新人トレーナー録トネガワ   作:喬 

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4000〜5000文字以内で1話でまとめたいので圧倒的急ぎ足になってしまう・・・


ダイワスカーレット・・・・・・

 この日利根川は、選抜レースで目をつけたウマ娘を探し歩いていた。

 2着ではあったが、その素質、内に秘めた燃えるような闘志に惹かれたのだ。

 

「ククク…探したぞ……!」

「ひゃっ!? だ、誰!?」

「惜しかったな……選抜レース…!」

「アンタ…ライスさんのトレーナー…」

「2着だったのだ……恥じることはない……!」

「2着じゃダメなのよっ!! アタシは1番じゃなきゃいけないの!!」

 

 どこか悲痛な叫び声が響き渡ると、スカーレットはすぐに冷静さを取り戻し、「すみません」と頭を下げてその場を走り去っていった。

 

「ククク……! ウマ娘とは…そうでなくてはいかん……!」

 

 勿論…勝つことがその全てではない……! 時に……勝ち負けよりも大事な何かや……負けることでほの見える………分岐点……!

 ただそれは…2着でいいという理由にはならない……!

 

「……………」

 

 利根川は…内ポケットから取り出したタバコに火をつけ……深く煙を吸い込んだ…。

 また後日…声をかけてみるか……と…夜空を眺めながら…ゆっくりと煙を吐いた……。

 

 

   ×  ×  ×

 

 

 最初こそ、スカーレットに群がるトレーナーたちは多くいたが、次第に彼女は気性難だの、あれでは上にはいけないだのと、散々なことを言って、もう誰もスカーレットに声をかける者はいなかった。

 とどのつまり…スカーレットに期待している者など…誰ひとりいない……!利根川幸雄……この男を除いて……!

 

「1番で在りたいのなら……ワシと共に来いっ……!」

 

 夕陽が沈んでも尚…トレーニングをやめようとしないスカーレットに……利根川は声をかけた……!

 

「ア、アンタ……また来たの…? 言っとくけど…アタシはアンタが思ってるような子じゃない……! 地元で少し速かっただけで…1番気取って……必死に優等生のフリをして…! でもいざトレセン学園に来てみたら……『本物』の速い子に…あっさり負けちゃって………ほんとは……1番になるだなんて…アタシにはっ……」

「黙れっ…!」

「うっ…」

 

わ・・

       わ・・

 

「まあ…確かに……今のおまえじゃ…ライスにもスズカにも……マックイーンやキングにも勝てん……! どころか…入賞すら出来ん……!」

「……………は、はぁ!?」

「予言する……! 間違いなくどのレースを走っても……お前は負ける…! 最下位……!」

「な…な……」

「負ける……! 最下位だおまえは……! 負ける…! 負ける……! 負ける……!」

「あっ……! あっ……! あっ……! あっ……! や、やめてっ……! アタシが……アタシがっ……!」

「負けるっ……! 最下位っ………!」

「ぐっ……!」

「負けっ! 負けっ! 負けっ……!」

「うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ……! アタシがっ…………1番なんだからっ…!」

 

 その叫び声は…トレーニングコース全体に響き渡り……まだちらほらといたウマ娘や…トレーナーたちの視線が利根川たちに集まっていた。

 それでも…利根川は気にも留めなかった…。

 

「そうだ……! 悔しかったのなら…決して膝を折るなっ……! 手をつくな……! 諦めたフリなどして……自分のプライドまで明け渡すなっ………!」

「ア、アンタ……バッカじゃないの! アタシはただ……そうよ! アンタのことが信用できないだけ…! 納得いかなきゃ、トレーニングメニューにもめちゃくちゃ口出しするんだから!! その覚悟、できてるわけ!?」

「ククク……たとえ…肉 焦がし………骨 焼かれても……ワシはお前の背を押し続ける……!」

「…………な、なんなのよ、アンタ」

「ワシとおまえに…相応しい場所(レース)がある……! 今年から開催されることになった……URA……! その頂きの景色………とるぞ……! うまぴょいっ………!」

「…………ッ!! ほんとっ……変なヤツに…捕まっちゃった……っ」

 

