「どういうことですかシオン!あれほどサーヴァントを殺さないで下さいと申し付けたはずでしょう!マトウのサーヴァントならばともかく、正規のサーヴァントにさえ手を出すとは……バーサーカーはともかくあの人間のサーヴァントを消すとは!見損ないました!」
「……既に我はフィールド魔法、マイノリティネットワークを発動している。相手が正論を吐いた時、その正論を全面拒否し、代わりに相手を何らかの差別主義者として非難する事ができる。このカードは他のカードの効果を受けない。このカードの効果に相手がチェーンした場合、もう一度この効果を発動する。この効果は相手ターンでも発動でき、この効果の発動を無効にできず、同一チェーン上で制限を課されない」
「く……マイノリティの権化が下らない事を言わないで下さい!貴方達は人間に生まれたからマジョリティに生きるのを許されているだけです!文明社会に楯突く権利があるなどと思い上がらないで下さい!」
「マイノリティネットワークの効果発動。お前は高度に発展した文明社会の中で少数者を批判する差別主義者だ。恥を知れ」
「ぐ……!乖離性のLGBTのニート如きに私がここまでバカにされるとは……!その高度な文明社会はマジョリティが築き上げてきたもの。ポッと出のマイノリティが我が物顔でいるなど侵略者もいいところ!社会的に何も努力せず積み上げもしなかった貴方にバカにされる謂れはありません!」
「ネットワーク発動。オレは社会的に高校を十分な成績と評価で卒業し、十分な大学まで入っている。途中で死んだが、よく分からん宇宙犯罪者のお前より遥かにマジョリティの社会性に富んでいる」
「ぐぅ……!」
帰還早々に正論が浴びせられる。
シオンが私とえっちゃんを回収して帰って第一にした事は我が家に封印してた戦争関係者の解放だ。能力の謎オーロラで適切な場所に送り届けたのだそうだ。
しょーじき……私にとっても意味不明だ。まだマトウのサーヴァントも残ってる……間桐桜も、そのままにしてきたし……
「だから悪かったよ、ホント。最初は殺す気は無かったんだ。プライムを奪って終わりと考えてた。だが奴は予想以上にプライムを使いこなしてたんだ。無限の剣製とマジェスティ、リバイブ。この戦争とは言え多少過剰だ」
「ですが!貴方ならそれでも無力化で済ませられたハズです!そうしやすいよう私を外したのではないのですか!」
「うるせぇ……女の感情任せの声は殺意を覚えるからやめろ。男の発情した声と同じレベルだ。ちゃんと聞けば答えてやるんだ、感情で叫ぶな。女風情が」
「…………分かりました。確かに……その点は反省すべきです。では改めて……説明して下さい。何故アーチャーを殺したのですか」
「やり直した方が早いと思ったから」
「やっぱり殺しますよ!どうせノリでやったんでしょう!」
「おー正解だ。なんか殺せそうだったからな」
「このサイコ転生者は……」
「運命をジャッジするのはルーラーの仕事だろう。より完璧に戦争を停滞させるならアーチャーのプライムは完全にイレギュラーだ。あんな目先の戦いしか見えない男どもにもう商品価値は無い。絶版だ」
商品価値とか……シオンそういうの言うキャラだったかな……
「ともかく、今後はオレがこの戦争の全てをジャッジする。戦争が下手に長引くのは不本意だ」
「ねーシオン?昨日から……赤と青の仮面ライダーになってから……変じゃない?」
「あ?」
「アインスと似てる……っていうか。オリジナルに引っ張られてない?」
「ん……?そうか。確かに偏りがあったな……少し使い方を変えるか」
やっぱり自覚は無い様子。
アインスも同じ系統の能力を使い続けることで言動に不意な電波が混じることがあった。
他人の能力を自在に扱う法外な能力の代償……なワケもない。デメリットは負荷だけだ。
「では質問を変えます。この後どうするつもりですか」
「どーするもなにもなぁ……」
シオンはどこからともなくお酒を取り出して一息に煽る。
「……衛宮士郎を殺すしかないだろ」
「は……?」
「殺しちゃうんだ?あ、マスターはいいんだっけ」
「ああ。別にサーヴァントが減らなきゃマスターなんぞどうなろうが知ったこっちゃない。殺し得だ」
「なら私が行こっか?衛宮士郎だけでいいの?」
「ああ。他のメンツはオレ達の能力を十分に痛感してるだろ」
「了解ー、居場所は分かる?」
「さぁ。衛宮の家にいなけりゃ分からん。目的も……」
「ん?」
「目的も正直不明だ。とりあえずは……今の奴はアーチャーのサーヴァントだって事だ」
「「……!?」」
「どういう……ことですか。今を生きる人間がサーヴァントになるなど……」
「アーチャーが固有結界でマジェスティの力を奪い使った。リバイブと共にな。その後オレが殺した……はずだった。なのにソイツは生きていて、オレに必殺技を当てた……」
生きたままサーヴァントになったってこと?
それともアーチャーのプライムを引き継いだことで実質的にアーチャーと言えるってだけ?
