聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第46話

「はぁ……螺子で留めるか?糸で縛り上げるか?どうするか……」

「あのさぁ、一応私の部屋ってプライベートなんじゃないの?」

「……姉さんがそれをオレに言うとは思わなかったぞ」

「シオンにじゃないよ。壁に並んでるのについて言ってるの」

「他に置く部屋ねぇんだ、たまの不都合くらい楽しめ」

「バーサーカー殺しちゃったんでしょ。その不都合、長くなりそうね」

「あ?」

「聖杯、このままだと止まらないんだってさ」

 

 いきなり部屋に戻ってきたシオンが例の少女を壁にあてがっているところに心にもない抗議をしてみる。

 まぁ、事実上無限の存在時間があるんだし数年くらいならなんともないか。

 

「どういうことだ?」

「私達ってさ、聖杯が完成しないようにってことで動かされてるじゃん」

「まぁそうだな」

「でも今の状況だと戦争止めても聖杯が完成しうるんだよね」

「……は?」

「間桐桜のサーヴァントが聖杯が再度召喚したサーヴァントってのは聞いてた?」

「戦争再開を促すためのだろ。そんなもん……なるほど。それは確かに無視できんな。奴らのサーヴァントが全員死ねば……コイツが完成するってわけか」

 

 状況を把握したシオンが気絶してるバーサーカーのマスターをぺしぺし叩く。

 

「しかもバーサーカーも入れるともう2騎だよ」

「は?」

「ランサー回収の時に私何か1人殺しちゃった」

「……そーいやそんな話もあったような……」

「だから……正規のサーヴァント6騎の他に新たに呼び出され、マトウに使役されるサーヴァント残り6騎も休戦、ないし拘束しなきゃならないってことだ。かなり……面倒な展開になったよ……」

「……記憶だが、確か聖杯がその機能を使うのには7騎とは言わず、5騎もあれば大抵の願望が叶うはずだ。だから恐らく残り2騎。オレ達がこの世界で殺していいサーヴァントはそれだけだ」

 

 そもそも間桐桜の目撃がえっちゃんだけだから……令呪がどれほどなのか明確じゃない。

 更には6騎のサーヴァントが1勢力下に統括されてる。

 

「しかもヴィーナス狙いのバカがまだ来るかも知らんしな」

「それホントなんなんだろうねー……」

 

 未だに謎なのがヴィーナスの存在。未だ封印指定ってことしか知らない……しかもまるで身に覚えがない。

 

「ま、どうせ戦争には関係ない連中だ。来たら相手って感じでいいだろ。今は間桐だ、そーなった世界線は知らんしな。対策するならそっちだろ。とりあえず見えたら殺すでいいか?」

「ぶっそーだけどしかたないか・・・・・・」

「バカを黙らせるには殴り殺すしかないからな」

「死人に口なし。それができれば一番なんだけどねー」

 

 殺して済むなら初日で終わる。そうしない、むしろそれが禁忌に近しい行為だから面倒だ。

 

「ねー、シオンの能力でヴィーナス探れないの?」

「あん?」

「心を読むとかあったよね?」

「あるが……ふっ」

「あいたっ!」

 

 シオンが軽く息を吹き、部屋の隅にいた……シエルさんの頭に時計が落ちる。

 

「ヴィーナスを追ってる奴らでさえその名前しか知らねーんだ。姉さんの上位互換の……あの教師の能力使わねーとわかんねーよ」

「じゃあそうしてよ」

「できねーからやってない。アイツ、この世界にいるぜ。幸い敵意は無いみたいだがな」

「唯一の懸念点がソレかもしんない。私達勝てるのかなー」

「さぁな。どーせどっかの未来に戦う時があるだろ、準備しとけ」

 

 だねー、と軽く戦場を想定する。

 私の前に立つ……統一言語……よし。想像力の限界だ。

 想定なんてできるわけない。どんな能力だろうと使い道は必ず存在する。その能力の対象が広いなら尚更だ。だからこそ無限に未来が予感される。

 

「ヤバいシオン。私死ぬかも」

「マジか。どーする。対処できるとすればどんな方法だ?」

「んー、戦わないってのが最善かも」

「……そりゃ無理だ」

「だよねー……」

 

