聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第29話

「頼りにしてた同盟2人の敵対だろ、んで教会から既に諜報の手が伸びて来てるしそれをやっちまったのもバレてんだろ?ふっう……しかもバーサーカーがよりにもよって十二の試練だぞ?やべーなこれな」

 

 学校の制服に袖を通しながら現状を言葉にして明確にする。

 やべぇ状況だよなこれな。やべーってだけで対策を考える頭がねーのが問題なんだよな。全体の把握が一切できん。やべー。

 

「朝からお酒飲んで言うことではないですね……」

「寝てねーからまだ夜だ。夜に飲んでても世間的には何の問題も無い」

「シオンの中では夜でも世間的には朝なので問題ありですね」

「……中々目の付け所が鋭いな、卿」

 

 オレにも姉さんにも無い視点とは……中々やりおる。

 

「徹夜で飲酒続きです。もうまともな思考回路はしてませんね」

「いいやぁ?敵対した奴全員神威って手と全員半分D4Cって手があるな」

「問答無用で拘束しようとしないで下さい。にしても……本当に学校へ?」

「オレは高校生だからな。学校にはちゃんと行くさ。それがオレの役割だからな」

「しかしセイバーもアーチャーも恐らく休みです。戦争の参加者なら登校は控えるべきでは?」

「戦争に参加してる魔術師ならな。オレ達は魔術師でもなければマスターでもない……オレ達はあくまで暇つぶし。ロリコンにふっかけられた世界で縛られた暮らしをするオモチャに過ぎん。じゃな。お前はライダー見てろ」

 

 鞄を持って玄関を出る。

 出てから思ったが鞄持つ必要ねぇな。バビロンでも神威でも突っ込んどけば手荷物ゼロにできるな。

 

「あ……」

「お、おう。シオンか?」

「うん……まぁ、そうだよ」

「そうか……」

「「……」」

 

 登校中にバッタリ鉢合わせ。

 いざこざのせいもあって2人して黙り込む。

 

「衛宮さん、それでいいの?」

 

 何をするでなく、揃って登校する中で口を開く。

 ちなみにセイバーは巧みに正義の味方を尾行していた。

 

「なんだよ、急に」

「ヴィーナスを殺す、そう言うからにはすぐさま飛びかかってくるのかと思ったよ」

「そ、そんなことするかよ。大体、今そんなことしたら俺がただの変人に見られるだろ」

「ん……?ああ、世間ではそうだね」

「お前がヴィーナスとして動くなら止めるけどな。今は学生として来たんだろ」

「そんなの教会からは無意味だよ。今こうしてる間にも着々と私を観察して捕獲する手順を整えてるハズだし」

「よくそんな状況で平然といられるな……」

「ん、まぁアレだよ。例えどんな魔術師だろうと、私達には敵わない。せいぜい白熱する暇つぶしの準備をしておいてねって感じ」

「……」

「ん?」

「フタガミ……ウタネ。シオン。俺はお前たちがヴィーナスとして行動しないなら、お前たちも守りたい」

「…………………………は?」

 

 ……………………………………………………………………は?

 

「バーサーカーから俺たちを逃がしてくれただろ。あれから考えたんだ。俺とお前たちの違いを。お前たちの行動が確かな実力に裏付けされた余裕ということがまず一つ、そして俺の行動が理想に執着した未熟者の必死さということだ」

「……まぁ、間違ってはいない」

「だから俺は決めたよ。俺が今俺としてあるのは理想があるからだ。正義の味方。俺は理想を絶対とすることに決めたよ。何がなんでもな」

「今それを諦めないと殺すって言っても?」

「ああ。衛宮士郎は正義の味方を志す。例えそれが自分の死であろうとも、世界の破滅に繋がろうとも」

「破滅ね……」

 

 心当たりがありすぎる。

 今まで使った能力。その1つでさえ本気で使えばそれだけで戦争を勝ち抜くことが可能だ。

 

「まぁ、私達はそれを止めないよ。ウタネも私も、他人を縛ることは無いから」

「お前がそういうとそうなるんだな。本当に頭おかしい奴に見えるぞ」

「あ……その辺が問題だよね。前はそんなことなかったから……と言っても今更変えるわけにもいかないし……」

 

 私とウタネ。確かに聞けば意味不明は文言だ。オレという一人称の代替として私を使ってるはずがウタネを指示する言葉になってる。オレとしてはオレと姉さんの2人を指すつもりが、聴く側からすればウタネを2回指示してしまうようになる。確かに訳がわからん。

 

「とにかく、バーサーカーのことは助かった。ありがとな」

「それも気にしないで。今貴方を殺すことに決めたから」

「何でだよ!?」

「気を使ったから?」

「ただの感謝だ!」

「感謝は……気遣いでは、ない……?そんなバカな」

「飯食い終わったらごちそうさまって言うだろ、それと同じだよ」

「………………すまん、サッパリ意味が分からないからオレだけで考えさせてくれ。姉さんに代わるから」

 

 感謝は相手への気遣いではないのか……?ごちそうさまって言うのは日本のマナーだよな?マナーは気遣いじゃないのか?それとも現代日本ではその2つは必ずしも同一ではないのか?

