聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第54話

「ふん……? アーチャーのリバイブより上らしいのに、生身の少女さえ倒せないの」

「く……! はぁっ!」

 

 あえて言葉で挑発してみる。

 何故か人のいない広い公園のような場所……夕暮れ時の景色はまさに決闘と言った風情だ。

 普通なら目立ちまくりだろうけど……ここがゲームエリアだと言うなら尚のこと意味は無い。

 リバイブより上、生身の少女。そんなもの何の関係も無い。それは他所から見た客観的なもの。実際には私は生身でも何でも無いし、マジェスティは私と戦ってるわけでもない。

 

「よ……っと。ねぇ、他のライダーの力は使わないの? 使えないの?」

 

 スタートから2分も経たない内につい口をつく。

 マジェスティの真髄はそのスペックの高さより他ライダーの能力行使のはずだ。シオンに近い他人の能力の使用能力。なのにマジェスティはタイムリミットの半分近くを無為に経過した。

 ただの肉弾戦で私に勝てるはずもないのに……それは知っているはずなのに……何故? 

 

「勝つための力を使わず負ける。仲間内で手加減したって言うなら言い訳には十分使えるね」

 

 考えられるのは……他ライダーを使うほど能力への理解が進んでいない。これは却下。初陣でさえそれをほぼ完璧に使いこなしてみせたマジェスティなら、今この状況で使わない理由にはならない。そもそも、ゲームエリアなんてのを設定した時点で能力は把握しているはず。

 なら……使えない? いいや、それならマジェスティとの純粋な勝負になる。私の直感と能力を知るならその選択は死ぬだけだ。私への反感から出た行動でそれは無い。

 

「まさか、演技だったの? ホントは死にたかった?」

「……」

「肯定かな? 言葉にしてくれないと分からないよ」

「これが答えだ」

「っと……」

《マジェスティ・エルサルバトーレ!》

 

 鎌を大きく弾かれ、その隙に必殺技。

 巨大な鎌は普通に引き戻したのではマジェスティのパンチより明らかに遅い。両手も鎌に持ってかれてガラ空きの胴には防御の手段は無い。

 普通ならね。

 

「知ってるよ」

 

 常人からすれば無限に近い魔力量、それを魔力放出の原理で鎌から発する。

 パンチの動作に入ったマジェスティはそれをキャンセルする余力は無い。回避動作より速く加速する私の鎌はその右拳を上段から真っ二つに切り裂いた。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!??」

「シロウ!」

 

 裂けた右手を庇いながら退がるマジェスティ。

 

「私の鎌は能力で概念系でも捉えられる。どんな装甲だろうと防御力を上回るなら破壊できる。私の能力は世界の頂点を創れる。私の魔力放出は5分の戦闘なら切れる事なく使い続けられる。そしてその動作の着地点は未来にある」

「っ……」

 

 必殺技での強襲なら初撃にするべきだった。2分近く私と戦ったならその動作は元より遥かに劣る。

 

「どうする? もうやめる? 今なら右手も戻せるよ」

 

 私の能力ならシオンに治してもらえるくらいの現状修復はできる。

 ……私の欠損の場合、血管やら何やらも無理矢理繋げて自然治癒に任せるんだども。

 

「ふざけるな……」

 

 マジェスティは更にウォッチを起動。

 歴代ライダーが勢揃い……人数差、やっぱりおかしいよ。

 勝手に出てくるもんだから勝手に囲まれる。どこかを突破しなきゃ退避すらできない。

 

《Gatack》

「クロックアップ」

 

 更にひとつウォッチを起動。

 

「っと」

 

 直感とそれに連動する魔力放出により2つの攻撃を防ぐ。

 

「何……!?」

「いくら高速で移動しても、その攻撃の数が増えるわけじゃない。速度に対応できるなら、防げないはずは無い」

「速度がダメなら、パワーはどうだ!」

 

《クローズエボル!》

「いくぞ!」

()()()()()()()()()()()()()

 

 マジェスティが懐から取り出したウォッチを起動、背後のライダーが黒く染まり、正面のマジェスティと共に挟み撃ちを仕掛けてくる。

 恐らく同時に私へ到達する。そのカンから更に攻撃タイミングをカンで計り……魔力放出で急速に体を自ら吹っ飛ばす。

 

「ぐっ……!」

「どれほどパワーがあろうとも、その攻撃が肉体に依るものなら、躱せないはずは無い」

 

 拳と拳で相殺(あいさつ)したマジェスティが吹き飛ぶ様を見ながら次に備える。

 とりあえず私を逃すまいとしてる周囲のライダー群を退かさないと……

 

