聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第47話

「いーわえ〜わーたしのーてんせーをーせーかいの〜えーいえんを〜」

「何歌ってんだ姉さん」

 

 ノリノリでクッキー生地こねてたらシオンが水差してきた。物理的に。ボウルに計量カップいっぱいの水が躊躇いなくひっくり返される。

 

「ちょお!?何やっとるん!?」

「落ち着け、別人出てるぞ」

「おぉ……焦ると関西少女が……じゃなくて、これどうしてくれんの」

「あ……?何が」

「何が!?生地水浸し……じゃないね?」

 

 無限に粉足さないといけないレベルだった生地が元の通りに戻ってる。

 

「オールフィクションで無かったことにした」

「そんな下らないことして下らないことに能力使って……負荷どうするの?」

「別に。ニキュニキュで弾き出して磔にした間桐慎二(生きてる壁紙)にちょっとずつ飛ばして遊ぶだけだ。卿やイリヤもやるようになった」

「え……」

「イリヤも魔術の最先端だけあって触れずに飛ばせるし卿は痛覚無視して飛ばしてる。肉級で弾かねぇと小分けに出来ないはずなんだがな。まぁオレの能力だしな。そういう並行世界の能力だったんだろ」

「無茶苦茶過ぎる……」

 

 元の能力では弾いたダメージはその能力の肉球でしか弾けないらしく、弾こうとする意思で弾けるのが原典と違う点、らしい。知らない上どうでもいい情報だ。使えないこちらとしてはな。

 

「今更だ。んでな。殺して回ろうかと思う」

「うん……何を?」

「マトウのサーヴァントを」

「えぇ……」

「もういっそやり直そうぜ。フランシスドレイクなんぞ大英雄、この戦争に追加するには十分なサーヴァントだがそのレベルが7騎はダルすぎる。全部殺してマトウがいない世界をリセマラした方がマシだ」

 

 ドレイクというらしい、あの銃を使うサーヴァント。クラスはライダーだった。大英雄だったのか……

 

「異世界ガチャとか破産しそう。で、今のマトウに勝算あるの?」

「さぁ?サーヴァント6騎程度に負けるか?」

「いや、負けやしないだろうけどさ……」

「卿もなんやかんや記憶引き継げそうだし3周目くらいには達成できるだろ」

「初見攻略失敗したら次も失敗する見通しなのほんと」

「初見でギリギリの突破、できなけりゃ完璧な攻略のためにデータ取るだろ」

「どーにかしなよ。その無敵の能力で」

「あーオレの能力な……とりあえず、外にいるから殺してくる」

「外?」

「間桐桜の差し金だろ。新しい能力を試してみる」

「なにそれ」

「相手への完全な擬態だ。ヴィーナス狩りの1人が持ってた能力だ」

「おふ」

 

 シオンの能力……月読というやつで能力の全容を見せられた。いつぞやに使わないって言ってなかったっけ。

 それはそれは素晴らしい能力で、擬態したい人物を知っている相手とその人物に触れる会話をする。その次にその人物の所有物に触れる。最後にあらゆる視線が無い場所に行けばその人物と全く同じ見た目と中身を得ることができる。能力者の意識がある事以外は全く差異のない人物が2人存在することになる。

 

「で、これでどうするの?」

「とりあえず陣営の内容を割る。間桐桜の物品はあの男が持ってたから話すだけ」

「物品?」

「ん、多少の化粧品と下着類だ。じゃ、行ってくる」

「ん、お願いね」

 

 ♢♢♢

 

「よっ」

「……」

「お前……バーサーカーかよ……」

「……」

 

 時空間移動で外のサーヴァントの背後に出るとバーサーカーだった。

 しかもかなり狂化してるな。喋らねぇ。

 なのに……襲ってこない?

 

「……おい」

「……」

 

 見た目は意外とまともそうな女だ。

 黒髪長髪……紫よりの装束。あとはしゃがんでも膝すら見えなさそうな胸。なんだアレ。日本人か?もはや障害だろそれ。

 

「お前、喋れるだろ。喋れ」

「……死んでください」

「……真名、なんて言うんだ?まさか日本人じゃないだろうな。ドレイクが先鋒なんだ、大層な英霊だろ?」

「……」

「……よ、頼光ぅ……?マジか、お前も女だったのか……」

 

 源頼光。うむ。うむうむ。ガチガチの日本人か……なんでそう盛りたがるんだろうな。

 

「……魔力放出」

 

