「とりあえず現状確認よ。セイバー、アーチャーはこの同盟ね。他に判明してるのはランサー、ライダー、バーサーカー。えっちゃんことルーラーは多分聖杯戦争の規格外ね。この戦争を止めるためにウタネが喚んだ、っていうのもトンデモな話ね」
「ランサーはあの青い人だよね。ライダーとバーサーカーは?」
「紫の長髪の大女がライダー、黒い巨人がバーサーカーよ」
「ふむふむ」
「ランサーの真名はクーフーリン。知名度からもかなりの強敵と言えるでしょう」
「ウタネもランサーには気をつけなさいな。宝具は必ず心臓に刺さるらしいわよ。セイバーの速度でギリギリならアーチャーだとヤバかったわね」
「ゲイボルクですか。であれば敏捷ではなく幸運で回避判定です。セイバーさんの幸運は高めだったということでしょう。ウタネさんは……」
「うーん……レイン、だな」
「レイン?雨でも降りますか?」
「運、かな」
「あの、ウタネさん。結論だけ下さい。クーフーリンには勝てますか?」
「うん」
即答した私に遠坂さんがひたすらに怒りを封じ込めたような呆れ顔をしてため息を吐く。
「即答なのね……まぁいいわ。取り敢えず同盟の目的はライダーの結界を止めること、そしてライダーの撃破」
「待った、撃破はしないでよ」
「マスターが学校にいる可能性は少ないわ。とすればサーヴァントを叩くしかない。私とシロウが結界を阻止してはいても放っておくわけにはいかないわ」
「だからサーヴァントも殺しちゃダメなんだって」
「あのねえ、ウタネとルーラーは何がしたいの?いい加減にハッキリしてくれないかしら」
「「だから、戦争をやめてほしいんだけど(ですけど)」」
「……はぁ。だから!その理由を聞きたいの!いつまでバカみたいな問答させる気よ!」
この人は何度言わせるつもりだろうか。
出会った時から戦争をやめろと言うのにまだ他のサーヴァントを倒そうとしている。倒すなと言うのに。
理由は聖杯がこの周辺を焼き払い、特異点としてどこかの世界に出現するかもしれないから。そうしないために全てのサーヴァントとマスターを生かしたまま永久的に戦争を終わらせない。
と言いたいのは山々なんだけど聖杯を願望器と信じてやまないマスターとサーヴァントはこれを荒唐無稽と笑うだろう。信憑性のカケラも無いと喚くだろう。ので、何も言わずやめてほしいとだけ伝えてるのに……どうしろと。
「めんどくさくなってきた。えっちゃん、もう全員強制保護で終わりでいいじゃん」
「あのですね。それでは人が死んでいるのと同じなのですよ?」
「やだよー、この人たちやめる気ないもん」
「はぁ……あなたが駄々をこねても変わらないものは変わりません。わかりました。遠坂さん、衛宮さん。極力したくないですが間桐邸を封鎖するという手段であればどうでしょう」
「「は???」」
「マトウ……?」
「えっちゃんさぁ……何?」
「何、と言われましても。ルーラーたるものサーヴァントの把握くらいは」
「ホントにえっちゃんルーラーだったんだ」
「今更何を。疑っていたのですか。現にこちらから召喚を強制したではありませんか」
「いや、やりかねないかなぁと思って」
ルーラーは通常のサーヴァントと違い、裁定者の名前の通り戦争に関する大体の特権が与えられる。サーヴァントの位置把握等もその1つだ。
たしかになー……マスター無しで顕現、世界崩壊を防ぐために召喚、真偽不明だけどサーヴァントの探知と、確かにルーラー的なことしてるわそういえば。
「ん?遠坂さんはルーラーのこと知ってるよね」
「クラスとしてはね。実態はよく分かってない部分が多いわ。クラスが変わることはあってもルーラーが召喚されることは無いからね」
「待て待て!サーヴァントの位置が探知できるならなんでもっと早く言わなかったんだ⁉︎」
「本来ルーラーはどの陣営にも属さず中立を守るものです。こうして同盟を組んでいるのはルーラーがそうせざるを得ない状況である、ということです。それさえかなりの譲歩であるのに加えて今話したのは更に追い込まれたから。分かりますか?」
