無職転生 -今度こそ本気だす-   作:無気力な卵

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龍神ホイホイ大作戦

神とはなんだろう?と、思った。

 

ロキシー?そんな当たり前のことを聞かないで欲しい。俺がルーデウス・グレイラットである限り、ロキシーが神なのはこの世界の意思だ。この世のことわりだ。

 

今回はそうではない。この世界における一般的な神とはなんだろうか?

 

--10万年以上前--

 

世界は7つに分かれていて、それぞれ神が世界を支配していた。

 

これを太古の神の時代、と呼ぶ。

 

 

7つの世界と神はそれぞれ、

 

人の世界、人神。

 

魔の世界、魔神。

 

龍の世界、龍神。

 

獣の世界、獣神。

 

海の世界、海神。

 

天の世界、天神。

 

無の世界、無神。

 

当然だが、こんな昔話の神を正確に覚えている人物は存在しないだろう。

 

まあ、そうだな。別にイメージで良いんだ。神様っぽい感じだ。なんならイケメンがいい。神々しい感じのイケメンだ。ついでに翼を付けよう。こういうなんちゃって感のある神様の方が受け入れやすいだろう。

 

土魔術の魔力を高める。硬い石だ。地面に叩きつけても傷つかない硬さ。想像力を膨らませて、イケメン像をイメージする。そして羽を付けて完成だ。

 

この硬さなら余程、それこそ闘気を纏うレベルの人間でなければ砕けないだろう。

 

これをヒトガミ像と名付けて、行商人に売ろうと思う。

 

……正直、俺だってこんなことはしたくない。なんでヒトガミをわざわざイケメンにしなきゃならねーんだよ。ふざけんなよ、マジで。

 

……これは賭けだ。オルステッドを釣るための。現状、俺はブエナ村から出れないし、出れたとしてもこの広い大陸から1人の人物を探すなんて不可能に近い。そして何年も考えたが、この方法しか思いつかなかった。苦肉の策だ。

 

もし、オルステッドがこれを見つけたとしてどうだろうか?ヒトガミ像なんてふざけた名前を付けて大丈夫だろうか?しかも、こんなイケメンで庶民の人気になりそうな見た目だ。

 

オルステッドはヒトガミに尋常じゃない殺意を持っていた。明らかに喧嘩を売った行為だ。

 

……怖い。血眼になって製作者を探した挙句、見つかった瞬間に心臓を一突きにされかねない。想像しただけで、足が震える。

 

だが、やらねばなるまい。男にはやらねばならない時があると言う。きっといまがその時なんだろう。……本当にそうか?…不安だ。

 

 

そして俺はブエナ村にいる行商人にあたりを付けた。

 

「ほぉー。コイツはすげえな。これならそうだな坊主、金貨5枚でどうだ?」

 

アスラ金貨5枚か。この辺りにくる行商人じゃ、あんまり価値もわからなくても不思議じゃないが、それでも舐められてるな。俺は大げさに溜息を吐いた。

 

「はぁーー。いいですかおじさん。これはさる炭鉱族が彫刻した像でヒトガミ像と言います。私は仲介人を頼まれたに過ぎません。特殊な石を使い叩いても砕けないそんな品です。とある小国の王子に売れば、最低でも金貨100枚はくだらないでしょう」

 

…オルステッドにビビッて炭鉱族って言ってるわけじゃいよ?ないったらない。

 

「お、おう、そうだったのか…。だが、すまねぇな坊主。金貨100枚なんて手持ちがないんだ。その値段では買い取れないぜ」

 

それも想定内だ。こんな田舎で高額の取引なんて滅多にないだろう。

 

「いえ、今回はテスト販売も兼ねているので、そうですね…。魔力結晶をいくつか頂けますか?それと交換ということでどうでしょうか?」

 

魔力結晶を指定した。

 

「そいつはかまわねぇが、魔力結晶はあんまり大きいのはないし、これじゃあ金貨5枚にもなりゃしないぜ。いいのか?」

 

「はい。その代わりもし、高値で売れたらまた買い取って欲しいです。定期的に少量を、できれば各地に流して頂けると助かります」

 

「よし、いいだろう。高値で売れたら今度は色を付けて買い取ってやるぜ」

 

こうして各地にヒトガミ像をばら撒く作戦を開始した。

 

 

---

 

 

 

5歳になった。

 

誕生日パーティーが開かれた。

 

パウロがお祝いに剣を送ってくれた。

 

二本だ。

 

「男は心の中に一本の剣を持っておかねばならん、大切な者を守るには…」

 

はい。父さま。その剣でこれから大切なものを守るために、オルステッドと戦うことになるかもしれません。勝てるのでしょうか?

