ライダーの何がオレ達に協力させるのか分からないが嘘は見えない……なんだ?コイツも殺し合いは望まないとかそう言う奴だったか?
「まぁなんだ、酒くらい飲めるだろ。なんかいるか?」
「……そうですね、ではこの地で有名なものでもあれば」
「んー、日本酒、ぽん酒はオレもあんま飲まねーからなぁ……卿、なんか知らんか?」
「私は糖分以外のものは種類別でしか判別できませんので」
「……いいや、1番高いので良いだろ……なんだ?十○代?コレでいいか?」
「はい」
某密林の中で1番高かった。それだけだがまぁ誰も良し悪しが分からんからこの場ではこれが最上だ。
「ほれ、デカいか?無理なら残せよ……ってか、拘束切るぞ、卿」
「まぁはい。どうぞ」
「ありがとうございます」
ライダーの拘束を解いて座らせてから盃を渡す。
ライダーの体格に合わせてそれなりの大きさを渡したが飲めるのか?
「ん……卿、お前酒分かるか?」
「どうかしましたか?」
「いや、味が分からん。度数的にはまぁ満足なんだが何というか……水?」
「貴方方は少食偏食が過ぎて味覚が死んでいるのでは?ライダーはどうですか?」
「すみません……美味しいと言うことはわかるのですが、何分日本酒というものを飲むのが初めてなもので」
ライダーも目隠ししたまま飲んだが分からない様子。
まぁ、日本の英霊ではなさそうだしそりゃ飲んだことは無いわな。
「む……そうですか。私もお酒は似たものとしか認識してませんので……それが最上ということでいいでしょう。あと、ライダーはともかくシオンが泥酔したら斬りますから」
「……そんときゃ右の頬殴ってくれな。酒に強い姉さんに変われるから」
「人格ごとでアルコール耐性が変わるのですか……?」
「ふぅ〜……知らん。変わるヤツは変わるんじゃねぇのか。オレより姉さんのが強いからオレが酔ってても姉さんに変われば治るぞ。治るっても姉さんが平気なだけでオレに戻るとやっぱり酔ったままだが」
「多重人格も難儀なものですね。統一とかなさらないんですか?」
「あ……?統一?なんだそれ」
「多重人格者がそれぞれの役割を認識し、元の1人になることでより強い力を得る……ストーリーとしてありきたりですが熱い展開の一つとされています」
「……あのなぁ、オレが必要だから別れたのになんで戻す?1が別れて1足す1の状態が多重人格だ。分かれた人格は分かれる前より劣るのか?人格で足し算しても2にはならねーよ」
人間というものはそれはそれは不完全な生命だ。1人では自身の身に起こる全ての事象に対応できない。
だからこそ人は協力するために社会を構築し、互いの欠点を補い長所を提供し合っている。
そして多重人格はその社会を自身の内部で構築する事に似る。
ウタネができないことはオレができるように、ウタネができることはそのままに、オレがよりサポートできるように。
人は1人では限界がある。能力の上限こそ違えど、人は1以上にはならない。2人いれば2、3、4と相性でその合計を増やすことも可能だろうが、1人になれば1にしかならない。多重人格を統一するということは1以上だった合計を1に戻す作業だ。
オレが消えることに躊躇いは無いが、それをして良い結果にならないことは想像に易い。
「統一したとしてオレがいなくなりゃその翌週にはその世界は消えてるぞ」
「ソラが何とかするでしょう」
「アイツじゃ無理だろなー……抑止力ソラはその性質上ウタネと限りなく相性が悪い。姉さんを止められるのはオレだけだし、オレに勝てるのもソラだけだ」
「貴方方は対等と思っていましたが」
「対等に決まってるだろう。もしソラがオレを見下したり従属するようなことしてみろ、殺すからな」
「まぁ……VNAについてはもう言及しません。私もソラに喚ばれただけのサーヴァントですから」
「それは気にすんな。アイツは使い魔なんぞ喚ぶ奴じゃねぇから」
「では、何のために……?」
