「う……ここあ……?」
「目が覚めましたか」
「うぅ……すみません、ここは……きゃぁぁぁぁっ!?」
「ど、どうされました?どこか痛みますか?」
「な、ななななななな……!」
「……?な?ナイスタイミング?」
「あ、ああああああ、あし、足が……!」
「ああ……失礼しました。私の足はシオンが戻らないと繋がらないのです。すみませんが、このままで」
「は、はぁ……」
「シエルさん、ですね?体調はどうですか?」
「え、ええ、体調は全く問題ありません……貴女は?」
「失礼。私はサーヴァント、ライダーです。では記憶や経験に関してはどうでしょう。自分の今置かれている状況が理解でき、納得できていますか?」
「え、ええと……」
「少しの疑問でも構いません、あれば……その辺の紙にでも書いてください。後でシオンに見てもらいますから」
「……」
「無さそうですか?でしたらそうですね……冷蔵庫など好きにして貰って構わないので、しばらくこの家に居て頂けますか?」
「いえ、そうではなく……貴女は拘束された状態で、私に攻撃されるとはおもわな……うぅ……!?」
「……以前の埋葬機関としての誇りでしょうか、正義感、正直さでしょうか。無理をしないで下さい。貴女は既に闘争心を抱くことにさえ苦痛を感じる程に……誰かを害するなどの思考にすら嫌悪感を抱いてしまうのでしょう。私が貴女を害することはありません。ヴィーナスが貴女をこれ以上どうこうする気も無いと証言されてます。元居た組織には戻れないでしょうが……ヴィーナスの庇護下にある限り心配は無用でしょう」
「ヴィーナス……そうだ、私がここへ来た、目的……!」
「……」
「うぅ……!ヴィーナス……!フタガミウタネ……!私が……あぁっ!」
「……」
「そうだ……ぅ、貴女、ヴィーナス……の居場所を……教え、なさい……!さもなくば……」
「……」
「このこっ……!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!????」
♢♢♢
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ハアッ!」
無限の荒野に舞う無限の刀剣。
その中心で赤と赤が火花を散らす。
「フン……」
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
槍と刀の二振りを頼りに無数に飛ぶ刀剣に挑むシロウだが、次第次第に遅れが出てきている。
シロウの最大手数は2。対してアーチャーはその宝具により手は無限に等しい。どれほどマジェスティのスペックがアーチャーの宝具のスピードを上回ろうとも、手数が増え続けていく限り限界がある。
「な……」
「終わりだ」
トドメとばかりに宙に解き放たれたのは誰が持てるのかと言わんばかりの巨大な剣。光の巨人でも呼び出すつもりかと突っ込みたくなるそれが数本、上空からシロウを襲う。
「く……!」
《フィニッシュタイム!マジェスティ!エル・サルバトーレタイムバースト!》
刀と槍を投げ捨て、空いた右手に複数のエフェクトが重なる。
自身に命中する剣に向かってそれを放つと、その衝撃で他の刀、卿やアマゾンたちまで吹き飛ばされる。
「ぐ……くそ……!」
「これが力の差だ」
致命傷は避けたもののプライムの重ねがけはダメージが大きいのか変身解除されている。
シロウは膝をつき肩で息をする限界に達していた。
「何で……お前はそこまでする!お前の望みが叶うなら何をしてもいいわけないだろ!」
「正義の味方のすることだ。弱者は甘んじて受け入れる」
リバイブを解除して、例の双剣を引き抜くアーチャー。
「正気じゃない……!」
「正気?正気で正義の味方を志す者はいない。世界を救う英雄になり……世界から拒絶されても尚、英雄であり続けたいと望むような狂気だからな」
「なんだと……?」
「弱者は強者に従わざるをえない。戦場において救われるべきは常に弱者だ。それに対立する強者を力で打ち倒した私が、その後どうなるか分かるか?」
「……」
「自分が打ち倒した強者にすり替わるのだ。救ったはずが恐れられ、避けられ、迫害される。戦う力を持つ者がいない世界を目指すなら、その者たちを殺さなければならない。それを小規模とはいえ成した。その結果が、救った人間に殺される結末だ」
「……」
「世界を救う、それはどうあっても曲げられない。正義の味方という存在は、私は……俺は、この世界の何処に居ればいい。お前を救ったあの男、衛宮切嗣は旅をよくしていたな。同じ場所に留まり続けられない、その行動は今の俺と同じなんだと思うようになった。真相は知らないが、切嗣は俺たちに嫌われるのを避けたかったんじゃないかとな。いずれ避けられる弱者なら、できるだけ関わる時間を減らそうと……」