 ――ダイワスカーレットは…今まで抑え込んできたものが決壊したかのように……静かに泣いた…。

 

 

   ×  ×  × 

 

 

「あっついわね……」

 

 スカーレットは、デビュー戦を見事勝ち取った。これはスカーレットの実力であれば勝てて当然のレース。だが、次に出走する重賞レースではそうはいかない。

 利根川は、まだまだ圧倒的に足りない部分を強化するため、夏合宿を行うことを決意した。

 

「ククク……甘くないぞ……合宿は……!」

「フンっ! 合宿に来たくらいで1番になれるなら苦労はしないわよっ!」

 

 実はスカーレット…未だ利根川のことを信頼しきれてはおらず……夏合宿に大きな期待などしていなかった……!

 が……しかし……!

 

わ・・

       わ・・

 

 利根川の指示するトレーニングをこなすにつれ……徐々に浮き彫りになっていく……!

 夏合宿の……圧倒的完成度……!

 スカーレットは…夏合宿という名前だけ聞いた時点では……大した期待もせず…素人の考えそうな配牌(トレーニング)だと思っていたが………指示(ツモ)を重ねるごとに………手牌はみるみる変貌………!

 気がつけば………

 

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 このゴミ手が………

 

 

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 この形…!

 テンパイ……! 純チャン三色一盃口……!

 

「よし……今日はここまでだ……!」 

「な、何言ってんのよ…! アタシはまだまだやれるわ……!」

「クク……休息も……トレーニングのうちだ……!」

「うっ…! わ、分かったわよ……」

 

 

 こうして…利根川とスカーレットは……少しずつ…それでも確かに…信頼関係を築き上げ……数々の重賞を制していった。

 負けた日は…落ち込むスカーレットをかつ澤に連れて行き……勝った日は喜ぶスカーレットをかつ澤へと連れて行き……!

 

 そうして…数え切れない、でも少しの歳月は流れ…やってきた……!

 

 URA予選……!

 

 これを…スカーレットは難なく1着でゴールし……地下バ道で待つ利根川の下へと駆けてきた…。

  

「トレーナー! 見てたでしょうね!?」

「クク…愚問っ…!」

「ふふ、やっぱりアタシが1番なんだから!」

 

 そして…異変が起こったのは……この後のレース……準決勝でのことだった……!

 

『あいにくの雨が芝を濡らす、中山レース場。バ場状態の発表は重となってしまいました』

 

 

 ――雨の中のレースだったが…スカーレットは重バ場をものともせず……準決勝も見事1着で走り抜け、残すは決勝だけとなった……! が…しかし……!

 

「トレーナー! しっかり見てなさいよ、アタシの走り!」

「…………あ……?」

「雨だろうと雪だろうと、アタシは1番でゴールしてみせるわ!」

 

わ・・

       わ・・

 

『あいにくの雨が芝を濡らす、中山レース場。バ場状態の発表は重となってしまいました』

 

 この時…利根川はいち早く気付いていた。気付いていたが…信じられなかったのだ。

 誰が信じられるだろうか。

 同じ日を繰り返しているなど…そんな非現実的なことを……!

 

「トレーナー! しっかり見てなさいよ、アタシの走り!」

「ぐっ…! がっ……!」

 

  

   

    あっ・・

 

 利根川は以前…聞いたことがあった…。

 一日三個だけ使うことができる…目覚まし時計……! それを使えば…負けてもレース直前まで時を戻すことができる…と……!

 

 利根川…走る……! 雨の中を…ただひたすら……!

 この時…利根川の脳裏には既に犯人の顔が浮かんでいた……! 利根川は…記憶していたのだ……! 全てのウマ娘の…枠順……枠番……!

 その中で……たったふたりだけ……二度…入れ替わったのだ……!

