聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第19話

「死んではいませんし、その犠牲はそれでいいです」

「……何?」

 

 今度はアーチャーが言葉を失う。シオンを除く他のメンツも同様に。

 ルーラーはなぜ驚くのか、という態度で言葉を続ける。

 

「死者を出さないためには仕方の無いこと。この戦争はそうあるべきでした。ですので、魂狩りには触れる必要はありません」

「理解が及ばない。ルーラー、君は根本がズレてはいないか?」

「先程のシャドウサーヴァントの出現以外は現状、予定通りです。次の対象はキャスターではなくライダーです。マスターとサーヴァントを殺さず保護する。私の言っていることは初めと変わっていますか?」

「変わっていないが。君のそれは犠牲者を見殺しにするのと同義だ」

「アチャ男さん。根本がズレているのはあなたの方です。私の目的はただ死傷者を出さない事です。甘ったれた正義のつもりなら無駄な口出しはご遠慮願えますか」

「……!」

「アーチャー。引きなさい。同盟間での無駄な争いはご法度よ」

「凛、無駄な、とは心外だな」

「無駄よ、価値観の食い違いなんてすぐ埋まるものじゃないわ。それより優先するのはキャスターよ」

「そーだな。卿、話せ」

「ですから不能です。要求には対価が必要です」

「……卿、目的が達成されればオレが好きなだけ望むものを作ってやるが」

「衛宮さん、遠坂さん。取り敢えず拠点へ戻りましょう。キャスターについてはそこでじっくりと」

「「……」」

「卿が聡明で良かったよ」

「私は常に冷静沈着で聡明です。支離滅裂なあなた方と同じにしないで下さい」

「支離滅裂なのは姉さんとアインスだけだ。じゃあ全員手ぇ繋げ」

「……?どうするんだ?」

「帰る」

「衛宮さん、取り敢えずそうしましょう。おそらくルーラです」

「るーら?」

「まぁそういうことです。ほら、手を出して下さい」

「お、おい!手を……!」

「っ、シロウ、私と手を繋ぎましょう。ルーラーとは私が」

「オレはシオンだ……まぁいい。繋いだな。行くぞ、【ルーラ】」

 

 全員が強制的に空を飛ぶ。

 

「シロウ、2人が行かないのであれば仕方がない。我々だけでも乗り込みましょう。キャスターの被害を増やすわけにはいきません」

 

 衛宮邸へ帰還した後、机を囲んだ途端にセイバーが口を開く。

 

「だからセイバー。これからキャスターの話を聞くんだろう」

「しかし!居場所が分かっているのであれば!」

「相手がどんな能力か分からないだろ!少し待てばそれが聞けるんだぞ!」

「……」

「そーだぞセイバー。お前が無茶して死んだら困るのはオレなんだからな」

「あなたはそもそも何なのですか!先程から態度が一切変わっている!」

「なに、と言われると解答に困る。オレの説明は円周率を答えるくらい長くなるぞ」

「一言で言いなさい!でなければ斬る!」

「んー……そーだなぁ……前なんつったかな……」

 

 シオンが虚空を眺め、しばらく記憶を探る。

 

「ああ、思い出した……シオンだ。手ぇ貸してやるから協力しろ。いや……」

「先程の質問の答えになっていない!だいたい……」

「そんな勝手が通ると思うな。実力不足とは言え俺だって同盟の1人だ。全体の総意の上で意思決定、だろ」

「だからなんだよ。お前ら如きに何ができる。マスターを説得?サーヴァントの撃破?被害無く隠匿的に収束?できるか?あぁ……まさか、オレを説得?できるか?」

「貴様……!ヴィーナスだとして何たる口の聞き方だ!同盟とてマスターへの侮辱は許さん!」

「分かったよ、キャスターかライダーか、お前らが話し合って順番を決めろ。それで何の不備も無いはずだ。卿、今日は解散でいいな?」

「あなたは自分勝手が増長したのではないですか?まぁいいです。私も異存ありません。セイバー組とアーチャー組、両方が納得する順に無力化していきましょう」

「おー。てなわけだ。解散。おやすみ」

「待て待て待て!キャスターの話をするんじゃないのかよ!」

「ん……あぁ。そんなこと言ったか。あの寺に一般人のフリして住んでる女がいるはずだ。どんな名前かまでは知らんがな。んで、マスターも当然そこに住んでる。けど勝手に動くな。以上」

 

 既に会話は不要と横になるシオン。

 

「その不敬、万死に値するッ!フタガミウタネ、覚悟ッ!」

「おい、セイバー⁉︎」

 

