トレーナーの秘蔵本を担当ウマ娘が見つけてしまう話   作:ZUNEZUNE

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更新お待たせして申し訳ありません。イベント中は無理でしたが8月中にこの話を投稿できてよかったです。


ダイワスカーレット編

――ダイワスカーレットは、この夏に一皮剥けた。

"常に一着"を志す彼女が迎えた今夏は、気の張り過ぎによる不調で出遅れてしまう。更にそこへ大好きな母へのプレッシャーもあり、より悪い方面へズブズブ沈んでいった。

 

彼女のトレーナーがそれをどうにかしようと思っていると、先輩であるマルゼンスキーが打開策を出した。

それは「バブリーランド」なるプール施設にて思いっきりハメを外すこと。即ち一旦休暇を挟み調子を取り戻すといった考えだ。

 

この時トレーナーはマルゼンスキーの考えにまだ気付けずにいたが、今の彼女に休暇は必要だという点には賛成だった。是非スペシャルウィークと共にスカーレットも連れていってもらおうと彼女の提案に乗る形で進めたが、トレーニングの方が大事だと拒否されてしまった。

 

まぁ彼女にも彼女のペースがあるわけで、彼女があくまでも練習を優先したいというのならトレーナーもその意志を尊重するまで。

――と思っていたのだが、スイープトウショウを追う形でスカーレットもバブリーランドに赴いたらしく、そこで色々と吹っ切れたという。

 

母から送ってもらった水着を着て、思う存分バブリーランドを楽しんだらしく、戻ってきた時には調子を取り戻していた。

不調が解決したのなら良し。今回の一件もスカーレットの成長に繋がり、トレーナーとしては大満足であった。一皮むけたというのは、そういう意味である。

 

 

――しかし、解決できていない問題が一つだけあった。

それは、彼女の水着姿である。

 

 

バブリーランドで撮った写真がメッセージとして届いたのだが、それを見た瞬間トレーナーは目を見張った。

豊満、あまりにも豊満。何がとは言わないが最早暴力の領域に近い。

どれくらい凄まじいものかというと、たわわに実ったウマ娘が中心の水着もの秘蔵本を買ってしまう程だった。

 

 

 

 

 

 

「アンタねぇ、水着くらい新しいの買えばいいでしょ」

 

「いや、前に着てたのまだ履けると思うから。新しいの買ってもそんなに使わんだろうし」

 

 

そしてその数日後にスカーレットと一緒にバブリーランドへ行く話となった。

その前日、トレーナーは彼女を家へと招き入れる。プール施設など久しぶりに行くため、どこかにしまった水着探しを手伝ってもらうためだ。

 

トレーナーと共にゴソゴソとクローゼットの中を漁るスカーレットの顔は呆れ気味だが、どこか楽しそうでもある。

 

――トレーナーと一緒に遊びに行く約束ができただけではなく、こうして家の中にまで上がれたことが嬉しいのだ。明日バブリーランドで彼と共にはしゃぐ姿を想像して、スカーレットは心を躍らせた。

ちなみにトレーナーの方は、あの水着姿を肉眼で見るのか……と別の覚悟をしていた。

 

無自覚のうちに鼻歌を零しながら、スカーレットはトレーナーの水着を探していく。

するとクローゼットの奥にダンボールを見つける。

 

 

(もしかして、コレかしら?)

