温かい日差しを感じ目を覚ますと、そこは見たことない天井だった。
なんてそんな冗談はさて置き、ここはファミリアの自分の一室だった。
今の自分の状況を確認しようと起き上がろうとしたが、全身に違和感を感じる。
よくよく自分の体を見てみれば全身グルグルに包帯で巻かれて、今オラリオの商店街に出れば、俺の腐った目と合いまって怪物と間違われて討伐されること間違いない。
まあ今この状況では一歩たりとも動くことはできないけどな。
さて、俺のこの状態は恐らくゴライアスの最後の一撃を喰らってしまった結果だということくらいは理解するのと同時に俺が生きているということからリオンさんも無事だということだ。
俺が生きていて、俺より強いリオンさんが生きていないはずがないからな。
改めて、違和感を感じた箇所から推測するに肋骨に短剣を握っていた右腕、背骨は骨折ぐらいはしていたのだろう。
恐らくポーションか回復魔法で回復して貰ったばかりで、体の異変を脳が感じ取ったのだろう。
だが、よくゴライアス相手にこの程度の怪我ですんだものだ。
俺は基本ヒット&アウェイで戦うので、装備も動きやすさ重視も合わさって攻撃に当たることを最低限としているため圧倒的に耐久が低いのだ。
それで階層主の攻撃を受けてこの程度で済んだのなら、儲けものだろう。
その時部屋の扉がバンッと勢いよく開かれる。
壊す勢いで扉を開けて入ってきたのは、我らがアストレアファミリア団長のアリーゼ・ローヴェル。
自慢の赤い髪を靡かせ入ってきた張本人は馬鹿みたいに大きい声でこちらに話かけてくる。
「あ!!起きたのねハチマン大丈夫?」
身体を少し起こし座る体制へと体を動かすとパキパキと骨が軋む。
「ああ!!だめよハチマンまだ寝ていないと。貴方耐久低いくせにゴライアスの一撃をもろに受けるなんて無茶しすぎよ。・・・心配したんだから」
「・・・すいません」
いつも明るい団長にしおらしくされてしまうと調子がくるうので仕方なく素直に謝る。
と言っても俺もリオンさんに巻き込まれて怪我をしたのでリオンさんのせいでは?
そういえばリオンさんは無事だと思うけど一応確認しておくか。
「団長リオンさんは無事なんですよね?」
「・・・ああ、リオンなら一応無事よ、一応」
「一応ってどういうことですか?まさかどこか怪我でもしてたんですかリオンさん」
「・・・いやぁそういうわけじゃないんだけどね。まぁちょっと訳ありっていうか・・・見てもらった方が早いわね。ちょっと待ってて」
そう言って再び部屋から団長は飛び出していき、数分後にはリオンさんだけでは無く他のファミリアメンバーも一緒に連れてきて現れた。
他のファミリアメンバーからも俺の無事を喜んでくれるのと同時に無茶しすぎだと怒られた。
本気で心配して本気で怒ってくれる彼女達を見ていると俺は本当にいいファミリアの一員になれたようだ。
「ところでリオンさんはどうして先ほどから壁を向いているんですか?」
そうなのだ、さっきからリオンさんだけ俺と顔を合わそうとしない。
周りのみんなを見てみるとみんな一様に笑いをこらえているように思える。
一人を除いて。
ゴジョウノ・輝夜、俺らアストレアファミリアの副団長であり、リオンさんと団長と同じくレベル4で、俺と同じく極東出身でそのよしみで世話係(強制)のリオンさんの次くらいに関わりあいが多い。
そして、よくリオンさんと衝突しており、俺の育成(頼んでない)についてもよく衝突しているし、俺がレベル2になった時なんかも危険すぎるとリオンさんは怒られていた。
それぐらい、なぜか俺に対して過保護ともいえる心配をしてくる人だ。
彼女が俺を気にかけてくれるのは数少ない同郷のよしみだからだろうと俺は思っている。
「このポンコツエルフがまたハチマンを自分の理想に付き合わせて、危険な目に合わせたさかい、罰ゲームを受けてもらいました」