 スカーレットと………

 

「ギギ……! これが…最後の一個……! 頼むっ……! 勝たせてくれっ……! ミココノチカラを……!」

「ククク………クズめっ…………!」

「あ…あんたはっ……ライスシャワーのトレーナーっ………!!」

「その目覚まし時計で……何をするつもりだ……!」

「うっ…」

「勝っても負けても……それを真摯に受け止める……! それがレース……それが勝負……! なめるなっ……! うまぴょいを………!」

「あっ…ああっ……!」

「おまえの人としての評価は……Eランク……!」

「ぐっ……!わしが…間違っとったんだ……!わしが……!すまん……ミココノチカラ……!わしはもう二度と……間違えん……!うっ……おおおっ……!」

「ククク……対あり……!」

 

 

   ×  ×  × 

 

 

 予想外のアクシデントはあったものの…スカーレットは1着でゴール板を駆け抜け……後日……!

 

 ついに迎える……! URA……決勝戦……!

 

「今日だ……! 今日勝てば……圧倒的頂点…! うまぴょい……!」

「ね、ねえ…トレーナー…。今日もアタシが1番でゴールしたら……そしたら……ト、トレーナーのことっ……」

「退屈……!」

 

 逆光の中見えたのは……四人の黒服の男たちを…横一列に並ばせ…四つん這いにさせ……その上に寝転がる男の影……!

 目の前に立ち塞がるそれは……影と呼ぶにはあまりにドス黒く……悪魔的………!

 ターフへと続く…地下バ道で利根川たちが出会ったのは……帝愛グループ…その頂点に君臨する……

 

「がっ! ぐっ……!」

「つまらん…! うんざり……!」

「か…会長っ……!」

 

 

 兵藤和尊………!

 

 

  

   

    あっ・・

 

「やれ「偏頭痛」だの……「夜更かし気味」だの…「太り気味」だの……なまけ癖だの…練習ベタだの……!小さなほころびだの……肌荒れだの……!チッ……!下らぬ……!どれもこれも……!そうは思わんか……?利根川っ……!」

 

わ・・

       わ・・

 

「は……! まさにその通り………かと! ですが会長……それもウマ娘を育てる上で必要な…」

「ウイニングライブだ……! ウイニングライブが観たい………! ワシを満足させうるような……ウイニングライブ……!」

「あの…会長……ライブ…お好きなのですか……?」

「ククク……好きなわけがなかろう……! まあだが……無くはない………! 極稀に…ではあるが……多少は観れる……このワシをわずかだが(よろこ)ばせうるダンス(もの)も……! 例えば…コメくいてーだの………勝利の女神はキスするだの……」

()()()する……ですか……?」

「――! どっちでもよいわっ……! そんなものっ…!」

「はっ……! すみませんっ……!」

 

 兵藤は…利根川に一発制裁をすると…その足で観覧席へと向かって行った。

 その背中を見送り、震えているスカーレットに視線を移した。

 

「また……諦めるつもりか……?」

「――ッ! も、勿論…アタシは1番を譲るつもりなんてないけど……アンタが…し、心配なのも……本当なのよ……! アタシ……どうすればっ……!」

「考えるなっ………! 会長の機嫌だなんだ……そういったしち面倒臭いことは……なんとかするっ…………! ワシが……!」

「アンタ……」

「初のURA……決勝戦だ………!」

 

 利根川は…未だ不安そうに見上げるスカーレットの背中を……強く叩いた……!

 

「――ッ!」

「踊ってみせろっ…………! うまぴょいっ……!」

 

 喰うか…! 喰われるか…!

 血路を開け…!

 

「見てなさいトレーナー! アタシが勝ったら……トレーナーのこと……っ、利根川先生って呼ばせてもらうんだからっ…!」

 

 勝負(レース)至上主義…!!

 

 

   ×  ×  ×

 

 

『な、なんということでしょうか…! これはもはや…圧倒的……! 後続との差を大きくつけてっ……カズタカイザー……今…1着でゴールインっ……!』

 

 

「クゥクゥクゥ……!」

 

 駆け巡る脳内物質っ………!

 

「ククク……キキキ……!」

 

 β-エンドルフィン……!

 チロシン……! エンケファリン……! バリン…!

