聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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クロスオーバーの化身とは言ったもののそれを描写しきれた事は一度も無い。


第22話

『──俺は俺の正義を貫く。これまでも、これからも。慎二とは明日決着をつける』

 

 それが昨夜出たシロウの決断。

 それを受けた凛は朝は警告に留め、それ以上行動する様なら潰しにかかると行動を変更。

 そしてそれを卿から寝ながら聞いたオレは死人が出ないよう立ち回るとだけ伝えてもらった。

 そして今朝、間桐慎二が学校に姿を見せる事はなかった。

 

『〜〜は溶解度の違いによって……を分離し、その大部分を取り除き──』

 

 授業を聞き流している時間さえ、常にライダーの警戒が必要だ。

 卿の話によればライダーに限らずこの戦争のサーヴァントは最大規模と言っていいほどそれぞれのレベルが高いらしい。それこそ神話のレベルで語られるほど。

 ……さぁ、どうする?こちらから行くと罠があるやもしれん。ここは相手の出方を待って後手で蹂躙するか。

 

「っと……」

 

 さっそく結界だ。前のと同じだな。

 

「シオン!これは!」

「ああ、ライダーの結界だろ。お前は自分の身を心配してな」

 

 範囲内の人間の魂を吸い上げる結界。魔力で抵抗できなければそのまま死ぬだろうな。

 ……だがそれだけだ。結界から出るだけでその影響下から脱することができる。範囲ギリギリの所にいたり生命力が強いなら出られるかもしれない。つまりは取り逃がす可能性が十分にある。

 そんな不完全なもので神秘を薄れさせることは許さない。

 

「どこ行くんだ!みんなを助け……」

「なら尚更だ、ライダーを拘束する。これが宝具というなら奴の底も知れたものだ。今日ここで決着だ」

「殺すのか!慎二を!」

「さぁ。それはまだ分からん。奴次第だ。取り敢えずセイバー呼んどけよ。まだ普通に間に合う」

 

 こちらに理解があるならヨシ、無いなら殺す。

 全力で階段を駆け上がり屋上のドアを開ける。

 そこには愉悦に浸るマスターと無感動なサーヴァント。

 

「よう。とりあえず結界止めるか、お前ら」

「なんだ?衛宮じゃないのか」

「悪かったよ。お前とは不釣り合い過ぎる戦力で」

「そうともさ。キミごときが僕の前に来るべきじゃない。惨めに命乞いでもしながら逃げ惑うといいさ。それとも聖杯を分けて欲しいのかい?」

「ふん。相手が測れないってのは悪いがな、せめて強いかもという警戒くらいするモンだぜ、シロート」

 

 ワカメみたいな頭がわさわさと神経を逆撫でする。

 オレの能力故に底が見えないのは分かるが、自分より下に置こうとするのは何なんだ。

 

「まぁいい。どれ、その本が令呪代わりか?ちょっと見せてみろ」

「ふはっ!ライダーの結界で立ってるのもやっとなクセに!僕が直接引導を渡してやる!」

 

 奴が本を捲ると刃の様な影が複数、直線的に飛んでくる。

 だがそんなものはオレの体に触れるほんの数ミリの所で消失する。

 

「なっ⁉︎何故効かない⁉︎」

「この身体はウタネのもの。ウタネの能力は本人が解除しない限り……」

 

 ウタネが死んでも、転生したとしても……直死などの概念能力で破壊するなどの例外を除けば……

 

「その世界に在り続ける。この身体の殆どは能力によって補強されている。そんな子供騙しでは何年経っても擦り傷ひとつ付きはしない」

 

 影を受けながらただ歩いて近付く。

 どうせ屋上だ、逃げ場なんて無い。

 

「ひぃいっ⁉︎ライダー!奴を止めろ!殺せぇぇぇ!」

「はっ!」

 

 マスターの指示に従い突進してくるライダー。

 その挙動の未来を読み、数秒間の時間を跳ばす。

 

「な⁉︎」

 

 時が刻み始めた瞬間にライダーの首を締め上げ、腹に刀を当てる。

 キングクリムゾン。近距離パワー型の能力を持ってすればサーヴァントと言えど抗うのは簡単ではない。

 

「少しでも抵抗するようなら殺す。今すぐ武器を下ろすならお前もマスターも殺さない。5秒で選べ……5……4……」

「く……!」

「ら、ライダー!何してる!サーヴァントが人間に負けるなんて恥ずかしくないのか⁉︎」

「3……2……」

「ライダー!早くなんとかしろぉぉぉぉぉぉぉ!」

「1……」

『待て』

「……あん?」

 

 喚くマスター、カウントダウンに苦しむサーヴァント、カウントダウン直前に割り込んできた正義の味方。

 