ほれ見てみろと、壁の方を向いていたリオンさんを無理やり俺のベットの前まで連れてくる。
そして、連れてこられたリオンさんは包帯の後も服装の乱れも見つからないことから、怪我は無かったことが見て取れる。
それと同時に普段ならつけていないプラカードを首からぶら下げている。
共通語で書かれたそれを読んでみると
「・・・私はバカでポンコツでまぬけな理想主義者のくそ雑魚エルフです?・・・なんですこれ?」
「これがハチマンを危険にさらしたこいつへの罰。これを一週間つけて生活してもらう。無論ダンジョンもオラリオの市街地を廻る時もな」
おお、なんという的確な罰だろうか。
リオンさんは他の人に顔を見せたくなくて、普段仮面をつけて生活している。
それほど他人の目を気にしている人が自分の悪口を書かれたプラカードをぶら下げて、街なんて歩いた日には恥ずかしくて一生部屋から出てこなくなるんじゃないだろうか。
「リオンさん・・・大丈夫ですか?」
「・・・・ええ。私のわがままに付き合わせて怪我を負わせてしまったのは事実です。これくらいの罰は受けて当然です。」
言葉は堂々としているが、それは手で顔を隠さずに話してほしかった。
リオンさんは今にも顔から湯気が出そうなほどエルフの特徴である長い耳まで真っ赤に染まっている。
「・・・輝夜さん」
あまりに可哀そうなのでこの罰ゲームを考えた張本人に声をかける。
だが、彼女は首を横に振り俺の意見を否定する。
彼女のおしとやかな口調が乱れ、普段の乱暴な口調に戻っている。
「ハチマンお前は、甘すぎる。今回の件だけじゃなく、いつもこいつのわがままに付き合わされて死にかけたのを忘れたか?」
確かに彼女の扱きで何度も死の淵を彷徨ったことか。
確かにそのせいで、ランクアップの最速期間を更新して闇派閥の連中や他派閥の奴らから集中的に絡まれるようになったのは苦い思い出だ。
「・・・・ハチマンいいのです。今回のことは本当に貴方を死なせてしまうところだった。むしろこの程度の罰では私には足りない。」
「そんなことは・・・」
「そうか、なら一週間水浴び禁止ってのも加えるか?」
「あ、あなたに決められることではない輝夜!!」
「いいや、ハチマンが甘いから代わりに私が考えてやってるんだろうが」
「だからと言って・・・」
二人の喧嘩が始まりそうになった時、団長が動いた。
「二人とも怪我人の前で喧嘩はやめて!!」
「アリーゼ・・・」
「ふんっ」
流石というか団長の一言で渋々と言った感じで二人とも納得してくれたらしい。
「それに、ハチマンもリオンも生きて帰って来てくれたんだから、それで十分よ。」
「それは・・」
「まあハチマンが生きて帰って来てくれたことだけは感謝している。もとはと言えばお前のせいだがなポンコツエルフ」
「っつ!!」
「こらーー!!二人とも喧嘩しないのって何度言えば気がすむの!!」
止めてくれるのはありがたいけど、団長の声が一番うるさいんだよなぁ・・・・
そもそも団長を止められる人なんていないんだけどな。
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昼間の馬鹿騒ぎの後はありがたいことに惰眠を貪ることができた。
そうして、夜ご飯を部屋まで運んできてくれたアストレア様と一緒に夜ご飯を食べた後、ステイタスの更新をしようということになり、背中に巻かれている包帯を緩め恩恵を見えるように仰向けに寝る。
アストレア様が俺の背中に血をたらし、ステイタスの更新を行う。
すると、背中の上で何故か驚いたようなアストレア様の声が聞こえる。
「あら、ハチマンランクアップおめでとう。レベル4になったわよ」
「・・・・・・はい?」
「ランクアップよ、ランクアップ!!レベル4になったのよ、リューやアリーゼ達と同じレベル4にね」
「早くないですか流石に?」
