聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第53話

「彼女の運命が決まったのは、ただ1度頼られた時。彼女にしかできないと頼まれただけ。ただそれだけの口約束で、彼女の未来は決定された」

 

単に……あの司書が頼っただけだ。

なんて事のない、至って普通の家庭だったはずだ。元の人格はどうあれ、元の環境がどうあれ、魔法なんてものに関わらなければあそこまで壊れることもなかった。私に近い戦闘スタイルの選択をすることも無かったはずだ。

 

「自分のミスで広がった災害を収束させるため、無関係な子供の手を取った。それを解決する事は自分の自己満足でしかないのに」

 

ジュエルシード、この世界で言うなら簡易的な聖杯の様なもの。手にした者の望みを限定的に叶える人工物。それを手にしていたのに、正しい管理法を知っていたはずなのに、市民の住む街へバラ撒いた。故意とは言わない。事故であったとしても、その想定をしていたかどうか。

 

「その後彼女は努力した。本来なら全くする必要のない訓練を、時に倒れるまで繰り返した。事件解決の為なら、不相応な能力のまま飛び込み、敵と戦った」

「……」

 

フェイト、守護騎士、ナンバーズ。他にも様々な次元犯罪者と戦闘を繰り返しただろう。ひとつだけの事件を知ってしまった為に、無限に発生する事件を無くそうだなんて考えてしまった。

勿論そこまでは考えていなかっただろう。けれども、誰かを救うという虚構の目標にのみ従い、それが実現できる力量にまで成長した。

子供の頃、災害の中唯一救われて、それと同じ道を志したセイバーのマスターと同じように。

 

「彼女は手が届く全てを救おうとした。限度を超えて手にした力で、シオンにさえ見抜かれないよう、自分の無理を隠し通してまで」

 

実際のところ、シオンなら気づけたはずだ。そんな能力くらい、ひとつは探せるだろう。

 

「その結果、彼女はある事件で致命的な傷を負う。2度と戦えないどころか、まともに歩くことさえ出来なくなる重大な損傷。けれど彼女はそれを越えた。長いリハビリに耐え、以前と同じレベル、それ以上にまで復活した」

 

私が離れてた数年間……私が生前と変わらず何もしなかった時間で、その世界で1番付き合いの長いなのはが致命傷を負った。シオンがいたのにも関わらず……その人生の数年を奪ってしまった。私達が介入しなくても同様かどうかは知らない……

 

「分不相応は身を滅ぼす……貴方も彼女も、昔の私みたいに引きこもってれば良かったんだ。なのに欲求の為に元のレールを外れて動いた。レールの無い土砂を走る列車は相当な振動の後に止まる。本来走るはずだった距離のはるか手前でね」

「距離って……」

「活動時間だよ。貴方で言うなら、正義の味方である時間。それになるまでの時間。その時間は本来なら普通の人として生きたであろう時間より遥かに短い。それを超えて生きてたとしても、生きてるだけだ。人間と同じ種族で、人間と同じ言葉を使う。それだけの人でしかない」

「それの何が悪い」

「悪いよ。人類はその知性によって文明社会を作り上げ、人間に権利を保障した。けど知性の無い存在は人という種族であっても人間じゃない。『人間の普通』から外れた人は他の動物と同等だ。いくら法で守られてるとはいえ車道に平気で飛び出してくる人は轢いていいし、作物を盗む人は駆除していい。同じ様に、人のくせに人間の領分に土足で踏み込むなら屠殺する」

「っ!そこまでする必要は無いだろう!?法に則って裁けばいい!」

「だから、それは人間ならそうしたらいいよ。けど人類だからって許されると思ってる奴らは人間じゃない。知性により等価交換と平和を仮にも実現した人間の社会を欲求でしか動かない動物に文明社会を荒らされるなんてたまったもんじゃない」

「……ヴィーナス」

「うん?なんて?」

「お前たちの価値観には何も言わない。言っても無駄だ。結論だけ言え」

「ああ、うん。私達について多少理解してもらえて良かったよ。結論から言うなら貴方は遠くない未来に体を壊すし、自分を正当化する人やそこの壁の生ゴミは早めに焼き払いたいってこと」

 

壁を指差してベッドに沈む。アレ何かずっとあるんだけど……何考えてんだろ、シオン。

 

「……」

 

