無職転生 -今度こそ本気だす-   作:無気力な卵

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反復練習と今後の指針

8ヵ月が経つ頃になると、二足歩行が可能になった。

 

高速ハイハイとママのお乳パワーのおかげだ。前世より早く二足歩行が可能になったと思うが、その辺の記憶は曖昧だ。

 

この頃になると、パウロの書斎に入って日がな一日中本の読解に入っていたはずだ。現在は本くらい余裕で読めるので、再現する必要はないと思ったが、まさか赤ん坊が外で大規模魔術をぶっ放すわけにもいかない。

 

なので、本を熱心に読むことにした。

 

 

…もちろん、あくまでもフリだ。

 

 

 

実際には人気がない時は、土魔術で人形を作りつつ、魔力量を増やしている。

 

前回は色々と失った俺だが、魔術の知識についてはそれなりに蓄えられた。それを踏まえても、魔力量を増やすために幼少期から人形作りをするのはかなり有効だ。

 

優秀な魔術師の基礎能力として重要なのは、発動と制御だ。この世界の一般的な魔術師は、詠唱する事によって発動と制御のプロセスを自動でやっている。

 

自動でやっている為に、発動のプロセスに理解が及ばず制御に関しても自由が利かない。ゆえに、この世界の魔術師は呪文詠唱スタイルが一般的で、剣士あるいは闘気を纏える戦士に比べ圧倒的に弱い。

たとえ王級の魔術師でも、闘気を纏える上級剣士には接近戦では分が悪い。詠唱に時間を要するからだ。

 

だが、無詠唱で魔術を使えるようになると状況は変わってくる。

無詠唱とは、簡単に言えば発動と制御のプロセスを手動でやることだ。要するにマニュアル操作が必要だというだけ。詠唱魔術が根強いこの世界の魔術師は、そもそもマニュアル操作の考えに至らないのだろう。

 

実際の魔術発動には、生成、サイズ設定、射出速度設定など、細かいプロセスもあるがこの辺は慣れれば問題ない。まぁ魔力の制御に関しては、一定以上の魔力量がないと習得するのも難しい側面もあるんだろう。

 

 

話がそれたが、フィギュア作りの土魔術は発動と制御を常にマニュアルで繰り返している状態だ。さらにこの精密な作業は魔力量の消費は激しい。

 

 

これは制御が難しいからだ。この作業を繰り返す事は、剣士が素振りをするようなものだ。いかに早く魔術を発動させ、いかに精密に制御するか。反復練習の縮図である。

 

つまり理論上は、最速と名高い剣神だろうがそれを上回る魔術の発動速度、闘気を上回る威力をもってすれば打倒できる。

 

 

…簡単に言ったが、そもそもそれが非常に難しい。ベースとして、無詠唱の魔術理論と圧倒的な魔力量が必要になる。

 

なぜなら、剣士は体力の許す限り剣を振るうことができるが、魔力は基本的に有限だ。仮に無詠唱で魔術を使えるようになっても長時間魔術を行使できない。

 

前回の俺は持ち前の魔力量を生かしてかなりの発動速度と威力にまで昇華したが、それでも神を冠する剣士には及ばなかっただろう。

 

 

…長くなったが、その為の人形作りだ。

 

こうして魔力量を増やしながら、シコシコと人形作りをする。それが剣士の素振りに相当するなら、時間と魔力の許す限りやっていくだけだ。 

 

 

 

 

 

---

 

 

 

さて、どうして俺がこの世界でまたルーデウス・グレイラットとして存在しているかについて考えてみよう。

 

前々回は、元ニート兼引き籠りの日本人。

 

前回はルーデウス・グレイラットとして転生した。

 

今回もルーデウス・グレイラットとして存在しているが、これは転生と呼べるのだろうか?

