聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第38話

「……何のつもりかな、ルーラー」

「こちらのセリフです。アーチャー。キャスターもそのマスターも、殺すことは許しません」

 

 教会地下の一室、階段上に立つアーチャーとその周囲に浮かぶ無数の刀剣。それが階下の戦闘をいつでも終わらせると見下ろしていた。

 

「私は最も勝算の高い方に立つ。キャスターも葛木も手負いの状況だ。セイバーも君が抑えている以上、始末するなら今が好機だと思うがね」

「この状態で死んでいいのはプライムを受けたシンジさんだけです。彼だけ運悪く貴方の流れ弾が当たってしまっているではないですか」

「流れ弾なもんか!ルーラー!君は僕だけ庇うつもりがなかっただろ!」

「能力無しのシオンに勝てない部外者なんてどうでもいいですからね」

「なら何で慎二を戦いに誘い入れた!」

 

 非難する慎二にさも当たり前と言い放つルーラーに、士郎は苛立ちを見せる。

 

「貴方の盾になればと思ったのですが……気に入りませんでしたか」

「気にいる訳ないだろ!この俺が!」

「……そうですか。でしたらそこのアマゾンは用済みです。大人しく帰って今まで通りの加害者生活を送って下さい」

「……!そんな言い方しなくてもいいだろう……!」

「何か違いましたか?私は元ヴィランです。その生き方がどうこうは言いません。ソラの考えからしても貴方は人理にそう大きな影響を及ぼしません。どちらにせよどうでもいい存在です。生き延びたければ逃げればいいです。アーチャーに殺されなければ、ですが」

「それは不可能だ。この中にいる限り私の必殺圏内。サーヴァントであるならこれらを防ぎながら私を倒せばいいが……現状、ルーラー以外は消耗が大きくそれをするだけの魔力は無い」

 

 唯一の出入り口を、しかも階段という唯一の道の上から防ぐアーチャー。この場から逃げるには、アーチャーの上からの攻撃を防ぎつつ階段を登り、アーチャー自身を突破しなければならない。

 つまりは、この場にいるルーラー以外、不可能に近いという訳だ。

 

「……とりあえずキャスターさん。現状は理解されていると思います。死にたくなければ……マスターを死なせたくなければ、私に協力してください」

「それしかないようね……どうするのかしら?」

「貴女は自身のマスターと共に自衛をお願いします。守りに徹すればアーチャーの攻撃は防げるはずです」

「ええ……あの子たちは構わないのね?」

「貴女にもそこまで余力は無いでしょう。彼らは私が守ります……衛宮さんたちは私の後ろへ。セイバーさんも無理はしないよう」

 

 キャスターは自身の周囲に防御結界を敷き、攻撃に備える。

 ルーラーは3人を背後に庇い、セイバーの隣へ。

 

「ふん、守り一辺倒かね。現状打破するならば今のうちだと思うぞ、凛。長引けば長引くほど……」

 

 アーチャーが腕を振るうと、周囲の刀剣が一斉に階下を襲う。

 

「く……!」

「はぁっ!」

「消耗するのは君たちだ。次第に追い込まれるだけだぞ」

 

 ルーラーとセイバーが迎撃するも、圧倒的な数に幾らかの負傷を避けられない。数度繰り返せばまともな行動すら不可能になるだろう。

 そして、ルーラーが力尽きればアーチャーの攻撃を防ぐことはできなくなる。

 

「アーチャー!お前はマスターの遠坂を裏切ってまで勝ちたいのか!」

「……衛宮士郎。お前は何か勘違いしている。私は別に凛を殺す気は無い。キャスター、セイバー、ルーラー、これだけの戦力を最小の労力で排除できればそれでいい。だがやはり、お前も殺しておかなくてはな。サーヴァントを失ったとしても、正義の味方などという甘い理想の元でお前は何かをやらかすだろう。無関係の市民を巻き込む何かをな」

「なんだと……!」

「力無き者は強き者に従うしかない。お前の掲げる正義が、罪なき弱者にとっての悪となることもある。正義の味方など、この世にありはしないんだ」

「違う……違う!トレース・オン!」

「衛宮さん!?」

 

 士郎が木刀を強化し、ルーラーの静止を振り切って階段に走る。

 

「未熟な魔術を使うのも限界だろう」

「ぐ……っ!があぁぁっ!」

 

