本音ちゃんと建前くん   作:水まんじゅう

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本音分が足りない……


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 夏休みの宿題──よいこの毎日日記

 四年二組──大建(おおだち)前央(まお)

 

 七月──日

 

 宿題として出てしまってる以上、書くしかないので日記をつけている。夏休み初日、特に書くことはなし。

 

 七月──日

 

 二日目。暑い、特になし。以上。

 

 七月──日

 

 三日目。くそ暑い、アイス食って寝てる。

 

 七月──日

 

 四日目。他の宿題があらかた片付いた。

 

 七月──日

 

 五日目。残りの宿題は自由研究から手をつける事にした。夏休みだからこそできることがある。学校に行かない分の時間を、好きな事に好きなだけ使えるからだ。学校なんて週二でいい。でなけりゃ週三で。

 

 七月──日

 

 六日目。ペットボトルロケットの材料を買いに、近所のホームセンターまで自転車を漕いで行った。ホームセンターは最高だ。夏は冷房が効いてるし、わざわざ遠出しなくてもお宝が山のように手に入る、それも子供の小遣いで。ホームセンター万歳、ホームセンター最高。

 

 七月──日

 

 七日目。買ってきた自転車のバルブと、蛇口のジョイントを加工した。これがペットボトルロケットの発射口になるのだ。とりあえず同じものを五つほど作っておいた。

 

 七月──日

 

 八日目。作ったパーツを組み立てた。あとは発射台を作るだけ。そうすれば発射するのみだ。場所はいつもの河原、天気予報を見た感じ明後日がよさそうだ。

 

 七月──日

 

 九日目。計五つの発射台が完成した。朝の涼しい時間に作業していたからか、思ってたより日数が掛かってしまった。それもこれも日中の蒸し暑さが悪い。あとはこないだ作っておいた発射口を台に固定するだけ、もうひと踏ん張りだ。

 

 七月──日

 

 十日目、七月の最終日。天気予報め……この俺をだますとはなかなかいい度胸だな。昨日の深夜から降り出したらしい、窓の外は忌々しい土砂降りの有様だ。予定していたロケットの打ち上げは来週まで延期する事になった。ちくしょうめ。

 

 八月──日

 

 十一日目、暦は八月に突入。相も変わらず雨模様だが、思い切り降ってくれているお陰で日中を若干だが涼しく過ごせている。半端な雨量だと蒸し暑くて死ねるからな……。

 

 八月──日

 

 十二日目。昼から晴れてきた。これなら川の増水を加味しても、予定通り週末にはロケットの打ち上げに行けるだろう。くそ暑さが戻ってくるのは歓迎しないが。

 

 八月──日

 

 十三日目。クラスメイトからの熱烈なラブコールがあった。……冗談だ。早朝のラジオ体操に一度も顔を出していないが、体調でも悪いのか……との事だ。そういやそんなものもあったな、ラジオ体操。すっかり忘れていた。もちろん別に体調が悪いわけでもないのでそう答えておいたが、それなら明日からちゃんと来るようにと釘を刺されてしまった。仮病でも使っておくべきだった……。

 

 八月──日

 

 十四日目。朝からラジオ体操に行った。眠たそうにしながら嫌々体操してる奴らを見てると、早起きが苦にならない自分がいかに恵まれているか思い知らされる。あれはもはや苦行だ。

 

 八月──日

 

 十五日目、夏休みも残日数の三分の二を切った。くそ暑い、こっちの方が早起きよりも格段につらい。

 

 八月──日

 

 十六日目。セミの求愛合唱が鬱陶しい。婚活するのは結構だが、せめて人のいない場所でやってくれ。

 

 八月──日

 

 十七日目。満を持してロケットの打ち上げを決行した。場所はいつもの河原、時間は昼過ぎ。持ち込んだロケットは計五つあったのだが、結局自分で発射できたのはひとつだけだった。というのも、今日に限って河原に変な女子がいたのだ。

 

 迷子になったというそいつは、自分で迷子だと言っておきながら緊張感がまるでなく、へらへらと笑っていた。迷子(仮)は俺のロケットを目ざとく見つけると、興味を持ったのかあれこれ質問してきた。

 

 俺がペットボトルロケットくらい知ってるだろうと答えると、返ってきたのは知らないというまさかの返事だった。名前も知らないやつがいるとは思わなかった。

 

 ポンプで空気を入れて水の力で飛ばすロケットだと簡単な解説をしてやったが、いまいち理解できていなさそうだったので実際に飛ばして見せてやる事にした。我ながら完璧なロケットだったと思う。テスト機は川の向こう岸まで飛んで、落下傘でゆっくりと着地した。

 

 満足のいく結果にひとり達成感に浸っていると、迷子(仮)が自分も飛ばしてみたいと言い出した。ここで冒頭を振り返るが、自分で飛ばせたのが五つ中ひとつとはつまりそういう事なのだ。あんにゃろう全部飛ばしやがった。

 

 まあ、それだけ素晴らしい出来だったと思えば製作者冥利に尽きるというものだが。迷子(仮)が噴射された水を浴びてずぶ濡れになっていたのは言うまでもない。自分で使う予定だったタオルを貸してやり、ジャージも使わせてやった。

 

 あ、ジャージ返してもらってないじゃん。母さんになんて言おう……。正直に話しても信じてくれなさそうなんだが。

 

 それはさておき打ち上げの後始末を終えるなり腹が減ったと言い出したので、仕方なく家に道具を置いて近所の駄菓子屋に連れて行ってやった。もんじゃ焼き食わせてやったら満足したのかニコニコと笑いはじめた。変なやつだ。

 

 暫くすると迎えが来たと言うので、土産に適当な駄菓子を持たせてやった。あれだけあればまた迷子になっても空腹に悩まされる事はないだろう。……多分。

 

 八月──日

 

 十八日目。特になし。

 

 八月──日

 

 十九日目。特になし。

 

 八月──日

 

 二十日目。特にな……今日からエアコンを使う。

 

 八月──日

 

 二十一日目。父さんが仕事先からスイカをもらってきた。晩御飯の後に食した、美味かった。

 

 八月──日

 

 二十二日目。特になし。

 

 八月──日

 

 二十三日目。特になし。

 

 八月──日

 

 二十四日目。特になし。

 

 

 

 

 

 

 八月──日

 

 四十二日目、夏休み最終日。明日から学校だ。今年は残暑が厳しいと聞くし、アスファルトの上で目玉焼きが焼けるレベルらしい。寝る前から憂鬱だ……。

 

 

 

 先生からのコメント

 特になしは五回までというのが先生との約束でしたよね。それなのに日記の半分が特になしでした。先生は悲しいです。もっと頑張りましょう。




ヒロインが登場するのは次回からです
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