これは…
帝愛グループ幹部でありながら
異世界に飛ばされてしまった……
右も左もわからぬ………
トレセン学園で……
いわば…半強制的に新人トレーナーにされてしまった男…
利根川幸雄の苦悩と葛藤の物語である。
「利根川だ……!新人トレーナーの…………!」
ざわ・・
ざわ・・
「ククク……お前の走り…荒削りだが光るものを見た………!」
先日の話である。タバコを切らした利根川が近くのコンビニへと出向いた際、自主トレーニングに勤しむ少女の姿を見た。
デビュー前とはいえど、フォームもさることながら実に美しい走りをするウマ娘がいたもんだ、と思った。
街中を走っていた少女は全ての信号に捕まってしまい、寮に帰る頃にはすっかり陽も暮れていたが、その後もトレーニングに明け暮れていた。
選抜レースに出て、デビューを果たし、だめじゃない自分になる為に。
だから――選抜レースをボイコットした少女が切り株のそばで泣き崩れている姿を見て声をかけたのだ。
何か事情があるはずだ。慰めたい、力になってやりたい……そんな気持ちからではない。利根川には確かな理由があったのだ。果たさねばならぬものがあった――。
「ト、トレーナーさんがライスになんの用…?」
「ククク……ここまで言ってまだピンとこんのか………!」
ライスは涙目のまま一歩下がり、ニヤリと笑う利根川を見て肩を震わせた。
「見せてやる……ワシが……! うまぴょいっ………! そのセンターの景色……!」
「……………っ!」
ざわ・・
ざわ・・
「ら、ライス…だめな子…だよ?」
「だめかどうかは…ワシが決める……!」
「で、でも…ライスといるとみんなを不幸にしちゃうから…」
「クク…あるかっ……そんなこと……!」
不安そうに覗き込んでくるライスから目を逸らし、スーツの内ポケットから取り出したタバコを咥え火をつけようとライターを手にした。
しかし利根川に電流走る───!
「えっと…中庭は、禁煙…だよ?」
「ぐっ……!」
利根川……誤算……! 理外の禁煙っ………!
しかし利根川……怒らない………!
見せるっ………大人の余裕……!
「ククク……言っておくが厳しいぞ……! ワシのトレーニングはっ………!」
咥えていたタバコをポケットに戻し、利根川は静かに笑った。
――これは…
帝愛グループ幹部でありながら
異世界に飛ばされてしまった……
右も左もわからぬ………
トレセン学園で……
いわば…半強制的に新人トレーナーにされてしまった男…
利根川幸雄の苦悩と葛藤の物語である。
圧倒的試し書き
一話完結で色々なウマ娘のお話を書いていこうと思ってますが、最初なのでライスだけ2話構成で。
次話は文字数増えます。