後に狂走と呼ばれるウマ娘   作:ドロイデン

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30R 目標

 さて、あの模擬レースのあと色んなことが……それはもう色んなことがあった。

 

 まず結果としてあのレースは私が1着、ルドルフが2着となり、結果私は今年度の特別デビュー枠に決定することになった。

 その事にルドルフは少しだけ悲しそうだったけど、あの顔はすぐに追い抜いてシニアクラスで倒すと自信満々だった。が、私が短距離・マイル型の選手だということをヤル気満々で忘れているルドルフに伝えたところ、翌日からルドルフはショックだったのか一週間ほど寝込んだ。よっぽど悔しかったようだ。

 

 そしてあの日に今年のデビュー枠を射止めたのは私以外だとマルゼンスキーさん、エリモジョージさん、そしてガビの三人で、私達四人で踊ることになったウィニングライブはこの上なく盛り上がった。

 負けたハイセイコーさんは悔しかったのか、次の土日に私とガビの二人を無理矢理にカラオケへと連行したが、はじめてのカラオケは一人でギターを弾くのとは別の楽しみがあった。

 

 そんなこんなな毎日を過ごしたとある日曜日の完全休息日、私は何をやっていたかというと

 

「はいツモ!!リーチ一発ツモ三色三暗刻ドラ四の私が親だから12000オールだよ」

「うわぁぁぁぁまたカブラヤオーに飛ばされたぁぁぁぁ!!」

 

 私は美浦寮のみんなと一緒に麻雀をしていたわけだが、これで同級生全員を軽く飛ばしちゃっていた。ちなみに今飛んだのはガビとルドルフとミカの三人だ。

 

「くそぉ、カブラヤオーさん麻雀でも逃げるんだから!!」

「子の時は安手で上がり続けて、気づけば八連荘で全員飛ばされてるし。逆に今みたいに削られてるところに直撃即死な大物手を打ってくるしで対処不可能だからな」

「お姉ちゃん、実は麻雀練習してたりするでしょ!!」

 

 ミカのブーイングに私は頬を掻きながら

 

「いや~シンザン会長に誘われてタケシバオー先輩たちとたまに打ってたからかな」

「いやいや、毎回私らをハコテンにしてる奴の言葉じゃないさね」

 

 と、苦笑いしながらシンザン会長がリンゴ片手にやって来た。

 

「あ、シンザン会長。変わりますか?」

「お、悪いねミカ。ついでだしこの悪~い逃げウマ娘をコテンパンに伸してあげないとね」

「いつも速攻で身ぐるみ剥がされて下着まで剥かれてる人が言うと説得力ないですよ」

 

 だまらっしゃいと噛みつくシンザン会長に周りが一斉に笑い、また新しく試合を始める。

 

「―――ところでカブラヤオー、お前さんはどのレースを目指すんだ」

 

 打ちながらシンザン会長はふとそんなことを聞いてきた。

 

「そうですね……ぶっちゃけ三冠ルートを目指そうとは思ってます」

 

 私はリーチをかけて芝棒を置くと、シンザン会長は驚いたような顔をした。

 

「へぇ、短距離とマイルなら間違いないカヤが三冠を目指すなんてね」

「まぁ私が向いてるのは確かにそうですけど……親友と約束したんで」

 

 あの模擬レースの翌日、私はまたトキシラズのお墓に行き、そして約束をしてきた。

 私の親友は、誰よりも強い三冠ウマ娘だよって彼女が天国で誇れるウマ娘になるって。

 

「それに去年シービー先輩が三冠を取りましたけど、逃げウマ娘で三冠を取ったウマ娘はまだ居ないんで、逃げだって三冠になれるんだぞって言ってやろうかと」

「なるほど、大きく出たな」

 

 シンザン会長はケタケタわらって牌を捨て、

 

「あ、すみません会長、それ平和でロンです」

「んな!?またか!!」

 

 悔しそうに点棒を渡してくるシンザン会長に、私は少しだけ笑いながらそれを受けとる。

 

(それにたづなさん……トキノミノルが成し遂げられなかった三冠を取れば、結果的にたづなさんを三冠の表彰台に立たせてあげられるしね)

 

 そんな誰にも言ってない目標を思い出していると、ふとガビが笑っていたことに気づいた。

 

「?どうかした?」

「ううん、なんかカヤ、最近生き生きしてるな~って思ってね。なんか入学したときのおどおどしてたウマ娘とは別人みたい」

「……そう、かな?」

 

 別に私自身変わったとは思ってない。相変わらず他人とのコミュニケーションは苦手だし、集団行動も得意じゃない。喋るのだってあんまり好きじゃない。

 

「けど、なんていうか……後ろばかり向くのは止めたほうがいいかなって。ルドルフのあの言葉のおかげ、かな?」

 

 あの言葉のおかげで、私は少しずつ、周りの娘たちと話すようになった。打ち解ける……ってほどじゃないし、むしろ周りが合わせてくれてるような感じだけど、少しずつ変わろうと頑張っている。

 

「~~頼むからその事を思い出させないでくれ、我ながら思い出すと恥ずかしいんだが」

「いやいや、ルドルフのあの叫びはよかったぞ。流石は夫婦なんて呼ばれるだけあるな」

「シンザン会長、国士無双の發待ちです」

「照れ隠しに役満ブッパの単品待ちは大人げないと私は思うんだがルドルフぅぅぅぅぅ!?」

 

 叫ぶシンザン会長に私とガビはクスクスと笑いながら

 

「すみません会長、私もロンの大三元です」

「私もロンの緑一色だよ。合計しめて224000の直撃払いだよ」

「まさかのトリプルロンの役満トリプルヒットだとぉぉぉ!?あ、点棒だけじゃなくて私の私服が剥かれて逝くぅぅぅぅぅ!?」

 

 周りに控えていた同級生達がニコニコとしながらシンザン会長の私服を鮮やかに剥いていき、最終的には下着まで剥かれて『私は後輩にトリプル役満ロンの直撃を食らった愚か者です』というプレートを首にかけられて正座する情けない姿に同情しながらも、羞恥で震える会長に対して不意にも可愛いと思ってしまった。

 

「ふっ、やはり変わったなカヤ」

「……そう、かもしれないね」

 

 私は空を見ながら答える。今日の空は染み渡る蒼穹の一幕だった。




 オマケ マチカネカブラヤ日記

「よし、今日はデビュー戦だから気合いを入れて走らないと!!」

『各ウマ娘ゲートに入り体勢整―――』

「へぶっ!?」

『おおっとカブラヤオーが体勢を取ろうとした瞬間顔にゲートが直撃したぁぁぁぁ‼️整ってない、まさかの体勢が整わない!?』

『どうやら前傾姿勢の体勢を取った結果、勢いよくぶつけることになったようです』

『ただいま応急処置を行います!!会場の皆さんは少しお待ちください!!』



「……って夢を見たんだ。酷くないガビ」

「なんともリアルな夢だね」
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