聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第43話

「っと……」

 

 突然撃ってきた銃弾を避ける。

 

「おや、避けられるんだね。銃だよ?」

「別に……単発ならどこにどのタイミングで来るか分かれば避けられて当然」

「そーかい。んじゃ、もっといくよ」

「待って、その前に一つ」

「うん?」

「私もランサーも戦えないんだども、というかそもそもライダーは私が持ってるはずなんだけども?」

「戦えないならもう知る必要も無いさね」

「そ。じゃあ、もう一つだけ。貴女は敵?」

「敵以外の何に見えるんだい?」

「そう。じゃあ敵だ」

 

 残念だ。まぁ、そんなに綺麗な目じゃないし、どうでもいいか。

 

「2人とも戦えない、援軍もない。どうするね」

「どうするもなにも。貴女、間桐のサーヴァントでしょ」

「だったら?」

【縛れ】

「問答無用で潰すに決まってるでしょうに」

「な……!?っ!?」

 

 能力でライダーを名乗るサーヴァントを縛る。

 両手足首の拘束。霊体だろうが実体だろうが逃がさない。

 

「私達のこと知らないの?正規の戦争関係者以外はどうでもいいの。だから、死んどこうか」

「た、戦えないはずじゃ……!消耗したフリだってのかい!?」

「いいや?私はもう戦えないよ。5分、全力で戦ったからね」

「なら、なんで……!」

「私は戦う人じゃない。殲滅する存在なんだよ。私はただ一方的に滅ぼすだけ。私の能力と戦うつもりだったの?私は疲れてるんだよ。ナメるのも大概にしてよね」

 

 シオンの刀を仕舞い、私の鎌を出す。

 私が扱うには大き過ぎる鎌。シオンでさえ好まないレベルの不要な重さ。

 しかし私の能力を加味すれば、それは一気に便利な道具へと変化する。

 

「私はただ今みたいに対象を固定して、その首に鎌を振るだけ。私の素の力でも一撃で命を絶てる。そう、例えばベッドから一気に起き上がる時の瞬発力。その程度があれば、人の首くらい簡単に落とせるんだ。それが無い人間はいない。それが無いのは人間じゃない」

 

 ベッドから自力で起きられないやつは人間じゃない。

 まともな言語で意思疎通ができないやつも人間じゃない。

 よって私の能力と戦うなんて意味不明な事を言ってる身動きできないコイツは人間じゃない。

 だから殺す。

 

「さよなら。来世では私達のいない世界だと良いね」

『っとぉぉぉおぉぉぉぉおぁぁぁぁぁぁ!』

「……何してんの……いや、ほんとに何してんの」

 

 鎌がその首に突き刺さる直前、黒髪セミロングの華奢な少女のフリをしたゴリラマッチョ……ソラが私の鎌を止めた。

 ソラはえっちゃんのマスターなんだども、この並行世界のどこかにいるはずであってこの世界にはいないはずなのに……

 

「何してる……こっちの話でしょうがぁ!」

 

 並行世界の戦争してるはずのソラこそが何してんのって話なはずなのに……私はゴミを消そうとしただけなのに……

 

「や……そっちはどうなの?戦争、止まりそう?」

「半分止めたよ!それよりなんで貴女が単独で能力を使ってる!?」

 

 ん……そういえば私が能力使う時大抵VNAの誰かいたな……いや、そんな事ないか。

 

「や……それこそ……シオン死んだ?し……なんか規定外のサーヴァントいるから……戦争にいらないなら殺してもいいかなって……」

「規定外……?んんん!?ドレイク船長!?」

「え、何知り合い?」

 

 ソラが私の鎌を握り潰さんばかりに握りしめながら私の視線を追うと、また何やら騒がしいリアクションを取る。自分の担当世界に帰れ……

 

「あん?何でアタシの真名を知ってんだい?」

「あ……カルデアのが呼ばれてるわけじゃないんだね。じゃあどうでもいいや。ウタネ、えっちゃんは?」

「私の家。色々抱えてるからそれのお守り」

「えっちゃんを前線に立たせない姿勢は評価しよう!じゃあこれ、えっちゃんにあげといて。どうせすぐ帰るんでしょ?」

「うん。ランサー連れて帰るよ。仕方ないから」

「よし!それでは諸君!さらばだ!」

 

 何やら和菓子らしい高そうな紙に包まれた箱を私に手渡してソラが消えた……ホントに何がしたかったんだ……

 

「まぁいいや。続きだよ。さよなら」

 

 ソラのせいで鎌にヒビ入ったけど能力で固めて元の性能に修復して振りかぶる。

 今度こそ、邪魔もなく存在が消えた。

 

