聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第9話

「3分ですか。随分と遅かったですね」

「あの距離を3分は多分人間にしては随分と速かったよ」

「随分と、というのはウタネさんに合わせたつもりでしたが今さら人間ヅラですか。まぁいいです。どうぞ中へ。衛宮さんとセイバーがお待ちです」

「なんでセイバー陣営側みたいな振る舞いするのよ」

「まぁまぁ」

 

 やっとこさ衛宮家に着いた私をえっちゃんが出迎える。

 たまにわけのわからない押し方するえっちゃんだけど私もそんな感じだと思うし議論が面倒なので従っておく。

 そのまま連れられると、並んで座るセイバー陣営の対面に座らされた。

 

「うん。なにこれ」

 

 しっかりと淹れられたお茶に、軽いお茶菓子。

 完璧丁寧に迎えられても私としては困るものがあるのだけれども。

 

「まずは私から。本日は凛からシロウを守っていただいたようで礼を述べます。ありがとうございました」

「うん。それは別に気にしないで」

 

 セイバーが向かいから頭を下げる。

 見た目からして西洋の英霊であろうに。聖杯の知識だろうけど礼儀正しいことで。

 

「さてそれでは、滅多とない機会となったので改めて提案させていただきます。セイバー陣営のお2人、私たちと手を組む……とまでは言わなくとも、戦争の参加者が我々2組になるまで敵対しないという同盟を組みませんか?」

「……そうですね。あなた方が聖杯を求めないのであれば、我々が聖杯を手にすることもできる」

「待てセイバー、まだ全部を聞いてない。約束したよな、フタガミ。ヴィーナスについて話すって」

「ああ……うん?したっけね?」

「ヴィーナス?あなたがですか?」

 

 ヴィーナスの単語に反応してセイバーが私を凝視する。

 

「そうだけども。なんで知ってるのよ」

「知らないはずがないでしょう。サーヴァントは現世の知識を持ち合わせている。ならばその名を知らないはずもない」

「そんなもんなのかー……有名なつもりは全然無かった」

「では、ウタネさんから説明をお願いします」

「まぁ……仕方ない、と言ってもね?言うことほとんど無いんだよ。ヴィーナスってのも多分周りが勝手に付けたあだ名みたいなものだし……別に敵対しなければ害は無いと思う」

「敵対したらどうなるんだ?」

「さぁ?死ぬんじゃない?」

「……そりゃあ、俺みたいなハンパ者は死ぬだろうけどさ、サーヴァントはどうなんだ?俺も戦いを見たがサーヴァントは明らかに常軌を逸してるぞ」

「関係ないよ。どれだけ元が強力でも、ヒトの枠に収まるくらいには霊基を収縮させてるんだから」

「ではあなたは私をも殺せると?」

「うん。やらないけどね。意味無いから」

「それは英霊への侮辱ですか?我らなど何の価値もないと?」

「ううん、そーじゃないよ。あなたたちの功績は人類に貢献するもので、賞賛されていいものだ。けど、戦闘となればそれは別。強いか、弱いか。殺すか殺されるか。だから、争わなくていいよねってこと」

 

 事実は時として棘を持つもので、見事セイバーのプライドをチクチクしてしまった様子。けれど事実なので私はサーヴァントの武力を恐れない。私なら瞬きする間に7騎全てのサーヴァントを皆殺しにできる。

 ……どこにいようとどう逃げようとも、な。

 少しヒートアップしたのを止めるためか、セイバーのマスターがお茶を淹れると台所へ立った。それを見てセイバーもハッとした顔をしてすみません、と謝ってきた。謝ることでもないのだけれど。多分私が謝るべきなんだろうし。

 

「それでさ、ヴィーナスって何してるんだ?遠坂があれだけ動揺するんだ、バーサーカーと同じくらいだろ」

「うん?バーサーカー?」

「シロウ」

「いいだろ、フタガミは聖杯要らないって言ってるんだから」

「ですが……」

「いいよ、2人の同意があるまで戦争内外問わず話さなくていい。ヴィーナスが何してるかだけど、結果的に言うと世界を破壊して回ってる」

「「……!」」

「ああ、誤解しないでね?あくまで結果的に、だから。武力だとかなんだとかをすぐにする気は無いよ」

 

 聞いておいて警戒するとは……これが真実を知ると変化する生物の代名詞、人間か……

 世界の破壊ったって、物理的なものじゃない。あくまで本筋から逸脱させてしまうっていう意味の破壊……物語が物語であるためのストーリーを私はめちゃくちゃにしてしまう。きっと、この世界のそれももうすでに壊れ始めているのだと思う。

 