 二振りの刀剣が飛ばされ、一つ目の剣に木刀を合わせるも持ち堪えることなく粉砕された。

 そして二つ目の剣により右脹脛を貫かれ、階段を転がり落ちる。

 

「衛宮士郎。お前は甘い。死にたくなければそのまま魔術を捨てて大人しくしていろ。それ以上抵抗するなら今度こそ殺す」

「……俺は!聖杯戦争に勝ちたいわけじゃない!魔術を極めたいわけでもない!ただ俺は正義の味方になる!魔術はその為の力、その為の覚悟だ!」

「ふん……くだらん」

「今の俺が敵わないなら、敵う力を使うだけだ!ぐぅ……っ!投影……開始!」

「……!」

「これで……!がはっ!お前と……同等だ!」

「確かに……系統としては同じだな。だが、その程度の力では……」

 

 士郎が投影した刀剣と全く同じ物をアーチャーが生成、投擲する。

 

「ぐわっ!」

「私の足元にも及ばない」

 

 触れ合った剣は一瞬持ち堪えるも砕け、魔力に還元されて散る。

 

「衛宮さん!それ以上は無理です!貴方の身体が持ちません!」

「そんなことで!諦めない!」

「正義の味方というなら、私が最もそれに近い」

「ふざけるな……必要なものしか救おうとしないお前を、正義の味方なんて認めない!例え自らを滅ぼしても、誰から嫌われようとも!1人でも多くの人たちを救う!それが正義の味方だ!」

 

 刺さった剣を抜き、立ち上がりながら言い放つ士郎のポケットの中から何かが光を放つ。

 

「……っ、これは……?」

「衛宮さん!これを!」

 

 士郎が取り出したのはシオンから投げ渡されていたウォッチ。色の無いまま受け取ったそれが、今は明確に色を表している。

 それを見たルーラーが士郎にジクウドライバーを投げる。

 

「ベルト……?」

「シオンから預かっていました。もしものことがあれば、と。使い方は、分かりますね?」

「……ああ!」

《ゲイツ!》

「変身!」

 

 ジクウドライバーへゲイツウォッチを装着、コンパクトなフォームで即座に変身する。

 

《仮面ライダーゲイツ!》

「はあっ!これなら……行くぞ!アーチャー!」

《ジカンザックス! You!Me! 》

「はぁっ!」

 

 プライムを完全に受け取ることで能力の使い方を理解した士郎がゆみモードでアーチャーへ攻撃を仕掛ける。

 

「……甘い」

「く……」

 

 しかしそれもアーチャーに相殺される。

 

「お前では私に届かない。それがまだ分からないか?」

「黙れ!」

「同じだが格が違う。2人の救い手の力は、お前が生涯持ち続けるものだ。1人目から受け継いだ魔術はお前の努力次第で改善されていくだろう。だが2つ目の能力は不全だ。正義の味方になるには足りない」

「知った口を……お前に俺の何が分かる!」

《タイムチャージ!》

 

 士郎が飛び上がり、アーチャーを正面に弓を構える。

 

《5・4・3・2・1……ゼロタイム!!》

 

「てぁぁぁぁぁぁぁ!」

《キワキワ撃ち》

 

 階段柵ごと巻き込んだ攻撃は爆発とともに煙を起こす。かすかに見えるアーチャーの刀剣は次第に消えていく様に見えた。

 

「よおおおぉぉぉぉぉし!よくやったぞ衛宮!これで奴も木っ端微塵だ!」

「うるさいわよ慎二!私のアーチャーが……!」

「うるさいとは何だ!僕たちは殺されかけてたんだぞ!」

「そんなことどうでもいいわよ!私が殺されるわけないでしょう!?」

「っ!大体君はその傲慢な性格をどうにかした方が良いと僕は思うけどね!」

「何ですって?貴方如きがよくこの私に向かってそんな口が……え」

「アーチャーは……存命ですよ、皆さん」

 

 アマゾンと魔術師の小競り合いを中断するように電子音が響く。

 

《リ・バ・イ・ブ剛烈! 剛烈!》

 

「な……」

「アーチャーがシロウと同じ力を……?」

「アーチャー……まさか、お前の真名……」

「仮面ライダーゲイツ。預言者に渡されたこの力、それはこの身の未熟な魔術を補い、より高めるに最適な能力だった。そして、世界に身を売り渡したその瞬間から手にしたのが真の救世主としてのこの力だ」

 

