「…………あ……?」
ざわ・・
ざわ・・
「おまえ……今何と……?」
「『月刊トゥインクル』で記者をしております……乙名史 悦子と申します」
「違う……! その後だ……!」
「秋川理事長からのご紹介で取材をさせていただきたく参りました」
「ぐっ……!」
実は利根川、キングと共にうまぴょいの夢叶えた後、理事長からの命で今日は完全休息日となっていた。
なっていたが……何故だかトレセン学園からは出ぬようにと……そう言いつけられていた。その言葉の通り…カフェテリアで珈琲をすすりながら…優雅な午後のひと時を過ごしていた……! そこに……理外の乙名史……!
これが理事長の狙いだったのかと…利根川はすぐに頭を切り替え……目の前の記者に視線を移した…!
実はこの時点ですでに…利根川は懸念していた。自分でもよく分からぬ……嫌な予感…!
利根川は優秀だ……それもとびっきり…! トレセン学園の中じゃ…文句無くナンバー1…切れる男……そんな男が…まず…感じないはずがない…!
内に潜む……どこか危険な匂い……!
「ぜひ、取材にご協力くださいませ」
「断るっ………!」
「では早速……次はどの娘を担当しようとお考えですか?」
「ぐっ……がっ……」
(こ、こいつ……聞いとらん……ワシの話……!)
「今朝ふたりでお話されていたスペシャルウィークさんですか?それとも昼食をご一緒されていたサトノダイヤモンドさんですか? それとも……」
「ククク……吠えるなっ…! 『月刊トゥインクル』とやらのイヌめっ…!!」
「うっ…」
「バカが……! 担当ウマ娘とは……考えて選ぶものではないっ……! 気が付けば隣にいるのだ……スタンド使いとスタンド使いが惹かれ合うようにっ………!」
「――ッ! では……今担当しているウマ娘、そしてこれから担当するウマ娘たち全員と…うまぴょいする覚悟はおありですか?」
「クク…愚問っ…! 当然……ワシの目標は…うまぴょい……! チームトネガワに……妥協などないっ……!」
「………………す」
「あ………?」
ざわ・・
ざわ・・
「す……す……素晴らしいですっ!! たとえ肉 焦がし……骨 焼かれても……ウマ娘の背中を押し続ける……そのような覚悟がおありなんですねっ!!」
「バカッ……! 言っとらん……! そんなことっ………!」
「ああ……トレーナーさんのお覚悟、とても……とても感服いたしましたぁ……!」
「聞けっ……! ワシの話を……!」
変人……! 圧倒的……変人記者……! 嫌な予感……的中………!
醒めない悪夢っ……! 悪魔の愉悦…! 地獄っ…!
× × ×
利根川が…変人記者に捕まっている頃……チームトネガワの部室では…ライス、スズカ、マックイーン、キングが集まり……ニンジンチップスやケーキ、紅茶やジュースなどを持ち寄って……それらを机の上に広げ、囲んでいた。
食 進み……仲 深まる……ささやかなパーティー……!
「キングさん……うまぴょい…おめでとう……!」
「ええ、ありがとうライスさん。あなたにはこのキングを祝う権利をあげるわ!」
「ふふっ。本当におめでとう」
「あら、スズカさんまで…。もう、少し照れくさいわね!」
「Congratulation! Congratulation! ですわ!」
「マ、マックイーンさん……」
利根川……延いてはチームトネガワの悲願……うまぴょい……! それをいち早く成し遂げた…キングヘイロー……!
当然…今日だけは…誰もが持っている……! キングを祝う権利……!
「ライスも…早くうまぴょいしたいな……」
「……そうですわね」
「キングちゃんに…前を走られちゃったわね」
どこか嬉しそうに…そう言って笑う三人を見て……キングもまた……喜びを隠せなかった……!
「あ、あなたたちはこのキングのとも……仲間なんだから……! キングに追いつく権利をあげるわ!」
競い合い…高め合える仲間たちと……部室で発生する……友情トレーニング…!
パーティーが始まると……中には……
「そろそろ走りたくなってきたわね」
「スズカさん…まだパーティーは始まったばかりですわよ……」
もう既に走ることを考えている者や……
「マ、マックイーンさん…あなたそれ……追い生クリーム……!?」
「パクパクですわ!!」
「おやめなさいマックイーンさん! 狂気の沙汰よ…!」
ショートケーキに…持参した生クリームをトッピングする者………!
そして……
「プチシュークリームをあげるわ、マックイーンさん…! プチシュークリームは小さいから太らないのよ…! 一個目が太らないのだから…二個目を食べても太らない……! つまり何個食べても太らないのよ……! おーっほっほっほ!」
「な、なんですのそれ…! 凄いですわ……! 圧倒的ですわ……! 手が止まりませんですわ……!」
筋の通らない理論を掲げる者………!
さらに……語尾が適当になり始める者………!
大方……パーティーは盛り上がり………唐突に始まるのが…
「Shut up」
ざわ・・
ざわ・・
「ぶち転がすぞ……
「ラ、ライスさん……!? 何を言ってるんですの……!?」
「え、えへへ…。利根川先生の真似……上手く出来た…かな……」
いないトレーナーのモノマネ……!
「思わず息を呑んでしまうほどでしたわ…」
「ええ…。この上なく似ていたわね…。ライスさん…恐ろしい子……」
「や、やった……! 嬉しい…な……!」
「ウソでしょ……」
もはや…スズカひとりではツッコミが追いつかないほど……場は混沌を極め……数時間後……盛り上がりがひと段落すると……
「あのね、ライスね…利根川先生と出会う前は自分に自信が持てなくて…ずっと泣いてたの……。デビュー戦の当日も怖くなって…逃げ出しちゃって…。そしたら利根川先生が見つけてくれてね…ワシは諦めないって……ライスのこと、信じてくれたの」
ちょっとだけ真面目な話……!
