「うぉぉぉぉぉあぁぁあああああ!」
「……ふっ!」
無防備過ぎる飛び掛かりを躱して隙だらけの背中をブレードで斬りつける。
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁあ!」
痛みに負けてこちらを振り向いて尻餅。
「そこで怯むから次が来る!」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?」
その顔面へ回し蹴りを叩き込み、吹っ飛ばす。
こけた敵には蹴りが有効とどこぞの武蔵も言ってたからな。
「どうした、すぐにでもオレを殺すんじゃなかったのか?」
「黙れェェェェェェェェ!まだ何か隠してるんだろぉおぉおぉおぉ!じゃなきゃおかしいぃぃぃ!」
「アマゾン化して言語能力まで落ちてないか……?オレのは変身だけでアマゾン細胞の付与とか無かったはずだが……まぁ、隠してるわけじゃないがな。オレはお前の動きの未来が見える。だから同じスペックのお前の攻撃は当たらねぇんだ」
「それを知って同じにしたのかぁ!この卑怯者がぁ!」
「おいおい……同じにしろって言ったのはお前だろうがよ。それに魔術の世界に身を置こうとしてる奴が卑怯なんて口にするなよ。ついでに言うとな、この未来視はあくまでオレが見て、予測してるだけのもんだ。だからこれはオレ自身の能力。お前だって日本語使えるだろ?それと同じだ。ま、そんな事言い出したら能力も魔術も似たようなもんだが……」
「く……そぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
逆上して突撃してくるシンジを難なくいなし、その背中を蹴って勢いを付けてやる。
自身でも制御が効かなくなったスピードにシンジは転倒。
この数分と経たない内に見るも無惨な事になったな。
「大体な、お前がまだ生きてられんのはオレから貰ったその力のお陰だぜ?生身だったら初撃で死んでたぞ」
「……ヒィッ!」
「王には王の、料理人には料理人の……適材適所とはそういうもんだ。お前は、空振りした悪党として苦しんで死ぬ。それがお前の役割だ。これは余程の気まぐれじゃないと覆らない。そしてそれはオレが変えさせない」
ゆっくりと、本当にゆっくりと近付きながら両手を広げる構えを取る。
カウンター主体、一撃必殺というスタイルはオレの未来視、直死というスタイルに近いものがあり、十分に流用できる。直死は能力だから今は使えないが。
「やめろ……!来るな!僕の……僕のそばに近寄るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「それは無理だ……オレ達に賛同できないお前は……お前の条件を呑んでもそうならなかったお前は、姉さんの世界には必要無い。ライダーならオレがなんとか存命させてやるから安心しろ」
「うわ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「っと。ストップです。シオン」
拳を作り、振り下ろそうとするとネクロカリバーに止められ、結界も綻んでいく。
「……卿。どうやって入った?」
「仮にも神の権能付きルーラーなので。取り敢えず結界を完全に解いて下さい。何を殺そうとしてるんですか」
「……大体なんで判別できた。同じ能力だぞ」
「マスターが判別できず何のためのサーヴァントですか」
「……ライダーはどうした。まさか殺しちゃいねぇだろうな」
「意外にも手間だったのでライダーには両足で大人しくしていただきました」
しれっとした態度で謎の脚を一対、オレの足下に転がす卿。
膝から下の血に濡れたそれの主は装備品から一目で判別でき、その主がどうなっているかも容易く想像できる。
取り敢えずこれ以上はないだろうから結界を解いていく。
「……それどうすんだよ」
「繋げて貰おうかと」
「……オレに?」
「ほかに誰ができますか?」
「……もし消えたらとか考えねぇの?」
「早くしないとアーチャーにやられてしまうかもしれませんね。それならばそれで次のループではこうならないよう気をつけて下さい」
「……オレはかなり冷静だよな。そんな状態でもキレてねぇんだから」
「まぁそうですね。いやぁ、素晴らしい性格です」
「……ソラにツケとけ。貸し1だ」
「分かりました。ソラなら喜んで返すでしょう」
淡々とコレだ。VNAが関わると面倒にしかならん。いっそ卿もVNA入りさせりゃあいいんだが。サーヴァントは無理だしソラがそうさせないだろうな……
「……で、セイバーとアーチャーも到着してる、と」
結界が完全に解け、現実世界へ戻るとシロウと凛が見えた。