「シオン。どいてくれ。慎二とは俺がケリを付ける」

「ライダーはどうする。まさかコイツまで相手にする気か?」

「そいつはお前に任せる。今の俺じゃ、サーヴァントまでは殺せない」

「……そうか」

 

 までは、ね。人間なら殺すってか。

 

「なら勝手にしろ。ただし殺すな。コイツらは捕獲する価値が高い」

「殺しはしない」

 

 ライダーの首を更に締め付け、無言の警告を強くする。

 ……オレに背丈があればライダーを宙に浮かせて見栄えがしたろうにな。

 

「慎二。お前のサーヴァントはシオンに勝てない。俺たちにはお前は勝てない。万が一の勝機も無い。慎二。今すぐ結界を解いて令呪を捨てろ」

「ふざけるな……僕は間桐慎二だぞ!由緒正しい間桐の血統で!魔術師の後継者なんだ!お前みたいなポッと出が偉そうな口を聞くんじゃない!」

「なら力づくだ。覚悟しろよ、シンジ」

「……っ!これでもくらえ!」

 

 強化した木刀を構え走るシロウに本を開き影を飛ばすワカメ。

 

「ぐっ……!」

 

 生身のシロウにはやはりそれなりの効果はあるようで、その進行を妨げる。

 しかしそれでも攻撃の隙を見て接近し続ける。

 

「なんでだよ!なんで死なない⁉︎」

「シンジィィィィィィィィィィィィィィ!」

「来るな!ライダー!早く助けろ!」

 

 遂にワカメがシロウの射程に入る。

 ……これで終わりか。ライダーもこのまま生かしておけそうだ。

 

「ッ……!」

「な……」

 

 ワカメを叩こうとする木刀を魔術弾が弾き飛ばし、シロウの動きを止める。

 

「……おい凛。何のつもりだ」

「貴方たちのヌルさには飽き飽きよ。全てのサーヴァントとマスターを殺す。それが聖杯戦争なのよ」

「……昨日のセクハラが気に障ったか?オレ達に倫理観は期待するなと言うのを忘れていたか?」

「いいえ。やはり私はヴィーナスを殺すわ」

「はぁ……この状況で?オレを?」

「あなた達3人ともよ」

「そーかよ。やれるもんならやってみろ」

 

 女子高生だもんなぁ……ん……蘇る前世の記憶では同性とはいえそういうのが蔓延ってたし前の世界ではおっぱいマイスターもいたぞ……?オレの認識がおかしいのか?

 

「……アーチャー。念のため聞いとくが、お前も同意か?」

「無論だ。そこの2人はいずれもマスターに相応しくない。これ以上被害を出す前に始末しておくべきだろう」

「……まぁ、お前としては好都合だろうな。アーチャー」

「黙れ。それ以上口を開くなら貴様もここで消すぞ」

「はっ……まぁいいが……どうした。殺すんだろ。やってみろよ。何年かかる?何世紀かかってもいいぜ」

 

 オレが話してる間、ライダーの拘束と威圧を緩めていたにもかかわらず、誰一人動かない。

 凛の出現により呆気に取られたシロウとワカメはともかく、ライダーは脱出できるだけの余力くらい残っている筈だし、凛たちも殺しに来たのなら尚更動けるはずだ。なのに、誰も動かない。

 

「……」

 

 そのまま、30秒は過ぎた。

 

「あー、分かったよ。オレと戦ってその後の戦争に不安があるってんなら他のマスターとサーヴァントの四肢を削いで舌も切って不能にした後でやってやるよ。なら文句ねーだろ」

「……!」

 

 オレの発言にそれぞれの反応を示す周囲。

 そこでようやく状況が動く。

 

「ここはあなたの勝ちです。ですがここでは負けられない」

「ほぉ……」

 

 ライダーの腹から流れた血がオレの目の前で魔法陣を描き始めた。

 血はやがて完全なものとなり、強烈な神秘を予感させた。

 次の瞬間に出てくるコレは……他のヤツらでは死ぬなぁ……あぁ……しかも避けたらシロウ直撃だな……

 

『シロ──ーウッ!』

『リ・バ・イ・ブ!剛烈!』

「ぐっ……!」

 

 咄嗟の事で受けられはしたが弾かれてフェンスに叩き付けられる。

 シロウはセイバーがギリで軌道から外した様だ。

 しかしこれで弾かれんのか……かなりキツいな。ダメージもそこそこだ。

 だが対軍宝具クラスを1発受けられるだけリバイブもどうかしてるな。

 

「……途方もない威力だな」

「……逃げられたわね」

 

 アーチャー組が散々に抉られた屋上を見て呟く。

 当然ライダーもそのマスターも姿を消していた。

 

