「お前も、もう眠れ……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「バーサーカー!バーサーカーぁぁぁぁ!」
倒れ伏した巨漢に泣きつく少女、それを背にし剣を振るう金髪の騎士。
それを無感情で迎える銀髪赤眼の女性。VNAの1人、リインフォースアインス。
「何故です!?私たちの理想を叶えるためにと!戦争終結に協力してくれていたのは嘘だったのですか!?」
「嘘なものか。戦争は終わる。この世界全ての争いがな。お前もサーヴァントなら望むものがあるだろう。聖杯如きに頼ったところで、それが100%正確に叶うとも限らない。私ならお前たち全員に等しく、お前たちの理想そのものを見せてやれる。お前たちの誰も死ぬ事無く、皆が同じ夢を見る……自分の理想の世界という、同じ夢を。六道、神羅天征」
リインフォースが軽く腕を突き出すだけでこの世の法則が少しだけ変化する。
「ぐぁぁぁぁぁっ!」
最優と評される剣技も、全てを見透す輪廻写輪眼の前には歯が立たない。
全てのサーヴァントと戦いながら、その全てをアインツベルンの森に集め、各個撃破していくVNAの1人、リインフォース。
銀髪赤眼の凛々しい女性だが、その左眼は波紋模様に複数の勾玉模様が映る不気味なもの。
『セイバー!避けろ!』
「っ!アーチャー!」
『
遠方から空間を切り裂く矢が放たれる。
流石のセイバーもこれには大袈裟な回避行動を取らざるを得ず、敵の牽制も忘れて大きく跳ぶ。
「……無駄だ。輪廻眼はあらゆる術を吸収する。私はVNAだ、忍術だろうと魔術だろうと
矢はリインフォースに到達する直前に謎の障壁に阻まれ、左眼の輪廻写輪眼に吸収される。
「お前とアーチャーで全て終わりだ。他に『ゲイ!ボルク!』……いたな。無駄だがな」
「な……」
「ランサー!」
リインフォースの背後から心臓を穿つことを確定した槍が貫通する。
それでもリインフォースの平静が揺らぐ事はない。
「神威……万華鏡の一つだ。5分間あらゆる攻撃をすり抜ける。そしていかに因果逆転の能力だろうと、神威には神威でしか干渉できない」
無敵。今のリインフォースを形容するにそれ以外があるだろうか。
過去5回の聖杯戦争で最強の7騎と称されるサーヴァント全てを相手取り、かすり傷一つ無い。息が乱れる事さえ無い。
「ランサー!一度引け!
「チッ!」
「固有結界か。この世界は……知っている……お前の世界だったか」
無限に広がる荒野に突き刺さる無限の剣。
そこに第5次聖杯戦争の3騎士が同じ敵を前に並ぶことになった。
「壮観だ。だが、何故そこまで抵抗する?お前たちは理想を求めてサーヴァントになったのだろう?」
それでも尚動揺のないリインフォース。
理想の世界の実現を拒む理由が理解できず推測もできない彼女は、ただそれを知りたいだけだ。
「私の理想は我が故郷の救済だ!夢を見ることなどではない!」
「……その理想を見せてやると言うのに」
「夢では人は救われない!」
「それはお前の主観だ、セイバー。お前が王をやめたとしても、また他の誰かが王になる。その王は救済をもたらすか、破滅をもたらすか。はたまたお前と同じ思いを抱くか?それは分からない。無限に広がる並行世界、ネットに弾かれたボールと同じ、無限の領域だ。お前以外が王になるという願いはお前がその負担から逃げたいだけだ。だが無限月読なら。お前が理想とするその世界を実現できる。なんら不備の無い、誰1人として不満の無い、その世界のどこにも矛盾の無い、万人にとっての理想の世界が実現する」
「ふざけるな!そんなことができるはずが無い!」
「できる。たとえばこの戦争だ。参加者全員の理想は聖杯を手にすること。それは現実ではあり得ない。だが無限月読なら、その全てが実現できる。勝者は自分ただ1人、それが全員に実現する。誰もが喜び、誰1人悲しまない。止まらない欲求の実現、断ち切られる負の連鎖。その幸福に上限は無く、その不幸はゼロになる。お前たちが存在してきた全てが報われるんだ。何一つ無駄など無い理想の世界だぞ。何が不満だ?」
