聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第23話

「しゅくせーだってさ。えっちゃん潰してきてよ」

 

 夕陽の眩しさに目を潰しながら、えっちゃんのルーラーレーダーを頼りに街へブラブラ歩いて行く途中、面倒ごとをサーヴァントに押し付けようと提案してみる。

 すると肯定とは取れない返答が返ってきた。

 因みに同盟の2組は置いてきた。私達の戦いにはついてこれない……ではなくて、告発された封印指定といるのは危険だろうってえっちゃんからの提案で。

 

「厳密には確保の流れでしょうね。それにしては不可思議な点が多々ありますが」

「どこ?」

「まず一つ、ヴィーナスの情報を掴めていないのにも関わらずその名前が挙がることです。私もこの世界のことは知らないので不明ですが、おおかたソラが来ていたりしたのでしょう。時計塔にいたとは思いたくないですが」

「そこなんだよねー。遠坂さんだけヤケに警戒してきてたし」

「まぁそれは放っておいていいかと。魔術師の行動原理など単純ですし」

「で?他は?」

「二つ目は情報不明なヴィーナスが封印指定されていることです」

「んー?」

「封印指定というからには魔術の進展において重要な情報や能力が秘められるものです。つまりは魔術協会がその姿形や能力をある程度は把握していることが前提になるわけです」

「そりゃそうだ。なんなんだろ」

「私が来る以前……そしてウタネさんがこの世界へ転生する前の情報が無いことには何とも言えませんね」

「シオンので戻れないかな」

「恐らくこの世界に限り不可能ですね」

「何で」

「この世界はウタネさんの生前の世界と近いもので、転生前のウタネさんはシオンの鏡にあるVNAではないウタネさんである可能性が高いです。ですからタイムパラドックスや対消滅の可能性があり、更には『死ねばループするウタネ』さんがそうならないよう抑止力が働く可能性もあります」

「くそめんど……」

 

 つまりは何だ、追われているのに原因不明ってことか?確認不可ってことか?なんだその状況。

 

「……」

「……」

 

 じゃあ死なないまま生きてて発作も無くて鏡の自分に縋って生きてる私がいて、それと会うとこの私も死ぬかもしれなくて、死んだらループして世界も困るから会うのさえ止めようとしてくるってこと?

 とすればもうえっちゃんがその抑止力になってるよね?その考察は突拍子が無いと言えば無いし、前の情報を探りたいのはえっちゃんだってそうだろうし。して……

 

「……」

「……」

 

 やろうと思えばやれないことはないだろうけど、もし死んでループも嫌だし、なんなら進んで死にたくないしでこれは最終手段として置いておこう。多分忘れる。

 じゃあどうしよう。普通に代行者追い返す?まぁ実際それが1番手っ取り早くて楽だね。

 

「じゃあとりあえず地雷買おうか」

「すみません、会話をして下さい」

「え……落とし穴とかのがいい?」

「あなた方の能力と思考は世間に通じないものと認識して下さいませんか。大方教会の粛清の対処法から地雷なのでしょうが、そもそもそんなものが効くとは思えませんし普通に迎え撃とうとしないで下さい。普通の封印指定は居場所がバレた時点で逃亡一択です」

「むぅ……」

 

 まぁいいや……

 

「おっと、ライダータイムです」

「ネクストタイム?私ベルト使えないけども」

「……サーヴァント、ライダーの時間です」

「ああ、サーヴァントね」

 

 さっきリバイブ使ってたのもあってそっちに向いちゃってた。

 

「キングストーンに振り回されすぎでは?」

「私じゃないよ、アインスだよ」

「彼女の夜天の書とパスが繋がっているので実質ウタネさんです。それより、私がライダーの相手をしていますのでウタネさんはマスターをお願いします」

「両方私がやるけど」

「いいですか、あくまで平和交渉ですよ?その点私は生粋のヴィラン、交渉など不能です。ので」

「ので……?私がしろと……?」

「はい」

「私ってば生粋の生命の敵だよ?より無理じゃない?」

「……シオンは中立なので」

「そうなっちゃうかー……」

 

 この子、最終目的だけで細かな作戦とか立てられないタイプだよね。私はその最終目標すら立てられないんだども。

 

「おや、まだ日が沈みきっていないというのに」

「……マスターの指示です。貴女方を始末します」

 

