「気をつけろ!相手は<フレイ>だ!油断すると落とされるぞ!」
ASTに緊張が走る。今回現れたのは大人しい<ハーミット>。それの殲滅に趣いたASTだが、その<ハーミット>を守るように<フレイ>が姿を現した。二日前にその姿を確認された新しい精霊。対峙した隊員は全員無事だったが、装備を一瞬で全て破壊されたり、地面を融解させるほどの熱を持った炎を出したとか報告に上がっていた。必然的に危険度は高く設定されていた。<フレイ>は炎の様な霊力を纏い空中に立つ。
「っ…あっ……あれは……!」
鳶一折紙の脳裏には5年前の光景が思い出される。燃える街並みの事をいやでも連想してしまった。それを引き起こしたのが<イフリート>とされているが。それでも、目の前の炎を操る精霊を目の前にして冷静ではいられなかった。
「大丈夫だよね?さあここから早く逃げようか!」
焔華は焔華で<ハーミット>の方を見て笑顔で言う。
『ありがとうねお姉さん!よしのんのこと守ってもらっちゃってー』
パペットを器用に動かしお礼を言ってくる。
「ううん、礼を言われる程じゃないよ!とりあえず行こう!<
右手の【
「<
空中から光の雨を降らしミサイルや弾薬を全て破壊し、その隙にまた逃げる。しかし、その攻撃は囮であり本命は
「はああああああ!!!」
正面に回っていた鳶一折紙だ。今焔華は背後のミサイルを迎撃した為、背中を見せている。絶好の機会だ。そんな機会を逃してたまるかと折紙は切りかかる。しかし、
「おっと!切られる訳には行かないよ!せいっ!」
察知した焔華は左手の槍でその斬撃を防ぎ、振り向きざまに右足で折紙に蹴りを入れて距離をとり、逃走を再開する。
「外なら遠慮なく撃ってくるよね。そうなれば……」
焔華は飛行しながらどこかに逃げようと考えていた。そしてあれだけのものなら空中戦をメインにしているなら屋内の方がいいと考えた。
「なら、あそこがいいかも、しっかりつかまっててよ!!」
そして商店街の先のデパートが身を隠すのに向いていると思い、飛び込むことに決め、ガラスを突き破り中に入る。
デパートの中で着陸し、よしのんの手を離して天使を解除する。
「とりあえず、しばらくは大丈夫かな」
『いやー本当にありがとうね。どうやら君もよしのんと同じ存在みたいだね』
よしのんの口調は明るく陽気と言えるものだった。
「見たいだね。とりあえず自己紹介と行こうか?私は焔華、天輝焔華。焔華って呼んで」
『自己紹介ありがとう!よしのんはよしのんって言うんだよ!可愛いっしょ?可愛いっしょ?』
「うん、いい名前だねよしのん」
自己紹介を済ませ、デパートの中を歩く。話を聞けば何時もこうして時間を使い消えるのを待ったりしているとの事だった。
『でも、初めてだよ。こっちに来ては、攻撃ばっかりされるしね。話なんて通じないしね』
「そう……だね。ただ一方的に攻撃してくるもんね。少しくらい話してくれてもねー」
と言う焔華だが真っ先にとった行動が、無力化という時点でどっちもどっちと言われてもだろう。
『焔華ちゃんはどうしてよしのんを助けに来たの?』
よしのんは不思議そうに聞いてくる。焔華は真っ直ぐ見て
「私と同じような存在が出てきた時、あの人たちに攻撃されると思ったら助けないとって思ってね。それで助けに来たかな」
放っては置けなかった。見捨てることなんて出来なかったと言う。自分も彼女達の前に出れば攻撃されるのは分かっていた。それでもお構い無しに出てきたと言うのだ。その時、デパートの中に誰かが入ってくるのを感じ取った。
そして足音が聞こえてくる。焔華は警戒する、先程の人達が痺れを切らしたのか強硬手段に出たと思ったからだ。しかし、その人物はいつか住宅街の角でぶつかった少年だった。
―――――――――
「君は角でぶつかったときの……!」
『ぉおやぁ?誰かと思ったら、ラッキースケベのおにーさんじゃない』
士道は<ハーミット>と<フレイ>が逃げ込んだデパートに入り、琴里の指示で二人がいるポイントまで来て出会えたのだ。<ハーミット>はパペットが器用にぽん、と手を打ち、<フレイ>は首を傾げながら士道を見ている。すぐに、右耳のインカムから琴里の『待ちなさい』の声が聞こえてくる。
<ハーミット>と<フレイ>の言葉のすぐあと
① 「ああ、久しぶり。元気だったかい?」と素直に挨拶する。
②「ラッキースケベってなんだラッキースケベって!」軽快なつっこみを入れる。
③「ふ……っ、知らないね。私は、通りすがりの風来坊さ」ハードボイルドに決める。