「生身でそれだけの運動能力……やはりヴィーナスは……」

「とんでもない、って言うの? それこそとんでもない。私と戦い始めてもう3分。貴方の身体能力が落ちてるの」

「何だと……」

「世界が私を脅かさないようにしてるんだってさ。つまり、貴方がそのマジェスティを使いたくないようになっていってるの」

「そんなわけあるか! 今の俺が戦うための力だ!」

「なら何で、他のライダーの力を使わないの?」

「……」

「クロックアップも、さっきのライダーも、初めてマジェスティを使った時に使ったもの。他のライダーのウォッチを見たくなくなってきてるんじゃない?」

「それは……違……」

「後2分、もし続けるなら貴方は今だけじゃなく今後ずっと、マジェスティのウォッチさえ持つことができなくなる。やめるなら今だよ」

「やめる訳ない! 今回初めてじゃない! 何度だってこの状況を望んでた! ヴィーナス全員相手にするならお前1人に諦めてられないんだ!」

「……戦争に勝つ事からかなり壮大な目標になったね。それは頑張ってね」

 

 私だけを相手にするなら可能性もあったのに……私達となると個人の及ぶレベルじゃない。

 

「総員。行くぞ」

《フィニッシュタイム!》

 

 全ライダーがそれぞれ必殺技の構えに入る。

 

「行くぞ!」

「……だけどこの状況……1対多数はいつものこと。そして……自分が冷めていくのが分かる」

「……?」

「1対1で拮抗しうるかもしれない……そう考えると少し、期待してしまう。けど相手が数に頼ると……私に個人で勝つのは諦めたんだと、そのつもりは無いのに、数だろうが勝てば良いのに、落胆してしまう。私を超える存在は……今回も現れなかった。マジェスティ、貴方も所詮……人間の作る偶像に過ぎないよ」

 

《マジェスティ! エルサルバトーレ!》

《Allマジェスティ! タイムブレーク!》

 

 全方位からそれぞれの必殺技が繰り出される。

 マジェスティにとってこれは、最大の攻撃。今のマジェスティにこれ以上は無い。

 

「消えろ」

【消えろ】

 

 ♢♢♢

 

「……」

 

 居ない。

 オレが出てから1時間……いや、その半分になるかどうか……

 姉さんが勝手にこの家を出るか? 食糧も酒も充分用意しておいたし洗濯も空調も問題無い……姉さん自身の能力でこの家への襲撃なら無視出来るはず……キャスター夫妻は未だこの家の辺境の部屋……ライダーもオレの部屋。シエルは知らん。

 なら誰だ……我が救世主とセイバーがいない。

 となると姉さんが暴走して我が救世主がキレたか……

 無限の剣製はまだ使えないか。ならマジェスティの……ヘルヘイムかゲームエリアが妥当か。より外的要因を減らすならゲームだな。

 

「はぁ……仕方ない。セイバーに万が一があっても面倒だ。変身」

 

 クロノスを選択。ゲームエリアに介入する。

 

「諸君……このゲームは無効ダァ……」

 

 さて……どうなってることやら……

 

「ん……ああシオン。戻ってきてたんだ」

「……」

 

 なんて事は無かった。ウタネと我が救世主が向き合ってるだけ。

 これから戦闘だったのか? 水刺したか。

 

「すまん、邪魔だったか?」

「うん? や、終わったからいいよ」

「あ?」

 

 我が救世主が……表情は読めないが苛立ちで絶句している。

 ……何したんだ? 

 

「何したんだ?」

「別に。普通に戦って必殺技消しただけ」

「ああ……」

 

 ああ……

 

「我が救世主。メンタルは大丈夫か? ウォッチを再起動してみてくれ」

「……」

 

 返事が無い。重症だ。

 

「我が救世主。お前がそうなったのはお前のせいでは無い。お前が生きてる世界でお前が世界に挑んだせいだ……お前のせいか。ともかく、姉さんの抑止を回避したいなら異世界から来るべきだな。ともかく……直すぞ」

「やめろ」

「……? 何故だ? このままならお前は戦えない」

「それでいい……俺が戦ったのは3分だけだ」

「……」

「このまま、いさせてくれ。戦力はお前たちがいれば足りるんだろ。俺なんかを頭数に入れなくても」

「我が救世主。その悲観は訂正させてもらおう。戦力は確かにオレと姉さんで足りている。だがお前は必要だ。お前が生き残らなければ意味が無い」

 

 3分。歴戦の騎士でさえ刀剣を手にするのを躊躇う程だ。どこまで知って実践したのか知らないが……その上でこの戦争を越える? 

 ……戦う必要は無い。もはや戦闘は間桐とのみ。オレだけでも終わらせられる。

 

「とりあえずプライムを切れ。ウタネも鎌仕舞え」

「うん」

「ああ……」

 

 とりあえず飯でも作るか……

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