聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第30話

「……おいセイバー、周囲にサーヴァントの反応は?」

「ありません。ルーラーは同行していないのですか?」

「ライダーの護衛で家にいる。シロウ、お前も気を抜くな……」

 

 オーロラカーテンから学校の人目につかない場所へ出てから校庭を見て即座に警戒態勢を取る。

 セイバーも武装こそしないものの見えない剣を出し、周囲の死角に目を凝らしている。

 

「登校時間は近い……朝練の部活もあるだろう。遅刻寸前の奴らもいるだろう。人がいないのは何故だ?魔力の反応さえない。サーヴァントでも教会でもないとすると……」

 

 オレ達か?いや、そんなことができるのはアインスだけだ。そして同じ世界にいるなら夜天の書の契約を通していると分かるはずだがそれも無い。

 

「「……」」

 

 オレとセイバーがシロウを挟むように周囲を警戒する。

 先の教会のこともある、朝っぱらから堂々と来てもおかしくはない。

 

「なぁ……」

「なんだ!強化は成功しそうなのか?」

「シロウ、今貴方は素手だ、何があっても私のそばを離れないように」

「いや……もしかして今日、学校休みじゃないか?」

「「……」」

 

 ……そんなバカな。

 

「ライダーの事件があったばかりだ。フタガミのお陰で重症になった奴らは少ないらしいけど何人かは入院したりしてるからな。確かしばらく……」

「何故それを早く言わない!?セイバーはともかくオレが早とちりなんぞしたら笑い者だ!」

「何を!私とて騎士の端くれ!その様な愚行を何故眺めていたのです!?シロウ、貴方は騎士を愚弄するのか!」

「待て!待て待てお前ら!落ち着けよ!だってこれだけ生徒がいないのは不自然だろ!」

「「だから警戒してたんだよ(です)!」」

 

 これマジか。確かにライダーの結界は休校するレベルの被害は出ただろうが……相当早めに止めたつもりだったんだが。取り敢えず教会って事はなさそうか。姉さんのカンもそう言ってる。

 

「ほら、ちょうど先生がいたから聞いてみようぜ。セイバーは隠れててくれ。葛木先生!」

「ん、衛宮……とフタガミか。どうした、今日は一律休校のはずだが」

「あ、やっぱりそうなんですね。俺たち、つい忘れてて来ちゃったんですよ」

「そうか。だが授業も部活も停止中だ。今日は大人しく帰れ」

「はい。失礼します」

「失礼します」

 

 これマジか。普通に休校だったぞ。頭悪いことしたな。

 

「……えーとだな。帰るか」

「しかないだろ」

「送ってやるよ、来い」

「またあの能力か?」

「便利だろ。あらゆる世界へ繋がる夢のオーロラだ」

「ああ……それが敵となると脅威だよ」

「敵?」

「だってそうだろ。俺や遠坂はヴィーナスを殺そうとしてるんだぞ」

「だったら今殺せばいい」

「だから……」

「オレ達がそうしないなら戦わない、だろ。言っておくが、オレはお前らマスターとサーヴァントの誰の敵でもない。お前らをそのまま生かす立場だ」

 

 シロウとセイバーを家に送り、オレもそのまま自宅へ帰った。

 

「おや。やけに早いですね。早退ですか?」

「バカか。とんだ無駄足だった」

「そうですか。私が作ったものでよければ余りのお菓子がありますよ」

「ああ……貰おう。少し寝る。サーヴァント同士が近づく様なら起こせ。すぐ向かう」

「日中ですからしばらくは大丈夫でしょう。おやすみなさい」

 

 ♢♢♢

 

「キャァァァァァァ!」

「藤ねえ!」

 

 キャスターの竜牙兵を木刀が砕き、藤村大河を背に庇う。

 

「大丈夫か!藤ねえ!」

「な、なんなのこいつら……」

「説明は後だ、ここは危ないから、藤ねえは向こうに……」

 

 衛宮士郎の背中からブスリ、と肉に刃物が入る音。

 

「な……藤ねえ……?」

 

 背をまともに刺された衛宮士郎は膝をつき、信じられない、という表情で藤村大河を見る。

 

