聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第39話

 荒れ果てた荒野。

 崩れ落ちた建物。

 恐れ怯える人達。

 

 そんな世界を、幾たびも想像し、思い出し、分析した。

 あの時の自分がどれほど無力だったか。どれほど儚い存在だったか。

 圧倒的な災害に飲み込まれ消えていく人々の1人でしかない、世界にとっての有象無象の1人。

 そこから救い出されたのなら、それこそ自分が為すべき宿命。存在全てを賭けて、人々を救うこと。

 

 それが──理想。

 現実は──身近な誰かの、自分の力で救えるマイナスを望むこと。

 

 自分のできる範囲で……自分で支配できる範囲の中で絶対的、それでいてあくまで受動的な立ち位置を維持していた。魔術を持たない一般の人間相手に、魔術を持って物事を解決するのだから、それは絶対的かつ、悟られないもの。

 自分のできる範囲で、自分の解決できる範囲での悪を望む欲求。自分の手が届く範囲での悪を全て裁こうとする欲求は、即ち……自分より弱い、それでいて自分の周囲を脅かす都合の良い悪の存在を望むこと。

 

 ──それは、受け継ぐべき、受け継いだ正義の味方の在り方ではない。

 悪を倒し、平和が実現した瞬間を演出するのではなく。

 悪が存在しない世界を守り、平和を維持し続けること。

 

 ──僕がこの地で流す血を、人類最期の流血にしてみせる。

 ──命を捨ててでも!守りたいものを守る!それが!救世主のあるべき姿だ!

 

 受け継ぐべき正義を、再認識した。その為の力を、手に入れた。

 過去から今、今から未来へ繋がる平和を背負う覚悟を、決めた。

 必ず自分が、その世界を実現してみせるという、覚悟を。

 

 ♢♢♢

 

「バカな……」

「……」

 

 アーチャーが驚愕する。

 シロウがゆっくりと拳を握る。

 オレが投げ捨てた無数のカード。それらが重なり合って作り上げた真の救世主。ゲイツマジェスティ。

 

「……」

「く……」

《スピードタイム!》

 

 沈黙を守ってアーチャーへ歩み寄るシロウにアーチャーが時間加速を発動、超高速でシロウに迫る。

 

「……」

《Gatack》

「クロックアップ」

 

 シロウがガタックのウォッチを起動、自身を別の時間軸へと移し、リバイブ疾風の速度を超える。

 

「ぐ……!?」

「これが救世主の力……世界を救う力、か」

 

 捉えられないはずの超速移動を捉え、アーチャーを攻撃する。

 

「お前如きが……」

《パワードタイム!リ・バ・イ・ブ剛烈!剛烈!》

 

 スピードでは勝機がないと見たのか、アーチャーがリバイブウォッチを反転、パワードタイムに切り替える。

 

「……」

《Diend》

《カメンライド・クローズ》

《ファイナルフォームライド》

《ク・ク・ク・クローズ!》

《クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!》

 

『よっしゃあ!』

「行け」

「ぐ……っ!はぁっ!」

 

 シロウが変身したゲイツマジェスティが呼び出したディエンドが呼び出したクローズがクローズマグマに変身しアーチャーの変身するゲイツリバイブ剛列を力押ししていく。

 呼び出されたディエンドの援護射撃もあり、アーチャーには手も足も出ない状況が作り出されていた。

 

「アーチャー。俺は正義を成して見せる。必ず。だから、引いてくれ」

「ふ……他に負けるならばともかく、自分に負けるのを良しとする俺ではないだろう」

「アーチャー……」

「それに、ここまで明確に敵対したんだ、もう和解は無い」

「そんな事はない。お前が俺だって言うなら、お前の言葉は信用する」

「ふっ…… I am the bone of my sword……」

「アーチャー!」

 

 シロウの言葉はアーチャーを止める事はできず、アーチャーが持つ能力のもうひとつを解放する。

 