 そのふてぶてしさに腹を立てたセイバーが武装、即座に飛びかかる。

 マスターであるシロウが静止するがシロウでは間に合うはずもなく、その剣先はシオンに襲いかかる。

 

「……ッ⁉︎」

「無駄だ、って言われなかったのか。お前らサーヴァント如きにオレを倒せるわけがないだろう。シバくぞ」

「バカな……!これは……先の……!」

「ソラの能力だ。この場の全員のパラメータ、その全てを筋力とする。つまり、オレ自身の筋力にお前の剣とその他全員のパラメータを加算してる。切れるわけが無い」

 

 セイバーの剣が捉えた首は、その筋肉に阻まれ微動だにすることは無かった。

 

「さぁ、審判の時だ。セイバーは無抵抗な盟友に躊躇いなく手を出した。これは相応の裁きが必要だろうな。どうする?謹慎か?もう殺すか。卿」

「……!ち、違う……私は……!」

 

 ゆっくりと、気怠げに起き上がったシオンの手には、刀が握られていた。

 戦力差は歴然。ヴィーナスが相手になること、それは即ち死を意味する。それはサーヴァントの知識にも組み込まれている。最優のセイバーが手を震わせるのもこの死刑宣告を受ければ仕方がないとも言える。

 

「セイバーさん。落ち着いて下さい。シオン、貴方は軽々しくソラの能力を使うのをやめて下さい。あと殺すのもやめてください」

「んだよ。いいだろ、オレが代わりにセイバーするから」

「はぁ……そう意味では許可できません。前提が崩れます」

「サーヴァントを殺して存在させる姉さんの能力だ、1番早いと思うけどな」

「……?すみませんシオン。それはどういうことでしょう」

「いや、流せよ。セイバーも落ち着け。どうせお前が行っても勝てねーんだ、ゆっくりしてろよ。じゃあな。寝る。部屋入る時はノックしろな。返事は待たなくていい」

 

 無理矢理話を終わらせてシオンは廊下に出る。

 

「待て!キャスターの情報も私たちの扱いも許されるものではない!訂正しなさい!」

「しらねーよ。卿から好きなだけ聞け。じゃな」

 

 欠伸をしながら吐き捨て、音もなくシオンは部屋に消えた。

 

「では仕方ありません。私からお話ししましょう。とは言っても先程シオンが述べた通りです。細かい情報もあまり意味はありません」

「真名はどうなの?ルーラーとはいえ流石にそこまでは知らないのかしら?」

「遠坂、まだ見たこともないサーヴァントの真名なんて分かるわけないだろう」

「分かりますけど……」

「分かるのかよ⁉︎」

「じゃあ言いなさい。シオンにそう言われたの、忘れてないわよね?」

「遠坂、お前ウタネとシオンの順応早いな……俺はまだ混乱してるぞ」

「そ、そうかしら。けど問題はそこじゃないでしょう?」

「シオンは好きなだけ聞け、というだけで全て吐かせろ、とは言ってません」

「サーヴァントがマスターの意向に反していいのかしら」

「あなたになら分かると思いますが、私のマスターは対等な関係を望みます。私の役割を通すと言えばそれを尊重してくれますよ」

「そ。じゃあ私はもういいわ。シロウ、後はよろしく」

 

 アーチャーのマスターも部屋を後にした。

 

「さて。どうしますか。2人とも不服な顔をしていますが」

「納得できる話ではない……シロウ、やはり我々だけで向かいましょう」

「待てセイバー。内容が先だ。ライダーとキャスター。居場所もマスターも能力もおおよそ知ってるんだろ?ならなんですぐ行こうとしない?俺たちじゃ敵わないのか?」

「いいえ。戦えばまずこちらが勝利するでしょう」

「ならば!今すぐにでも!」

「セイバーさん。私の目的は敵を倒すことではなく、死者を出さないことです。闘争本能は抑えてください……と言っても、純正のサーヴァントに何を言っても無駄でしょうけれど。では私も失礼します。気が落ち着いた後にまた話しましょう」

「待て!」

「シロウ、彼女の言う通り、私は少し熱くなっていた。今日は一先ず休みましょう」

「セイバー……なら、それでいいけど」

 

 ♢♢♢

 

「よ」

「で、何処に行こうと?」

「オレの予知だとこの後セイバーがキャスターに突っ込む。アサシンに返り討ちに遭うがな」

「ならば行動する必要は無いはずです。それが分からない貴方ではない」

「だからこそ、だ。この隙にキャスターを無力化する」

「何を言いますか。バカですか」

「うるせぇ。誰も死ななきゃいいんだろ。だったらそうしてやるよ」

「はぁ……」

 




面倒な話し合い描写になると学級会が発生する不具合があります。
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