出久が『完璧の塔』にやってきてから二週間、出久は『ストレッチ』をようやくこなせるようになった。とは言っても今の筋力では本当にこなすことが精一杯で体力もほとんど使いきっているような状態だった。
肩で息をしながらも、やっとできたことで達成感を持ち床に寝そべっている少年の体は彼も気づかないうちに相当鍛えられたということはゆるぎない事実としてそこにあった。
「はあっ、はあっ、これ本当に準備運動なんですか……?」
「そうだ。これからは修業をする前に毎回行う基礎のストレッチ、今の君にはきついかもしれないがいずれは慣れてくるさ」
それに、とペインマンが一つ言葉をはさむ。
「次から修業が始まるが、
「う、うへぇ…………がんばります」
「テハハハ!その意気だ」
疲れたと弱音を吐かずよたよたと歩き次のステップに行くために新たなる階層へ行くために階段を登っていく。その階段も塔の大きさが非常に大きいため段数も非常に多い。ここを上り下りするだけで相当足腰を鍛えられるのではと思ったりする。
階段を登り切ったらまた重い扉が出久の目の前に立ちはだかる。いつも入り口で門を開けるように全身を使って押していく。
「ようやく来たか。ペインマンのやつめ、随分とゆっくりしやがったな」
そこに仁王立ちしていたのはペインマンとは比べ物にならない大男。顔にマスクをつけていて肩には鹿の角のようなものが付いた肩当てをつけている。だが着目すべきは大男の筋肉の怒張具合だろう。巨漢ということも相まって鍛え上げぬかれた筋肉が強調されておりとんでもない威圧感を放っている。
さしずめ地獄の鬼と言っても信じられるくらいの人だということは理解できた。
「おい、名前は…………デクだったか?」
「間違っちゃいないですけど、
「ふぅん、まあそんなことはどうでもいい。俺様の名は『アビスマン』、敢えて聞くが今のお前じゃ俺たちがやる特訓にはついていけないのは分かり切ってるよな?」
「…………分かってます。ペインマンさんの特訓を見てましたから」
ここ二週間、出久はただストレッチをしていただけではない。ストレッチを習得する傍らにペインマンの特訓を見ていたのだ。
彼らの特訓はすさまじいものだった。ペインマンは『個性』の特性上、身体が柔らかいはずなのにどう見ても鉄製の人形を関節技で文字通り捻りつぶしていたのだ。恐らく自身の技を磨くための特訓だろうが、それだけでなく、とある機械から高速で飛んでくるたくさんの鉄球を高速で避け続けるなど今の出久では死にかねないものもを多く行っていた。
「ふん、分かってるならいい。
「あれって、
「ここに回すもんは
回すものとはいったい何を指すのか、どう見ても大きい石臼である。しかも昔の漫画で見た奴隷とかが回してるシーンが多い用途が全く分からないやつである。
大きな鉄球や落ちたら普通に死にそうな剣山のある穴など色々と申したくなるような部屋ではあるが、そのど真ん中にある石臼が最も存在感を放っていた。
「おい、ぼさっとしてないで早くしろ!」
「は、はい!」
色々と考えていたらせかされてしまったので急いで石臼を回し始める。
「ぐぎぎぎぎ、重い!」
「それくらい早く回せ!1000回10セットだ!」
「無茶だ―!?」
「ったく、それくらいできんのか。まあいい、始めたばっかりだから100回10セットで我慢してやる。慣れてきたら回数増やすからな」
「はいぃ!」
石臼を回そうにもいつもの門よりもはるかに重く、一周するだけで1分はかかる。本来なら複数人で回すようなものを一人で回しているのだから当然と言えば当然だろう。
下手な体勢で回すと力が入らないし、うまく進むこともない。故に石臼を動かしながらどうしたら力が入るのか、負担が減って効率を上げられるのかを試していく。
ここぞとばかりに分析力を披露してブツブツと言い続けているのは割愛する。アビスマンも若干引いてた。
あのストレッチを行った後に石臼を回したのだ、さらに死ぬ気で頑張り終わった頃にはまともに立てなかった。
ヘロヘロになりながらも『完璧の塔』から帰路へと就く。そのような毎日がずっと続いていった。
毎日肉体を酷使しているが、その分だけ筋肉が付いていることを出久は実感していた。まだ半年も経たないうちに出久の肉体は見違えるほど筋肉がついており、誰の目から見ても大きく変化していることは明白だった。
そんな姿を見ている者が、学校が終わるとすぐ姿を消す出久を不審に思っている者がいない訳がない。
「デクの野郎、何やってやがんだ……」
明らかな変化を見せる幼馴染を不審としか思わない乱暴者が『
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