「まあ早くないかどうかと聞かれれば圧倒的に早いわね。でも、今の時代強くなければ生き残れないのも事実。まあ今回のは階層主を一人で抑え込むなんて偉業をこなしちゃってるし、してもおかしくないってのが本音ね」
まじか、前回のレベル3のランクアップの時も騒がれたのに、今度はそれを遥かに超える一か月。
ぜっっっっっったいにまた他派閥やら闇派閥に目を付けられるのではないだろうか。
「それって誤魔化したりってできますか?」
「うーん、正義と秩序を司る私的に嘘は許せないので、却下よハチマン♪」
主神の命令は絶対だ、一平団員の俺には逆らう権利なんてものはない。
「頑張ってねハチマン。この調子だともしかしたらレベル5に上がるのはハチマンが最初かもね。・・・でも絶対に死んじゃだめよ、あの子たちも私も悲しむから」
「・・・はい、わかっています。俺は絶対に死にません。アストレア様に誓って約束します。」
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ヒキガヤ ハチマン
Lv.4
【ステイタス】
力 :I 0
耐久 :I 0
器用 :I 0
俊敏 :I 0
魔力 :I 0
【アビリティ】
不運
耐異常
偽善
【スキル】
不在証明
単独で行動時に気配を遮断。
ただし、自分より格上の場合無効。
単独行動時のみステイタス補正
起死回生
死にかけて生還する度に、早熟する、ステイタス補正。
死にかけた度合いにより効果向上。
本物一途
強い想いを抱いた時に発動。
効果、デメリット不明。
【魔法】
セルフ・ガーディアン
『覚悟を持って我が身を盾に、汝らを救う。』
発動している間、任意の人物達のあらゆる怪我を肩代わりする。
ただし、自分が受けるダメージは1.2倍となる。
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渡された紙を見てつくづく俺のステイタスは俺にとって厳しすぎる。
聞いたこともないアビリティにスキル。
本物一途なんて効果もわからない意味不明なスキルに、死にかける度にステイタス補正なんていうレアスキル起死回生。
こいつのスキルのせいで何度もリオンさんの扱きや早すぎるランクアップのせいで何度も死にかけた俺はありえない速度でステイタスを上昇させて、レベルアップを果たしてしまっている。
ほんとは働きたくなんてないのに、そのどれもが巻き込まれたもので自分から突っ込んだことなど一度もない。
そして、今回得た『偽善』なんていうアビリティも正義の味方なんてものをやっている俺たちのファミリアからしてみれば笑い種同然だろう。
だが、俺には他のメンバーと違い、明確な『正義』が無い俺には『偽善』なんてアビリティはまさに今の俺の現状を正確に現している。
「ほんと俺にお似合いですよ『偽善』なんてアビリティ。それで、アストレア様これの効果ってわかってるんですか?」
「うーん、それがね。貴方の『不運』と同じで発現した例が無いからなにも分からないの、ごめんね」
確かに俺も聞いたことが無いが、アストレア様が知らないならこれもまた未知のアビリティか・・・俺だけわからない系のスキルやアビリティ多すぎない?しかも不運に関しては絶対いいやつじゃねえよ。
そんくらい聞かなくても分かるわ。
「ですよねぇ、まあダンジョンにでも潜りながら確かめてみますよ。」
「ダンジョンに行くのにこう言うのも変だけど無茶だけはしないようにね。」
そういいながら俺の頭を撫でてくれるアストレア様。
俺がいつも怪我をして帰ってくるたびにアストレア様はこうしてステイタス更新後に撫でてくる。
気恥ずかしくも暖かい手で撫でられているこの時間が俺は嫌いでは無かった。
「はい」
アストレア様が願うことはいつも俺が生きて生還してくること。
だから俺はいつも約束をするのだ。
生きて帰ってくるという誓いを。
それが、今の俺の『正義』なのだから