「さて審判の時だ。凛とアーチャーは同盟間での敵の無力化という指針に異議をなし、更にはその妨害行為さえ行った。これは相応の罰が必要だろう。シロウ、どうする?殺すか?」

「なんでお前もそう殺したがるんだ!それより慎二だ、ああなったら意地でもやる奴だ!早く止めないと!」

「……だそうだ。良かったな凛。取り敢えず水に流してやる。で、だ。卿」

「何か」

「……お前、どこいた?」

 

 全然姿を見ないと思ったが呼べば隣にいた。なんだコイツ。

 

「霊体化して見ていましたが。まぁライダーの位置くらいなら教えますよ」

「戦えよ」

「甘味を下さい。エネルギー不足です」

「……」

 

 こう言った場合どうするべきか。凛の様に一般人なら審判していいんだがコイツ殺すと戦争がどうなるか分からんしソラに殺されるだろうしで何もできん。

 姉さんや、パス……

 

「……っと。甘味ってもねー……どーしよ。モンブラン?」

 

 かるーく私にチェンジ。同時にベルトも消失。私の能力はシオンに影響あっても私はシオンの能力を使えないからね。

 

「それ以外で。モンブランは絶対に嫌です」

「コンビニの食べてたじゃん」

「コンビニのは普通の素材なので」

「私のモンブランが普通じゃないと」

「普通の意味をご存知ですか?」

「純正の人間が作り上げた身勝手な概念でしょ」

「……質問を間違えました。取り敢えず和三盆でいいので5キロほど出せませんか?」

「家にあったかな……シオンので出せる?」

 

 聞いてみると右腕が黄金の揺らめきに包まれ、何かを掴む。

 

「おー、コレシオンの能力だよね。こんなので使えるんだ」

 

 どうやら変わらなくてもこーゆーのは使えるようだ。私が動かしてるわけじゃないんだども。

 

「ん……はいこれ」

 

 右手が掴んだのは砂糖の袋。

 どこのか分からないけどそれをそのままえっちゃんに渡す。

 

「これ、本当に砂糖ですか?」

「知らない。私じゃなくてシオンのだし変なのじゃないと思う」

「まぁそうですね。ありがとうございます」

 

 えっちゃんは袋をネクロカリバーで無造作に切り、なんと飲み始めた。

 

「喉渇かない?」

「渇きますが問題は糖分摂取です。それに生卵を丸呑みする人に言われたく無いのですが」

「えっ誰?」

「シオンですよ。知らなかったんですか?」

「知らなかった。まぁいいよ。あの子追うんでしょ。行くよ」

 

 シオンがどうしてようとどうでもいいし粉飲もうとどうでもいい。

 そのまま屋上を出ようとドアへ向かう。

 ……人だ。誰かが上がって来てる。

 

「神聖な学舎に土足で失礼する」

「貴方は……」

 

 音も無くドアを開け出てきたのは黒い衣装に十字架を首にかけた男。

 私の記憶には無いので探ろうとすると、遠坂さんから答えが出てきた。

 

「言峰綺礼よ。エセ神父でこの戦争の管理人」

「失礼。私は言峰綺礼。この戦争の監督役を務めている者だ。君が双神詩音かね」

「まぁ。そうだけど」

「そして、君を含めた3人がヴィーナスで間違いは?」

「……?まぁ、そうだけど」

「よろしい。では君の令呪を全て私に返還したまえ」

「……理由を聞いてみようか?」

「理由は単純。君たちが封印指定だからだ。先刻、そこの凛の報告を受け魔術協会へ報告した」

「oh……流石の冤罪だ……」

 

 そういえばなんかそういうの聞いたな。マジか。

 

「何、そう悲観するな。令呪を渡して身柄を拘束されるだけだ。死にはしない」

「死んでる様なものでしょうに」

「それが魔術師の世界だ」

「死んでる様な生き方は望まない。私の答えにはならないね」

「捕まった封印指定は誰もが同じことを言う」

「捕まえた気になってるバカはどいつも同じ思考をしてる」

「流石はヴィーナス。教会を恐れないとは。誰一人として情報を残さずいられた訳だ」

「情報が無いなら私だって分からないでしょ?」

「凛からの報告でね。らしい情報ならばと確認に来た次第だ。サーヴァントの宝具を受けて無傷、というのは凛ですら不可能だ。それを軽々と行うならば能力にも不足は無い」

「タイヘンだね。人間って。まぁいいや、私これからライダー追わなきゃだから。粛清なら頑張ってよ」

「無論だとも。もう君に平穏の時は来ない」

「ふーん」

 

 言峰さん、というらしい神父は私とやる気は無いらしく素直に道を開けてくれた。

 魔術協会からの粛清。たしかに魔術師にとって死刑宣告も同等だ。

 ……それが、私を脅かせるのであれば、の話だけれども。

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