、最大最速でたどり着け、でなければ死ぬ。

体中の悲鳴に耐えながら、走る、走る、走る。

そして唄が完結する。

 

 

 

空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ——星屑の光を宿し敵を討て」

 

 

「おっらっ!!」

 

そのわずか数秒前にゴライアスの左胸に刺さっている短剣向かって渾身の体当たりを決め傷口を広げる。

自滅覚悟の体当たりにより、ゴライアスの左胸には大きくはないが深い傷を負わせることができた。

結果として、本能的に腕を振りかぶったゴライアスにより、反対の壁まで吹き飛ばされることになったが、今はゴライアスに感謝するとしよう。

なぜなら——

 

「ルミノス・ウィンド」

 

 

リオンさんから爆発的な魔法が放たれる。

そしてそのすべてが、ゴライアスの左胸へと直撃する。

 

流石にゴライアスといえど体の中に直接魔法をぶち込まれては人たまりもないだろう。

 

 

そして、爆発が終わった直後現れたゴライアスの左胸には大きな穴が開いており、その数秒後灰となって消えていった。

 

流石俺の師匠だ、あのゴライアスを本当に倒してしまうなんてな。

それを見届け安心した俺は壁にめり込んだまま意識を手放した。

 

 

「よくやりましたハチマン、流石私の弟子です。今はゆっくり眠りなさい起きたころには地上でしょう」

 

 

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