聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第42話

「衛宮士郎!貴方を侮辱罪と名誉毀損罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね!貴方が男子高校生でありながら私があんなくっ殺状態だったのにも関わらず、私を襲わなかったからです!覚悟の準備をしておいて下さい。近いうちに殺します。戦争も終わらせます。神の間にも問答無用できてもらいます。異常性癖のオモチャになる準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!無限ループにぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!」

「ちょちょちょっと待て!起きて早々に何なんだ!」

「黙りなさい!貴方は男の子でしょう!若く盛りまくってるんでしょう!そんな貴方の前に婉容で端麗で麗しい女の身体が転がってるんだぞ!しかも外界を認識できる状況で!更に絶対に邪魔も入らなければ絶対に外に漏れない!そんな状況で衣服に手を掛けないどころか枕を置き!しかも布団を掛けるだとぉ!?」

 

 寝てたとはいえ起きてたんだぞ!寝てる子に微笑む親みたいな顔しやがって!

 

「お前は度々その手の話をするよな!何なんだよ!盛ってんのか!」

「盛ってはないが」

「急に冷静になるな」

「なんか、そういうものじゃないの?1に性欲2に性欲、34飛ばして5に性欲じゃないの?高校生って」

「全部が全部そうじゃないだろ……だったら童貞イジリは存在しないぞ」

「え、童貞なの?」

「……ああ、そーだよ悪いかよ!」

「や、別に。私もシオンもそうだし。病気持ってないって分かる分マシだよ」

「そこはイジれよ。淡々とコメントするな。気まずいだろ」

「え、何をイジれと」

「もう黙ってろ!」

「シオンが寝てた間喋りたかったからね。人類が私の想定通りに動かなかったの久しぶりだし」

 

 想定というか予感というか直感というかそういうアレのあれなんだども。プレシアが虚数空間に落ちる時にフェイトだと思ってたのが高町さんだった時以来だ。多分。

 

「さて!えっちゃん!私の直感が何か進展したと言っている!話せ!」

「……ウタネさん、無理してテンション作らなくていいですよ。疲れるんでしょう?」

「……たまの気分でこうする時に理解者がいると辛い。まぁいいや。シオンの能力……シオンが指定さえしてくれれば私の時でも使えるけど……まだ起きてこない。あのシオンがだよ。倒れる直前まで何の素振りも見せないシオンがだ。私の呼びかけにさえ反応しない。このまま起きない可能性さえある。魂を食わせるって手法がどれだけ人に影響するか考えた方が良い」

「……すまない。俺の未熟だ」

「貴方の未熟をシオンで払えるなら十分だ。まぁそんなのはどうでもいいからえっちゃん、面倒だろうけど大体がわかる程度に話してくれない?」

「ええ。シオンが起きる目処が立たないのであれば仕方ありません。シオンが倒れた後、桜さん……と間桐の当主が此処を訪ねてきました。桜さんの両腕には数え切れない令呪が刻まれており、聖杯を手にする旨を私へ。今日はこれでいいと如何にもなセリフでもって退散しました」

「令呪?戦争で聖杯から配られるのは21画だけじゃないの?」

「基本はそうです。が、例外もあります。恐らくは今回、これだけの日数が経っても脱落者が無いことで聖杯が戦争を終結させるために新たなサーヴァントを喚んだのでしょう。ライダーはもう必要無いという発言からそれらを全て掌握したと考えるのが妥当です」

「待て待て待て!お前ら!シオンが起きないってのに何呑気に作戦会議してんだ!」

「「???」」

 

 呑気も何もサーヴァントが増えた緊急事態なんだが。

 

「ウタネ!お前ら双子だろ!?何とも思わないのかよ!」

「シオン?別にいなくても目的は達成できる。逆も同様。私達の誰か1人がいればそれでいい」

「そもそもシオンは存在そのものがサーヴァント以上に不確かなものです。無いものをどうこう言っても無駄でしかありません」

「お前ら……!見損なったぞ!」

「見損なったから貴方たちは私達を殺そうってしてたんじゃないの?何度も何度も手のひらコロコロして……恥ずかしくないの?」

「ぐ……」

「私は貴方たちが戦わなくなればいいの。私達を殺そうってのはどうでもいい。聖杯戦争だけやめてくれればね」

 