「UNLIMITED BLADE WORKS!」

 

 アーチャーを中心に炎の円が広がっていき、世界を塗り替えていく。

 

「固有結界……ふん、オレまで入れてよかったのか?」

 

 どこまでも続く赤い荒野。アーチャーの心象風景を具現化した世界。

 無数に突き刺さった剣は墓標。幾たびも戦場に出向いたアーチャーがその生涯を、そしたその後座に登録されて以後も蓄積し続けてきた無限の剣。

 剣という範囲のみで見るならば、オレの能力に近いものがある。

 結界に入れなかったのか消えたのか知らないが、ディエンドとクローズは姿が見えない。

 

「……ヴィーナスは、私にとっても倒しておかなければならない存在だからな」

「またソレか。無理だってんだろ。オレがソレ使ってんの見てただろ?」

「ああ。お陰でライダーの宝具が受けられることが確認できた。後の脅威はバーサーカーだけだ」

「んで?そのバーサーカーはどーすんだよ」

「さて。私がそこの救世主とやらと同じだと言うことから分からないかね?」

「なるほどね。選択肢有りの穴埋め問題してるようなもんか」

 

 コイツが真に、この世界の衛宮士郎と同一人物なら、既にコイツはこの戦争を勝ち抜いている。そして何らかの手段によってバーサーカーは既に攻略可能だという事。ランサーの時の謎の余裕もオレ達の作戦を知っていればオレが割って入ることも想定していれば納得もできる……卿を戦闘不能まで追い込んだあたり、対応可能なサーヴァントとそうでないのがまだあるらしい。セイバーが召喚された日、卿に容易く斬られたのも同盟に持ち込むため……

 ある種、オレ含め戦争関係者はアーチャーの手のひらで転がされてたってわけだ。

 

「だったら……こういうのはどうかな?」

 

 能力を選択すると、身体から黄金のエネルギーが放出される。

 

「聖光気という、純然たる闘気のエネルギーだ。本気で放出すれば外の部屋くらいは崩れ落ちるだろうな」

「関連が見えないが?」

「ふっ……はぁっ!『気鋼闘衣』!」

 

 オーラが形を持ち、黄金と白を基調とし全身を覆う防具となる。

 

「コレがお前のリバイブ剛列と似たようなものだ。防御力ならかなりのものだぞ?」

「ならば、当然……」

《リバイリバイリバイ!リバイリバイリバイ!リバイブ疾風!疾風!》

「こちらも対応するのだろうな!」

「当たり前だ。気鋼闘衣には防御と攻撃の2パターンがあるんだよ!」

 

 リバイブ疾風の発動を見切り即座に防具を変更し、背後に迫っていたスピードクローを殴り返す。

 

「く……」

「一巡、体験してるってことはオレや卿の事も知ってるな。そしてその戦力も。それを踏まえて!お前はゲイツリバイブと無限の剣製だけでオレに勝とうってのか!」

 

 正体を表すのなら、もっと後でも良かったはずだ。

 例えばオレ達がおおよその陣営を説得し、残り1組になった場合。オレ達とそれが対立している隙をついてオレから仕留めれば望む世界により早く近づけたはず……

 

「まさかお前……全部知ってんのか、オレやこの体について……」

「さてな。私が経験した戦争でも君たちだけがその全容を測りきれなかった。私にとって何より危惧するべきは君たちの全力だった。だがプライムの存在は私も受け取った立場だ。知っていたよ。しかし何故、私にはあのウォッチが渡されていないのか、それが今怒りになっている」

「……さぁ?何故ってもなぁ……気が向かなかったんじゃねぇか?」

「……」

 

 まぁノリで渡されたってなら怒るかねぇ……どうでもいいが。オレにとって重要なのは戦争がどうなるかであってコイツら個人の感情なんてのは全く考慮する価値が無い。

 ……だが待て、アーチャーがこの戦争を経験したこの世界のシロウだとするなら、何故コイツは英霊になっている?オレの全容を測れなかったのなら、何故コイツは英雄として死んでいる?