 

ゼニスからは植物辞典を、ロキシーからは小さな杖を貰った。

 

「先日作成したものです。ルディは最初から魔術を使っていたため失念していましたが、師匠は初級魔術が使える弟子に杖を作るものでした。本来ならルディのような魔術師に、このような杖はどうかと思ったのですが、体が小さいうちだけでも持っていてください」

 

…ロキシーはなんとも言えない表情をしてる。

 

師匠って言葉には、今回も少なからず思うところがあるのだろうか。いまはお互い教えあうような間柄だ。お互いが師匠でお互いが生徒。一応形式上ということなんだろう。

 

「はい。先生ありがとうございます」

 

そうだな。俺もロキシーに渡すものを考えておこう。

 

そしてリーリャからも

 

「ルーデウスぼっちゃま。おめでとうございます」

 

と、礼装用のネクタイを頂いた。いつか機会があればお使いくださいと。

 

前回にはなかったことだ。素直に嬉しい。

 

 

---

 

翌日から、本格的な剣術の鍛錬が開始された。

 

剣術については、以前から悩んでいるうちにこの日が来てしまった感じだ。

 

結局、俺は前回と同じく剣神流、水神流をパウロから教わることにした。

 

子供で体が出来上がっていないが、戦闘技術的にはある程度はある。剣神流にして中級程度だがな。

 

「いいぞルディ。剣もなかなかセンスあるじゃないか。こりゃ楽しみだな…」

 

などと期待しているみたいだが、俺の剣術の才能限界値は低い。闘気を纏えない以上、恐らくどの流派を学んでも頑張って中級どまり。俺の戦闘スタイルに組み込んで有効な手段とは言えないだろう。下手の横好きになりかねない。期待に応えられない息子で申し訳ない。

 

「………やはり、剣術は嫌か?」

 

考え込んでいると、前回と同じようにパウロが不安そうな顔で聞いてくる。

 

……そりゃそうだよな、ただでさえ前回より魔術に関してはロキシーと精力的に動いている。パウロからすれば、息子は魔術に向いていて複雑な気持ちなのかもしれない。

 

「そうですね…。魔術のように上達するのか不安に思ってしまっただけです。でも、父さまと剣術の鍛錬をするのは好きです」

 

そう、俺は鍛錬するのが嫌なわけではない。むしろやりたい。ただ期待に応えられないというのは、なんとも複雑な心境だ。

 

「なに、お前はまだ剣を握ったばかりじゃねぇか。センスあると思うぜ。よし、打ち込んでこいっ!」

 

まあ、いまはこれでいいか。

 

それよりもパウロの話をしようか。

 

まず、剣の流派は大きく3つ。

 

剣神流…速さに重点を置いた剣技。「斬られる前に斬ればいいじゃない」というエリスの顔がちらつく。兎に角、短気や攻撃的な性格が多い印象で一撃で相手絶対コロスマンだ。個人的には一番敵に回したくない流派だ。前回では幾度となくエリスにボコられたせいか、体が子供なのもあって普通に怖い。日本でいう二の太刀要らずみたいな感じだ。

 

水神流…今度は逆に重さに重点を置き、防御、カウンターを主体としている。マスタークラスになると、なにをしてもこちらの攻撃が通りにくく、その上で相手を挑発してくる。まるで、短気な剣神流の剣士を倒すために編み出されたかのようだ。礼儀作法にも通してるみたいだが、性格が悪い印象だ。

 

北神流…戦闘技術に特化した集団。北神流の教えに決まったモノはないのか、流派自体が細分化していて色々な技や戦闘スタイルがある。剣をぶん投げ、毒を使ってきたり、人質を取ったり、そんなんだからまとまりがないのだろう。剣神流や水神流とは違い、何をしてくるかわからないというのが強みだ。

 

俺は剣士の才能はないが、前回の戦闘経験で特に剣士には苦戦をしたので、対処法や各流派の動きは研究した。

 

剣神流。水神流。北神流。これら全てをかじった上級剣士。それがパウロだ。

 

剣神流を好み、ヒットアンドアウェイからの水神流で防御、カウンター攻撃。この一連の流れで対処が難しいと判断すると北神流の技を使う。バランスの良い剣術に長年の冒険者生活で得た戦闘センス。強さは一概に等級で表せない。仮にパウロが一つ上の等級と戦ったらどうなるかを予測すると、剣聖なら負ける。水聖なら互角。北聖なら勝てる。そう分析した。

 

剣聖。これは剣聖以上で習得する光の太刀がやはり厄介で、これをかいくぐるのは難しいと判断した。

 

水聖。パウロの戦闘センスを加味すれば互いに有効打になりにくい。ゆえに互角。

 

北聖。相手の戦闘センスも高いが、他の剣術の知識が多いパウロがやや有利。

 

合ってるかはわからない。なにが言いたいのかと問われれば、パウロは恐らく北神流が向いているということだ。本人は嫌っているようだがね。北聖になる条件は知らないが、パウロは俺からみて北聖並みだった。まず、本人も気づいてないのかもしれないが、北神流の技を奥の手のように使う傾向がある。これはピンチの時に命を預けるってことだ。切り札だ。そして戦闘経験と各流派を学んだ知識。伸びしろが高そうなのは北神流だろう。

 

まあ、強くなるだけが全てではないからいいけどね。俺も剣術に関してはそうだし。

 

「父さまは色々な技が使えてカッコイイです。冒険者生活も長いと母さまから聞きました。もしかしたら北神流が似合うのではないでしょうか?」

 

「そうか?北神流?あれは剣術じゃねぇぞ。剣を使っているだけだ」

 

