聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第61話

「奴はライダーだけを結界に取り込んだ。出てくるまでそう長い時間はかからなかった」

 

 男がソファに座り、シオンから渡された缶チューハイを拒否しながら口を開く。

 

「じゃあお前はライダーが殺された瞬間は見てないのか?」

「ああ……」

「パスも無いお前がライダーの死を確認する方法は無いな?」

「いや……これを見てくれ……お前なら知ってるはずだ」

 

 男がシオンに渡したのはもはや見慣れた例のウォッチ。

 

「ライダーのウォッチ……なるほど。ライダーの力をコレに封じたのなら、ライダーの現界は望めない。事実上の死亡確認は取れるな」

「マトウのアマゾン!何故衛宮士郎を止めなかったのですか!時間稼ぎでもしていれば異常を察知してシオンが駆けつけていたはず!この世界が消滅するかもしれなかったのですよ!?再三申し上げてましたよね!その事実を理解していますか!?」

「ひぃぃっ!仕方ないだろ!?あんな衛宮は僕だって見た事無かったんだ!少し足がすくんだ隙に全部終わってた!アイツはもう人間じゃない!」

「どの様な顔だろうと関係ありません!顔で判断するなど言語道断!同じ顔というだけで無関係なキャラと共に奇異な目を向けられる私の身にもなって下さい!アルトリア顔などマジの無関係ですが!?」

「落ち着け卿……キレキャラになってきてるぞ。オレはどうでもいいがソラに殺される」

「だったら何か解決策を出して下さい!衛宮士郎を殺して大丈夫なんでしょうね!?」

「まぁ大丈夫だろ。サーヴァントになったとはいえその瞬間アーチャーは死んでる。なら今更のはずだ。わからんが」

「わからんとは……?この世界がどれほど重要か分からないと!?」

 

 もうえっちゃんのクールビューティーは消え去り、ただの癇癪生物になってる……やだやだ。帰って寝たい。部屋じゃなくて前世の実家に帰って寝たい。

 

「分かってる……とにかく、衛宮士郎を止める。殺すかどうかはその時次第だ。ライダーがやられたとなると……キャスターあたりか。行くぞ姉さん」

「んー。りょーかい」

 

 シオンの手を取って飛ぶ……というより、跳んでもらう。

 

「さぁ衛宮士郎!ケンカだケンカァ!トコトンやるぞぉ!」

「……!シオンか!」

「その身体……!お前、マジか……」

 

 切り替わった次の景色は無限の荒野。

 そして今まさにキャスターとそのマスターとの戦闘が始まるところだった。

 シオンが驚愕した衛宮士郎の身体。元の高校生の肉体じゃない。身体のフレームに対して不自然過ぎる発達した両腕、足……

 

「だがもう遅い!変身!」

《マジェスティ!リバイブ!》

「アーチャーにやられた部位をそのままアーチャーから奪ったか!よくもあの瞬間にそんな事ができたもんだ!」

 

 困惑しながらも高笑いを上げて突っ込んでいくシオン。

 何故にそんなテンション高い……?手足だけマッチョなのは引くべき……よね?

 

「正義の味方がまず始めたのが殲滅か!姉さんを否定してた割には行動が似通ってるなぁ!」

「私正義じゃないけども……」

 

 シオンの装備は刀のみ……多分何かしら能力使うんだろうけど。

 

「甘いぞシオン!」

《スピードタイム!》

 

 衛宮士郎の装甲の色彩が青寄りに変化すると同時に姿を消す。

 そして周囲の刀剣も縦横無尽に飛び交い、シオンの周囲を封殺する。衛宮士郎はその速さでそれを超えて動けるのだろう。

 

「そのフォームで更に切り替えできるのか……なら、速さには速さ。いくら加速しようとも、地上の物質である限り光の速度には追いつけない」

 

 シオンも瞬時に姿を消す……やばい。ついてけない。VNAなのに!私!ついてけない!