「……オヤジが、そんな事を……?信じない。信じられない!」
「お前が正義を志したその日から、お前の居場所は失われた。この世界のどこにもな。そんな俺はどうしたらいい?簡単だ。より強い者を殺して、繰り上がった者を殺して……最後の1人になった俺が死ねばいい。だから……聖杯は、必要だ」
「お前が死ねばいいだろ」
ついぞ聞くに耐えなくなった妄言につい口をつく。
「なんだと?」
「お前がそれを分かってんなら自分で死ね。居場所が無いなら死ね。必要無いなら死ね。多くの犠牲の上に動く無意味なら死ね。何の損益にもならん存在なら死ね。それができないなら何もするな。部屋に引きこもって一生寝てろ」
我慢の出来ないやつだ。自分の事しか考えていないやつだ。世界に存在する圧倒的大多数と自分を天秤に掛け自分を取った傲慢なやつだ。
「正義の味方になる。それが世界に不要と分かったならやめろ。お前は世界を救いたいんじゃない。世界を救う正義の味方になりたいだけだ。そんなやつが正義を口にするな。要らないなら死ね。消えろ。自分の理想を自分の中で永遠に夢想していろ。それが出来ない奴が蔓延るから世界が乱れる。アーチャー。お前は今、ここで殺すぞ」
生命嫌悪に陥り全生命への殺意さえ持っていた生前の姉さんが引きこもり続けたのは、自分以外の誰もそんなことを望まないからだ。全員殺して自分も死ねばいいという結論は同じだ。
「ふん……今のお前がどうするつもりだ。負荷による重体、能力による回復にもまだ時間がかかるだろう。俺が殺す方が速い」
オレの周囲の剣が宙に浮き、オレを囲う様に切っ先を向ける。
「言い残すことは無いか」
「お前はもう死ぬことも座に帰ることもない。姉さんと同じ目に遭ってもらう」
「ふん……死ね」
剣が撃ち出され、隙間無くオレの肉体に刺さる事なく地面に突き刺さる。
「な……」
「神威……片目だけならば限りなく低い負荷だ。この能力ならお前の攻撃など意味を成さない……そして」
「ぐっ……動けん……!」
「姉さんの能力に制限は無い。両手首だけその場に固定させてもらった」
立ち上がり、ゆっくりとアーチャーに向かって歩いていく。
その間刀剣類がオレを襲い続けるが全てがすり抜けて地面へ落ちる。
5分間、神威空間へ自分の体をオートで転移させ続けることであらゆる攻撃をすり抜ける。そして神威以外の時空間能力では干渉不能。
「これで……終わりだ」
アーチャーに触れ、神威空間へ送り込む。
同時に固有結界も崩れ、現実世界へと戻される。
「シオン……」
「……衛宮さん、貴方は、ちょっと我慢の出来ない私みたいだね」
「……?ウタネ……か?」
「動機は違うけど、結果は同じ。なんだか私達みたいでビックリだよ。まぁけど、私達にはなり得ないかな」
「何が言いたい。お前たちってのは何だ。ヴィーナスか?」
「うん。衛宮さんだとプレシアが近いかな。プレシアは自分のためじゃなくて愛娘のためだけども」
プレシア、リインフォース、ソラ……今どうしてるだろう。誰か殺しちゃったかな。全員生きてるかな。リインフォースは……さっきのシオンみたいに神威空間みたいなとこに全員送り込んじゃったりしてないかな。
知る手段はシオンの能力だけ。私が使わせることも無い。必要無いなら、会わない方が良いから……
「……キャスター、オレを少しだけでいいから回復させろ。肉体疲労くらいは治せるだろ」
「ええ……いいわ」
謎言語による呪文がオレを癒す。
「して……ニキュニキュ」
能力負荷、疲労、肉体ダメージ、それら全てを弾き出す。
「ふぅ……神威」
そして弾き出されたそれも神威空間に送り込む。
アーチャーが触れたら大惨事だが慎重な奴だ、大丈夫だろ。
「さぁ。これで解決。卿、大丈夫か?治してやる」
「いえ……結構です」
「そうか。なら帰るぞ。キャスターとそのマスター。今日からオレの家で暮らせ。部屋は用意してやるから」
一軒家とは言え流石に部屋数が無いな。シロウとアマゾン、アーチャー組、キャスター陣営で3部屋、セイバーとシエルでもう一つ、オレと姉さんでさらに一つ……時空間能力で室内を拡張するか……
「仮にも教師がそんな事はできん」
「……お前、この状況でオレに逆らう理由があるか?」
名前何だったか……教師もどきがオレの提案を却下する。
「私の人生は私のものだ。誰かに決める権利は無い」
「なるほど確かに。お前の人生はお前のもんだ。お前の人生はな。ただし、そのお前さえオレの手のひらの上ってのを認識しろ」
「……」
「まぁいい。オレは十分に回復した。お前相手なら古代ベルカ最強の鉄腕で持って沈めてやる。その後ライダー同様オレの部屋に磔にしてやる」