 とりあえず姉さんへパス。サッパリだ。

 

「ふぅ……と。えーと……おはよう?」

「お、おはよう。フタガミか?」

「私だろうとシオンだろうとフタガミだよ。そして……ハロー、教会の狗くん。次のゲームは何かな」

「なっ!?」

 

 私が出た途端に気配を見せた……教会の人間。

 展開された人避けの結界は私と魔術師である衛宮さん、セイバーを除いて周囲の人影を即座に消した。

 見た目は短い白髪を雑なオールバッグに纏めた褐色。アーチャーと一瞬見間違う……程ではないけど近しいもの。

 

「衛宮さん、アレはちゃんと人間だよ。アーチャーじゃない」

「あ、ああ……」

「フタガミウタネ。ヴィーナスの他はどうした。3人いなければヴィーナスの保護は成立しない」

「さぁね。私からは見えないどこかだよ。3人っていうのがカン違いかもよ?」

 

 私とシオンが別人と認識できる人間がどれだけいるかな?

 

「考慮しておこう。取り敢えず1人だけでも良い。治療はしてやる。抵抗はしない方が楽だぞ」

「フタガミ!」

「そこのマスター。お前は離れていろ。その程度の魔力では死ぬぞ」

 

 男が警告だ、とばかりに魔力を放出する。

 確かに衛宮さん程度では死んじゃうレベル。流石は教会の使いだね。

 

「いいよ衛宮さん。離れてセイバーといた方が良い……それで?抵抗はしないよ」

「フタガミ……」

「シロウ!こちらへ!」

 

 セイバーが接近、即座に衛宮さんを抱えて距離を置いた。

 

「ほう?大人しく保護されるというのか」

「私はここに突っ立ってる。好きなだけ殴ればいい、蹴ればいい。切ればいい。撃ってもいい、燃やしても凍らせてもいい。貴方は男だ、衛宮さんの前で私を陵辱するも良い……それができれば、だけどもね」

「面白いッ!」

 

 男が力を込めると、その全身にオーラのようなものが纏う。

 

「この状態でなら俺はサーヴァントすら上回るパワー、スピードを持つ。ヴィーナスの力を信頼するぞ。即死だけはしてくれるなよ」

「ほーん……」

 

 そして次の瞬間には私の目の前に立ち、拳を振りかぶっていた。

 

「はぁぁぁぁぁあっ!」

 

 拳は正確に、何の感情も見せず私の胸を捉えた。

 一撃必殺、そう言うに相応しい衝撃が私を伝って地面を揺らす。

 

「な……」

「初手から胸触ろうなんて中々ね。焚き付けた私が悪いんだども」

「バカな……!?」

 

 攻撃は私の能力で保護された私の胸……の防御、空気数ミリを貫通することなく、そのまま全身の能力を通して地面へ全て逃げていった。

 驚愕する男を前に私は宣言通り何もせず口だけを動かす。

 

「じょーだん、じょーだんだよ。ケーサツ呼んだりはしないから。次はどうする?蹴る?組み伏せる?降参する?逃げる?」

「……っ!」

 

 戦闘において、私の身長、体重、筋力、体力、スピード、パワー、テクニックは、その全てが不足している。まともに殴り合おうものなら、中学生にだって勝てやしない。

 ただし、戦争においては話が別だ。

 こと存在を賭けた闘争において、世界の非生命全てである私の能力の前に一個人の限界やら才能やらなんてお話にさえなりはしない。

 

「何?何もしないの?もう終わる?」

「っ!」

 

 固まった男に声をかけてみるとハッとして後ろへ跳ぶ。

 

「パワー自慢ならもうネタは出てるよ。私達を追うのにそれくらい調べないのかな」

 

 確かにこの男の力は平均的なサーヴァントを上回るだろう。だがそれだけだ。ソラの20〜40%程度。私達からしてみれば最低限欲しい能力値。

 そこから更に特筆する何かが無ければ、足りない。私達をどうこうするには、絶対的に。

 

「そもそも何で1人?教会ってのは色々数を動員すると思ったたけども。結界張った人とで2人。あと何人いるの?それともいない?教会が私達に抱く印象はその程度?」

「……!」

「いいよ、もう帰って」

「フタガミ!?」

「どういうつもりだ」

「どーもこーもないよ。今度はもっと準備してきてねってこと。エラそうな取引先みたいな態度でごめんね、さっきから。でもさぁ、私達を追ってるってならさ、もっと戦力揃えない?コピー男消えちゃったから貴方も探りなの──」

 

 個人の能力としてはとても高い。それこそ遠坂さんでさえ勝てないであろう程の洗練された能力だ。並大抵の封印指定なら戦闘に特化していなければ……あ、そっか。

 封印指定って……別に戦って強いとは限らないんだ。

 あくまで根源へ辿り着くのが魔術師の本質。その過程として強くなった魔術師もいればまるで戦力を有さない魔術師もいる。

 まず私を探りに来たのは、戦闘向きかどうかを調べに来たんだ。

 そしてこの時点での特攻紛いの襲撃で本体ないし装備で戦うのか、結界等を敷いて引き篭もるかを判別しに来た。

 つまりは、割と本気で私達を分析しにかかってる。多分他にもまた誰かいる、もしくは遠見か何かで見てる……

 

「よし。衛宮さん、セイバー!掴まって!」

「「!?」」

 

 魔力放出で無理矢理衛宮さんとセイバーに触れる。そして即座にシオンとチェンジ。

 

「マジで感謝と気遣いの違いを教えてくれ!教会!次までに調べとけ!」

 

 オーロラカーテンで撤退。

 結界内だから誰にも見られてねぇ。セーフだろ。考え事の邪魔しやがって。殺すぞ。




シオンの能力で色々な出典使いたいけど狭く深くのタイプなので作品数が増やしにくい。
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