「ヴィーナスについてはその都度話します。我々との同盟について、答えを聞かせて貰えますか」

 

 私についての話は答えが出ないと判断したのだろう。

 話すべき事だけに焦点を当てて進めてくれた。

 

『その話!ちょっと待ちなさい!』

「っ⁉︎凛⁉︎」

 

 玄関から聞こえた声にえっちゃんとセイバーが臨戦態勢を取る。

 聞いたことある声だしほっといていいと思うけど。

 

「遠坂!まだ諦めてないのか⁉︎」

 

 廊下から姿を表したアーチャーのマスター。

 

「待ちなさい。セイバーもウタネのサーヴァントも落ち着いて。もう戦う気は無いわ。アーチャー、そこに立ってなさい」

「ふむ。まぁ、君がそういうならそうしよう」

 

 アーチャーが姿を見せ、2歩引いた位置で停止する。

 ……嫌な予感しかしないぞ。

 取り敢えず様子見。アーチャーが本気でもセイバーとえっちゃんの2人には勝てないだろうし、セイバーのマスターを守るくらいなら私とセイバー、えっちゃんの内1人がフリーなら大丈夫。

 

「私もその同盟に入るわ。3組の同盟よ」

「「「……」」」

「なっ!何よその反応は⁉︎私が手を貸してあげるって言うのよ⁉︎涙を流して有り難がりなさいよ!」

「ダメっぷりは健在の様ですね。アーチャー、相当に苦労するでしょう」

「ふん、ま、否定はせんがね」

「アーチャー!貴方は黙ってなさい!そしてフタガミさんのサーヴァント!あなたは一々偉そうに私に突っかからない!」

「まぁ、ウタネさんがそう指示するなら考えます」

「フタガミさん!さっさと命令しなさい!」

「まぁ……えっちゃん、面倒そうだから放っておいてあげて。バニングスの香りがする」

「分かりました。ですが最後に一言。あなたが要求したとはいえ、ウタネさんの上に自分がいると思わない事です。人間」

「キィィィ────ー!人間人間って!二度とその口を効かないことね!」

 

 この奇声を上げる赤い化鳥が学園のマドンナらしい。まぁでも、なんか知ってる。八神さんや金髪お嬢様と同じタイプだと思う。いるよね、なんか外面固めるの上手い人。

 ……まぁ、それの最たるものがフタガミウタネなんだけどな。

 

「ウタネさんの指示ですからそうします。それで、同盟に入りたいとのことでしたが。理由をお聞かせ願えますか」

「待ちなさい。我々はまだ同盟を組むなどとは」

「それこそ待ってください。この屋敷の警鐘を無力化してまで正面から上がり込んできたのです。同盟が必要な相応の理由があるのでしょう」

「え、そういうの無力化できるんだ……今度からしよ」

「ウタネさんは黙りましょうか。遠坂さん、どうですか?」

「そうね、さっき学校で結界が起動したでしょ?」

「ですね。それなりの物と見ましたが」

「そう。あれだけの結界、聖杯戦争が開始して間もない時期に、人がいない夜だけで張れるわけがないの。昨日は私もいたから、より難しいはず。つまり」

「学校関係者にもう1人マスターがいる、ってことか……」

「そう。だからこの3組で組めば結界が発動しても勝機は十分にある。フタガミさんには私が衛宮くんを殺さない保証になるし、衛宮くんは私とフタガミさんに守って貰える。どう?悪くはないと思うわよ?」

「ふーん。えっちゃんはどう?」

「理想的な展開です。衛宮さん、セイバー、どうでしょう」

「俺は願ってもない提案だけど……セイバーはどうだ?」

「まだ少し腑に落ちない点もありますが、戦力に関しては信用できる。マスターがそう言うのであれば、私も異存はありません」

 

 私とえっちゃんは断る理由もなく快諾。

 セイバーが若干の躊躇を見せるもマスターの意向を尊重し決定。

 学校にいる3に……4人目のマスター。その脅威に完全なる対策をするために同盟が結ばれる。

 現在判明しているサーヴァントはセイバー、アーチャー、ランサー。そしてさっきチラッと出たバーサーカー。残るはライダー、キャスター、アサシン。

 アサシンは結界を張るようなクラスじゃないと思うし、速さとレベルで言うならキャスターが最有力候補か。それなら対魔力持ちのセイバーが学校に来るまで時間稼ぎすれば余裕あるかな。

 

「よし!アーチャー、分かってるわね!」

「……了解だ。だが1つ聞いておく。その同盟は学舎のサーヴァントを排除すれば解消されるのだな?」

「ま、今のところわね」

「ならば良い」

 

 無事アーチャーの疑問も無くなり、全会一致の同盟が出来上がった。

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