 リジン

 ロイシン

 イソロイシン……!

 

「カカカッ……!」

 

 利根川は……生まれて初めて…心の底から震え上がった……! 真の恐怖と…決定的な挫折に…!

 恐ろしさと…絶望に…涙すら流した……! これも…初めてのことだった……!

 

「ト、トレーナー…! アタシ……!」

 

 利根川はその場にうなだれ、駆け寄ってきたスカーレットの声に反応することさえ出来なかった。

 

「してもらおう……! 償いだけは………きっちりと………!」

 

わ・・

       わ・・

 

「ククク……スカーレットくん………確か…レースに出走()て終わりではなかったな………」

「な……なにをっ……!」

「ククク………3着までのウマ娘は…ウイニングライブで踊ることになる……!当然…1着でなくとも……それを見届けるのが…トレーナーの務め……!しかしその観覧に…ちょっとした負荷を加えると…もう連中は…満足に観覧することもできなくなる………!本来できるはずなのだ…!本当に勝たせてやりたかったという気持ちで……胸がいっぱいなら……!2着であれ振ることができる…!」

 

 ペン 光り……闇 照らす……サイリウムをっ………!

 

 

   ×  ×  ×

 

 

『うーーーー(うまだっち)』

 

 

 醒めない悪夢っ……! 悪魔の愉悦…!

 

「おっ……! おっ……!」

 

 地獄っ…!

 

 


 

 地の獄…!

 底の底…!

 

「はあ〜〜……いいよなぁ………外出許可証………!」

「無理ですオレらには………担当ウマ娘もいないのに外出なんてとても………」

 

 カフェテリアの……あちらこちらから聞こえてくる…トレーナー見習いたちの声をよそに……ある男が動き出した………!

 

「ふふ…会長……探しましたよ…」

「おや、○○のトレーナー君じゃないか。どうしたんだ?」

「外出許可証を………2枚……!」

「ふむ…。分かった、手配しよう」

「ありがとうございます」

 

わ・・

       わ・・

 

「うっ…」

「また…!?」

「何度目だよこれで…!」

「すげえっ……!」

 

 

 これは…ジュニア級でありながらも

 会長と親しくなり…

 「外出許可証」を利用しては…

 ウマ娘と悠々自適な1日を送る

 

 ジュニア級トップ………

 

 大槻トレーナーの

 1日外出の記録である…!

 

 


 

 一条聖也………!

 

 

「おやおや…どうされました?ミココノチカラ様………」

「――!」

 

 怪我を押して…出走した結果……レース中に転倒してしまったウマ娘に近づき……一条は声をかけた……!

 

「走られないんですか…? 続き…!」

「うっ……」

「おい! 棄権だ……!」

 

 一条がそう叫ぶと……後ろに控えていた男たちは……ミココノチカラを担架に乗せ……レース場外へと連れて行く…………!

 

「まだ走れる……! もう少し…もう少しだけ……! やめてっ…!放してっ……!」

 

 

うわあああ・・・

 

 

「フフ……こういうのもなんですが……なんで諦めないんスかね?」

「クク……奴らウマ娘はこれまでの人生…………ただただ努力を繰り返し……走り続けてきた……!そういう奴らは最後の最後…怪我をしても……根拠なく自らの脚を信じ……走り続けるしか術を知らないのさ………たとえそれが……底なしのウマ喰い(バ場)だったとしても……な……!ククク……」

「フフ……間違いないっスね………!」

「さて……にんじんハンバーグでも食べようか」

「はい!」

 

 

 この物語の主人公は……後に自らが生み出した…悪魔的レース場「沼」で……宿敵……伊藤カイジと死闘を繰り広げることになる麒麟児……

 

 府中裏レース場代表者時代の……一条聖也……!

 

 ではなく……!

 

 田舎から…トレセン学園に就職したが…

 未だ燻り何者にもなれぬ…………

 新米トレーナー時代の……

 

 一条聖也の…物語である……!

 

 




ハンチョウとイチジョウこんな感じで書き進めてます
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