…そうそう考えは変わらないだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

………とか思ってたら、影でこっそり北神流の技を使って鍛錬してるパウロをみた。

 

 

---

 

 

 

そしてこの日がやってきた。卒業の日だ。

 

「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ!我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし、矮小なる存在に力を見せつけよ!神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ!ああ、雨よ! 全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ!キュムロニンバス!」

 

俺は寸分狂わずに詠唱した。ちなみに、カラヴァッジョはしっかりと落雷から守り通した。

 

「さすがですねルディ。おめでとうございます。これであなたは水聖級魔術師です」

 

「はい。先生ありがとうございます」

 

水もしたたるいい女だった。だが、その表情に笑顔はない。真剣そのもの。

 

そう今日は彼女にとっても卒業試験。

 

「ではいきます。見ていてください」

 

ロキシーはすっと杖を掲げる。目を閉じて一旦大きく深呼吸した。パチリと目が開く。

 

詠唱はない。水の弾が浮き上がる。水弾-ウォーターボール‐

 

サイズ、速度、威力、申し分ない。

 

むしろ初めてロキシーが見せた時より、やや威力が増している。

 

さらに続く、氷柱-アイスピラー-中級水魔術。太い氷の柱が発生した。

 

ブリザードストーム。上級水魔法。ここが最大の見せ場だ。まだ成功していない。

 

再度、大きく息を吐いて、さらに集中力を研ぎ澄ませるロキシー。

 

なにもない草原でぬかるんだ地面。あたり一帯を広範囲に降り注ぐ氷の槍。

 

よっし、完璧だ。

 

思わず、拳を強く握る。成功だ。ロキシーが成功させた。自分のことのように嬉しい。

 

俺は知っている。彼女の努力を。2年だ。

 

晴れの日も、雨の日も。ひたむきに頑張っていた。どこかの頭のおかしいアークウィザードのようにぶっ倒れるまで。

 

魔力がなくなって倒れたロキシーを介抱するのが、日々のささやかな幸せだった。そんな日も終わる。一度、無詠唱を習得すればあとは俺に手伝える事はない。

 

この小さな少女を讃えよう。

 

「おめでとうございますロキシー。これであなたは無詠唱魔術師です」

 

「っはい!ありがとうございます。あなたのおかげです」

 

瞬間、俺は目を見張った。ロキシーが深く頭を下げていた。

 

「先生!?ど、どうしたんですか?頭をあげてください」

 

俺は激しく動揺した。

 

ぽつりと、彼女は小さくつぶやく。

 

「ルディ、簡単なことじゃないんですよ…。無詠唱するって…」

 

……簡単にできてしまった俺にかける言葉なんてなかった。…かける資格もない。

 

少女のような見た目でもそれなりに長い月日を歩んでる彼女には、なにか想うところがあるのだろうか。前回も彼女はあまり自分の過去を話すようなことはなかった。

 

一向に頭を上げようとしないロキシー。ふと小刻みに肩を震わせていた。

 

逡巡したのち、おもむろに彼女に近づくと用意していた首飾りをかけたのだった。

 

「えと、ルディこれは?」

 

やっと顔を上げてくれた。

 

「先生から杖を頂いたときに僕もなにか渡そうって思いまして。大したものではないんですが卒業祝いです」

 

「っふふ。これで私も無詠唱の魔術師ですか。なんだか感慨深いものですね。ありがとうございますルディ」

 

笑ってくれた。頬を伝う一筋の滴がなんだったのかはわからない。

 

今回、彼女との少し変わった関係性が今後どうなるのかもわからない。

 

ふと、空を見上げれば雲の隙間から見える青空。わずかにかかる虹色の橋。どこまでも広がる草原に太陽の光が差し込む。

 

悪い気分ではなかった。

 

 

 

---

 

 

 

 

 

翌日、両親との別れを済ませたロキシーはスッキリとした表情だった。

 

なんでも、自分の力を試してみたいとか。即断即決は彼女のいいところだけど、ロキシーはドジっ子だからな…。

 

本当にシーローン王国に向かうのだろうか?間違ってレッドドラゴンに挑んだりしないだろうか?…心配だ。

 

「私からも卒業祝いです。すいません、ルディのように用意する時間が無かったので、これで我慢してください」

 

ミグルド族のお守りだ。本当は俺もこのタイミングで首飾りを渡そうと思ってたんだがまあいい。一応、マジックアイテムだ。とはいえ、小さな魔力結晶で作った初級の治癒魔術が発動するだけ。これもお守りみたいなもんだ。

 

「ありがとうございます先生」

 

「ルディ、お世話になりました。また、いつか会いましょう」

 

小さく笑みを浮かべてそれだけ伝えると、ロキシーは実にあっさりと旅立つのだった。

 

俺はその小さな少女が、見えなくなるまでずっと眺めていた。

 

 




(追記)

前回の次回予告に登場したシルフィいないけどなんで?
・出会い=名も知らない行商人のおっさんです。

ルーデウスなのにパンツ盗まないのなんで?
・本作のルーデウスはロキシー人形に神を宿せるというとんでも設定です。
とくに意味は今のところありません。
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