と三種類の選択肢がでてきた。そしてそれらを選ぶのは<フラクシナス>に居るメンバー達である。そして最終は艦長の琴里である。
「総員、選択開始!」
琴里の号令でクルー達が一斉に手元のボタンを押す。その結果は琴里の手元のディスプレイに映し出された。結果は全て同数である。
様々な意見が出る。『ギャルゲーの主人公的なツッコミがいい!』とか『相手の性格が分からない以上安全に①が良い」とか『今までのデータから<ハーミット>が人間にほとんど攻撃して来ないから③に勝負に出るべきだと』
その意見に対して
「しかし、<ハーミット>だけではなく<フレイ>も居ます!彼女に関するデータは殆どありませんし未知数です!危険です!」
もっともなこと言っている。しかし投票は同数である。三方向からの意見に耳を傾けて、琴里はあごに手を当てて唸り、そして士道に指示を出す
『――――士道、③よ』
「……っ、なんだそりゃ……」
耳に届いた琴里の行動指示。その指示が突飛なものだった。
『うぅん?どったの?』
「どうか……した?」
二人は首を傾げながら士道の方を見ている。士道は覚悟を決めて、近くに陳列されていた椅子に足をかけ
「ふ……っ、そんな奴のことは知らないね。私は、通りすがりの風来坊さ……」
きざったらしく言い、髪をかきあげて見せた。
「………???」
『………』
<フレイ>は理解出来ていない風に首を傾げ<ハーミット>のパペットはポカンと口を開けたまま、黙った。なんとも言い難い空気になる。そんな空気に耐えかねた士道は
「……お、おい、琴里。どうしてくれるんだこの空気……」
士道が小声で言った瞬間
『ぷ……っ、は、ぁはははははっ!』
パペットは頭を揺らし笑い出した。その様子に<フレイ>も驚いていた。
『なぁーにぃ、おにーさん意外とひょうきん者?あっはは、面白いけど、今どきそれはないわー』
「は、はは……お気に召したら何よりだ」
(緊張を解すために言ったのかな?)
<フレイ>はそう考えながら士道の観察を続ける。
『やー、しかしラッキースケベのおにーさん。珍しいところで会うねー。ぁっはっは、おにーさんみたいなのは歓迎よー?こっちに来たら、すーぐにチクチク攻撃してくるんだよねぇー。今回は焔華ちゃんが助けてくれたからそんなことも無かったんだけどねー』
<ハーミット>が話す言葉の中に気になる単語が出てきた。士道はそれを聞く
「なあ……よしのん、焔華、って?」
士道が問うとパペットが驚きを表現するように、口を大きく開けた。
『ああっ、なんてみすていくっ!よしのんともあろう者が、自己紹介を忘れるだなんてっ!よしのんはよしのんの名前!可愛いでしょ?可愛いっしょ?そして、焔華ちゃんは』
パペットは<フレイ>の方に手を向ける。<フレイ>は頷き
「私の名前は天輝焔華、よろしくね。君の名前は?」
「俺の名前は五河士道だ」
「いい名前だね、士道君」
『士道くんねー。かっこいい名前じゃないの。ま、よしのんには勝てないけどねぇー』
「お、おう……ありがとう」
自己紹介を終えて雰囲気はいい感じではある。しかし、この後、パペットに着いてよしのんの地雷を踏み抜いて士道は誤魔化すことになった。しかし何とか取り直した。
『間を空けないの。とにかく、精霊に逃げられないようにして』
「ど、どうやって……」
士道は琴里の指示を聞く。焔華は外を少し警戒していた。入ってから時間は少し経っているが入ってくるの様子が無いのが不思議だった。
(入って来ないなら、それでいいんだけどね。流石にこんな所で戦えば、この建物が壊れてしまうしね)
「じ、時間があったらちょっとデートしよう」
「……え?」
士道の言葉に思考が止まる焔華。今この状況で出てくると思わなかった言葉だ。だけど、焔華はこの街のことを知らないからこのデパートでも知る機会になるだろうとは思った。
『ほっほ~!いいねー。見かけによらず大胆によしのんと焔華ちゃんを誘ってくれるじゃーないの。うふん、もちろんよしのんはおーけんよん。ていうか、ようやくまともに話せる人その二人目に出会えたんだし、よしのんからもお願いしたいくらいだよー。焔華ちゃんは?』
「私もいいよ。私も人とあんまり話すこと無かったし新鮮かな」
「そ、そうか……」
『……ま、結果オーライにしておいてあげる』
そして、士道、よしのん、焔華の三人でデパートの中を歩き出す。
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