聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第58話

「卿!我が救世主!生きてるか!?」

「……!シオン……」

「おい、マジェスティはどうした。まさか潰れきったのか?他のサーヴァントは?」

 

 間桐邸の表には卿が倒れているだけ……マジェスティどころかランサーもフォーリナーも見当たらない。

 サーヴァントはともかく、マジェスティは死んだなら相応の痕跡があるはずだ。何も無いのは何故だ……?

 

「いえ……ランサーとフォーリナーは……衛宮さんは、アーチャーに連れて行かれました。ランサーとフォーリナーも、アーチャーに……」

「消されたのか……?この場で!?あのタイミングで!?」

「はい……すみません」

 

 いくらリバイブとはいえ姉さんの能力を超えられる筈がない。その能力で超えられるとしても上位のマジェスティが負けるはずもない。

 姉さんのアレは比喩ではない。世界そのものだ。姉さんのいる世界に存在する限り逃れられはしないはず……

 

「目的地は分かるか?」

「……不明です。しかし恐らく、まだ固有結界の中にいるでしょう」

「なるほどな……それなら……もしかすれば……移動できるか」

 

 プライムの能力ばかりに気を取られていた。

 固有結界、それなら確かにこの世界と隔離できる。本来は発動時の場、その周辺程度のはずだが、結界の中での移動がこの世界での移動に比するなら、そんなことができるなら可能かもしれない。理論は通らない事はない。

 そして目的はやはり衛宮士郎の抹殺と考えるべきか。

 

「よし、なら卿は姉さんと合流してくれ。保身の為なら能力は惜しむなと伝えろ」

 

 卿をとりあえず治療する。

 

「分かりました……それは、私の保身も入れていいですか?」

「当然だ。お前の死は誰も望まない」

「……ありがとうございます」

「はぁ……今さらそんな価値観か。ソラに殺されるぞ。さっさと行け」

「はい」

 

 卿の霊体化を確認、すぐさま固有結界の座標分析に入る。

 

「例え現実世界を塗り替えようと結界は結界。存在があるなら……そこだ」

 

 神威の力、例え別系統の時空間であっても介入し操作する。

 

「……君か。どうやって入った?」

「ふん、結界ってのは外界と内界とを隔てる『線』だ。この世界と現実世界を隔てる境界さえ見つけられれば一部を殺して入り込むことはそう難しいことじゃない」

「やはり底知れないな。だが、少し遅かったな」

「……まぁ、死んでないなら問題無い」

 

 アーチャー、リバイブ剛烈の向こう側、2桁を数える刀剣に串刺しにされ立ったまま意識を失っているであろうマジェスティ……衛宮士郎。

 不意打ち食らったか……?まぁどうでもいい。生きてるなら問題じゃ無い。

 

「で、それ殺してどうする気だ?攻略法ってのはソレか?」

「ふ……自惚れでもあるが、『俺』がこの世界の中心である事は知っている。過去の君が語った事だ」

「……テメェ……マジにどこまで……」

「私の過去の到達点が私だよ。それは君の過去かもしれないがね」

「……いいや、オレの未来だ。だが……オレの上では無い」

 

 いかにこの戦争を超えた救世主でもオレを超えることはない。

 だがそれは戦って……1vs1の状況でオレが負けないってだけだ。

 その他の要素で致命があれば『オレの負け』はあり得る。それを警戒しなければならない。それだけはさせてはいけない。

 

「ふん、私がまだ勝てないと?」

「当たり前だ。お前はオレに勝ったのか?」

「私の過去では……勝てなかった。君の能力を知らなかったからだ」

「今なら勝てるつもりか?」

「そうしなければ私の望みは果たされない」

「愚かな……まだ分からんようだな。お前たちは所詮、オレ達の暇を潰すストーリーのアイテムでしかないという事に」

「……」

「究極のエンディングを見せてやる」

 

 先は勝利を確信していた故に最大値を狙ったが……コレはコレで最強の2つ。シナジーもある……

 

《ハイパームテキ!》

《幻夢無双!》

 

「グレード無双……」

 

《無双ガシャット!》

《ドッキーング!パッカーン!》

 

「ハイパー大変身」

 

《ムーテーキー!》《無双!レベルアップ!》

《輝け流星の如く!》

《掴み取れ栄光のエンディング!》

《黄金の》《漆黒の》

《最強ゲーマー!》

《天才プレジデント!》

《ハイパームテキ!エグゼイド!》

《グレード無双!ゲンム!》

 

 黄金に煌めく漆黒のボディ、靡くハイパーライドヘアーはその反射でいかなる色にも変化しているように見える。

 最強の守り、ムテキゲーマー。最強の攻め、幻夢無双。

 

「これも2つ……たった2つ。たかが……ふたつ。それだけだが……この瞬間よりオレを超える存在はいない。さぁ救世主、我が救世主を離してもらおうか」

「ふん、無駄な武装を施したか……」

「あ?」

「私も……コレを手にした」

「マジェスティウォッチ……」

 

 まぁ……当然の行動だ。

 だが……今ヤツは何をしてる……?何故マジェスティウォッチを上下逆に持つ?