 とはいえシオンを起こさずに事を進めるのは最善じゃない。もし誰かが致命傷を負うとキャスターだけじゃ間に合わない。

 となるとこの家に居てもらうとして、えっちゃんがその間主力として守ってもらうとして、私だけで出来ること……

 

「よし、じゃあみんなはこの家に待機だ。家は私の能力で固定してるからバーサーカーでも突破は不能だし、えっちゃんとキャスターいれば何とかなるでしょ」

「ウタネさんは?」

「ランサー取りに行ってくる。能力で固定したままだし」

「……ああ、忘れてました」

「あと何か買ってこようか?和菓子と食料と砂糖と……衛宮さん、何か無い?」

「いや。まだ油断できないからな。俺は普通に栄養が取れればそれでいい」

「そ。じゃあ行ってくる。ついでに間桐のサーヴァントも潰してくるかも」

「以前に想定外の伏兵に追い詰められたと聞いてます。油断なさらないでくださいね」

「うん」

 

 以前……前の世界では『能力者が触れる、または能力者に触れた能力をその世界に存在させなくする』というオールアンチの能力者がいた。シオンがいなければ私達をして1人相討ちでしか倒せなかった能力だ。

 まぁ、それも今となっては杞憂だ。

 

【霊体捕獲』『硬化』『柔軟】

 

 念のため我が家の防御を万全にしておく。

 実体を持たないまま近づけばその場でランサー同様固定して壁の一部になってもらうし、硬度を上げたまま柔軟性を持たせた。対人宝具程度ではビクともしないけど……神秘的なアレで……ランサーの宝具とかでは抜かれかねないのが不安だ。

 まぁそんなのは置いておいて教会へ向かう。

 ランサーの周囲には何者だろうと近付けない。時間も経ってるしバーサーカーが見つけてたとしても撤退してるだろう。

 

「お、いたいた。見た目変わってないけど……戻ってる?」

 

 私に触れた部分だけ普通の空気に戻るようにしてランサーに近付いて、頭をコンコンとつついてみる。

 

「目力つよ……はい、頭だけ外してあげる。どう?正気ある?」

 

 能力固定範囲外に出てからランサーの頭部周辺だけ能力を解除する。

 

「ああ……アーチャーはどうなった。キャスターは?」

「アーチャーはシオンの逆鱗に触れて今はいない。キャスターは私達に同意して私の家にいるよ。キャスターがこうなったらアサシンもこっちだろうし、あとはバーサーカーと貴方だけ。どうする?」

「……結局はお前らの望む通りか。気に食わねぇ」

 

 とりあえず大丈夫そうだから魔力を纏えるくらいには体を自由にしてあげる。

 ただし体の周囲だけで5センチほど。その周囲はまだ固定したまま。

 

「別に。貴方たちの願いだって叶えてあげるよ、シオンが」

「じゃあ俺と戦え。全力での戦いが俺の望みだ。お前らはそれを叶えられるか?」

「……ふぅ、私と戦うの?私で良いの?」

「全力で殺しに行くぞ」

「じゃあ……いいよ。それで貴方が納得するなら」

 

 丁度良い。ここでランサーを戦闘不能にできれば私とシオンでバーサーカーを確実に処理できる。

 刀を出して意識を変える。

 そして万全の準備ができてからランサーを解放する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「っと……!いくら速くても、タイミングが合っていれば……速さが間に合えば止められる!」

 

 いきなりの正面突き。

 けれどそれは到達タイミングを予知して魔力放出で合わせれば受け流せる。

 

「よく躱した!ホラ!」

「ふっ……ん!」

 

 突き終わりの槍をそのままこちらに向けて払う。

 当然それを受けるのは不能なので魔力放出で膝を無理矢理折って頭を地面へぶつける威力で落とす。

 当然支える筋力は無いから地面へ落ちるんだども、能力で地面を柔らかくして取り敢えずランサーの範囲外に跳ね返る。

 

