ここでの余談ですが前回の入試を受ける条件でガンマンとジャスティスマンに痛みを与えられるかという試練に関して、ジャスティスマンは「お前はやりすぎ」と後で叱られたことをここに記しておきます。
一体、また一体。確実にロボットを破壊しつつ点数を稼ぎながら周りを観察する。
他の受験者もロボットを己の個性を用いて順調に破壊しているようだった。
そして一つ気づいたことがある。先程からロボットの出現数が落ちてきている。
雄英高校の資金だって無限にあるわけではない。出現するロボットの上限が決まっているのだ。
それに試験である以上、ふるい落としが必要なのだから数を決めるのは当然であったんだ。
「やば、今で20点も稼げてない…………もっと戦わないと!」
ここからは平等に倒すつもりは無い。獲物の取り合いとなった今では効率に撃破することを考えなくてはならない。
さきほどからロボットの関節を破壊して丁寧に無力化していったが、やはり効率的とは言い難い。
出久にできることは出来る限りの力で叩きつけるか、関節を破壊して無力化する以外の方法がない。
既にロボットの攻撃をさばいたことで体力の消耗は無視できない。若干の焦りから無理に殴ったことで拳も僅かに傷ついて、限界こそは迎えていないが、これ以上続けると塔の住民の方々にお叱りを受ける可能性が高い。
いや、既に怪我をしてる時点で叱られるだろう。
「考えろ考えろ、何か方法があるはずだ。火事場のクソ力も使えない。体力の温存をしつつ効率的にあいつらを倒せる方法は…………」
「さっきから何ブツブツ言ってるんだアレは…………」
いつもの癖を発揮させて他の受験者をドン引きさせつつ、打開策を全力で考える。
自分の力だけで突破、という考えを一度改める。
他の受験者と協力は難しいだろう。得点の奪い合いの中で協力と言うのはいくらなんでもない。
では武器はどうだ?ダメに決まっているだろう、そこらに散らばっているロボの残骸を振り回して戦うなど言語道断、下手すると破門される可能性が高い。
「…………武器とみなさなければいいんだ。タッグマッチで相手の相方を利用しても武器の攻撃にはならない!」
そう思い立った出久の動きは風の如く速かった。
『ブッ殺!?』
「そぉれっ!」
やや小柄な1点ロボットを担ぎ上げ、そして勢いよく振り回す。
本来ならジャイアントスイングで周囲もろとも薙ぎ払っていきたいところだが、他の受験者もいるため縦振りで他ロボットを叩き潰す。
そう、これは手で振り回しているロボットを倒すついでに他ロボットも倒す方法なのだ。
終盤に差し掛かっているとはいえ一度の攻撃で約二倍の得点を稼ぐことに成功している。
この局面で失速気味だった得点を徐々に加速しながら取りつつあったが、終盤のイベントによって無理に点を取らせないようにされてしまう。
そう、0点の巨大ロボットの登場である。
「う、うわあ!無理無理無理!流石に邪魔が過ぎるって!」
「あれが0点のお邪魔ロボット…………流石にデカすぎる!」
下手な建物よりも大きさのあるロボットに、受験者達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
たった一人、出久を除いては。
「デカい、重厚、だけど遅い。攻撃範囲は広いけど遅すぎて避けるのは簡単だ」
完璧の塔に住む住民の方々と比べたら雲泥の差。迫力が図体のデカさしか無い無機物にビビるわけがなかった。
出久もトレーニングによって中学生ながら身長と体重、そして筋肉量が上がったとて敵わない人には敵わないし、そしてこんな巨大ロボットよりも小さい恐らく無機物の生命体であるシングマンの方が恐ろしいまである。
なお、これは初対面の印象でシングマンのギミックを知った後はさらに恐ろしく感じたという。
それはさておき他の受験者が逃げたためボーナスタイム突入ロボットを他の人を気にせずぶん回せるついでに他ロボットも撃破していき30点まで稼ぐことができた。
この調子なら予想されている合格点は上回れる。というか予想点よりも多く取らないと手を抜いたのかと疑われかねない。
ラストスパートを頑張ろうと足に力を込めたその時だった。
「あっ…………」
巨大なロボットの、足の着地地点に1人の女の子が居た。
そのまま足を下ろせばあの女の子は潰れる。しかし天下の雄英高校のロボが踏み潰すのか?安全装置は?危険性は?