しかもプライムって基本1人ひとつ……いや、何だったかな……
「すまん、衛宮士郎のサーヴァント化に関してはサッパリだ。オレの能力で……も人間をその場でサーヴァント化させるのは不能だ。一度殺してロリコンに転生してもらう事は可能だろうがな」
「じゃあ一応、ソラみたいに生きたままサーヴァント並みの能力を得たって事でいい?」
「その認識でいいだろうな。そもそもどっちだろうと変わらんからな」
「わかった。えっちゃんもオーケー?」
「……はい。とりあえずは」
「あと今んとこ気になるのは……埋葬機関か。おいシエル、何か情報くれ」
「へ……」
「あら。そういえばいたね。仮面ライダーのお姉さん」
紺色のお姉さんがシオンの足元に召喚された。
そーいえばこの人……家の掃除してたね……
「おら。お前んとこの追跡、全部喋れ。まさかお前で最後なんて事ないだろ」
「……誰が、ヴィーナスになど……」
「……姉さんと戦闘してまだオレ達に敵意を持てるとはな。じゃあ直してやるから話せ……『歴史を食べる程度の能力』……これでお前は姉さんと戦った過去を喪失し、抑止力から解放された」
「ちょっ……直していいの?」
その人直しちゃったら……
「ん……?」
「ヴィーナス死すべし!慈悲は無し!」
「あ……!」
私の心配も時すでにおすし。
何処からか取り出された黒鍵を3本、シオンに切り付けた。
「おのれヴィーナス……!卑怯な手を……!」
シオンはそれを避ける事なく、すり抜けた。
「神威……言わなかったか。オレに対して5分間はあらゆる物理的干渉は無意味だとな」
「おー、それもすごい便利そー」
「姉さんの能力も似た様なもんだろ」
「私のは防げてもすり抜けはできないから」
「結果だけみりゃ同じだ。でだ、話せよカレー先輩」
「誰が!カレーですか!」
「ちょっと印象からイジっただけだろうがよ。事実上も下もカレーだろうが」
「上と下って何ですか!」
「言わないと分からないか?心当たりが無いなら……オレの知るシエルではないって事になるが……まぁどーでもいい。もうオレの知識とは何もかもだ。元々無いが」
『ピンポーン♪』
「「「!!!」」」
突然の音に全員が臨戦体制を取る。
「来客……?卿、サーヴァントか?」
「いいえ。反応はありません」
「シエル、ドアホンつけてくれ」
「……おのれ」
何故かシエルさんにテレビドアホンに出るよう指示するシオン。
生贄だろうか。
しかしそうするしかないと判断したのか、渋々ボタンを押すシエルさん。
「どちら様で……」
『フタガミ!僕だ!間桐慎二だ!助けてくれ!僕を中に入れてくれ!』
「ええと……確か彼は……」
通話が繋がると即座に響く男性の声。
少なくとも同じ屋根の下生活した顔ではあるため、シエルさんも存在は認識していた模様。
「生ゴミか。何しに来たんだ」
相手を認識するなり冷酷なシオンの返答。
『男の方か!助けてくれ!僕はもう聖杯なんていらない!命だけ助けてくれ!頼む!』
「誰かに追われてるのか?痴漢か?ゆすりか?戦えばいいだろう。生ゴミアマゾンの力をくれてやったんだから」
『ふざけるな!ライダーがやられたんだぞ!?僕に勝てるか!そこまで思い上がるほどバカじゃない!』
「何……?バカな……桜か?」
「シオン!貴方の行動のせいでまたサーヴァントが消えましたが!?」
「黙れメス如きが……2度とオレに喚くな。あらゆる並行世界の人類を死滅させるぞ」
「ぐ……」
「何?マトウにやられたの?よく逃げられたね」
『衛宮だ!ライダーはアイツの結界で殺されたんだ!』
「「……」」
「シオン!!!」
「……まぁ、まぁ落ち着け。それでもこの世界は続いてる。ルールに沿ってはいるようだ」
「今更何をルールなどと……!」
「ルールを持ち出したのは衛宮士郎だ。オレ達を法外な存在とし、自分はルールの中で世界を救うんだとよ」
「……?どういう事ですか?ルールに則るなら聖杯は完成される。完成させないつもりならライダーを攻撃する意味が分からない……」
「だから殺すしかねーんだよ。戦争が続くにすれ、世界がResetされるにすれ、ルールとやらが判る」
「とりあえずさ、外のアレ、どうするの?」
「……いいさ、入れてやれ。ルールどうこうは衛宮士郎のみの判断だ。他の関係者は望めばまた保護してやろう」
「ん。じゃあここ連れてくるね」
「ああ」
シオンの考えや、衛宮士郎の言うルールが何なのかは不明。
事実としてあるのはサーヴァントを殺せば世界が消され、極めて近い世界で再試行されること。
既にバーサーカーとアーチャー、そしてライダーが消滅。更にマトウの追加サーヴァントに至っては変装してた上裸のアサシンと不明な残り1騎のみ……あ。
「鎌どっかいったままだ……」
そういえば投げ捨ててそのままだ。どーしよ……まぁいいか。
「はいどーぞ。シオンに感謝してね」
「おおおおおおおおお!フタガミィィィィィィ!」
玄関を開けると男は靴を脱ぎ散らかし一目散に走ってシオンのいる部屋へ向かった。
「ふぅー……殺してやろうか」
別に礼儀を重んじろとは言わない。私に敬意を払えだとか、身の程を弁えろなんて言うつもりは無い。それは他人を制限する行為だ。好きなようにすればいい……が、無意識に癪に触ることもある。
……それは不快だが、重要なものだ。
まだこうやって他人に対して苛立ちや不快感を覚えることがある。それはつまり、私がまだ人間であるということだ。幾度かの死を持って幾度かの転生をして尚、根本がまだ人間にある。それが望ましいかは分からない。私達の在り方でもそれはどうでもいい。私の目的として、それが必要なだけだ。
「まぁ……どうでもいいか」
男の靴を揃え、私も部屋へ戻る事にした。