焔華は天宮市を歩いていた。名前以外に特に覚えていることはなく、ただ歩いていた。
(どうしよう、住んでいる場所も何も分からないけど……。名前以外分からないて記憶喪失だよね!?)
肩を落としながら、店のガラスの方を見る。今の焔華の姿は髪の色は金髪で赤い瞳。髪は肩に掛かる位伸びている。それにノースリーブの服と、ショートパンツにブーツという感じだ。少し早い気もするが本人は気にしている様子は無かった。
「こんな感じになってるんだ。これなら変に目立たない筈だね」
よし、っと店のガラスか退き、再び街を歩き出す。そして考える。自分が襲われた理由と、自身がクレーターの真ん中に居た理由を。
(私があの場に現れたから、クレーターが出来て街が壊れた?と考えるのが普通だよね。でも、何故そうなったんだろう)
分からない。自分の力は普通ではないし自分は精霊だ。だが、誰かを傷つけたいとは思っていない。しかし、何度も来るなら何度も追い払うとは思っている。記憶もない宛もないのだからどうしようも無いのだ。
「……それ以上に食住どうすればいいんだろう」
途方に暮れる。焔華はある意味危機に陥って居たのだ。住宅街の中にある公園のベンチに座りながらどうしたものかと考える。
「しばらくは野宿かなぁ……まぁ何とかなるかな?」
考えても仕方ないと思い公園のベンチから立ち上がり、再び住宅街を歩く。見渡しながら散歩気分で歩いていた。天気も良いし風もそこそこ気持ちいときた。
「ふぅ、なんか気分が軽い……スッキリするね」
誰に言うでもなく呟くように言葉を漏らす。そんな時、曲がり角で人とぶつかる。不意にぶつかったというのもあり、互いに尻もちを着いてしまう。
「あイタタタ……大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫。こっちも悪かった……」
ぶつかったのは学生服を着ている男子学生だ。やや中性的な顔立ちの少年だ。
焔華はすぐに立ち上がり、手を差し出す。少年はぼうっとして手を取ろうとしない。
「……本当に大丈夫?」
「え、ああ。ありがとう」
少年は焔華の手を取り立ち上がる。焔華はどこも怪我してなさそう少年を見て胸を撫で下ろす。
「それじゃあね!」
焔華はそう言うとまた歩き出す。
「お、おう!」
少年もつられて返事をするが、違和感を感じていた。どうしてそこまで目を惹かれたのか、不思議な感覚を感じていた。
一方の焔華は……。
「はい、お婆さん!」
「ありがとうね、お嬢ちゃん」
「いえいえ、当然のことをしたまでです!」
人助けをしていた。荷物を重たそうにしているお婆さんに出会い、見過ごすことが出来ず荷物を代わりに持ち、お婆さんの手を握り階段を上がり、お婆さんの家の前まで運んでいたのであった。
「それじゃあまた何処かで!」
焔華は手を振り別れを告げて散策を続ける。というより、今現在は今日どこで寝るかというのを考えているというものだ。
「うーん、どうしよう。人気のないところに行くしかないかな……」
足は森の方に向き、森の中に入って行く。森にはもう使われなくなったであろう廃屋が存在していた。近寄り難い雰囲気があるのが好都合と思えた。
「とりあえず、一夜ここで過ごそうかな」
廃屋に入り適当なところに体を預け目を瞑る。意識はあるが、目を瞑って寝れるようにするしかない。不意に、眠気が強まり休眠状態なる。
どれほどの時間が経ったか、焔華は目覚める。目が覚めると立っていて森に居た。
「あれ?廃屋で寝たはずなのに…」
廃屋ではなく森の入口付近である。クレーターも出来ていない。
「クレーターが出来ていない……。何か条件あるのかな?」
自身の姿を確認すると霊装姿であった。このまま街に出ると目立つと判断し、この間と同じ服に変えて、街の方から
ウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ―――――
けたたましい警報音が鳴り響いた。ただ事じゃないと言うのは分かる。それと同時に霊力のを感じ取る。自分と似た存在が街に来ようとしているのだと。
「もし、私と似たようなことになれば……急がないと!」
見過ごす訳には行かない。焔華はそう思った。眼前の光景は爆音と景色が変わり、その場所にはクレーターが出来上がっていた。焔華は拳を握りながら走り出し飛び出す。
「来て、《
天使の名を叫び一つの光弾となり飛ぶ。
――――――――――――
五河士道は村雨令音と共に<フラクシナス>に乗り込んでいた。空間震による精霊の現界、そしてその精霊を取り巻く現状を見る為に。五河士道には精霊の力を封印する能力があり、その力で夜刀神十香の精霊の力を封印し日常生活を共におくっている。十香は士道が初めて助けた精霊だ。