 ライダーが上空から強襲、ライダーを私に殺されないようライダーの攻撃を防ぐえっちゃん。

 

「では手筈通りに。なんとかお願いしますよ」

「まぁ、できる限りはやるよ」

 

 ライダーとえっちゃんを尻目にえっちゃんの指示したビルへ駆け込む。

 屋上にライダーのマスターがいるらしい。それはシオンの能力でも確認できた。

 

「シオン……跳んで」

 

 キングクリムゾン。

 時間にして30秒ほど、元の能力より長く跳べるらしいこの能力の中で階段や天井といった全てを無視して上空へ駆け上がる。

 足場は私の能力で作り出し、解除していく。

 ものの数秒で屋上と思しき高さまで跳んだからそこで屋外なのを確認して能力を切って貰う。

 

「うぉ……っと」

 

 魔力放出の加減が適当過ぎたのか、思ったより高くにいて屋上へ落ちる事に。落ちることに定評のある転生生活、まぁこのレベルなら良しとしよう。

 

「フタガミ!?」

「やぁやぁワカメくん。あなたの望みを叶えよう。代わりに、戦争から手を引いて私たちに協力してくれないかな?」

 

 なんと恐るべきことに、私を視認すると共に例の魔術攻撃を浴びせてきたワカメくん。その反射神経と判断能力……

 

「……なんだと?」

 

 やはり無傷で攻撃を無力化した私の話に怪訝な態度を見せるワカメくん。

 

「あなたの望みを私が叶える。あなたはサーヴァントを現界させたまま戦闘行動を終了し、二度と再開しない。ただこれだけなんだ。あなたとしては戦わずして聖杯が手に入るも同然なんだよ。早めに了承してくれないと、またセイバーやアーチャーが来ちゃうかも」

「く……!」

「さぁ、その本を渡してよ。私だって面倒は嫌いなの。下手したらえっちゃんがライダー倒しちゃうかも」

 

 止まない攻撃を延々と無効化して接近する私に、ついにワカメの攻撃が止む。

 

「お前らが!ただ受け継いだだけだ!ただ他人から貰った力でイイ気になってるだけだ!同じ条件なら……!対等な状況なら!僕がお前たちなんかに負けるはずが無いんだぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……」

 

 聞くに耐えない、人類の生態系の最下層。

 あまりのストレスに私は発狂しかけたけれども流石シオン、手綱を握って代わってくれた。

 

「……ならお前は、対等、五分の条件ならばオレにも勝てると?」

「そうだ!」

「なら今からそうなれば、お前はオレを殺せると?」

「そうだ!」

「そして勝ちさえすれば、他のマスターたちも同じようにできると?」

「そうだ!すぐにでも!」

「……いいだろう。お前に相応しい最後を用意してやる……『枯渇庭園』」

 

 この屋上、極めて小規模だがその風景を描き変える。

 風景は荒れ果てた荒野。鮮血神殿の方が不気味な程度の、取るに足らない風景だ。

 

「な、なんだ……!?」

「安心しろ、ここではただ魔力結合が不能になるだけだ。オレも、お前もな」

「……」

「そして話してやる。オレの能力。オレは現存する全ての能力を2つまで同時に使用できる。内1つがこれ、枯渇庭園。これでオレとお前の魔術師としての差は無くなった」

 

 未だに不意打ちを警戒しているのか、それとも固有結界すら知らないのか……狼狽し続けるシンジ。

 

「そして2つ目。ホラよ」

「……?なんだ、これ」

「……あんまり使いたかねぇが、アマゾンズドライバー。腰に巻いて左の取っ手を捻って『アマゾン』って言えばいい。やればわかる」

「……アマゾン」

 

 何の疑いも無くベルトを腰に巻き、アマゾンアルファへと姿を変えたシンジ。

 

「これは……!」

「分かるか?その力が。それがオレのプライム。お前は異形の果てに苦しんで死ぬからな。相性は良い。で、オレも同じ能力を使う……アマゾン」

 

 プライムで渡したものと同じベルトを装着する。

 

「同じ世界に同じ能力。お前は魔術を使えず、オレは能力を2つ使ってる。つまりは同等。同じ条件だ。この枯渇庭園の中でアマゾンアルファの力のみを持って殺し合う。何の不満も無いな?」

「あるわけないだろぉ!覚悟しろ!」

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