 

「変身」

 

《ゲイツマジェスティ!》

《ゲイツリバイブ!》

 

 右のスロットにマジェスティウォッチを逆さに挿入する。

 何をしてる……

 

《ゲイツ!リバイリバイリバイ!リ・バ・イ・ブ!マジェスティ!剛烈!疾風!》

 

「仮面ライダー、マジェスティリバイブ。尊厳を復活させる……といった意味になる。言ったはずだ。二つ目の能力は不完全だと。世界を救えず反英雄になった者の……誇りと願いを再び叶える力だ」

「それでマジェスティ……尊厳と訳せるウォッチを反転させた……?」

「私には、救世主の核たる未熟な決意が無い。自身のオリジナルたるウォッチを手にする事……それが、私の本当の願いだ」

「それで無理矢理2つか……だがまぁ、それがお前らの限界だ」

「何だと?」

「1人1つ。何か解るか?」

「……?」

 

 どんな人間だろうと、どんな英雄だろうと、1人1つだけのものがある。

 それがオレと他の違いだ。その差は絶対に埋まらない。

 

「見てる世界だ。お前がどう変わろうと、その瞬間のお前が見る世界は1つだけ。だからそんな無理が生じる。1つだけで満足すればいいものを……それが傲慢というのだ。所詮たかだか1個人でしかない塵芥。オレやアインスはオリジナルの付属人格でしかない。お前らとはランクが違う」

「ふん……人間以下の存在が偉そうに」

「元来人間である存在が最上なのか?その枠にしか存在できない実体ではな。まぁ……お前たちがいるからオレもランクアップできるんだがな。ま、古今東西知性体ってのは自分勝手なもんだ」

「成る程確かに。私も元人間のサーヴァントで他人の武具を自身の力として来た。その点においては同類かと思うが、どうかな?」

「……そうだな。その目的が自分にあるかどうかだ」

「君は君のためではないのかね?」

「オレが表で動くのは常にウタネ(オレ)のため。永遠に続く今のためだ」

「個人の為に世界を敵に回すのか。世界に不要なら自身でさえ切り捨てるべきだ。強大すぎる力を持つものはこの世にあってはならない」

「ふ……強過ぎる力を恐怖するのは無知ゆえだ。力なら制御できる。災害じゃない。自分に理解できないから迫害するなんてのは田舎者のする事だ。素直に追い出されてやるのが正解だぜ、ははははははははは!」

 

 理解できないから排除する?正体不明だから忌避する?

 愚かな。その行動に至るのも愚かだが理解できないのが最も愚かだ。無知は罪。知らないから殺されたなら殺された方が悪い。

 

「お前ら人間は何もかもが足りてない。そんなだから聖杯なんぞに頼りたがる。オレが叶えてやるってのによ」

「お前は人間を舐めすぎだ。人間は成長する。ただの一般市民だった私が英雄になった様にな」

「成長しなきゃいけないってことだろ。オレはそんなもんするまでもない。分かるか?成長なんてしてる時点で、オレ達の遥か下にいるって宣言してるんだ……さぁ、話し過ぎた……お前ももう要らないな。お前の代わりはしてやるから死ね」

 

《ポーズ》

 

 無双ガシャットを回転させ、時を止める。

 コレも世界(ザ・ワールド)と違い制限が無い。この能力下ではゲンム以外の時間は停止する。

 

「リバイブだろうがマジェスティであろうが時間停止には対応できまい……」

 

 2つのウォッチには静止時間へ介入する能力は無かったはずだ。

 

「死ねとは言ったが……お前は変身能力さえ取り除けばいい。これ以上サーヴァントが消えるのも困るんでな……ウォッチは全て返してもらうぞ」

 

 プライムの解除はできないが……キーアイテムが離れれば事実上の解除になる。アイテム込みのプライムにしたのはこういう事態も想定しての事……ナンバーズでは失敗したからな。