 

「光の速さで蹴られた事はあるか!」

 

 そんな心配も杞憂に終わり、衛宮士郎が盛大に地面にめり込みながら飛ばされたった。

 そしてシオンは私の隣に立ってた。マジか。

 

「やー、私が一般視点は困るなぁ」

「知らん。キャスターたちを守ってろ。暇なら手伝え」

「りょーかい。こっち来たら捕まえとくよ」

「ああ」

【守れ】

 

 キャスター組をドーム状にした空気で保護。更に仮面ライダーを粘着する性質も加えて狙いに行ったら捕まえるホイホイみたいにした。

 そこそこ広めに取ったし、多少長めの武器が貫通しても止まるでしょ。

 

《マジェスティ!リバイブ!エルサルバトーレ!》

 

「ねー、アレ必殺技でしょ」

「ああ。アイツ、通常技みたいに使ってくるからな……キックにはキックだ。錐龍錐釘(きりゅうきりくぎ)の威力を見せてやる……錐龍錐釘!」

 

 呑気に見てたら2人が空中で激しくぶつかる。

 やー、すごい衝撃波だなぁ……間に挟まったら死ぬかも。やははは。

 

「ねーキャスター。何でアレに狙われてたの?」

「私たちが聞きたいわよ!あの坊やいつの間にどうなったの!?」

「知らないよ。ま、そこにいなよ。死にはしないから」

 

 私の一方的な会話に不満そうながら、渋々従うキャスター組。

 

「っと……流石はリバイブとマジェスティ!氷の大陸を割る一撃さえ相殺して見せるとは!」

 

 くるくる回ってテンションが高いシオンが降りてくる。

 

「ん……それどのくらい凄いのか分かんなくない?」

「そうか?素手でかき氷用の氷にヒビ入れるのさえ難しいのを考えると途方も無い威力だな……となる気がするんだが」

「私それしたら指折れる」

「……マジか。剣飛んで来るぞ」

「だね。指はまじ」

 

 互いの未来視を示し合わせ、左右から飛んでくる剣やら槍やらを叩き落とす。

 

「……この体、よく生身で成人するまで生きてたな?」

「それビックリだよねー。引きこもりだったからかなー」

「それで世界相手は無理だろ」

「言葉さえ在れば良いんだよ。私は私の話した言葉を私の意志にだけ沿って現実にする超利己主義者なんだから」

「……まぁそうだな」

 

 ライダーたちの射撃をアイコンタクトで分担し対処する。

 私が手を出さないとダメなんて終わってる。

 

《ダイカイガン!スペクター!オメガドライブ!》

「はぁぁぁぁっ!」

「愚かな……我は既にフィールド魔法、ヌメロンネットワークにより、『ヌメロンリライティングライダー』を発動している」

「んー??????」

 

 遠距離では埒が開かないと見た衛宮士郎が再びキックを放ってくるものの、シオンが謎の呪文を唱えた途端に勢いを無くして着地した。

 そして代わりに衛宮士郎の隣にまた見た事ないライダーらしきのが出てきた。

 

「このカウンター罠は相手がライダーの力を発動した時、その発動と効果を無効にし、更に相手の能力からライダーを1人、自我を奪って召喚する……その効果で、我はスペクターの必殺技の能力を……書き換えたのだ」

「???」

 

 一切不明な説明がなされる。

 

《SIGNAL BIKE・SHIFT CAR!RIDER!DEAD HEAT!》

 

「我はマジェスティの能力から、デッドヒートマッハを召喚した。その暴走によりこの場全ての生命が攻撃の対象となる……‥」

「え……暴走……?」

 

 嫌な予感……ヒーローモノの暴走ってさぁ……

 

「ぐっ……!クソ!消せない!?倒すしか無いのか……!」

 

 能力の元であるはずの衛宮士郎さえ攻撃を受け戸惑う始末。

 

「ちょっ……!てっ……!シオン!このパワーは私無理!」

「分かってる」

 

 私がカンを駆使して受け流した攻撃をシオンは棒立ちのまますり抜けた。

 

「がー!自分だけ神威!?ズルい!私のプライムそれにして!」

「やらねーっつってんだろ。まぁ、召喚したマッハは即始末する」

 

 そしてシオンはそのまま、マッハと呼ぶライダーを見据える。

 マッハはマジェスティを数度殴った後、キャスター組のいる私の能力ドームへ向かい……待ち構えたシオンのすれ違いの一撃で消滅した。

 

「んんん……?」

「オレの最も好きな能力の1つを知ってるだろう……直死の魔眼。モノの死を視るこの能力!オレ本来の未来視と共に使えば対人では無敵だ!ただ一度、相手の未来の死を斬るだけでいい。オレと戦闘を始めた時点で既に、その未来は視えている。戦闘ではオレには勝てん。他の能力など所詮は遊びだ。オレとガチで殺り合おうってなら、死なねぇ身体を用意してからにしろってんだ!衛宮士郎!」