普通なら彼女を見つけた時点でそんな思考に飲まれるだろう。
いつもなら、そうだった。
「うおおおおおおお!」
女の子がいる巨大ロボットの足の下まで全速力で走り、両手を突き上げて踏み付けから支えた。
「ぐ、ぐぐぐぐ…………」
「えっ、君…………」
「行って、早く!」
咄嗟の出来事に対応できなかっただけで、本来ならもう少し判断が早いのだろう。
「ご、ごめん。でも足捻っちゃって…………」
深刻そうに逃げたくても逃げられない女の子の言葉に顔を顰める。
女の子の個性が何なのか出久は知らないが、誰かが引っ張るもしくはロボットを退かなければ救助は難しかった。
誰かに引っ張ってもらおうとしても、既に他受験者は逃げたため巨大ロボットの周りには出久と女の子の2人しか居ない。
出久の方も巨大ロボットが現れたから終盤と判断したため消耗を無視して得点ロボットを破壊してきた
一瞬でも気を抜いたら潰される。肉体はトレーニングで時間の許す限り鍛え上げたとはいえど、出久は無個性なのだ。
「だけど、たった一つ、できるか分からないけど、手はある…………!」
あの人に言われたことを思い出す。
あの力を吐き出す3つの条件。
「己のために、身を守るために…………」
意識するだけ、たったそれだけの筈なのに疲れが溜まった腕に力が入る。
後の筋肉痛なんて考えない。自己防衛のリミッターが外れる。
それでもまだ押し返すには至らない。まだ足りないのだ。
「そして、誰かのために…………!」
二段階目の力。それを意識した瞬間に更なる力が湧き上がる。
明らかに後の体力を先取りで消耗しているが関係ない。
誰かを救うために後のことを考えるものか。
一瞬、出久の膝が折れる。それを見た女の子は踏み潰されるのでは無いかと両手を上げた。
支えるのか、それとも個性を使おうとしているのかは分からない。
「うおおっ!火事場のクソ力ぁっ!」
だが、出久の膝は折れたのではなく屈んだだけであり、巨大ロボットを押し返す全力を込めるための動作。
僅かな光を纏った出久は、あの溢れ出る力で巨大ロボットを押し返した!
「…………で、出来た。まだ二段階目だけど、僕にも!」
無個性の烙印を押され、それを突いたいじめを受けても憧れだけは止められなかった。
憧れだけで、甘ったれた自分がここまで変われた。変わることができた。
ようやくみんなと同じスタートラインに立てた気がして涙が溢れてくる。
この感動は、一生忘れないだろう。
『はい、しゅーりょー!』
「あっ」
それに水を差すかのように試験時間終了のマイクの声が響いて現実に引き戻された。
試験は、これで終わった。
出久、火事場のクソ力を習得。まだ荒削りかつ相手がロボットという事で真の力を引き出せてません。
その機会は近いうちに来ます、確実に。
ちなみに出久でも使えたならオールマイトにも使えるのではという疑問があると思いますが、彼はこの小説上では使えません。
そもそも、大前提として自分が戦いピンチに陥るからこその火事場云々であり、圧倒的に強すぎるオールマイトは第一段階に入る機会が場数に比べて圧倒的に少ないんです。
誰かの為と覚悟ガンギマリでも第一段階に突入できなければ使えない、という設定です。
それに最初から貧弱というわけでもなく彼の師匠からゲロ吐く程度で済んでるので常に命の危機にあった訳ではないのです。
出久は師匠との訓練で常に命の危機にあったと?
…………( ◜௰◝ )