 私とシオンが揃って絶望してるところにシエルさんが質問を投げる。

 

「貴方たちでさえ、それほど対策が必要とする存在があるのですね。この戦争が終わればその存在と対決するのですか?」

 

 対策……対策は必要だ。何よりもね……

 

「「対決予定は無い」」

 

 してたまるか。統一言語だぞ。あらゆる存在の事実を決定する言葉だ。

 私のは私が認識する世界の物質全てを自由にできるが統一言語は生命でさえ思いのままだ。両儀の器さえ手玉に取れる能力相手に四象のカケラの私が対抗などできるわけないだろ。泣くよ?

 

「なら何故今対策を?」

「オレ達永遠を望むモノにとって、遥か未来に起きる出来事は次の瞬間の課題になる。お前ら生命は死ねば全ての問題から逃避、解放されるがオレ達は全てに対応しなくちゃならない」

「えーと……私も一応不死身だった事があるのですが、話があまり理解できません」

「例えばだ。今の人類が不死になり不死身になったとしよう。するとその瞬間、最低2つの課題が出てくる。老化と身体欠損だ。どれだけ遅れさせても老化は進むし、事故や戦闘により手足が無くなれば取り返しがつかない。そんな状態で永遠に生きていくことになる。対策しなければ頭も身体も砂漠より干涸びたダルマの完成だ」

 

 私達からすれば老化も四肢欠損も大した問題にはならない。けれど内容は同じ。

 私の言葉の上位互換への対策をしなければ出会ったら最後、永遠に殺され続けることになる。もちろん統一言語以外の私に脅威になる存在も同様だ。殺され続け、犯され続け、能力を利用され続け、存在を使われ続ける。

 生前は死ねば終わるからと何の対策もせず日々を虚無で過ごしていたけど、今は昔ほど虚無でもない。無限に転生することを自覚して、それが強くなっていく程に日々が忙しくなる。人間の感覚でいう充実するって事だ。

 

「壮絶な、生き方ですね」

「そうか?お前らの方が壮絶だろうに」

「え?でも、私は死にます。今となってはもう死に抵抗する力も失いました。苦しむのは一瞬です」

「そう。その一瞬だ。長期連載してる漫画と2時間に満たない映画、壮絶な……起承転結、喜怒哀楽……それが激しいのは映画だ。2時間という短い時間で始まりから終わりまで、感情が激しく入れ替わる。連載漫画が1話や2話でそう忙しく場面が移り変わることもない。壮絶というなら、お前ら生命の方だ」

「……」

「ま、オレ達も力……能力を失えばタダのゴミ、社会性処理困難物になるだけだ」

「社会性……?それはどのような?」

「社会的な能力を失った生命だ。老人とか、障害者とか、末期患者とかだな」

「う……く、シオン。その言い方は訂正してください。私の頭痛の原因がその発言にあることは理解できるでしょう」

「なんだ?自分も老人だからやめてくれってか?」

「違います、倫理観の問題です。貴方は自分がそうなっても、その名称を使えるのですか?」

「当たり前だろ。日焼けしたやつを見て日焼けしてるって言うやつが自分も日焼けしたらそれを否定するのか?モノがどう変わろうと名称の定義は変わらない。地球は地球だ。自分だけが特別なはずだとかいうバイアスはやめろよな。オレ達は昨日となんら変わらない日常の中で突然地べたを這う事になるんだ」

「すみません。ヴィーナスは単に世界に対する脅威だとしか認識していませんでした」

「それも当たり前だ。オレ達は世界であって世界の敵じゃない」

 

 そう。恐らくこの世界のヴィーナス……私達に対する認識の間違いはソレだ。私達は……世界の物質、世界の存在、世界の歴史、世界の構築、世界の願望と言って差し支えない。あくまで世界基準であるだけだ、決して敵ではない。

 私達は破壊活動をしない。世界征服なんてありきたりな野望に興味さえ無い。より確かな、より実現不可能な、永遠を求めるだけの存在。

 私達を敵とするなら世界に生きる生命であって、世界の敵では無い。ありえない。

 だとするなら……この世界のヴィーナスは何をしている……?

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