 

 

スカーレットは何の疑いもなく、中身を確認する。

入っていたのは男物の水着……ではなく、積み重なった雑誌であった。

 

 

『爆乳厳選! 水着ウマ娘特集!(袋綴じ付き)』

 

 

「……は?」

 

 

これが如何わしい本なのは見るからに分かる。胸が育ったウマ娘だけを特集したグラビア雑誌、しかも袋綴じ付き。

これを見たスカーレットの表情が強張る。そしてその下に重ねてある本にも目を通していった。

 

 

~~『たわわなウマ娘と過ごす一夏』~~

 

~~『ドキ! あのウマ娘の豊満な水着姿!』~~

 

~~『プライベートビーチで巨乳ウマ娘と……』~~

 

 

目を通していくにつれて内容は過激なものへとなっていき、最後の方では成年向けのものが集まっていた。

スカーレットの反応としては、勿論怒りだった。プルプルと肩を震わせ、顔を真っ赤に染めている。いつの間にこんなものを買い集めていたのか、と噴火寸前であった。

 

トレーナーに文句と怒号を浴びせようとした直前、スカーレットはあることに気づく。

本と本の間に挟まった折れたレシート、恐らくこれらの本をまとめて購入した時のものだろう。

そこに記載されている購入日と時刻は、自分がメッセージでバブリーランドでの写真を送った時から数時間後。

 

 

(あの写真の誰かを見て、興奮したってこと……⁉︎)

 

 

水着姿のウマ娘が沢山写った写真を送ってからしばらくもしないうちに水着中心の秘蔵本を購入。偶然と片付けるにはあまりにも間の時間が無い。

つまり、トレーナーはあの写真に感化されてこのような本を購入したということ。そして問題は、あの中の誰に影響されたのか。

 

容疑者はマルゼンスキー、スペシャルウィーク、ウイニングチケット、スイープトウショウ、そして自分。まずはこの五人の中から絞り出す。

 

トレーナーは水着ものの本を多く買っていた。だから水着という要素に興奮したのは明白だが、これは全員に当てはまる。

では一体何の要素で絞り出すか、本から導き出されるヒントは――胸のサイズが大きいという点のみ。

 

失礼な話だが、まずスイープトウショウが候補から外される。

残された四人の中で一際胸が大きいのはマルゼンスキー、そして後もう一人。

 

 

(マルゼンさんと……アタシ)

 

 

自分の胸が大きいことは自負している、自惚れではないがもしかしたら自分ではないかとも考えてしまう。

ここで改めて自分が送った写真を見てみる。ちょうどスカーレットはマルゼンの隣にいたので見比べやすかった。

 

果たしてあのトレーナーはマルゼンと自分、どちらに惹かれたのか。

確かに胸のサイズとしては互角と言っていいかもしれない。しかし自分にはない大人びた魅力をスカーレットは感じた。

 

 

(……馬鹿ね、アタシなんかがマルゼンさんに敵うわけないじゃない)

 

 

マルゼンを差し置いて、トレーナーの目が自分の方へ向くとは思えない。そんな悲観的な考えに至ったスカーレットの眼差しは、どこか悲しげであった。

 

 

「おーいスカーレット、固まってるがどうし、た……?」

 

 

すると向こうにいたトレーナーもこちらの方へやってくる。スカーレットが手にしている本を見て、どういう状況かを察して、顔面蒼白となってあわあわとし出す。

 

 

「お、お前それ……見たのか?」

 

「――アンタね、アタシが来るの分かってたんだからもっと見つかりづらい所に隠しておきなさいよ」

 

 

スカーレットは普段と同じように接し、呆れた様子を彼に見せる。その内心を悟られないように、怒鳴りつけるのもやめておいた。

しかし心の中では自分の予想が外れていることを願い、思わずこの本について聞き出してしまう。

 

 

「これ、ひょっとしてアタシが送った写真の影響?」

 

「……あ、ああ。すまない」

 

「ッ……そんなことだろうと思ったわ」

 

 

しかし彼女の予想は当たっていた。このトレーナーは嘘を付くのが苦手で、誤魔化そうともせずに申し訳なさそうな顔で謝ってくる。

――やっぱりマルゼンの影響か、とスカーレットは静かに心を痛める。しかしそれを表に出すことは決してしなかった。

 

 

「安心しなさい、マルゼンさんには黙っててあげる。だからもうこんな本は――」

 

「?、なんでマルゼンスキーの名前が出てくるんだ?」

 