「来たわね二人とも。もうすぐ精霊が出現するわ。令音も用意をお願い」
<フラクシナス>の艦長で、士道の妹・琴里は指示を出す。令音は小さく頷き、コンソールの前に座り込む。
「さて、あまり時間をあげれなくて悪いのだけれど。腹は決まったのかしら、士道」
「……っ」
息を詰まらせる士道。琴里はふと思い出したように言う
「そうだ、士道、精霊が来るまで時間があるから今のうちに二日前のことを話すわ」
士道はあっけに取られる。唐突に話題が変わるのだから驚くのも無理はない。琴里はお構い無しに続ける。
「二日前、新種の精霊が確認されたわ」
モニターにはその新しい精霊が映し出される。その姿は肩まで伸びた金髪に赤い瞳の少女が映し出された。
「これが新しい精霊よ、識別名は<フレイ>と命名されてるわ」
「知ってる……。俺、あの子と会ったことが、ある」
「なんですって?何かされなかった?」
「いや、住宅街でぶつかったくらいかな……」
その言葉を聞いて琴里は続ける。
「いい?あの精霊自体は恐らくそんなに攻撃的じゃないと思うわ。でも、気をつけるべきよ」
琴里は映像を変えるように指示した。そこに映し出されたのは、迫り来るミサイルを光弾で落としたり、地面を融解させるほどの炎の壁を作り出し防御したり。そして、目では追い切れない速度でASTの装備を全て壊してどこかに行く姿が見えた。それを見終えたタイミングでけたたましいサイレンの音が鳴り響く。
「非常に強い霊波反応を確認!来ます!」
「オーケイ。メインモニタを、出現する予測地点の映像に切り替えてちょうだい」
メインモニタに映し出されるのは空間震の映像。空間震が終わる頃にはすり鉢状に削り取られた跡のようなものしか残らなかった。そこにあった店や電柱は勿論、道路すらも無くなっていた。
そのさまを見た士道は十香と初めて会った事を連想する。空間震が起こるところを見た、爆発する瞬間を目撃したのも初めてだ。
「でも今回の爆発は小規模ね」
「僥倖――と言いたいところですが<ハーミット>ならばこんなもんでしょう」
「精霊の中でも大人しいタイプだしね」
空間震は起こっているが、今回の規模は他のと比べると比較的軽微なものなのだ。それからも事態は動き続ける。<ハーミット>や<フレイ>が精霊に名付けられたコードネームと言う説明を受けた、そして士道が驚いたのはクレーターの中心に確認した小さな少女の姿に。理由は、その少女の姿に見覚えがあったからだ。しかし、その時は空間震が起こっていなかった。
「俺、あの子にもあったことがある」
「……一体いつの話よ?」
「つい昨日だ……っ、学校から帰る途中に急に雨が降ってきて」
記憶を探りながら、簡潔に出来事を話す士道。それを聞いた琴里は艦橋下段のクルーに指示を出す。
「昨日の
送られたデータを手元の画面で確認し、苛立たしげに頭をかき
「……数値の乱れはないわね。十香の時と同じケースか。……士道、なんで昨日や二日前のこと言わなかったの?」
「無茶言うなよ。会った時に精霊だと思わなかったんだ……!」
士道が叫ぶのと同時に<フラクシナス>艦橋に設えられていたスピーカーからけたたましい音が響く
「なんだ、一体――」
「精霊が現れたんだもの。仕事を始めるのは私たちだけじゃあないでしょうね」
「AST……か」
士道の言葉に頷く琴里。画面では<ハーミット>と呼ばれる精霊がいた場所は煙が巻いていた。攻撃されたと言うのはそれだけでわかる。その周囲には機会の鎧を纏う人間が数名浮遊していた。
<ハーミット>は煙から飛び出す。彼女はパペットを掲げるような格好で宙を舞う。AST隊員たちの間を抜けていくが、AST隊員たちはすぐにそれに反応すると、一斉に<ハーミット>を追跡した。そしてそのまま、身体中に装着している武器から、凄まじい量の弾薬を発射する。
「……っ!危ない!」
反射的に叫ぶ士道。しかし、画面越しの言葉は届くことは無い。AST隊員の放った無数のミサイルや弾丸は無慈悲に<ハーミット>に迫る。
しかし、その叫びに応えるように空から極光が<ハーミット>を守るように、迫り来るミサイルと弾丸を消滅させる。そして、それを放った張本人が、<ハーミット>とAST隊員たちの間に割って入る。金髪に赤い瞳、右手には紅い剣、左手には上下に矛先が存在する光の槍を持つ精霊
「あの子は!」
「まさか、このタイミングで姿を現すとはね<フレイ>……!」
そう、彼女がおなじ境遇の少女を守るべく姿を現した。
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