聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第56話

《パーフェクトノックアーウト!》

 

「姉さんがプライムなんて使う必要は無い。残るマトウのサーヴァントを全て保護し、目的を達成する」

「うん……!?保護!?」

「ああ……マトウに残るサーヴァントも共々姉さんの家に封殺する」

「なんで?要らないんじゃないの?」

 

 その通り。本来なら追加で呼ばれたサーヴァントなど害悪以外の何者でも無い。

 だが間桐桜がもし、もしイリヤスフィールと同等レベルの聖杯の鍵となるのなら、既に3騎蒐集していることになる。

 更に卿がフォーリナーを消すとすると4だ。5騎の制限とするとここでランサーを消すと終わりだ。残りは全て回収しなければな。

 いや……卿を止めてもリーチ手前は変わらない。マトウのライダーやバーサーカーももう少し考えて消しとくべきだった。

 

「今は何か感じるか?」

「いや。いなくなったと思う」

「よし。なら屋敷内に入る。間桐桜を回収するぞ」

「あの2人は?放っとくの?」

「ああ」

「了解」

「卿!救世主!そいつらは消すなよ!できるだけ長引かせろ!」

 

 姉さんと共に屋敷内に走る。

 前回の襲撃で大体の内部構造は把握した。

 魔術の工房にしては意外な程に、至って普通の洋館だ。広い以外に特徴は無い。

 だが……どんな洋館でも隠したいものは隠すものだ。

 本命はありきたりな地下。広く空洞があるのが分かる。

 地上から地下への移動は通路を通らなければ普通は難しいが……オレと姉さんにならその程度は何の障害にもなりはしない。

 

「姉さん!このまま走って後2秒後落下する!能力切るなよ!」

「はーい」

 

 姉さんならカンで察するだろう。

 大体さえ伝われば問題無く……床に穴を開けてすぐに落ちる。

 

「まず間桐桜の身柄を確保する!そして間桐臓硯の身柄の確保だ!」

「まって!?この能力!私と同じ!?」

「パーフェクトパズルはステージ上の物質を自在に操るパズルゲーム。姉さんの能力とほぼ同じだな」

「それで二つの世界……」

 

 落ちた先は地下倉庫、という表現が浮かんだほど伽藍洞。だがそこらに種族不明な蟲が蠢いている。

 

「うわぁ……私無理……」

「メンタル半分くらいオレに変えとけ。とりあえず後だ。まず間桐桜……よし、見つけた。ウタネ、残りサーヴァントの警戒を頼む」

「ん……あの子どうするの」

「神威空間に放り込む。この世界なら何をどうしても対処不能の能力だ!」

「……了解!」

 

 2人して走り出す。蟲を踏むたび爆ぜて汁が飛ぶが気にしてる場合ではない。

 神威には神威でしか干渉できない……例え姉さんの現実改変でも足りやしない。オレの能力そのものを無効にするか、同じ神威を持ってくるしかない。そしてオレの神威は原作の神威とは別物だ。並行世界にいる神威持ちのオレを引きずり出さない限りは干渉不可能。

 そしてパーフェクトノックアウトと両眼神威の前では神代のサーヴァントさえ無力に等しい。

 5分間のオートすり抜け、ガード不可攻撃(神威)

 物質のコントロール、自在なバフ(パーフェクトパズル)

 間桐は聖杯戦争一つ分の戦力を引っ提げてるんだ、これを過剰とは言わせない。

 

「ウタネ、いたぞ」

「ん……」

 

 魔法陣の中で正座で佇む桜。

 相当数の蟲が半球の結界を覆うために目視はできないが……オレならその魔力を視ることができる。

 

「……はぁ」

 

 やれやれだ。すんなり保護、とはいかないらしい。

 

『何の、用ですか』

 

 桜の見た目をした……桜の人格を持つ……間桐桜という存在。

 それがオレ達に敵意を向けている。

 

「何もどうも無いだろう。オレ達の目的はただ一つだけ」

『そうですね』

「ヤル気はあるワケだな」

『ここに来た時点で、終わりです』

「「……!」」

 

 周囲の蟲が全て影に変わる。

 回避は望めない。この密度は2秒後の回避先さえない事を予知させる。

 しかもこの影はおそらくアンリマユの一端。触れるのもできるだけ避けた方が良いだろう。更にこの数、おそらく無限……神威ではどれだけ近づいても攻撃には実体化の必要がある以上無意味。

 

「姉さん!床に穴を開けるから、飛び込んでこい!」

「はいはーい」

 

 まったく呑気なもんだ……

 

「よし、閉じるぞ!」

「うん」

 

 地面……地下の床……に更に空間を作り、外部から隔離する。

 いくら影といえどただの物質ならともかく、人の支配下にある物質は透過できないはずだ。少なくとも、この数秒後もその予感は無い。

 だが……多数による火力が高過ぎる。いくら虚数魔術といえど隔ているのはおよそ30センチのコンクリートだぞ。それをそう難なく破壊するだけのパワーをひたすらに叩きつけてきている。賢い戦い方ではないが……そうするだけの能力は持ってるな。

 これはそうは長くない……さて、パーフェクトノックアウトの能力でこれをどう切り抜けるか……?

 思考時間は長く許されない……まずノックアウトファイターは不能だ。格闘能力を上げまくった所で無限に湧く影に対応し切るのは無理がある。

 パーフェクトパズル……物質の操作でこの攻撃を防ぎ続ける事は可能だろう。現にこうして攻撃を防いでいる。これを無限に続けることは可能だ。だが……それでは突破にはならない……エナジーアイテムの操作でもこの無限に湧いてるであろう影の突破は不能だろう。

 ムテキゲーマーに切り替えても押し切られる……ポーズも影の密度が高過ぎる……手詰まりか……

 

「はぁ……ダルいな……直死でも捌き切れん……さて、どうするか……」

「うん?私がしようか?」

「あ?」

「別にあの影、実体があるんでしょ?潰そうか」

 

 軽く言うが……軽くそれは実現できそうだ。

 だが……

 

「いいや無駄だ。空間を無限に圧縮しても影は無限に湧いてくる。空間そのものを、潰すんじゃなくて無くすだとか、間桐桜に魔術行使をさせないだとか、根本的な解決しか無い。そして恐らく間桐桜は現状不死だ」

「んー……他の能力は?私にプライムとかね。へんしん、ってしたくなってきちゃった」

「最終の手段だ。まだだ……あとヒーロー系は絶対やらねー」

「えー……でも今のところそれしかないでしょ」

「だめだ。しかし撤退もしない。これが最終決戦だ」

「どーすんの。無限に湧くやつの相手なんてずっとしてるつもり?」

「ああ」

「は?いずれ押し負けるんでしょ?」

 

 根性論を嫌う姉さんが明らかに機嫌を損ねる。

 オレの能力の全貌を知らない姉さんには当然の反応だ。オレですら全貌は知らねぇしな……無限に負けない程度には知ってるが。

 

「いいや。無限には無限、虚数には虚数だ。プレシアの無限魔力を拝借する。虚数空間へ繋いでくれ。合言葉は『かかれ柴田』だ」

「かかれ柴田?」

「いくぞ。射程距離は……この冬木全域だ」

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