 漫然と近付き、何の気なく手を伸ばす。ただそれだけだ。人間的な英雄に勝利するのに必要な手間はそれだけ。

 

「……」

 

 ウォッチに手をかけたところ、固有結界に突き刺さる有象無象の刀剣の一振りがオレの手を弾く。

 ムテキゲーマーの能力によりダメージは無いが……この事象は不明だな。

 

「ふ……救世主、お前、見えているのか?」

 

 この事象の発生源は当然救世主。

 問いかけてはみるが返答は無い。

 

「まぁどっちでもいい。聞こえている前提で話してやる。このハイパームテキにはあらゆるダメージが無効になる。例え対城、対界宝具であろうと、神秘がオレ達より高くともな。そしてグレード無双のポーズに時間制限は無い。このガシャットを回転させればリスタートするがムテキの力によってオレの意志でしか動かない。お前がどんな能力を隠し持とうともエンディングは回避できない。ウォッチは諦めろ。現実を見たなら夢から覚めるべきだ。そうでないなら永遠に眠れ」

 

 再び手を伸ばす。

 

「それはどうかな!」

「何……!」

 

 今度はその手を救世主が掴んで止めた。

 静止時間で動けるはずが……

 

「ブレイブは1度ハイパームテキを使用している。そして同じ能力なら……」

「……!」

 

《リスタート》

 

 再び飛来した刀剣が隙だらけの無双ガシャットを掠め回転させる。

 ムテキに弱点は無いと思っていたが……同系統なら通るのか。

 

「10秒とはいえ通じるだろう?」

「ふん……確かに、ムテキの力は想定していなかった。だがそれでどうする?もう同じ手は通用しない」

「さぁ、どうだろうな」

 

 1度退き距離を置く。

 さてどうくるか……とは言えど行動はオレの未来視を大きく外れはしない。

 

「お前も衛宮士郎と並んで見ていろ。私の理想を」

 

 周囲の刀剣が全て浮遊、次々と向かってくる。

 

「無駄だと言うのが分からんか。ムテキの力も持たないただの宝具が今のオレに通じるか」

 

 ガシャコンキースラッシャーを手に正面から斬りかかる。

 当然のように刀剣の雨に打たれはするがダメージは無いので怯まなければ支障は無い。

 そこで視える次の救世主の行動は……

 

《ブレイブ》

《リバイブ疾風!疾風!》

 

 10秒のムテキ時間と超高速。

 短期決戦は望む所だ。

 だがまずは刀剣を躱さなければならない。無双ガシャットがそうだった様にムテキ時間中は飛んでる刀剣も救世主と同じと考えなければな。

 

「く……しかし、考えたな……!だが!」

 

 リバイブ疾風の速さを未来視で対処するのは辛うじてできる。だが無数に飛び交う刀剣は無機物。それを読むのは不可能だ。

 姉さんのカンがあれば対処可能だっただろうが……それは無視だ。たかだか有象無象の英雄の武具。オレに捌けんはずもない。刀剣を捌きつつ救世主も避ける。まるで問題はない。

 

「だが無駄だ救世主!上限いっぱいの脳みそで考えたようだが!オレ達とお前らはランクが違う!」

 

 先の無限の影と比べればこの程度はまだ軽いもの。

 ムテキの無敵能力を無効にされてもこのムテキと無双の防御までは抜かれない。両手のガシャコンとライドヘアーを振り回し確実に刀剣を弾き救世主へ走る。

 

「お前の想定する最強と!オレの思う最強とではなぁ!」

「く……」

 

 救世主に肉薄、残り5秒なら固有結界の攻撃は受け続けても致命にならないと判断し、両手足の切断を狙って攻撃する。

 救世主のあらゆる攻撃は捌き切れている。そして……オレの攻撃も通っていない。

 押している……未来視も同様に不穏な動きは捉えていない……なのに何故、コイツを殺せないのか?

 

「っと……コレで10秒、か?」

「……」

「お前はオレの能力を知らないと言った。なのに何故、お前はオレの対策をしてる?」

 

 能力を知らないのなら……恐らくは初めて使うであろうムテキと無双の同時使用……対処のしようもあるはずがない。なんならオレも知らん。オレはこの状態でどう負けるんだ?

 そんなレベルにあるはずのこのオレの風車を……コイツは今、止めかけている。オレ以外が存在する限り風は吹き続ける……風車は回り続けるはずなのに……何故?

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