「……ふぅ。さぁ、ランサー。ソラに言っちゃったし、貴方を連れて帰るよ」

「ち……」

「そんな嫌そうな顔しないで。これ食べる?」

「ルーラーにやるんじゃねぇのか」

「あら、もう話せるの。しかもそんな口調で」

「うるせぇ。殺意や敵意、相手を害そうと思わなければ支障は無い」

「……それ自体が支障だって分かってる?つまりは、自分の勝機がゼロなんだよ?」

「……」

「それだけじゃない。相手のリスクもゼロだ。貴方は誰も害さない。貴方が何かを仕組むことは無い。貴方が誰かを唆すこともない。貴方はもう、いかなる手段をして誰も傷付けられない」

 

 相手を害する。それをするのは簡単だ。

 叩く、蹴るはもちろん、物を投げる、押す、引く。そんな物は当然として、悪口、愚痴、僅かな動作、何気ない癖。そんな物でも誰かを害しうる。

 ただの能力ならそれらは強制されないだろう。その個人をそうまで縛ることはまず不可能だ。

 だが私のコレは私の能力ですら無い。私が居る世界の力。私を追い詰めない為の抑止力。

 

「もう貴方は私を……VNAを……世界を害せない。私がただの人間なら、貴方はまだ戦える。けど私はVNAだ。私の存在は一つの世界に等しい。VNAにも2人抑止力がいるけど……サーヴァントがどうこうできるほど抑止力は甘くない」

 

 ♢♢♢

 

「ただいまー。1人消してきたよー」

「……」

 

 ランサーを抱えて連れて帰ると、玄関先にセイバーが膝を突いていた。

 えっちゃんはそれを壁にもたれて見ているだけだ。

 

「起きれるんだ。シオンは美味しかったかな」

「……すみません。私のために」

「いいよ。それで?」

「私を助けていただいた事、その他積もる恩があり、これ以上は図々しく太々しい話ではありますが、気分を害することなく聞いていただきたい」

「うん」

「シロウが何者かにより攫われました。凛の分析ではバーサーカー陣営とのことです」

「うん」

「どうか!シロウの救出に助力いただけないでしょうか!今の私とキャスターだけではやはりバーサーカーには……!」

「うーん……えっちゃんはどう?」

 

 ランサーを玄関に投げ捨て、とりあえず更なる情報を求める。

 

「さぁ。例え衛宮さんが殺されたとしてもセイバーさんはシオンによって生かされ続け、次のマスターをあてがわれるでしょう。戦争に必要なのはサーヴァント七騎です。ウタネさんにお任せしますよ」

「んー、私もランサーと戦った分でかなり疲れてる。おまけに相手はシオンでさえ手こずったバーサーカー。明日でいい?」

「そこを何とか!すぐにも殺されるかもしれないのです!」

「マジェスティがそう簡単には死なないでしょ。下手すればそのまま倒してくれるんじゃない?」

 

 アーチャーに敗北したとはいえ、サーヴァントの固有結界の全力を受け切った能力なら、バーサーカーと戦ったとしても撤退するくらいのことはできるはずだ。

 

「いいや……」

「は?」

 

 私がセイバーの頼みを断ろうとすると、廊下の奥から私を否定する声。

 

「シオン……貴方、予備あったんだ」

 

 私そっくりの人形、シオンがフラつきながら壁を伝って来た。

 

「ああ……ライダーのついでにな。だが正直言って出来はそう良いもんじゃない」

「だからシオン!無茶だって言ったじゃない!」

 

 シオンを支えるように遠坂さんが現れる。

 

「黙れ。ともかく、バーサーカーは殺しに行く。ただし姉さんは休憩してろ。オレとコイツらで行く」

「えっちゃんは?」

「さっきソラが来た……卿を矢面に出すのは最終手段だと。だから卿は姉さんの世話してやってくれ」

「分かりました。ウタネさんもそれで良いですか?」

「んー。了解」

「して、行くのはオレとセイバー、あとお前で……『万華鏡・神威』」

 

 シオンの右目が渦を巻く。

 時空間瞳術、万華鏡写輪眼の一つ。

 そこから封印されたアーチャーが姿を見せ……

 

「はぁっ!」

 

 シオンに斬りかかった。

 

「バカが。神威は出し入れの瞬間以外は全てすり抜ける。お前が出たってことは実体が無くなったってことだ。諦めろ」

「く……」

「救世主、まだそこの人間とはパス繋がってるのか?」

「ああ」

「なら決まりだ。この4人でバーサーカーを殺しに行く」

「バーサーカーだと?私はおろか君でさえ敗走したではないか」

「黙れ。消耗した後でゴッドハンド相手に一度でも殺せたなら十分だろ。次は殺し切る」

 

 シオンはアーチャーの不意打ちを何事も無く透過し、バーサーカーへの対策へ向ける。

 

「じゃ、今から行ってくる。セイバー、神威で運んでやろうか?」

「……いいえ。そのくらい、自分で歩きます」

「そうか、ならいい。アーチャー組は歩けるな。じゃ、土産はあの人形のの首でいいか」

「目だけでいいよ」

「やっぱやめだ。バーサーカーのにしてやる」

 

 ひたすらにいらない土産だ、と言う暇さえなく、シオンとセイバー、凛とアーチャーは家を出て行った。

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