聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第62話

「「キャスター!」」

 

 まだ消え切ってない劇場の外へ2人して衛宮士郎を背後に走る。

 この際手足くらいちぎられても良い。

 必要なのはサーヴァントの生存だ。

 

《FINAL ATTACKRIDE-DI-DI-DI-DIEND》

『この……神代の魔女に向かって偉そうに……!』

『素晴らしいお宝だった。是非貰いたかったね』

 

 劇場が消えて見えたのは半身を消し飛ばされたキャスターとそのマスター。

 ヤバい……もう立ってもいられない……!すぐどうにかしないとホントに消えちゃう……!

 

「く……キャスター!今すぐルールブレイカーで姉さんと再契約しろ!姉さんの魔力量なら持ち直せる!」

『私が……宗一郎様以外と契約など……はぁっ……はぁ……』

 

 シオンが契約を持ちかけるもキャスターは乗り気で無い様子。そんな場合じゃないのに!

 

「ち……!心情曲げるくらいなら消えるってか……!世界を何も考えずに……!ならば……!」

「あ……!消えちゃう……!こうなったら……!」

「「(オレ)の能力で霊基(たましい)だけでも……!は?」」

 

 キャスターの身体が消えていくのを見て私が能力でサーヴァントの霊基を逃がさないよう固定しようとするとシオンも同じことをしようとしたようで、互いの行動が想定外だった私達はそのチャンスをすれ違いで逃す事になった。

 

「ち……消えたか……」

「〜〜〜〜〜〜……………………!」

「ね、姉さん……おい!悪かった、オレがいらん事をした……!」

「悪くないよ。シオンも最善を選んだんだ。私だってそのつもりだった……すれ違ったんだ……私達が……!私が!」

 

 私が最も許せないのがすれ違いのミスだ。

 こんな局面で、手が届いたはずの問題に失敗するなんて。拾える意味をみすみす手放した。

 

 ♢♢♢

 

「……やべぇ。おいシロウ。目的果たしたろ。逃げとけ。この固有結界は無になる」

「何……?」

 

 地団駄踏んでる姉さんも久しぶりに見るなぁ……世界の終わりだから何度見るもんでもねぇけど。

 

「姉さんの1番嫌いな事だ。やれやれ。固有結界内で助かった。現実世界ならとっくに詰んでた」

「何だ?何の話だ!シオン!説明しろ!そう言って逃げるつもりか!?」

「馬鹿が。この状況で逃げるかよ。姉さんの発作だ、ストレスの限界を振り切ると世界の上と下をくっ付けるんだ。サーヴァントやライダーで言うなら暴走に近い」

「何……?上と下?」

「この固有結界の上と、下だ。もう始まってるぞ。瞬時じゃなく猶予のあるパターンで良かったな」

「何が何だか!」

 

 混乱手前のメンタルだが、キャスターが死んだ以上マジェスティの能力でライダーのウォッチからライダーを再生成してもらう他ない。恐らく正規の能力でウォッチ化させてる以上、オレの能力では不可能である可能性もある。

 それまでは生かしておいてやろう。

 

「お前すらこの結界の上限と下限を把握してないんだろう。オレもそうだし、姉さんもそうだ。だが姉さんの能力範囲はその世界全て。その世界自体が世界自身だと認める範囲の上下の端と端がピタリと閉じる。その世界全ての物質を圧縮する事によってな。全ての非生命は上と下に潰されて存在しなくなる。当然生命は厚さゼロになって消える。そこは何も無い無になる。真空でさえ無い。そこは誰にも観測されない、誰も観測できない」

「……!」

「分かったら逃げろ。結界を解くと現実世界がそうなる。聖杯や平和どころじゃなくなるぞ」

「……ッ!葛木はどうなる!?」

「アレももう無理だ。諦めろ。オレ達を本気にさせるってのはこういう事だ。お前たちじゃ世界に勝てない」

「──!クソッ!」

 

 何かのウォッチを起動し、この世界から姿を消したシロウ。

 

「──やれやれ」

 

 さて……多分もう半分ねぇなぁ……直死で姉さんの能力を殺した事は何度かあるが、世界の端なんてのはそもそも認識できないから死も当然視えない。

 時間を止めても姉さんは動く。なら当然能力も止まらない。

 時間を吹っ飛ばして『上』をやり過ごしても存在しない空間に着地はできない。概念的に上と下の間に戻されるだろう。

 ムテキになるか。なったところでどうにもならない。ムテキが潰れるまで潰されるだけだ。少なくとも一切身動きはできないだろう。某世界的配管工アクションゲームで言うならキノコやスターでどうこうじゃなくソフトぶっ壊したからボスも死んだ、みたいな感じだからな。

 ……もうオレと姉さんだけだし一回死ぬか。

 

 ♢♢♢

 

「ふぅ……」

 

 終わった……聖杯戦争の世界も私の能力の下に消え去った。

 四象の源流、神の下僕。そんな私の能力に対抗できる存在はいない。いた時は私が死ぬ時だ。つまり私が能力を全開にした時点で死ぬ。何もかもが。

 

「さぁ次の世界はどこかな……っと……?」

「お疲れ様でした。ウタネさん」

「よ。無事家に出現して良かったな」

「あ、おはよーシオン。よく生きてたね?何でこの世界生きてるの?」

 

 死んでなかった。シオンも世界もえっちゃんも。なんで?

