新人トレーナー録トネガワ   作:喬 

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休日・・・・・・

 利根川幸雄の朝は早い……!

 帝愛にいた頃は二十連勤くらいであれば当たり前であったが、ことトレセン学園に関しては週休二日と、圧倒的ホワイトであった。もちろん休日とはいえ担当ウマ娘達のトレーニング指導もある為、完全な休みとはいかないが、それもレース間近でなければ昼頃には切り上げる。

 しかし今日は違う。今日という日は完全休息日。予定は何ひとつ無い。圧倒的休日。

 それでも利根川は夜更かしや、昼過ぎまで惰眠を貪ったりと、そういう事はしない。夜の十二時までには眠りにつき、起床……朝の八時。

 目が覚めると直ぐにベッドから出て、顔を洗い歯を磨く。その後は200mlの調製豆乳と一本のバナナを食し、タバコに火をつけ、新たに購入した教本を広げる。

 まだまだ得る事は山ほどあった。

 

 実は利根川、サイレンススズカと共に秋の天皇賞を制した後……NEXT FRONTIERにうまぴょいの夢敗れ一度失脚。

 その後、目標へと向かって再び進む為近くの本屋で片っ端から教本を購入。全額自腹。

 次こそは……見届けなければならない……なんとしても………うまぴょい………!

 

 一心不乱に教本を読み進め、気が付けば昼時。

 利根川……遂に動き出す……!

 

「ククク……突入……! ランチタイム……! いつもならカフェテリアですます所だが……今日は……稀に見る定休日……!」

 

 利根川は私服に着替え、トレーナー寮を出た。

 そのまま学園を出ると…出会う……! 丁度昼飯を食べに行こうとしていたウマ娘……ライスシャワー……!

 

「あ、利根川先生も…お昼ご飯?」

「クク…おまえもか……ライス……!」

「うん。あの、良かったら…ライスも一緒に行っていい…?」

「好きにしろ……!」

「………っ! ついてく……ついてく……!」

 

 こうして始まる……! 利根川とライス……昼メシの流儀…………!

 

 ――学園を出て歩く事数分、ピタリと立ち止まったライスが見上げていたのは『かつ澤』。カツ丼専門店であった。

 

「ライス…ここが良い…な…」

「ふむ……! 普段なら入ることのない店だが………行ってみるか! 今日は………ガッツリ………!」

 

 そして静かに入店。店員に案内されるがままテーブル席につき、ふと隣に座るウマ娘とそのトレーナーの様子を盗み見た。

 男は上下白の服に黒のハット、サングラス。そして曝け出している……上半身……その肉体……!

 

「あー、ブルボンさん…! ブルボンさん達も、ここでお昼ご飯?」

「ライスさん……! ええ、マスターがトレーニングを頑張ったご褒美にご馳走してくれるというので…」

「ブルボン……余計なことは言うんじゃない…」

「申し訳ありません、マスター」

 

 若干反応に困る三人のやり取りを見て、利根川は思った。

 二人が食べているカツ丼……確かにボリューミーだが………案外月並み……! 今のワシには…ちと足りん………! 

 この時、数々の死闘を気付きによって乗り越えてきた利根川が……まさかの大誤算。見なかった……メニュー表……!

 

「ライス……何にするか決めたか……?」

「うん。ライスね、大盛りにする…!」

「ククク……そうか……!

 あー、いいかな? 注文……」

 

 利根川は近くにいた店員を呼びつけ……頼む………!

 

「カツ丼二つ……! 大盛りで………!」

「えっ…!?」

 

わ・・

       わ・・

 

「大丈夫ですか…!?」

「あ……? なんだ?ワシらには多すぎると言いたいのか?」

「い、いえ! そういうわけでは…」

「なめるなっ! 持ってこい! 大盛り……! つべこべ言わずっ……!」

「は……はいっ…!」

 

 ――数分後

 

「お待たせしました。カツ丼大盛りです………!」

「ぐがっ…!」

 

  

   

    あっ・・

 

 ――利根川とライスの前に運ばれて来たカツ丼は、まさに利根川の顔の二倍ほどはあるものだった。

 

 

 な……なんだこの…………圧倒的量はっ……!

 ブルボン達が食べているのが並盛りで…大盛りがこれっ……!?

 バカッ……! 刻むだろっ! 普通もっと…! 段階をっ…!

 いや……違うっ…!

 

 

 この時………利根川に気付き…! 圧倒的気付き……!

