聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第51話

「どーすんの」

「何がだよ」

「何って。何でマトウのセイバー殺しちゃったの」

「ん〜……良い質問にして無意味な質問だ。何となく殺したかったからに決まってる」

「……」

 

 これで間桐のサーヴァントはセイバー、ライダー、バーサーカーを除いて4騎。正規のサーヴァントはバーサーカーを除いた6騎。消滅したサーヴァントは既に4騎。本来であれば聖杯の器……イリヤスフィールがヒトの形を保っていられないようになるはずだ。けれど今、私の部屋で壁の生物にシオンの負荷を叩き付けてるイリヤは健康そのもの。元気いっぱい、普通の……見た目相応の精神、身体水準にあるように見える。それが異常であることくらい、私が分かるのにシオンが知らないはずが無い。サーヴァントの絶対値が増えた分、許容範囲も増えたってこと……?

 

「ま、気にすんなよ。あのセイバーはオレ達に近過ぎた。とりあえず……寝る。流石に疲れた」

「ん。おやすみー」

 

 ♢♢♢

 

「……ふむ。月夜……とは言わぬが、憂き夜に訪問者とはな」

 

 既に守る物無き門の先、月光に照らされた優男、アサシンが階段を見下ろす。

 

「ふん。既にキャスターはフタガミの手に落ちた。残るは君だけだ、アサシン」

 

 双剣を手に、戦闘態勢のまま階段を歩いて登るアーチャー。

 

「説得……ではなさそうだな。貴様もサーヴァント、戦闘本能が抑えられんと言った顔だ」

「まさか。私は元より争いは嫌いでね」

「ならば何用だ?動けぬ私を女狐ともども匿おうなどと言う腹でもあるまい」

 

 戦う気が無いなら放っておけと言うアサシンに、双剣を握り直したアーチャーが更に近づく。

 

「君を殺しに来た。背後に護る物もない反英雄など、もはや存在価値も無いだろう」

「……ふむ。確かにあの女狐めが既に必要としていないのは事実。だが、そのフタガミとやらはサーヴァントの存命を目指すのではないのか?」

「ふん、そんなものはヴィーナスが勝手に言うだけだ。私には私の正義がある」

「好い。ならば私も1人の剣士として迎え討とう。その決意が単なる余興であるなら尚のこと」

「……いくぞ」

 

 アーチャーが近づく速度が上がる。

 それはサーヴァントの速度。人間が届かない超常のレベル。

 

「はぁっ!」

 

 ♢♢♢

 

「このままでは、世界は……」

「あー?」

「うん?」

「シオン……貴方なら解っているはずです。このままサーヴァントを殺し続ければ、この世界は……」

「聖杯が完成して姉さん基準でリセットされる、だろ。んなこたぁ今更言われなくても分かってんだよ」

「私基準なんだ」

 

 沈むルーラーにシオンは眠たげなまま答える。

 

「なら何故更にサーヴァントを減らす様な事を……」

「……あのセイバーはあそこで消えるべきだった」

「ですが!」

「宮本武蔵だ。分別すれば剣士であるオレや姉さんとは極めて相性が悪い。オレや姉さんは能力に依存している分、あらゆる物事への対応が無限だ。だが奴の魔眼はそれを一つ……オレ達の敗北へ限定してしまう。あの時オレが選んだ能力は宮本武蔵の時代に極めて近く、それら剣客に対して圧倒的アドバンテージだった。だが2度目は無い」

「だとしても!貴女たちVNAはそれさえ対応出来るはずです!」

「ソラが相手として、お前は勝てるか?」

「何の誤魔化しですか。私が勝てるはずもないでしょう」

「だな。で、宮本武蔵は……あのセイバーは、生きたまま異世界を強制される漂流者」

「……まさか」

「かもしれない、のレベルだ。無限の可能性を1に統一するセイバー、無限の力をその身に収束するソラ。ソラがオレや姉さんと同郷である以上奴と同一人物である可能性は無いが、奴がソラと同一人物である可能性は否定できない」

「無限、思考実験の更にその上の無限にあるシオンでさえ、超えられない可能性があったというのですか」

「放っておけばな。あの時宝具さえ封じられたのは『風林火陰山雷』の陰。オレの現在の未来を読ませず、同時に無限の可能性を匂わせるという能力。原理で言うなら燕返しが近い。ま、それも終わった話……マトウのセイバーもまだ所詮は英霊の程度だ。だがもしオレの全ての可能性を限定できたなら、オレ達をして勝てんだろうな」

 

 全然話についていけないけど、要は無限にある並行世界を自分の望むものに限定する……事実上の未来の書き替えってことかな。

 並行世界は無限に存在する。勝負に勝つ世界があるってことは負ける世界も同数存在する。私達が負ける世界に書き替えられたなら当然、私達も負けるしかない。

 

「……」

「なんだよ」

「驚きました。そうも簡単に敗北を認めるのですね。もっと濁すのかと」

「簡単も何も、負けるのに勝てるって言う意味が分からん。何の意味も無いだろ」

「まぁ、それはそうですが、プライド的な……」

「プライドはオレもある。が、それと事実は別だ。感情と現実を混ぜるのは論理的思考の出来ないバカのすることだ。現状課題があるならそれを解決するためだけを評価する。実際オレが負けようと姉さんが達成すればいい。どーでもいい」

「そうですか……分かりました。それでは私は席を外します。ごゆるりと」

「どこ行くんだ?」

「糖分補給の時間です。それでは」

「……」

 

 余計に沈んだように見えるえっちゃんを部屋から送り出し、ため息と共にお酒を取り出すシオン。

 

「ところでさ。キャスターってどこいるの?」

「あ?」

「や、しばらく見てないなーって」

「あー……知らん。教師との相部屋は用意したから住み着いてんじゃないのか?少なくとも教師は戦うつもりは無さそうだったから放ってる」

「そーなんだ」

「何か用か?」

「ううん。気になっただけ」

「そうか。ま、マトウの影響が無ければ問題無いだろうしマトウにはオレも卿も警戒してる。使い魔だろうと近付けばすぐ分かる」

「ん。任せたー」

「ああ……あ?」

「ん?」

「いや。ちょっと出てくる」

「んー?」

 

 ♢♢♢

 

「はあっ!」

「ふむ……」

「ち……リバイブ疾風が通じないとは……」

「疾くはある。だがそれだけだ。斬れんほどでもない」

「なるほどな……」

「だが何故にこの様なことをする?打ちあうたび考えたが、やはり腑に落ちん。まるで無意味だ」

 

 階段の地の利を維持しているとはいえリバイブ疾風の速度をして押し切れないアサシンの技量には驚愕しかない。

 とはいえ捌くに注力しているようで、アーチャーにも疲労はそう見られない。

 

「無意味ではないさ。私がこうする事、それだけでもね」

「……まぁ良い。そろそろ夜も明ける。決着としようではないか」

「ふん……潮時か」

《フィニッシュタイム!》

「秘剣……燕返し!」

 

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