 

「世界は死んだよ。無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)って固有結界の世界はな」

「あぁ……そう言えば固有結界だっけ」

「その結果として姉さんは固有結界に入る前の場所、つまり自宅に戻ってきたわけだ。キャスター組と無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)をこの世界から消失してな」

「固有結界は再展開できるでしょ」

「無理だ。確かに固有結界は唯一ではない。あくまで現実を塗り替え、世界を侵食する魔術ではある。だから本来、例えば直死や対界宝具で固有結界を破壊したとする。その時点で固有結界は崩壊するが、再び結界を展開することができる。だが姉さんがぶっ潰した世界は姉さんの能力で潰されてる」

「……」

 

 だから何だ、という顔をしてみる。

 聞いてる感じ、変わらない……と思う。

 

「姉さんの能力は概念だ。姉さんが『水は石になれ』と能力で話すなら、あらゆる海や川、そしてあらゆる動植物は石になるだろう。そして、それを解除できるのは姉さんの言葉だけだ」

「うんまぁ……それはそうよ」

「でだ。姉さんの能力……非生命を自由に操作する能力。それは正確には概念を書き換える能力だ」

「……うん?」

 

 ちょっと何言ってるかわかんないなぁ……

 

「その能力の源流は四象存在の双神詩音だ。ヤツが前の世界、ゆりかごで何をしたか知ってるか?」

「や……それ私でしょ?何だっけ?」

「対象1名をその場に寸分違わず固定し、外界との遮断を行った上で正常に生命活動を行わせた」

「……?どういうこと?私の能力と違いある?」

「違わないが、姉さんの認識とは大きくズレる」

「……ますます分かんない。この言葉はちゃんと理解してるし目で視えてる」

「姉さんの言う遮断は物理的なもんだろ。詩音のしたのは完全に遮断することだ。つまり……そこに居て、世界を認識出来るのに誰も触れない、声も届かない、動けもしない。生きてる世界と遮断されてるから死ぬ事も無い」

「なにそれ……私、次元の壁突破できるんだ……?」

 

 私の能力で固定する場合はあくまで周囲の物質を座標固定して対象が動けなくなる、程度の認識だった……この世界から切り離すことも出来るんだ。

 

「そもそも姉さん、空間モニター潜り抜けるだろ。アレと同じだ」

「んー、なるほど。理解した」

 

 確かに私、『互いに見えるなら繋がってるでしょ』って無理矢理空間ワープしてたわ……

 

「で?固有結界とどう繋がるの」

「姉さんがしたのは『無限の剣製の上と下を閉じた』……合ってるな?」

「うん」

「だから姉さんが能力を解除しない限り、この世界で無限の剣製は潰れたまま。3次元での世界を失った世界に3次元の人間やサーヴァントは入れない。つまり展開もできない」

「えぇ……何で私の能力に私より詳しいの……-」

「直に双神詩音を見たのはオレだけだからな。オレの方が実感してる」

「そっかぁ……」

 

 物質操作系だと思ってたら空間やら概念系だったでござる。まぁ知ってた。固有結界の判定とかは知らなかった。

 

「よし、じゃあ衛宮士郎を殺しに行こー」

「ちょっウタネさん!?」

「そうだな。もういいだろ」

「シオン!?ライダーの穴埋めはどうするつもりで!?」

「ん……そういえばそうだ。もうサーヴァントが残り少ない。オレの能力では不能だったからな……」

「でもどーするの?捕まえてもライダー戻してくれないかもじゃん」

「いいや戻してもらう。戻せなくても、戻してもらう」

「んー」

「オレにはその力がある。とは言え……この予備は急造で不完全も不完全だ。少し休憩でいいぞ」

「休んで改善するの?」

「バカ言え、改造する。と言うか人間に近くする。まだ筋繊維や神経が甘くてな。喋るのはともかく歩いたりがかなり面倒だ」

「あー、なんかそれ前も聞いたかも」

「そうだったか?忘れた」

 

 シオンの能力……どっかの人形師から引っ張ってきて、人間と変わらない肉体を作り、生きてるシオンが死んだらその肉体に記憶が引き継がれ活動を開始する。ぶっちゃけこれだけで無敵と言える能力だ。予備の隠し場所さえバレなければ無限残機だって可能だ。

 

「まーきゅーけーね。お酒ちょーだい。私寝るから」

「ん」

「寝る前の飲酒は睡眠の質を下げるのですが……」

「そーなの?」

「なんちゃらバランスが崩れて身体疲労の回復が低下する、などだった気がします。すみません、正直どうでも良いので」

「うん……えっちゃん、私のテキトーさ移ってない……?」

 

 本質さえどーでも良く捉えるテキトーさ、余裕で私だ。

 

「そんなはずがありません。私のマスターはソラです」

「ん……まぁ、体の疲れなんてどうでもいいよ」

「ですが……」

「私が体使う事ないし」

「戦闘時はどうするのです?」

「ん?魔力放出で動かしてるから」

「……はい」

「……?おやすみ」

「ああ。必要になったら起こす」

「うんー」

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