 隙を見せると一瞬で首筋に刀が迫る。

 打ち合うのではなく、切り捨てる前提の日本武人。

 反撃さえ許さない速度と威力。

 

「……おかしいですね。切ったはずですが」

「万華鏡写輪眼、神威。オレに攻撃は通用しない。無窮の武練に傷が付くか。ま、どうでもいいが」

 

 動き始めてからでは絶対に間に合わない速度だが、動き始める前になら対策は可能だ。オレの未来視はその数秒前を読み取る事ができる。

 だが……この様子では対話にならない。敵サーヴァントを全て把握するという目的は果たせそうに無い。心を読んでも自己防衛に似たロックがかかっていて読み取れない。読めたのは真名だけ。

 

「仕方ない。戦うしかないか。来たからには死ぬ覚悟アリなんだろ」

 

 刀を出し、一度振るって距離を取る。

 相手は無窮の武練、打ち合うだけ無駄だ。オレの未来視程度じゃ互角にすらならない。

 だから……

 

「一撃必殺!無明三段突き!」

 

 縮地法による超速接近に超高速の3連突き。事実上同時に放たれた突きは頼光の喉と両肩に貫通……はしなかった。

 

「はっ!」

「キングクリムゾン!」

 

 突きも縮地法も完全に見切られ、その刀のみで全てが捌かれた上に反撃さえ行う戦闘スキルに驚愕する。

 とっさに時を消し飛ばし頼光の背後に跳んで距離を取る……のに何故だ?

 時間が消し飛んでいる最中はオレ以外の全てが現実を認識しない。つまりは頼光には時を消し飛ばした後にオレが退く方向等は分からないはず。なのに正確に、オレが飛び退いた着地先に刀を振るう頼光がいる。

 だがオレの能力は30秒は消し飛ばせる。その圧倒的予知能力を理解した上で回避を取れば全く問題は無いない。

 だが……それでも。さらに跳び退いたオレに迫ろうとする頼光が見える。

 つまりは……この数秒先、消し飛ばした時間が刻み始めた時、何か対策を立てていなければオレは首を切られて即死する。

 

「……」

 

 時が刻み始めても相手に動揺は見えず。しかしオレの首も繋がっている。

 

「時を消し飛ばしても、消し飛んでいる間のオレの動きが予見できるなら意味はなく、消し飛んだその先で必ず殺せる。無窮の武練はそんなもんだ。だが、オレとてVNAだ。たかが1サーヴァント如きに敗北は有り得ない」

「はぁっ!」

 

 隙を見せれば即座に攻撃される。

 

「……」

 

 しかしオレはその攻撃を適当に対処する。

 

「オレは世界の鏡だ。姉さんの鏡に写る虚像。虚無の世界(姉さん)を彩豊かに写し、それを得る強さとしなやかさ。それらから楓と紗でフウシャ。風車の様に動力源、計測器としての役割を果たす鏡。オレの能力、フウシャはお前の無窮の武練さえ写し出す」

 

 無窮の武練には無窮の武練。同じ能力で戦うことになれば有利不利は無い。

 フウシャ……オレが決めた、オレの力の名前。何もかもが誰かの虚像でしかないオレの、ただ1つだけのオリジナル。

 

「オレはこの名で世界(お前たち)を写し続ける。オレはお前たちを写した鏡、お前たちがいる限り、オレの存在も永遠だ」

「……宝具解放。牛王招雷・天網恢々(ごおうしょうらい・てんもうかいかい)

「それも無論、写してやる。D4C」

 

 頼光の周囲に4人の幻影が現れる。それは頼光と同じ外見でありながら、それぞれ別の力を持つ神の使い。オレ達と似たようなものだな……

 

「オレもお前も、肉親なんて居ないに等しい。ヒトの身でありながら神の力を持ち、人を脅かしうる存在だ。性別を偽って生きたのも、まぁ、今知った共通点だが……オレにもう少しの、普通の奴らの言う狂気があれば……オレとお前は、とても近い存在だったと思う」

 

 オレは救われたいなんて思わない。人間の助けなんてこれっぽっちも望んじゃいない。オレは姉さんのためだけに行動する。頼光はどうだ?誰かの為の行動を重視するか?それは知らない。奴は今間桐桜の為に動いている。

 ……奴が間桐桜に依存できるならそれもいいが……姉さんの妨げになる以上、例え神であろうと生かしておけない。

 

「生き方としては間違っちゃいない。だがここまでだ。カルデアに呼ばれたなら、藤丸に良くしてもらうことだ」

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