「例え理想の世界を夢見たとしても、そこに人の輝きは無い!苦痛も挫折も、人として目の絡む輝きだ!それを貴女は度外視している!」
「なら、それも夢見ればいい。自分が、他人がかは知らないが、苦痛を味わいたいならそれも叶えよう。この現実と変わらぬ夢を見ることもできる。この現実で可能な事は全て可能だ。この現実では不可能な事も全て可能になる。架空の他者の苦しみを糧に、現実の全員が幸福を得る。それが永遠に続く。なぁ、拒むなら教えてくれ。私の永遠は何が間違っている?」
誰もが同じ夢を見る。それに間違いは無い。だが、今生きている人類への倫理観という点において、リインフォースはセイバーとは決して分かり合えない。
「人じゃない……!貴女は自分が同じことをされても!そう言えるのですか!?」
「ああ。私以外が無限月読をするなら従おう。手助けもしよう」
「貴女の肉親がいたとしてもか!?」
「ああ、はやてや騎士たちにも同じ夢を見せてあげたい」
「く……狂ってる……!」
「……何を。自分の欲望のために英霊などという意味の分からない存在になったり知名度でステータスの上下があったり霊体化したりだの、お前たちに比べれば十分に正気だ。人の派生にして人を食わないと生きていけないのに寝て体力を回復するとは。身体の成長も不死性も、共通点など探せば幾らでも出てくるものだな」
「何の……話だ?」
「いいや。なんでも──」
『令呪を持って命じるわ。バーサーカー。アイツを殺しなさい』
「──令呪だと?」
セイバーがリインフォースの言葉に困惑する中、イリヤの声がリインフォースを刺激する。
「➖➖➖➖➖➖➖➖➖!!!!」
「流石擬似令呪の塊だな。既に3機蘇生できたか」
リインフォースとて目標は聖杯戦争の中断。バーサーカーを戦闘不能にして1機は代替生命を残していたのだが、イリヤスフィールはこの時間だけで3機もの代替生命を回復してしまった。
「だが無駄だ。いくら狂化を上げて戦闘力を増そうとも……神威に届く事はない。ブラッディダガー」
本来なら塵も残らぬ勢いのバーサーカーの連撃が、その全てがすり抜ける。リインフォースはただ神威を維持するだけ、一歩も動く事なく、微動だにせず神代の攻撃を眺めている。神威は神威以外の干渉を受けない。ただその一言のなんと重いことか。並大抵の存在が神威を持ったとしても5分間、バーサーカーに攻撃され続ければ恐怖に怯み、5分後の対策は無いに等しい。しかしリインフォース、VNAはバーサーカーをものともしない。全くの脅威に値しない。
リインフォースの言葉ひとつで固有結界の中にアーチャーの物でない紅いダガーがそれこそ無数に発生する。
「「「!?」」」
「まぁ、このくらいならアヴァロン、アイアス、矢避けで回避できるだろうが……バーサーカー。お前は少し大人しくしろ」
「➖➖➖➖➖➖➖➖➖!!!!」
無数に発生したダガーが……発射されては発生し、再発射され続けたダガーが空中で爆発。
ガス爆発など生温い、およそ3分にわたる無限爆破。
「だが死んでもらっても困る。このくらいか」
爆破が止まる。
そこには爆破前と変わらず仁王立ちのリインフォースと、各自満身創痍のサーヴァント4騎。
その最前線で爆破を受けた為に爆破痕に全身を染め、辛うじて立っているバーサーカー。
「まさか……バーサーカーがこれほど簡単に……」
「バケモンめ……」
アーチャーとランサーがそれぞれ悪態をつく。
「本当に、分からないんだ。何故お前たち生命は夢を……永遠を受け入れない?死ぬ事なく、自分の理想のまま続く世界。何の苦痛も無く、何も失わない。全てを手にし、全てが足りる。どれほどの欲望を持とうとも、無限月読はそれを受け入れる。死ぬことが望みならそれも可能だ。好きにするといい。お前たちも、もう眠れ」