「──あら残念。せっかく趣向を凝らしたというのに」

「キャスター……!キサマ!藤ねえを放せ!」

「おっと動かないでもらいましょう。この女がどうなってもいいのかしら」

「……!」

「シロウ!言いなりになってはいけません!」

 

 反撃の意思を失くしたマスターにセイバーが叫ぶ。

 セイバーは人質を気にすることなく武装を纏いキャスターへと向かう。

 

「やめろ!セイバー!」

「!!」

 

 キャスターの白兵戦能力はセイバーとは比べるまでも無い。

 しかも場所は衛宮邸の室内、キャスター特有の陣地作成も意味を成さない。藤村大河に多少の傷は出来ようが、命に関わる前にキャスターを攻撃できる事はほぼ確実であった。

 それでも衛宮士郎は藤村大河の身の安全を選んだ。自身の勝機を捨ててでも。

 

「ふっ」

 

 その隙を突いてキャスターがセイバーに拘束魔術を掛ける。

 

「……!セイバー!」

「甘い!」

 

 しかしセイバーは自慢の対魔力を存分に発揮、拘束を即座に破壊する。

 

「中々ね、流石は最優のサーヴァント」

「戯言!ここで斬り伏せる!」

「あら……これでもかしら」

「……ッ!」

 

 突っ込んだセイバーの前に藤村大河が壁として立ち塞がる。

 

「貴女もまだ甘いわよ」

「な……!」

 

 動作を止めたセイバーの背後に回り込み、振り返ったセイバーの胸元に歪な刃を突き立てる。

 

「セイバー!?」

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)

「何を……」

「観念なさい。これからは私がマスターとなってあげましょう、セイバー」

 

 膝をついたものの外傷の見えないセイバーに、キャスターが左手の甲を見せる。

 

「まさか!」

 

 衛宮士郎が自身の左手を確認する。

 そこには2画残っていた令呪が、使用済みの状態ですらなく完全に消失していた。

 

「さて、まずは手始めにそこの坊やを殺してもらいましょうか」

「ぐっ……!シロウ、逃げてください。令呪を乗っ取られた……私が令呪に耐えられるのは一度が限度。残り2画を使われればまず間違いなく……!」

「あらセイバー。令呪に耐えられるのね。ならここでの使用は控えておくわ。坊やを殺すのは貴女である必要は無いもの」

 

 そう言ってキャスターはセイバーをどこかへ消した。

 

「キサマ!」

「坊や、貴方を殺すのはこの女よ。まぁ、貴方がこの女を殺すなら、そうはならないでしょうけれど」

「く……!」

 

 衛宮士郎が即座に木刀を構える。

 しかし争う意思の無いのは明白。ただ藤村大河に傷を負わせまいという構えだ。

 

「すまん藤ねえ……っ!」

「その必要はありません……シオン」

「『神威』『月読』!」

 

 飛び込んだシオンが神威で藤村大河の背後へ回り込み、月読で昏睡状態へ追い込む。

 

「さてキャスター。前言った事、覚えてるか?」

「……お断りしたはずよ」

「陣営を固めれば監督役も動く可能性がある。オレと監督役を敵にするリスクよりセイバーを諦める方が堅実だと思うが?」

「そうね。アナタは確かに脅威だわ。けどそれだけよ。それじゃあね」

「っ……」

 

 シオンもこの場でどうこうする気は無かったのか、あっさりとキャスターを逃がす。

 

「シロウ!」

「遠坂!?」

「まさか……セイバーが……?」

「ああ……」

 

 そこにアーチャーを連れた遠坂凛も参入。全員が現状を把握する。

 話によればキャスターの魔力反応が見つかったので追っていれば辿り着いたとのこと。

 そしてヒロインXオルタによる現状説明がされた。

 

「くそ……!俺のせいで……!藤ねえとセイバーが……」

「……そうだな。大方お前が選択を誤ったのだろう。どうだ、正義の味方を志した甘えた理想の果ては」

「アーチャー……!何が言いたい!」

「お前は甘過ぎる。凛と比べても魔術の力量は雲泥の差だ、最優のセイバーと言えども既に令呪を1つ使い、後がない。仮に今日の事がなかったとしてもお前が勝ち残る事はない」

「ふざけるな……っ!」

 