マジェスティは黙ったまま。

マジェスティの力を継承したとはいえ、まだまだ使い始め、負担も相当だろうし。

戦力だけでは私達には並べない。世界全てを手中に収めても、それを自分の手足同然に扱えなければ意味が無い。

 

「慎二か」

「あれ?そんな名前だっけ。血で床が汚れるから邪魔なんだども」

「そこかよ!異性の学友が大怪我して自分の部屋の壁に打ち付けられてるんだぞ!?もっと気になるところあるだろ!」

「……壁の汚れ?」

「あぁぁぁぁぁぁぁあ!ウタネ!何なんだお前は!」

「通りすがりの殲滅者だけど……」

「殲滅するな!」

「してないでしょ」

「うるさい!」

「何なの……」

 

床と壁以外どこが汚れるの……空気?

 

「人が自分の部屋に磔になってるんだぞ!もっと動じろ!」

「人でしょ。人間じゃないからどうでもいい」

「人間だ!」

「知ってるの?ソレがどのレベルなのかって」

「……?」

「シオンが暴露したんじゃなかったけ……この世のコンプレックスの凝縮とか言われてたけども」

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「……はぁ、叫ばないでよ。生ゴミ」

「とにかく!慎二を降ろしてくれ!」

「……はぁ、めんどくさ……」

「ウタネ!」

「まぁ……別にいいんだけども……」

【降りろ】

 

シオンの能力……よく分からない拘束を無理矢理壁から剥がして降ろしてあげる。

あくまで壁から降ろしただけ。杭みたいのは手首足首に刺さったままだし怪我もそのまま。

 

「あぁ……また汚れた……」

「もっと他があるだろって!おい慎二!無事か!?」

 

落ちた痛みでなのか、傷口を広げるようにもがく人。下手に動かず杭を抜くなら傷は最小限で済むのに……現実が認識できてない人の行動原理は分からない。

 

「もーいいや。マジェスティ、貴方が身体を壊すって事だけ理解してくれれば。シオンには私が言っとくから、ソレ持って部屋に戻りなよ。間桐に行く時は声かけるから」

 

壁と床の掃除がやっとできる。

 

「……ソレってなんだよ」

「うん?ソレ。シンジだっけ。その異常物品だよ」

「何でそんな言い方ができる」

「認知症かな。前言ったよ。ついさっきも言った。人間としての知性が無い人は人であっても人間じゃない……マジェスティ、貴方もそうなりたいの?」

 

何でそんな言い方するんだ。犬猫を自分と同列には置かないでしょうに。犬猫は店で値段を付けて売られる物品だ。なのに人を売るのはダメだと言う。なら同列であるはずが無い。同列に置くやつがいたら異常者だ。

 

「ウタネ。今一度俺と戦え」

「シロウ!?」

「セイバーは手を出すな。正義の味方として必要な道だ」

「……」

「私はいいけど……死にたくなった?」

「お前を生かしておきたくなくなった。死んで欲しい訳じゃないが、生きてて欲しくない」

「そう……じゃあ仕方ない。けど場所変えようか。それともここでやる?」

「俺は構わない」

「じゃここでいいや……どうぞ?」

 

聞き方が悪かったか、どう構わないのかサッパリだ。

 

《ゲイツ》

《ゲイツマジェスティ》

「変身」

《マジェスティタイム! G3・ナイト・カイザ・ギャレン・威吹鬼・ガタック! ゼロノス・イクサ・ディエンド・アクセル! バース・メテオ・ビースト・バロン! マッハ・スペクター・ブレイブ!クーローズ! 仮面ライダー!Ah~! ゲイツ!マジェースーティー!》

 

私の部屋の机やらを薙ぎ倒しながらウォッチを撒き散らし変身するマジェスティ。

掃除……いいか。後で全部消そ。

 

「はぁ……結局マジェスティか。歴代の力が詰まってるんだってね」

「正義を志す力の結晶だ。この力で、お前を倒す」

「やってみなよ。世界に存在してるだけの力で」

 

鎌を取り出し、部屋を固定する。

ここはひとつ、彼女(高町なのは)と同じ体験をしてもらおう。

 

《brave》

《game・start!》

 

と思ったら部屋の内装が変化、よく分からん廃屋に。

 

「え……」

「ここは俺のゲームエリアの中だ。邪魔は入らない」

「ふーん……お気遣いどうも」

 

 

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