リインフォースの語りはグズる子供を寝かしつけるような、一方的な質を含む。
明らかな立場の差を押し付けるようなその態度に、ランサーが怒りを露わにする。
「じゃあ何か、テメェを殺すしかねぇってことだなぁ!」
「殺す?私と戦うつもりだったのか?」
「最初っからそれしかねぇだろうがよ!」
ランサーの高速の攻撃も全て神威のすり抜けにより意味を成さない。
「……戦いたかったのか。それが夢の前の最後の望みなら、それも叶えよう。お前たち相手なら、コレだな。変身」
神威ですり抜けているため、ランサーを意に介す事なくドライバーを装着、そこから出てきたゴースト(?)によってランサーを引かせる。
《レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ!ゴースト!》
「仮面ライダーゴースト。まぁ、お前たちと戦うならいい采配だろう?」
「けっ、それがテメェの武装か!ナメた格好しやがって!」
「……ケルトとフェイトにだけは言われたくないぞ……だが、私ならサーヴァントとも戦える」
ランサーの突きを軽々と受け流すリインフォース。
「攻撃を受けるって事はすり抜けてねぇってことだよな!なら今度こそ食らえ!ゲイボルク!」
近接必殺の刺しボルク。
回避行動を取るもその槍は必中、神威でのすり抜けを解除したリインフォースにそれを躱す術はない。
「だがお前にも受けてもらうぞ。ゲイボルクを」
リインフォースの背後からランサーの物と同じ槍が出現、2つの槍がそれぞれを躱すよう軌道を変化させ互いの心臓に命中する。
輪廻眼をも解除し、更なる能力を発動させたリインフォース。
「……何ぃ……!?」
「ランサー!」
「いや、だが!これで奴も死ぬはず!」
互いに膝を突き、ランサーは自身に刺さった槍を抜き、リインフォースに刺さった槍とダメージを受けたゴーストの変身は消えていく。
セイバーはランサーへ駆け寄り、アーチャーは宿敵と難敵の消滅を確信する。
「シオンじゃないが……とある人形師の言葉だ……怪物には3つの条件がある。ひとつ、怪物は言葉を喋ってはならない。ひとつ、怪物は正体不明でなければならない。ひとつ……怪物は、不死身でなければ意味が無い」
「「「!!!」」」
「私達は世界だ。お前たちは世界に生きるもの。だから、私達には勝てない……オーバーヘブン」
そしてリインフォースは何事も無かったかのように立ち上がる。
「ランサーから受けた傷が……」
「私達がいない基本を含む並行世界において、お前たちはそれぞれ同じ、または似た能力を持つ。全く同じではないにせよ、お前たちが使うという点において同じ類の能力である事に違いは無い。私と戦うと言うことは自分と戦うと言うことだ。鏡と同じだ。鏡に映る自分には何をどうしても勝てやしない。負けることもない。あらゆる存在は自分には勝てないし、自分には負けない。結果は相討ちだ。だが、あらゆる存在にはそれを超える術が存在する。当然、私もそれを使える。だからお前たちは私に勝てないし、私はお前たちには負けない」
「く……」
「お前たちという世界の生命が……いわゆる全てが無限の幸福を得られるのなら、私という有限の対価を払う価値はあると思わないか?私が作るのはお前たちが望む明日だ。私が生き続ける限り神樹はお前たちに無限の幸福を与える。お前たちサーヴァントも私達から見るなら生物ではないが生命だ。この能力なら対象にしてやれる。生前のお前たちを対象に今のお前を連れていく」
「何……?」