「え……っと」
「たしかに私はこの冬木内であればサーヴァントの位置を正確に探知することが可能です。しかしそれぞれの隠れ家や工房は最後まで秘匿しておきたい情報です。例え遠坂さんであろうとも工房へ対軍、対城宝具など放たれれば大打撃は免れません。それだけ重要な情報を私は今流したのです。ですので、ライダーもマスターも殺さないことを約束して下さい。4名全員の納得と約束が得られない場合は……」
「「場合は……」」
凄みが出てきたえっちゃんにマスター2人が息を呑む。
セイバーはえっちゃん用に作ってたお菓子を貪り、アーチャーはなんだかんだ部屋の隅に立ったまま動かない。
「衛宮さんが私を襲う写真と、遠坂さんがウタネさんを襲う写真を冬木全体に撒き散らします」
「「……⁉︎」」
「だよねー」
「待て待て待て待て!そんなことしたらお前らだってどうなると!」
「そうよ!偽装だって知れたらあなたたちが終わるのよ⁉︎」
「私は別にサーヴァントなので。ここでの評判がどうなどとは気にしません」
「フタガミ!お前は嫌だろ⁉︎まさかこの遠坂になんて!」
「ちょっとシロウ!その言い方は悪意あるわよ!」
「私も別に。どうでもいいし」
「なー!バカかアンタは!恥ずかしくないの⁉︎」
「別に……したけりゃすれば?」
遠坂さんてこんなはっちゃけた性格してたんだね、ってくらい取り乱してる。
どうでもいいのはえっちゃんみたいに別の世界行けば問題無いし記憶操作くらいはできるだろうしホントになんとでもなるからやってみるのも良いかもしれない。元々女か男かわからないような自認だしそれで認知が確定するなら願ったり叶ったりだよ。
「それは冗談として……じゃあ……納得のために更に質問するわ。それはいいわね?」
「ええどうぞ。答えるかは分かりませんが」
「ライダーが間桐の陣営だというのはいいわ。マスターは誰?」
「あの家は……まさか慎二⁉︎」
「それがあり得ないから聞いてるのよ。間桐の魔術師としての血は枯れているはずなの。知識と歴史があっても魔術師として使い物にならなければマスターにはなれないはずなの」
「どうしましょうか、ウタネさん」
「知らないよ。その辺の裁量は無いし。言っちゃえば?」
「そうですか。では……」
『せんぱーい!お邪魔しますー!』
「「「⁉︎」」」
「えっ誰?」
「ヤバい!もうこんな時間か!悪いがお前ら隠れててくれ!」
是非も無く部屋を追い出される。
程なく玄関からトタトタと足音がする。先の声からしてかなり長い付き合いみたい。
『先輩、大丈夫ですか⁉︎藤村先生に聞いても分からないって言うので心配して……』
『あ、ああ。連絡入れてなくて悪かった。体調は大丈夫、何ともないから。明日からはちゃんと行くから』
『先輩が学校を休むなんて思えません。やっぱりどこか悪いんじゃ……』
『ええとだな……』
『しろーう!生きてるぅぅぅぅぅぅぅ⁉︎』
『藤ねぇ⁉︎早いな!』
『そりゃそおよ!心配してたんだから!』
廊下の陰で会話を盗み聞きしていると、遠坂さんが説明してくれた。
「桜よ、結構前から朝晩上がり込んでるらしいわ。私たちに隠れるよう言ったのはバレたくないからね」
「なーんだ、じゃあ良かったじゃん」
「なんでよ、動きづらいじゃない」
「夜の相手いるってことでしょ?襲われなくてよかったねって」
「……アーチャー、コイツ殺しなさい。2度とこんな口が聞けないように」
「えっなんで。あ、実は狙ってた……?」
「違うわよバカ。まぁいいわ、アンタは黙ってなさい。私が行ってくるわ」
「えっ、イクの」
「小学生男子かアンタは。とにかく黙ってなさい」
ひたすらに冷めた目で吐き捨てられてしまった。まぁそうだ。うん、調子に乗り過ぎたな。
そのまま遠坂さんは戸に手をかけたかと思うと雰囲気を一変させ、スゥ、と淀みない滑らかな動作を発生させた。誰だアレ。
次の瞬間、意外な物を見ることになってしまった。