「く……!まだだ!」

《Chalice》

「っと……!なるほど!ジョーカーなら死なず、永遠に存在し続ける。直死では相性は良くないな!」

 

 シオンは次に召喚されたライダーとは普通に斬り合うことに。

 

「ち……!」

「だが……!」

《evolution》

「……!ぐ……っ!」

「だがシオン!」

「シオン!?」

 

 シオンが衛宮士郎とライダーに追い込まれ左腕を肩から落とされる。

 んー、流石元私だ。身体的に弱すぎる。

 

「だがシオン!お前はまだ人間だ!」

「何……?」

「お前の能力がどれだけ優れようと!俺の想いは越えられない!」

「ふざけ……ワイルドも所詮はコピー能力……マジェスティもそうだ……その範囲においてオレを超えることは決してない。サーヴァントはともかく、ライダーなんぞ所詮は身体スペックを増幅させたモノに過ぎない。オレに勝てる要素は何も無い!」

「だがそれでも、俺はサーヴァントになった。お前は所詮、生身の人間だ」

「オレ達を見てきてその発言はねぇだろう……片腕落として油断してるレベルじゃあなぁ……」

 

 シオンの腕は自立しているかのように元ある場所へ戻り、見た感じ傷も無く繋がった。

 

「オレにとって欠損なんぞ問題にならない。オレはそもそも人間ですらない。生身でさえない……」

 

 シオンの意識は私の作ったもの。シオンの身体はシオンが作ったもの。

 生命として生まれ落ちた存在には理解の及ばない非実体。

 生まれすら分からない。自身の名前も、存在さえ空想のもの。自身の肉体も、他人からの認知も無い。そんな状況で生きていける人間を、私は知らない。

 

「オレは……お前ら人間などという傲慢に堕落した存在を……それでも永遠のものにしてやろう。お前たちの変わらぬ平穏こそ……姉さんの日常を永遠にする……お前たちはそのまま、変わらず生きていればいいものを……築かれよ彼の摩天!ここに至高の光を示せ‼︎招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)‼︎!」

「おぉ……コレっていつぞやのか」

 

 固有結界の中に更に劇場が構築される。

 この劇場は前の世界……今ではVNAの一員であるアインスとの戦闘で使われたもの。効果は確か……相手のステータスダウンと、自分のステータスアップ。

 範囲は私がギリギリで、衛宮士郎とシオンが劇場内、私が客席の上に置かれた。

 

「この劇場がオレ達だ……お前たちのルールの上からルールを押し付ける。お前たちの望みなど関係無い……」

 

 そしてシオンが持つ刀に加え、更に似たのがもう一振り。何の変哲も無い刀の様に見えるけど……コピー?

 

「コレか。九字兼定だ。オレの刀はコレを似せて作ったものだが……姉さんの家にオリジナルと同型のがあったはずだが……」

「そーだっけ。自分の部屋しか覚えてないや」

「まぁいい……さぁ、救世主。おあつらえむきだ。世界を救って見せろ」

「初めからそのつもりだ」

《DE-END》

 

 衛宮士郎がウォッチを起動、青いライダーが召喚される。

 そのライダーは完全に制御されているようで、即座に攻撃に走ることは無かった。

 

「ふん、また集団戦法か?オレを相手に物量で押せると?」

「何の話をしている」

「あ……?」

 

 青いライダーが謎のオーロラ……シオンも数度使った移動手段を使用して消える。

 シオンと戦うためじゃない……?

 

「……」

「……?どこ?」

 

 シオンは周囲を警戒して動かない。

 私はその周囲を上から見ているけど出現の予感さえない。

 ありえない。この劇場で完全に見失った……?

 

「違うシオン!キャスターだ!」

「……!」

 

 劇場にキャスター組は取り込まれていない。

 私もシオンも目視できない。

 私が保護したのは外部からで、内側はただ頑丈なだけの……外に逃げられない檻になる。あのオーロラは空間も時間さえ移動してみせる。別の時空間を経由すれば私の能力を素通りできるだろう。

 私もシオンも……誤った……衛宮士郎が初めにシオンとマトモに戦ったのは、私の能力内部への侵入を成功させる為の……ブラフ。

 

「すぐ劇場を解いて!」

「分かってる!」

 

 私の能力は劇場内だろうと自由に操作できる。

 けど見えてない場所に関してはかなり雑な内容になる。押し潰すだとか、性質を丸々変えるだとか。私の能力は生物のマスターやそれを介した魔力体であるサーヴァントに直接は使えない。直接能力で保護するのも見えてないと……!

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