「……私も、走る理由を見失ってしまった時……利根川先生が言ってくれた……。勝たなければただのウマ…! って」
「わたくしもですわ…。ひどい怪我をして…もう走れないと思っていたのに……なんの根拠も無しに…ポッシブル……なんて言うんですのよ」
「ええ…。もう誰も私に期待していなかった時も……お前は一流だ、手痛く負けた時こそ胸を張れって……本当……おばかで…諦めが悪いのよ……」
時に笑い…時に泣き……そんな思い出話に花を咲かせながら……唐突に……!
「始めますわよ…Eカード……」
「う、うん…。ライス…がんばるぞ、おー!!」
(チッ……やれやれ……やっと変人記者から解放され…パーティーとやらの様子を見に来たのに……これでは出られんだろうが…! バカどもめっ……!)
部室から聞こえてくる楽しげな声を背に、利根川は来た道をその足で引き返していく。
(フン……まあいい………放っておいてやるか……! こんな日くらい…!)
こうして…完全休息日………それぞれの想いを胸に…府中の夜は更けていき…翌日……利根川……動き出す……!
新たなウマ娘をスカウトするために……!
× × ×
「ふ、ふたりとも…凄かったね……!」
「クク……ライス……! おまえには分かったか……? ワシが…どちらをスカウトしようとしているか……!」
この日、利根川とライスは選抜レースに顔を出していた。チームトネガワに、新たな風を吹き入れるため。
「えっと…ライスは、あの2着の娘かなって……」
「ククク……その通り……!」
利根川は…見事正解を導き出したライスの頭を……撫でたりはしないが……学園の外へ連れ出し…そのまま突入……ランチタイム…!
カツ 揚がり……箸 止まる……圧倒的かつ澤……!
利根川が初めてこの店に来た時は、圧倒的ボリュームの大盛りを頼んで、大失敗…!
しかしそれも今や…ビギナー時代の話……!
「お決まりですか?」
「クク…じゃあ……カツ丼ふたつ…! 大盛りとレディースサイズで…!」
勿論…レディースサイズはライスのものでなく……利根川…!
この店のカツ丼は…並より下に………サイズを刻んでいる…! それを知らず大盛りで頼もうものなら……地獄…!
なのでここは…自分より身体の小さなライスが大盛りを頼もうとも………レディースサイズで充分…!
「……カツ丼大盛りで!」
「あ…?」
ざわ・・
ざわ・・
なんと、利根川の隣に座ったウマ娘は、あろうことか、大盛り。
このウマ娘は…知らない……! かつ澤の…大盛りを……!
「だ、大丈夫ですか…!? ウチの大盛りは…」
「だいじょーぶだいじょーぶ! ボクお腹空かせて来たからさ!」
「はあ……では……」
そして数分後……そのウマ娘は…絶句した…!
目の前に運ばれてきた…大盛りのカツ丼を見て……!
「ワ、ワケワカンナイヨー!」
(ククク…焦っとる焦っとる……! 無駄無駄………! キョロキョロしても…!まあ…1度経験したワシなら…メニューには無いが頼めば出てくる……ソースや山椒……その他様々な調味料を駆使することで…だましだまし食べるという隠し技を使うが………ククク……教えてやらん…! そんなことは………! かつ澤は甘くない…!)
「う、うぅ…助けてカイチョー……!」
(ククク……どれ…ゆっくりと味わわせてもらうか…! 安全であることの愉悦を………!)
「ん…?」
(なんだこいつ…? 急にワシの方を見て…)
「どこかで見たことあると思ったら、ライスのトレーナーじゃん! ていうかライスも一緒じゃん!」
(う…! 話しかけてきた……!)
「あ…久しぶり…テイオーさん……!」
「もー! いたなら声かけてよー! あ、そうだ! ライスのトレーナーなら食べられるよね? ボクの分わけてあげるから、遠慮なくいってよ! ガッと…!」
「あ……? 何を言い出すかと思えば………甘えるなっ………! ウマ娘が……!」
「うっ…」
「自分で大盛りを頼んで………注文通り大盛りがきたのだ! それを今更ギャーギャー…あまりなめるな…!
「――!?」
「つべこべ言わず…食い切ってみろ……! ウマ娘ならひとりで…大盛りくらい…!」
「ぐっ……ぐぐぐ……」
利根川……渾身の…叱咤激励……! だが……!
「お待たせしました! レディースサイズになりまーす…!」
「うっ…!」
「あれ〜? なんかすごーく……男らしいレディーだね……!」
「ぐっ…! いやこれは…」
「あっ! 食べて食べて! レディーファーストだからね…! にしし……」
「ぐぐぐ……! おい…キサマ!」
「はいっ……!」
「持ってこんか! 注文通り……大盛りを…!」
「は…はいっ!」
結局……利根川…トウカイテイオー……ふたりでダイブ……カツの海…!
利根川vs.トウカイテイオー……勝者……ライスシャワー…!
「えへへ…ごちそうさま……!」
次回『新人トレーナー録トネガワ』は・・・・
またまた狙う・・・・!
うまぴょい伝説・・!
「アタシが1番なんだから!」
「ククク………クズめっ…………!」
「あ…あんたはっ……ライスシャワーのトレーナーっ………!!」
「なめるなっ……! うまぴょいを………!」
横暴の限りを尽くすクズトレーナー・・!
阿鼻叫喚の末、ついにURA・・!
利根川は無事うまぴょい出来るのか!?
戦禍の第9話へ!!
ククク・・・対あり・・・・!