「っと。ふぅ……やっぱサーヴァントは疲れるね」

「その速度……俺と張るレベルとはどういう事だ?」

「別に?魔力をぶっ放せば加速度はいくらでもつけられるし……」

 

 これでやっと10秒。

 

「ならまだまだ行くぜぇ!」

「来ても良いけど後悔しないでね!」

「おらよっ!」

「……いくら力が強くとも、それを超える強度があれば──」

 

 刀身で突きを受け、そのまま持ち堪える事なく飛ばされる。

 

「──ダメージを負う事はない」

「ならこれでどうだ!」

「いくら速くても、攻撃が受けられるのであれば──」

 

 いつのまにか飛ばされた私より速く私の着地点にいるランサー。

 横薙ぎに槍を振って野球のように私を逆方向へ振り抜いた。

 けれどもそれも刀で受けた。ダメージになる部位には魔力放出で相殺した。

 

「──速度に有利性は働かない」

「チッ!」

 

 そして能力でクッションを作りながら万全に着地する。

 ──これでやっとこ30秒。

 

「いくら超常のサーヴァントであろうとも、ヒトの形である以上手数の限界は同じ。なら同等の手数まで追いつけないはずがない」

「サーヴァント相手に……この俺を相手に、その余裕がいつまで持つかな!」

 

 着地すると同時にランサーが突っ込んで来る。

 軌道は直線、速度は一瞬。

 カンに任せて魔力放出で体を躱す。そのタイミングも私の意識からは離れたほぼオート回避。よく言う身体が勝手に動く、というヤツだ。

 

「そして如何に強靭な実体だろうとも、急所を斬れば死ぬことに……変わりは無い!」

 

 魔力放出、能力で強化した刀をカウンターでランサーの首へ。

 決まれば殺せる。上手く躱されて傷を負わせられれば良し、万一殺しても良し、防がれたとしてもいずれ来る未来のために良しだ。

 

「甘ぇってんだよ」

「……!?つぅぅぅぅぅ〜〜〜……」

 

 当たったはずの刀は空を切り、代わりに私の心臓が貫かれていた。

 ランサーは刀の射程外、かつ槍の射程内、それでいて私に悟られないギリギリの距離を取っていた。

 首をギリギリ掠めたのに冷静な所を見ると、私のリーチは完全に把握してるっぽいな。

 

「サーヴァントのレベルに人間が敵うワケねぇだろうが。多少の遊びにはなったがな」

 

 倒れる私の体はそのまま地面に吸い寄せられ……るはずもなく。

 

「っと」

「!??」

 

 ゴム化させた地面を反動に起き上がる。

 

「ふん……っ!」

 

 そして自分の胸を刀で横に切り開く。

 

【固定』『動作』『保護】

 

 そして能力で心臓を修復、2度と貫かないように硬くしてから動作を再開させる。その後全ての傷を元通りになるように修復して保護する。

 

「何故生きてる?」

「うん?なんでって?」

「ゲイボルグに破壊された心臓は治らない。呪いを解呪する事ができるとも思えない」

「そーなんだ。私は……裂けた心臓を無理矢理繋いで、ふぅ……無理矢理動かしてるだけだよ。ぶっちゃけ私は心臓無くても心臓の代わりくらい作れるから」

 

 身体組織の全てを空気で代替するなら透明人間の出来上がりだ。

 そうなれば私は人体の全てを理解できたことになってるわけだども、流石に無理なんだろうな……できるか?あくまで意思を現実にする言葉ゆえ、理屈を知らなくても結果は出せるのでは……?