「なんでって、マルゼンさんの水着の影響なんでしょ?」

 

「……いや、マルゼンスキーを見てそれを買ったわけじゃない」

 

「え?」

 

 

マルゼンの水着姿に影響されたわけではない? では一体、彼は誰の水着姿を見て秘蔵本を買ったのだろうか。

スカーレットの中で、沸々と期待が込み上げてくる。

 

 

「……じゃあ、誰なのよ」

 

「それ、は……」

 

 

マルゼンの可能性が消えた今、残された候補は一人しかいない。

スカーレットが問い詰めると、トレーナーは気まずそうに目を逸らす。

とてもではないが言えない様子に、申し訳なさそうにしている表情。もう答えは、出ているようなものだった。

 

 

「もしかしなくても……アタシ?」

 

「……」

 

 

トレーナーはYESもNOとも答えない。ただ沈黙するのみ。

しかしその沈黙は、肯定の他無かった。

 

 

(そっか……マルゼンさんじゃなくて、私を……)

 

 

自分の予想が良い具合に間違っていたスカーレット。

喜びの感情が、彼女の鼓動を加速させていく。それを抑えようとすると、手が自分の胸の中に沈んでいく。トレーナーは、この胸を見ているのだと。

 

もし相手が見知らぬ男だったら不快感を感じていただろう。

少なからずトレーナー相手にもその感情はあるが、今はそれ以上に興奮が競り勝っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つかって良かったわね、水着」

 

「あ、ああ……」

 

 

その後気まずい時間が流れながらも水着を探し、見つかった頃には日も暮れていて寮の門限も迫っていた。

スカーレットを見送るトレーナーはどこか落ち着かない。それもそのはず、昼間にあんなことがあったのだから。

 

対するスカーレットは達観しているような、冷静な様子である。てっきり感情に身を任せて怒り散らしてくるかと思っていた分、彼女の心情が読めずトレーナーはビクビクしていた。

兎に角怒っていないのは確かだ、それは長年彼女のトレーナーを勤めているので分かる。しかしその心の奥底で何を考えているまでは分からない。

 

ならば、怒りすら込み上がらない程に呆れて失望したか。

 

 

「その、すまなかったな。気持ち悪かっただろ。

あの本は勿論処分するし、それでも許せなかったら契約だって……」

 

「――ねぇ」

 

 

どんな償いでもする、そんな覚悟の決まったトレーナーの一言を遮る。

 

 

「アンタの水着、やっぱ新しいの買いに行きましょうよ。一緒に」

 

「え? ……な、なんでまた」

 

 

一見関係ない話題、しかもその提案は今日という一日を無駄にするものだ。

トレーナーを責めるわけでもない。彼女の真意が分からず、戸惑いを隠せない。

 

 

「あの水着、ママが買ってくれたやつだけど……アンタの好みとかも、一応知っておきたいから」

 

 

そう言ってそっぽを向いた彼女の顔は、正面から見ずとも赤面しているのが分かる。

秘蔵本の件を踏まえた上で、トレーナーの趣向を聞いてくる。それが何を意味するのか。

 

 

――アタシの水着姿を見て欲情しても構わない。それどころか、アンタの好きな水着を着てあげる。

だから、アタシだけを見ていなさい。

 

 

「スカーレット、それって……」

 

「……いいから! バブリーランドに行くのはまた今度! 明日は一緒に水着を買いに行くの!」

 

 

そう言ってスカーレットは逃げるようにその場を後にする。

ポツンと残されたトレーナーは、果たして何を思うのか。

 

勿論彼にも色や形など、彼自身の趣向が存在する。スカーレットが来ていた情熱を表すような赤色も好きだが、それとは対照的な寒色系も似合うかもしれない。

急遽変わった明日の予定、水着売り場で彼女に着させる水着を選ぶ――その時の様子を想像して、なんとも言えない感情の起伏が底から押し寄せてきた。

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