 衛宮士郎が逆上しアーチャーへ木刀を振る。

 しかし何の強化もされていない木刀はすんなりと受け止められ、裏拳を腹に受け壁に叩き付けられる。

 

「がっ……!」

「衛宮さん!」

「ふん……サーヴァントと令呪を失った貴様はただ魔術の存在を知るだけの一般人だ。鍛錬しても人を救うに至らないレベルの魔術、そんなものはさっさと捨てて普通の人生を過ごすがいい。ただし、次に見かければ殺す。行くぞ凛。既に用は無い」

「ええ……」

 

 アーチャーと凛がそのまま退室。

 衛宮士郎は床に倒れたままギリギリと歯軋りをする。

 

「俺は!魔術を極めたいんじゃない!人を助けるにはそれしかないから……!助けられる力は魔術しかないから!ぐぅ……!だからぁ!」

「衛宮さん……」

「シオン……!俺にも、力をくれ……!慎二と同じような、自分で戦える力をくれぇ!」

 

 ヒロインXオルタの声を遮り、シオンに掴みかかる。

 シオンはそれを冷めたままの目で見つめ、変わらない口調で返す。

 

「……プライムは個人の適性に大きく左右される。オレが選んだとてお前と適合するかは分からない。最悪死ぬ」

「頼む……!」

「断る。令呪が無い以上お前はマスターじゃない。最悪キャスターが全ての令呪を手に入れるならそれはそれでアリだ。少なくともキャスターとアサシン、セイバーではバーサーカーに対抗するのは不可能だからな」

「シオン!」

「うるさい。何が何でも正義の味方を志すんだろ。サーヴァントという道具を失ったからって急に人に頼るな。婚期逃してやっとこ付き合えた相手に捨てられた女かよ」

「慎二には軽く渡したそうじゃないか!」

「それはアイツがマスターだからだ。マスターはオレが保護してやるし敵対するなら生きるだけの力をくれてやる。だがお前は……既にアーチャーの言う通り、ただ魔術を知る一般人だ。オレが能力を割く必要は無い」

「俺だってマスターだ!キャスターから令呪を奪い返せば……!」

「現時点ではマスターでもなんでもない……だろ」

「……それは……そう……たが……」

「……はぁ。これでお前を突き放せば、オレ達が嫌がってる世界と同じことするハメになるわけか。仕方ない。卿、とりあえずコイツは保護する。それでいいな?」

「はじめからそうして頂けないと困ります。全員生存、ですからね」

「くそ……やれやれ、だ」

 

 一方的に突き放していたシオンが折れ、衛宮士郎を掴んでオーロラカーテンをくぐる。

 不透明なオーロラを挟んだ先は使用者の望む時間、場所へ移動する。シオンが選んだのは同時刻の自宅だった。

 

「とりあえずホレ、この部屋にいろ。最悪死なん」

「……っ、ライダー!?」

 

 衛宮士郎が連れ込まれた部屋には、例によって大の字に張り付けられたライダーと何やら難しそうな実験機材の数々。

 

「ああ……そういやいたな。わり、忘れてた。この部屋使うわ……んじゃ姉さんの部屋使ってくれ。台所もトイレも風呂も自由にしろ。タオルとシャンプーとかは脱衣所に纏めてるはずだ」

「はずって……」

「基本オレは使わないからな。姉さんの管轄だ」

「余計に使えるか!ふざけんな!」

「じゃーどうする」

「買いに行く!てか家に取りに行く!」

「そりゃ無理だ。もう日が落ちてる。キャスターはお前を殺す気ではいるようだし、ランサーやバーサーカーは言わずもがな、アーチャーだってそうだろうな。そんな状況でお前1人……死ぬしかないぞ」

 

 キャスターの元にはアサシンとセイバーがいるため、ライダーを除いた全陣営が衛宮士郎を殺す理由と必要がある。

 その中で日が落ちた街を歩くのは、例え人目があったとしても正気とは言えないだろう。

 

「……」

「諦めて女の部屋で寝て女モンのシャンプーとか使えよ。何しても文句言わねーから」

「何もしねーよ!」

「へーへー。とりあえず卿に何か作ってもらえ。んでどうするか考えとけ。話は明日の朝に聞く」

 

 そういうとシオンはまたオーロラカーテンを使い衛宮士郎を台所へおいやった。

 

 

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