 

ラノベ的な知識から言えば、死に戻りに近い現象に感じる。とはいえ、確認するために死んで試してみる度胸もない。

 

むしろこの根拠のない推測は、おそらく間違っているだろう。

 

 

 

確証はもちろんないが、気になる点はある。それは俺が過去転移魔術、過去へと跳んだ事に起因する。

 

…そう考えるのが妥当だろう。

 

俺は過去の自分を起点に魔術を使った。結局は失敗に終わったが、失敗そのものは考慮していた。

 

むしろ過去の自分に憑依してしまうとか。

 

時空の狭間のような空間に閉じ込められるとか。

 

あるいはそこまで過去に飛べずに失敗するケースも考えられた。それでも過去の自分に会う事はできた。

 

なら、魔力量が足らなかっただけである程度の領域まで、過去転移魔術を完成させていたのかもしれない。

 

だが、すぐに死んだので、その結果起こる事象や因果関係がわかるはずもなく、迂闊に使える魔術ではない。

 

 

…手掛かりがないわけではない。

 

この時間跳躍に至ったのは、古代龍族の遺跡を調査して発見した魔術理論のおかげだ。

 

甲龍王ペルギウス・ドーラは言っていた。

 

龍神オルステッドであれば、なんらかの秘術でヒトガミに辿り付けるのではないかと。

 

オルステッド自身も、ヒトガミには尋常ならざる殺意を持っていた。

 

名前を出すだけで、殺されかけたのだ。

 

まあ、今の俺なら気持ちはわかる。

 

ヒトガミは許せねえ存在だ。

 

結局、オルステッドとは一度しか会えなかったが…。あの時、アスラ王国へ向かう途中で、赤竜の下顎にて会ったことは未だに覚えている。

 

 

俺とエリスとルイジェルド。

 

オルステッドと七星静香。

 

 

ヒトガミの名前を出した途端にフルボッコにされたが、注目するのはそこではない。

 

 

オルステッドが初対面のはずのエリスやルイジェルトを知っていた事。俺を知らなかった事だ。対してこちら側は俺はもちろん、エリスとルイジェルドさえオルステッドを知らなかった事。

 

そして、古代龍族の魔術理論を基にした過去転移魔術。足りないピースが少しずつ嵌ってく。

 

…龍族の秘術がいくつかあるのかもしれないが、その中に過去へと至るような秘術もあるのだろう。

 

その秘術を使ってオルステッドはヒトガミと戦っている。

 

今の俺のようにループ現象が起きているなら、初対面のエリスやルイジェルドを一方的に知っていても不思議ではない。

 

そしてまた俺が、ルーデウス・グレイラットとして存在している。

 

その理由についても、龍族の秘術を通じて知っている可能性がある。

 

 

 

最もヒトガミに詳しく、最もヒトガミを恨んでいる存在。

 

利害は一致している。

 

オルステッドはヒトガミを恨んでいた。その上でヒトガミと戦っている。

 

ヒトガミはオルステッドの存在を感知できないらしい。本当かどうかは定かではないが、ヒトガミ曰く呪いの中にそのようなモノがあると言っていた。

 

なぜ前回の俺が、ヒトガミに人生を狂わされたのか?

 

ヒトガミの目的はわからない。しかし、単なる遊び半分で俺を陥れるには手が込み過ぎている。

 

この世界で最強の存在であるオルステッド。その呪いが効かない俺の存在。互いの存在は一見して無関係のようにも見える。オルステッドは自身の呪いの影響で、誰かを仲間にしたり協力を募る事もままならないのだろう。

 

でも、もし呪いの利かない俺がオルステッドに協力したら?

 

オルステッドと共にヒトガミ打倒に動いたとしたら?

 

そんな未来を恐れて、ヒトガミが前回の俺を狙っていたとすれば?

 

逆恨みも甚だしいが、俺を狙う理由にはなる。

 

オルステッドに会う事が、ヒトガミを倒すことに繋がる。少なくても、ヒトガミにとって起こって欲しくない未来に繋がる。

 

ならば、先ずはそこを目指そう。

 

そして、龍族の秘宝5つで無の世界へと至るか…。

 

手掛かりを得るために、最も重要なミッションになりそうだ。

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