 

「テメェ……ナメやがって」

「はは……っと。ナメてるのは貴方だし、私はそもそも舐めプしまくってるよ。はぁ……私達と対等に争いたいなら、せめて……っ、世界を手中に収めてからすることだ」

 

 これで2分。

 私の息も切れてきた。もう座り込んで休みたい。もう寝たい。けどその選択肢は今は無い。地獄だ。

 けどランサーにとってはこの先こそが地獄になる。

 

「さぁ……半分だ。シオンがいない今……私は私の通り、殲滅するだけだ。1人2人減ったって構わないらしいからね。まだ……続ける?」

「当たり前だ!」

 

 今度はより冷静な接近戦。

 ランサーは先程までの一撃重視より突きの連打で数を増やしてくる。

 

「言ったはず。私相手に速度の優位性は無い」

 

 どれだけ速かろうが槍はただ1つだけ。決して増えたりはしない。ならばその瞬間の攻撃も同様に1つ。ならその瞬間、その一点だけを避けるだけでいい。槍のリーチの中に居たとしても、振った槍の軌跡は1つだけ、突いた槍の軌跡は1つだけ。

 その一瞬を捉えられるなら、未熟も熟練も変わらない。速度は魔力放出で十分に達成できるし、筋力でのそれじゃないからどんな体勢からでも自在に体を動かせる。

 

「ハッ!良い速度だ!テメェ程なら確かに!命を狙われるのも頷ける!」

 

 軽口を叩くランサーだが、段々と……ホントに僅かずつだけれども、パワーもスピードも落ちてきている。

 避けてばかりいた私も、だんだんと刀で受けられる数が増えて体を大きく動かす事が減っていく。

 

「どうしたのランサー。そんなんじゃ私は殺せない」

「チィ……!らぁっ!」

「甘い。当たらなければ力がどれだけ強くても全くの無意味」

 

 乱雑な、どこか放心した力任せの突き。どこかに当たってくれと願うかの様なそれも、私のカンは無慈悲に刀で弾いてしまう。

 

「生身の人間より遥かに強いはずのサーヴァントが、生身の人間より弱いはずの私に届かない。どうかな?間違ってる?」

「間違いに決まってる、そんなこたぁ、ありえねぇんだよ!」

「だんだん狙いがブレて、だんだんパワーが落ちて、だんだんスピードが遅くなる。最初は圧倒していたはずなのに。一度は致命傷を負わせたはずなのに。今こうして貴方は子供の様にあしらわれている」

「〜〜〜〜〜〜!」

 

 ランサーが大きく跳び退いて距離を取る。

 槍を右手に持って左手を地面に突く度の過ぎた前傾姿勢。そこから打てる攻撃は無い。

 

「悔しいがテメェの言う通りだ。だが!俺はお前なんかに負けてるヒマはねぇ!見せてやる、この槍の真の能力を!」

 

 ランサーが走る。速度は今までの最高速と変わらないほど。

 でも私の身体は回避に動かない。つまりこの疾走には攻撃意思が無い。

 

「はぁっ!」

 

 ランサーが跳ぶ。

 最高到達点に達するのは一瞬で、その時には既に投擲の構えに入っていた。

 

「……!」

 

 私はまだ動けていない。

 因果逆転を持ち味とするランサーの宝具に対し私が自分で選べる選択はそう多く無い。

 投擲前にまた空間ごと固定してしまう。それは私の抑止力をリセットすることになる。当然却下。

 投擲された槍を能力で操作して素手で掴み取ってしまう。これは多分私の手が死ぬ。だからやだ。

 投擲された後、槍を避け続けランサーを羽交締めにしてラディッツする。これは私の身体をガチガチに固めてれば私のみ生存ルートができるかもしれない。一応アリ。

 まぁ、どうでもいい。

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

 投擲された槍は命中するまで私を追う。

 けれど刺突と違う点は呪いより威力寄りだということ。

 つまりは私には当たるけど私の心臓に当たるとは限らないということ。

 

「だったら尚更問題無い」

「なにぃ……!?」

 

 両腕はシエルさんとの戦いで補強されてる。刀も同様。

 後は全開の魔力放出で槍を押さえつけるだけ……!

 体に槍が触れる瞬間、魔力放出で躱し、即座に刀を叩きつける。

 

「うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

「バカが……その槍は防げん」

 

 因果逆転であればこの状態からでも心臓を刺してきたけど、これなら槍を逃さなければ……!