「さぁ。友人とかでいいんじゃねぇか?妹?分からんが、オレ達と大差無い関係を望んだと見ていいと思うぞ。知らんけど」
「そうですか……ありがとうございます。お礼に何か作りましょうか。おつまみ、何が良いですか?」
「おつまみ……?いらねー」
人間って酒の話してんのに食い物の話始める習性あるよな。七不思議の一つだろ。
「何か食べないと体にも良くありません。悪酔いもしますよ」
「酔う為に飲んでんだろ。何で酔いを妨害しようとすんだよ」
「健康に良くありません。負担が掛かるばかりです」
「それを気にするなら飲む資格はねーよ。包丁使って料理するのに指は絶対切りたくない、なんてバカしか言わねー。内臓使って飯を食うのに胃もたれはしたくない。なわけないだろ」
「その例えはどうですかね。胃もたれせず食事を摂ることは十分に可能です。それと同じようにアルコールの分解を助け二日酔い等の体調不良も対策することが可能です」
「自然じゃねーだろ」
「自然……?なんですか自然って」
「酒、アルコールなんてのは薬物だ。飲んで即死しないだけで食い物じゃねぇ。醤油飲んでるようなもんだ。そんなキチガイが対策なんざするのが自然じゃない。バーサーカーが工房を構えるのか?」
「屁理屈ですね。普及した行為はどれだけ奇妙なものであっても普通人です。宗教であればどれだけ正気を失っていてもそれは正常なものです。貴方の嫌う日本人の米信仰も同じです」
「まぁ、オレは中立だからな……じゃあ、ニンニクの素揚げでいい。あと玉ねぎの天ぷら。小麦粉とかは下の棚にあるはずだ」
「初めからそう言えばいいのです。少々お待ちください」
卿が台所へ姿を消す。
……小麦粉はあるがニンニクも玉ねぎもあったか?残ってた記憶無いが。天ぷら粉?んな調理法が限られたもんは置いてない。ただでさえ食が細い姉さんだ、保存できる食材は汎用性が全てだ。
「へいよ……ライダーはどうだ、何か食うか?」
「いえ……大丈夫です」
「酒はそこそこ強いのな。日本酒ストレートなんて日本人なら死人が出てもおかしくねーのに」
「そうなのですか?」
「らしいぞ、幸いこの体は素が強いからオレでも多少は飲めるからな」
アレルギー……と違うのか知らんがな。酒に弱いのは黄色人だけって聞いたことある気がする。
「まぁいいや、お前、俺達に協力するって言うが、聖杯にかける望みは無いのか?あ、内容まではいいぞ、あるなしで答えろ」
「さぁ……強いて言えば、現界してから叶えたい願いはできましたが……」
「それは聖杯とは関係無いのか?」
「あると言えばありますが、貴方方の方針でも叶えることは可能と判断しました」
「ふーん……ま、いいよ、それで。オレや卿を裏切ったところで何にもねーからな」
「何も?」
「何もねーよ。オレを裏切って殺そうとも、戦争を優位にしようとも、大したことじゃない。結果は同じだ」
「……では、私が甘味で懐柔されるとどうでしょうか?」
「いつから戻ってた。あとニンニクあったか?」
「無いので戻ってきました。やっぱりおつまみは諦めてください」
「へいよ……ま、お前が誰につくかはお前の自由だ。元々オレはオレ達以外を味方とは思ってない」
「私のマスターだとしてもですか」
「だとしてもだ。令呪は使う気は無いし、お前はそのお前である限りソラのサーヴァントだ。頼みがあれば聞いてやるし、多少の頼りとすることもあるだろう。だがオレはそれだけだ」
「では……ウタネさんが敵に洗脳され、シオンに牙を剥いた時……どうしますか」
「では、の意味がわからないが……味方に数えられなかったのにスネてんのか?ま……姉さんだけは完全な例外だな。そうなればオレは自殺するだろうな」
「どのような場合でも?」
「敵が容易に打破できても、洗脳術が子供騙しのものであろうとも、オレが姉さんと敵対することだけは無い……いいかお前ら。オレといるつもりならこの先覚えておけ。姉さん……ウタネに何かしようもんなら、オレは空間も時間も次元も概念も全てを超えて殺すからな」
「「……」」