「セイバー。人の幸福には上限がある。全ての理想が安定的に、際限なく叶うとしてもその幸福は一定のラインに達すると横ばいになる。言わば天井がある。だが、不幸には下限が無い。どれだけ底に落ちたと思っても、まだ下に落ちていく。この世界を逆に写したようなものだ。地表という天井があるのに、空という下限が無い。底無しの穴なんだ。闇の書での被害者、その関係者はどれだけの不幸を被っただろうな?どこまで落ちていっただろう。まだ見えるほどだろうか?どうしても届かないほどだろうか?これから世界の全てが天井の幸福を得たとして、その不幸に見合うだろうか。その穴が埋まるまで、私は無限の幸福を与えてやろう。この世が生まれた時から発生した不幸を相殺できるまで、私は永遠を作り続けよう。
「そうだな……素晴らしい提案をしよう。お前たちもVNAにならないか?」
「は……?ぶい……な?」
「ああ。セイバー。お前もまた、弱点があるとは言え不老不死、不死身だろう。あともう少し力があれば、私達の足下に及ぶ事くらいはできる」
「貴様……っ!私の能力を知って尚、そう断言するのか!」
「ああ。お前の不死身はアヴァロンあってこそだ。真に不死身ならばサーヴァントになどなりはしない。アヴァロンを奪われた程度で死ぬお前では……サーヴァントとなって、その上で全力の攻撃をしても街1つ程度、国を滅ぼす事さえできないお前では、私達には到底及ばない」
「な……」
「私達ならその身ひとつで不死身だ。不老不死だ。誰の干渉も全く問題としない。その気になれば世界そのものを焼き払うなど雑作も無い」
「ばかな……」
「そう。バカなんだ。どうせ生きる価値も無いクセに求めた永遠を忘れられないバカな5人だ。ああ……安心していい。私達の中には抑止力が2人いる。どちらも……うん、まぁ……今の人類を救おうという存在だ。だから……まぁ、言ってて恥ずかしくなるんだが、私が無限月読を完成させる事は無いだろうな」
「……???」
「そんな顔をするな。あくまで私達のそれぞれの永遠は未完のままだ、というだけだ。その世界では私が殺されているだけかもしれないし……私以外の生命が絶滅しているかもしれない」
「……!」
「あくまで無限月読が達成できない、というだけだ。私が死ぬなら当然達成できず、私以外の生命が無いのならまた達成できない。恐らく前者はソラ、後者はプレシアが来るだろうな。軽く想定できるのはそのくらいだ。もしその2択だとするなら……お前たちは50%で死に絶える。ソラが来たとてロクな未来にはならない。だったら諦めて……夢を見よう」
「ありえない!そんなことがあってたまるか!」
「ありえる。それがいいんだ。まぁ実際この任務で抑止が私に働かないことは分かっているんだ。諦めて夢を見ろ。もう終わりだ……この世界全ての生命はこれで救われる。これで三つ目の世界だ。『無限月読』」
数ある並行世界、ロリコンの神によって転生させられること三回目。ウタネとシオンがもたもたしている間にリインフォースは二日に1つというペース(一度目・初めての異世界転生に戸惑いながらも対話による解決を目指すも戦闘になり全員を拘束して無限月読。約四日間。二度目は初めから全員を戦闘不能にし無限月読。約二日)で並行世界を無限月読に堕としている。
無限月読の世界では全ての生物が夢を見る。無限月読の先を目指す気のないリインフォースはそれで終わり。その命が尽きるまで理想の夢を見て絶滅する。
しかしあくまでもリインフォースはすべての幸福を望んでいる。自分が殺してきた歴代の主たちへの懺悔も込めたその願望は自身のためというより自身以外のためだろう。
「さて……ロリコン。終わったぞ、次だ」
リインフォースが虚構となった世界の虚空に吐き捨てる。
『お前も大分変わったな。従順な魔導書の時代を思い出せ』
その視線の先にやはり虚無の声が響く。
「私はいつまでも主に従順な魔導書だ。お前はただ主と対等な契約をしているに過ぎない」
『誰のお陰で転生出来てると思ってんだ……まったく。次だ。さっさと行け』
「初めからそうしろ。はやて達の世界に特異点が出現する危険を回避できる目処は立ったんだろうな?」
『まぁな。話すのは手間だからやらないが。後はどうでもいいな?行ってこい』