 ゲイツリバイブ。ゲイツウォッチとゲイツリバイブウォッチによる仮面ライダーゲイツの強化フォーム。リバイブ剛列とリバイブ疾風により圧倒的パワーとスピードを発揮する。

 

「く……シオンはまだ……っ!衛宮さん!どいて下さい!我が暗黒の光芒で……」

 

 緊急事態を察したルーラーが士郎を押し退け宝具を起動、ネクロカリバーが怪しい光を放ちながらルーラーと共に飛び上がる。

 

「遅い」

《スピードタイム! リバイリバイリバイ!リバイリバイリバイ!リバイブ疾風! 疾風! 》

「な……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ルーラー!?」

 

 全開のルーラーが瞬間にして階段と反対側の壁に埋まる。

 

「バカな……あのルーラーをいとも容易く……」

 

 キャスターの指揮下で多少弱っていたとはいえ最優とされるセイバーを完全に動きを封じるように、かつ傷付けずそれを実行するという難題をこなしていたルーラーだが、それが宝具を発動したにも関わらず反撃すら出来ずに沈んだ事実に驚愕するセイバー。

 

「いかにルーラーといえど、特権が働くのはサーヴァントのみ。となればこの能力と平等に戦うことになる。ならば時間を圧縮して加速する疾風に反応できるはずもない」

「時間を……圧縮……」

 

 階段下へ、士郎たちと向き合うように着地したアーチャー。

 

「衛宮士郎、お前が生涯を費やし、世界に身を売り渡した瞬間、お前は正義の味方となれる。その存在全てを費やし人々のために最善を尽くす。その時よりお前はこの力を手にすることになる。人間では多大な負荷を強いるこの力だが、サーヴァントならば問題無く使えるからな」

「お前は……いや、俺は、この戦争に何を望む!こんな殺し合いに参加する理由なんて無いはずだ!」

「理由なら十分にある。お前が望むものは今も未来も変わらないからな」

「……世界平和、か」

「簡単に言えばそうだ。幼稚だが私にはそれしかない。世界が恒久的に平和であるならば、それが私にとって唯一最大の願望だ」

「……」

「理解したならキャスターを始末しろ。サーヴァントは既に死人、死には数えない。私が聖杯を手にすることが世界を救うことだ」

「分かった……」

「シロウ!?」

「お前は正義の味方なんかじゃない!言ったはずだ!必要なものしか救おうとしないお前は!正義の味方じゃないってな!俺はセイバーもキャスターも助ける!この戦争で誰1人死なせない!」

「ふん……くだらん……ッ!?」

 

 攻撃しようとしたアーチャーが階段上から銃での狙撃を受ける。

 

「ふん、カッコいいじゃないか、衛宮士郎」

「シオン……」

 

 シアンカラーの銃をクルクルと回し、シオンが階段上から薄く笑う。

 

「ランサーはどうした。まさか殺したわけではあるまい」

「ふん、何故ああなったかは知らんがオレ達相手にどうこうなるわけがないだろ……まさか肉の芽か?だったらオレの言うこと聞け……いや死んでるからオレの権限じゃないのか……」

「く……シ、シオン、アーチャーが……」

 

 ブツブツと腕を組んで考え始めたシオンにルーラーが声を振り絞る。

 シオンはそんなルーラーを見ても平静を崩さず、より警戒するように周囲を見回す。

 

「ま、状況は大体分かった。とりあえず我が救世主、プライムを受け取って貰えたようで何よりだ。そこでオレからのプレゼントだ、受け取れ」

 

 シオンがどこからか取り出した大量のカードを投げる。

 それは士郎の目の前で重なり合い、別のアイテムへと変化する。

 

「これは……?」

「真の救世主だそうだ。ほら、さっさとしないと殺されるぜ?」

「……!いくぞ!」

「く……させん!」

「させてやれよっと」

「くっ……」

 

 アーチャーが再び超高速の攻撃を行おうとするが、それを予知していたシオンの銃撃に止められる。

 それだけの隙があればプライムの動作に支障は無い。

 

《ゲイツマジェスティ》

「変身」

《マジェスティタイム! G3・ナイト・カイザ・ギャレン・威吹鬼・ガタック! ゼロノス・イクサ・ディエンド・アクセル! バース・メテオ・ビースト・バロン! マッハ・スペクター・ブレイブ!クーローズ! 仮面ライダー!Ah~! ゲイツ!マジェースーティー!》

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