 オレの目的は誰も死なせず戦わせないこと。それがオレのこの世界でのクエストになった。そのクエストが達成された時点でおそらくオレと姉さんは別の世界へ転生ないし神の間で待ちぼうけを喰らう。だが他の奴らはその後もこの世界での生活が続くはずだ……

 

「アーチャー、お前……後悔って言葉に関して、何を思う?」

「……?私とは最も縁遠い言葉だが」

「……とある人が言った。やらない後悔よりやる後悔なんて言葉は、やってしまった後悔の味を知らない、無責任な第三者の言葉だ、とな」

「そうだな」

「そしてこうも言った。だが、1番良いのは、やって後悔しないことだ、とな」

「当たり前だ。したい事をして望む通りの結果を得られたのなら、それが1番だ」

「お前がソレだってのがよく分かったよ。お前はマジに後悔なんてしてない。お前はマジに世界平和を為そうとしてる。お前はマジにこの戦争をぶっ壊そうとしてる」

「え……」

「何……?」

 

 何騎か残す選択肢ができた時、セイバーとアーチャーをまず入れたが……アーチャーは真っ先に消すべきだ。バーサーカーより優先して消さなければ卿の……神の望みは叶わない。

 

「ふっ……」

《フィニッシュタイム!》

「ちぃ……!」

 

 スピードタイムのフィニッシュタイムはオレ以外は対応不能だ……そしてオレの能力は時間停止しようが同じ系統にあるリバイブには意味が無い……それを踏まえると複数人を同時に守ることは不可能……

 

《百烈タイムバースト!》

 

 かくなる上は……

 

「多重影分身!縮地法!」

 

 聖光気を解いて分身、即座に分身をそれぞれの元に飛ばす。

 

「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

「……おのれ、オレが渡したプライムとはいえ分身体のオレを……!」

 

 リバイブ疾風のフィニッシュタイムを全てオレの分身体で……一撃に対し1人を生贄にすることで受け切った。

 そしてこれは失敗だった……タイムバーストはおおよそ百連撃。つまりはオレの分身体は100体は死んだ。多重影分身は等分され、消滅すれば戻らない。この時点でオレの魔力は100分の1、能力負荷も相当だ。

 

「く……」

「防ぐだろうな。それが君だ。だが……これでシオン。君は無力化された」

「な……まさかシオン!」

 

 膝を付いたオレに卿が叫ぶ。

 

「あのランサーを相手にも能力を使っただろう。そしてプライムの譲渡、この結界内での能力の複数使用。最後の能力使用が決定的だったな」

「……ルーラー、少しは回復したか?」

「え……はい。ですがこの結界内ではまだ戦力には……」

「シオンを頼む。俺の問題だ、俺がカタを付ける」

「……できるのですか、あなたに」

「できるさ。俺が正義の味方で、救世主だっていうんなら」

《night》

《accel》

 

 シロウが槍と剣を取り出す。左右に大きく広げられた構えはフィオナ騎士団の雄に似たもの。

 

「あくまでお前だけの正義を貫くつもりか。私が勝てば万人の望む正義たり得るものを」

「俺が選ぶ俺の道だ。それを正面から歩いて何が悪い」

「ふっ、それが若さだ、未熟さだ。お前の身勝手が弱者を踏みにじり、強者を撃ち砕いた。お前が得たものは正義でも平和でも無い、ただこの結界の様に焼けた荒野だけだ」

「それでもお前は後悔してないんだろ。だったら、俺にとって正解だ。俺が目指す正義はこれなんだろ。だったら、お前を殺してその未来を塗り替える!」

「ふん、来い、衛宮士郎!武器の貯蔵は十分か!」

「行くぞアーチャー!お前の過去は俺が貰う!」

 

 力と技で振るわれる二振りに迎え撃つ爪と無数の剣。

 無限の歴史と無限の戦場が衝突する。

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