シロウとセイバーは前のめり、アーチャーと凛は後方から傍観の姿勢。それぞれ思いは別だろうが、いずれもオレを見据えてる。
「ふぅ……なんだよそのツラはよぉ。ライダーの無力化とマスターの懐柔。オレのやってること、間違ってるか?何かブレたりしたか?あ?」
「シオン。お前と話す気は無い。フタガミを出せ」
「シロウ。お前も随分と気が大きくなったな」
「戦争を止めようとするお前たちの方針には賛成だ。だがお前は慎二を殺そうとした」
「……わかんねぇなぁ。まぁいいや、パス」
首を倒し、切り替えを行い……私が来た。
「んで。何の話?」
「何で慎二を殺そうとした」
「殺すこと匂わせてた貴方に言われるのもなんだかなぁって感じだども。まぁ簡単に言うと要らなくなったから?」
殺す理由。いるかな。まぁ強いて言えば、要らないから。としか言えない。
「要らない……?」
「うん。もうソレは世界にマイナスしかもたらさない。ロスカット的な感じだよ。今やめさせてもいつか裏切ったら意味無いもん」
「そんな理由で殺していいハズ無いだろう!」
「ならもっとちゃんとした理由があれば殺していいのかな?こんな異常物品、処分しちゃいなよ」
「異常物品……?慎二の事か!?」
「そうだよ?自分に魔術の才能も資格も無いって分かってるのに魔術の世界で勝ち残ろうとしてる。意味分かんなくない?できちゃうから勝っちゃう、なら分かるんだよ。でもできないのに勝ちたい、って無理だよね?それを本気にしてる。異常でしかない」
「魔術だけじゃなくスポーツも勉強も同じことだ!勝ちたいから努力して!足掻いてるんだろ!」
「ウタネさん。長くなりますか?ライダーを保護してきたいのですが」
「あ……うん、長くなるかも……」
「では話が終わればまた」
「……えっと、全然別だよ。貴方の言うスポーツは例えば、貴方と遠坂さんが魔術で競ってどちらが勝つでしょう、って話よ?」
「……何が違う。絶望的な差に違いは無いだろ」
私の問いに冷静になったのか呆れたのか、口調も態度も大人しくなる。
絶望的。確かにそれは間違いじゃない。けれど正解は絶対的、だ。
ちなみにアーチャー組はマジで何もしない。後ろで突っ立ってるだけ。
「違う違う。貴方も遠坂さんも魔術を使えるんだ。だから一発逆転の可能性がごく僅かにでも発生する。けど腕が無い人間と衛宮さんが弓道で勝負だ、って話だったらどう?一発逆転どころの話じゃないでしょ?」
要は立場の話。同じ土俵に上がっているならその勝敗はまだ分からない。決定的に勝ち負けが分かっていたとしても、それが覆る可能性はまだ存在する。
けれど野球チームとサッカーチームが同じ土俵で戦えないように、魔術師と一般人では同じ土俵で勝負することさえできない。それが理解されないのが私は悲しい。
「じゃあ何か、慎二には勝つ可能性すら無いから殺していいと」
「うん」
「俺はお前を勘違いしてた。まさかそんな優生思想の塊みたいな奴だったとはな」
「……?ダメなの?」
「ダメに決まってる。どんな人にも生きる権利はある」
「でもその権利に見合った成果が得られないとマイナスだよね?」
「は?」
「人が生きてくのにどれだけ資源がいると思う?バカほど食べて使ってやっと生きていける人間が、それと同等以上を生産しないとマイナスじゃない。家畜だって作物だって不出来なのは間引くでしょ?マイナスは消そうよ。間違ってる?」
「お前……!自分や家族がそうなったらどうするってんだ!」
「死ねばいいじゃん」
「「「……!?」」」
「私の親が世界に要らないなら殺せばいい。なんなら私が殺してもいい。私が要らないなら殺せばいい。なんなら自殺していい。それで世界が良くなるなら、いいと思うけど」
「狂ってる……!」
驚愕する一同。自分だけが特別なんてあり得ないのに、当たり前のことに何を驚くんだろう。傷んだり壊れたパーツは破棄したり交換したり……いずれも例外は無い。
「そう?どうせ何も残せないんだから、何か残してくれそうな人たちへリソースを回す……まぁ、その最後が見れないのは残念だけども」
「決めた!俺はヴィーナスを倒す!お前みたいな奴を生かしておけない!」
「私達ってそういうものよ。私利私欲だけの集まりだもの。5人も倒し切れるかな。頑張ってね、正義の味方さん」
けどまぁ、この世界にいるのは私とシオンだけ。正義の味方の目標は絞れるわけだ。達成は不可能だろうけれどもね。
「まぁいいや、やっぱり長くなっちゃった。私達への宣戦布告のご褒美にそこのワカメくんはあげるよ。殺さないでね。ライダーも治したら返すから」
「待て!」
手を振りながら屋上から飛び降りる。
ふぅ……この世界も私の答えに足りるものは無さそうだなぁ……