 

「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 魔力を増やす。蛇口を壊してでも出力を上げ続ける。

 肩が外れても、骨が折れても、出力は維持され続ける。壊れた場所から直していく。出力を上げる。

 地面と刀に挟まれた槍が私を襲うために逃れようと激しく震える。

 それに負けじと更に出力を上げる。一瞬でも隙ができれば槍はまた宙へ飛ぶだろう。今の状態で再び押さえつける自信は無い。

 あと少し、この槍の威力を殺すまで、もっと出力を……!

 

「……テメェ」

「はぁっ!ふぅっ!はぁっ……つ……」

 

 ランサーが槍を手元に戻し、杖代わりに立つ。その手は目に見えて震えている。

 槍は止まった。魔力放出の出力にして普段の5倍。普段の魔力放出が両手足に飛行機のエンジンレベルなら戦闘機か戦艦レベルだったね。常時どこかの骨が折れるってやってられるか。

 

「よっしょ……」

 

 何にせよ折れた所は治しとかないと変に固まるからね。肩と下腹部と両足とを切り開いて固めて直す。シオンが起きたらちゃんと治して貰おう。

 

「くそ……コイツを防ぐとはな……」

「まぁ、散々なものだけどね。さぁ……続きだよ」

「くっ……!」

 

 初めて私からの攻撃。狙いは当然首。

 

「せええぇぇぇぇぇいっ!」

「ぐっ……!」

 

 槍で防がれはしたものの、魔力放出等倍で若干押せた。

 

「何……バカな……?俺が押し負けるだと?」

「無理しなくて良いんだよ。さっきからまともに槍も握れないのに」

「……!」

「ちゃんと指先は認識できてるかな、足は大丈夫?体の軸は保ててる?」

「ふざけ……!」

「っと……」

 

 ランサーが反撃してくるも、もはや英雄と言うにも烏滸がましい精度の攻撃。ともすれば素の私でも捌けるかもしれないレベルだ。

 

「そんなパワーじゃ、私を越えられない」

 

 ランサーの槍を押し返す。

 

「そんなスピードじゃ、私に追いつけない」

 

 ランサーの槍を受け流しランサーの手元に蹴りを入れる。

 

「そんな能力じゃ、私と戦うことさえ叶わない」

 

 ランサーの槍を力任せに叩き、弾き飛ばす。

 

「ぁ……」

 

 ランサーが膝から崩れ落ちる。

 一切の受け身を取ることなく倒れたランサーは起き上がる事なく、小さなうめき声と共に震えている。

 

「ぁ……が……」

「貴方がこの世界の犠牲者2人目だよ。ランサー」

 

 ランサーに近寄って、首元に刀を当てる。

 

「死にたく無いなら刀に触って。今の貴方でもそれくらいはできるでしょう?」

「ぐ……」

 

 ランサーは僅かずつ手を動かし、刀に近づける。

 そう。それでいい。戦えないのに死ぬ必要は無い。ウチでシエルさんと仲良く平和に暮らせばいい。

 

「へ……」

「……」

 

 だというのに、ランサーは刀を振り払った。

 

「そう……自分の状況が分かってる?貴方はもうこの世界じゃ戦えない。今生き延びても勝機は無いんだよ。私の家に来るなら永遠の安全を保証してあげるのに」

「へ……戦えない戦士に、存在する意味はねぇ……殺せ……」

「……保険に連れて帰っても良いけど。いいよ、殺してあげる」

 

 セイバー、ライダー、キャスターがウチに、アーチャーがシオンの眼の中、アサシンは知らないけど生きててもキャスターの陣営。ならもうバーサーカーに他を殺されない様にすればほぼ達成なワケだ。私の独断だけどいいでしょ。

 

「……っ!」

『おっと、防ぐのかい』

「……誰?見たところサーヴァントだけども」

 

 ランサーの首へ刀を振り下ろそうとした所に銃撃。

 木々の影から出てきた女性は、現代日本のそれとは大きく異なる服装をしている。

 ピンクの長髪に胸元を大きく開いたそれは、見る人が見れば絶望を感じるだろう。

 

「アタシはライダーのサーヴァント。ま、これも何かの縁だと思ってね、死んでもらうよ!」

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