 そう、この店…刻んではいるのだ……! メニュー表に書かれている……! この店のレディースサイズは他店の並盛り、小盛りは他店の大盛り、並盛りは命がけのK2(カツ)……そして大盛りは………ようこそ新世界へ……!

 つまりブルボン達が食べているのは…並盛りではない……!

 

 

 ぐぐっ…! バカッ…!

 ブルボンはまだしも…トレーナー……! …頼むなっ! その図体で……レディースサイズ……!

 

「利根川先生…大丈夫…? お腹痛いの…? 食べきれなかったら、ライスが食べてあげるよ…?」

 

 呆気に取られて、動き出せない利根川を心配するライスの純真無垢な瞳が突き刺さる…! 悪気の無い……煽り……!

 気付けばライス、ものの数分で食べ進めている。すでに半分ほど。

 

「ぐっ…! がっ…!」

 

  

   

    あっ・・

 

 そんな小さな身体で………どうして……どうして食べられる…………!

 ぐぐ……これではワシも……大見栄を切ってしまった以上……引き下がれんっ…! 今さらっ……!

 

「クク……刮目…! 新たな伝説の瞬間……!」

「利根川先生……!」

 

 利根川……決死のダイブ……!カツの海っ……!

 

 

   ×  ×  ×

 

 

 利根川幸雄の朝は早い……!

 帝愛にいた頃は以下略――。今日という日は完全休息日。圧倒的休日。

 この日利根川はある用事を済ませる為、学園の外へと出ていた。

 車で向かう事一時間……鳥 さえずり……川 せせらぐ……バーベキュー場っ………!

 

「ククク……始めよう…! 店で食べれば…………100g数万円は下らない…最高級神戸牛食べ放題の…圧倒的バーベキュー………!!」

 

 実は利根川、前回サイレンススズカをチームに引き入れる為、スペ、マックイーン、テイオー、スカーレットに集まってもらい、様々なアイデアを出してもらったのだが、スズカの顔色を窺い…最終的に全消去。

 これによりウマ娘達からの信頼を失った利根川は、急遽企画した。

 ウマ娘達からの信頼回復を図った…起死回生のバーベキュー…!!

 

「あ…あのっ…! ニンジンは…ありますか……!?」

「ス、スペ先輩っ…何言って…」

「クックック……ダスカ……よい……よい……。ニンジンは売店で売っているから…あえて持ってこんかったのだ…。スペ………買ってこい…! これで…! 好きなだけ…!!」

 

 利根川は手渡した……自らの財布から……札束………!

 

「あ…宛名は………「トレセン学園」ですか…?」

「あ…? 切るなっ…!領収書(そんなもの)…!! ただし最上級だ……! 訳ありだなんだといったものは…………認めん…!」

「利根川先生………!」

「行けっ…! さっさと…!」

「は…はいっ…!」

 

 

   ×  ×  × 

 

 

「ボク、カイチョーみたいな強くてカッコいいウマ娘になりたいんだ! 目標は…無敗で三冠…!」

「わたくしは、メジロ家の名に恥じぬ圧倒的ステイヤーになってみせますわ!」

「クク……ワシのチームに入れば……可能………!」

「えー、でもトレーナー、まだまだ新人じゃん!」

「そうですわね、まだまだ信頼に足る存在ではありませんわ」

「ぐっ……!! なめるなっ……! このワシを……!」

 

 

 

「ライスね、これからもいっぱいレースに勝って……それでね、利根川先生に…いっぱい喜んでもらいたい…な…」

「ククク……草すら生えん良い子……!」

 

 

 

「フフ……みんな楽しんでるようで、良かったですね」

「スズカ…!」

 

 実は、今回のバーベキューにはもうひとつ目的があった。それは何を隠そう、秋の天皇賞を制したスズカの祝勝会。

 

「天皇賞…秋……! 悪くはなかった……おまえの走り……! いってくれ…! ガブッと…! 遠慮なく………!」

 

 利根川は最高級神戸牛をスズカの為に焼き、それを一口大に切り分けスズカへと手渡した。

 

「ありがとうございます…」

「どうだ…? 美味かろう…!?」

「……美味しいです………! 利根川先生……!」

 

 かくして…利根川による圧倒的バーベキューは……大成功っ…!

 未だメンバーはふたりだけだが…その内……入るかもしれない…!

 スペ、マックイーン、テイオー、スカーレット………!

 




読んでくださった方がいれば圧倒的感謝
実はメジロマックイーン推し……
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