「オレはスケールZeroの未遠川の汽水と、スケールⅥのソドムズビーストをペンデュラムゾーンにセッティング。これで星1から5のサーヴァントが同時に召喚可能」
「ねーえっちゃんどこいったのー?シオンがまた何か変なことし始めたよー?抑止力ー?おーい?」
どこの世界にでもあるだろうカードゲームを取り出し、明らかなオリカを禍々しいボードに置くシオン。
この前のなんちゃらネットワークと同じやつでしょ。仮面ライダーから離れたと思ったらそれに傾くのね。
「──彼の魂を揺らす大いなる力よ!この身に宿りて未来を導く光となれ!ペンデュラム召喚!顕現せよ!カルデアのサーヴァント共!」
「へっ!?」
シオンが手を掲げ叫ぶ。詠唱はよく聞く借り物らしいけど内容が気になる。
サーヴァントの召喚?信じられないことするな。
「「……」」
ボードが光りはするものの、サーヴァントらしきのが呼ばれた感じは無い。
「失敗?」
「だな。そもそもアレだ、カルデアから呼ぶと藤丸に殺されるな。最悪ソラで相殺するが。次は触媒も同じ世界に統一して……いや、やはりカルデアのシステム一連が無いと令呪無しでの複数召喚は出来ないか」
どうやら他の場に召喚されたわけでもなく、純粋に失敗したらしい。
「そもそも冬木の触媒使っても呼べるのはこの戦争に関連したサーヴァント、つまりこの戦争で死んだ奴だ。同じサーヴァントを複数召喚はできない。ビーストもこの世界ではなぁ……ま、縁もゆかりもねぇ状態じゃ喚べねぇのは当然か。やっぱりウォッチからの蘇生をマジェスティリバイブに強制するしかない」
「強制ってさ、実際どうするの」
「ん?洗脳はお手のものだぞ?」
「ああそういう……てっきりそういうのは嫌ってると思った」
「嫌いだがな。場合が場合だ、今は信条を曲げても達成するべきだ」
「VNAが洗脳メインとかあり得ないからね」
「そのあり得ないすらあり得ないんだがな」
「流石」
とりあえず。方針は衛宮士郎をぶん殴って拘束して、シオンが洗脳することでサーヴァントの数を確保しようと。
「ところで卿はどこ行ったんだ。和菓子漁りに行ったもんだと思ってたんだが」
「んー?知らないよ。なんで?」
「いや。万一間桐やマジェスティに捕まったのかと思ってな。流石に無いか」
「まぁ、固有結界がホントなら無理でしょ。間桐もあの裸の男の人だけだし」
「だな……ならほっとくか。よし、ライダー復活させに行くぞ」
「そうね。他にもうやる事ないし」
♢♢♢
「何故だ……アーチャーの力が使えない……」
おかしい。
シオンの説明通り、結界を維持したままヘルヘイムの森を越えて現実に戻ってきた。
そこまではいい。
だがその後、固有結界にアクセスできない。
あらゆる時空間を超えるオーロラカーテンも通じない。
──誰にも観測されず、誰も観測できない
シオンの一言が頭の片隅に常に残る。
「そんなはずは無い。俺の力だ、観測できないなんてことあるはずがない」
もう一度、アーチャーの回路に魔力を流し、詠唱を始める。
今こうして魔力を回せる。固有結界はまだ生きている。
「
問題無い。魔力の循環にもまるで支障が無い。
体を巡る魔力はその存在を確実に感じてる。
「
「
続ける詠唱にも不具合を感じない。
この力は問題無く使用できる。
なのに──何故。
「何故、結界が……」
固有結界は確かに発動している。
それをする機能全てが確信している。なのに現実が侵食され、荒野に変わる事は無い。現実は何も変わらない。
「く……仕方ない。次は、ランサーか……」
『いいや。次は無い。ライダーを返してもらおう。衛宮士郎』
「シオンか……」
♢♢♢
「自分の意思でウォッチを使うか、オレに使わされるか。どっちがいい」
衛宮邸の庭にお邪魔させていただき、シオンが宣戦布告。
やー、ここも久しぶりだなぁ。
「どっちも断る。お前もこの世界の平和を願うなら邪魔をするな」
「邪魔したのはお前だ……が、その様子だとやはり固有結界は死んでるみたいだな」
「本当に観測すら出来ないようだな」
「当たり前だ。姉さんをナメるなよ?」
「観測できないが、死んではいない。訂正しろ!」
「誰にも見えず、誰も触れない。そんな存在はな、世間では妄想と言う。あったとして何だ?大多数の人間に観測できないソレは異常存在だ。常識で言えば生きていない、死んでる存在。いつまでも家族がそのままなんて思うなよ。世界的には変わり続ける事こそ不変だ。『世界全てを停止する』なんて例外もあるが、オレ達だってそれは変わらない……理解できるか?」
「だが俺の力の全てを失ったわけじゃない!いくぞ!」
《マジェスティリバイブ!》
最強ライダーに変身する衛宮士郎。
あの能力に対してシオンはまだ完璧な対応を出してない。
私も加勢するか……
「まぁ待て姉さん。オレが何の意味も無く善意だけでプライムくれてやってるわけねぇだろう」
「違うの?」
前の世界でもあげるだけあげてそのままだったじゃん……意味深な発言こそすれ何も無かったし……
それこそ自分の役割を果たす存在がいれば自分は要らない理論から来る能力なのかと思ってた。
「闇の書もナンバーズもロクな成果を見せなかったからな。だが衛宮士郎。お前とアーチャーは及第点だ」
「……?」
「お前が
「おー、そういうこと」
シオンがウォッチを取り出す。
それは極めて歪な、赤とオレンジと青の組み合わせが渦を巻くラクガキみたいなモノ。そしてその元は明らか。
「救世主の尊厳復活はな、オレのフウシャの風になる。プライムを使いこなそうとすればする程、オレの能力を強化する。お前たちが強くなればなるだけ風は強く、フウシャは力強く回るんだ」
《マジェスティリバイブ》
「
《リバイリバイリバイ!リバイリバイリバイ!リ・バ・イ・ブ!リバイブ!マジェスティ!マジェ〜スティー!剛烈!疾風!剛烈!疾風〜〜〜!》
「これでオレとお前の能力は同じになった……そして、オレはもう一つ能力を使える……分かるだろ?オレの体も能力も代わりはあるが変わりはしない。お前らが絶対に刃向かうべきでない世界。それがオレだ。
私があらゆる物質……世界そのものであるなら、シオンは相手をただ1人の反逆者として世界から孤立させる。
シオンに敵対する個人は自身を含めたあらゆる並行世界の能力が襲いかかってくる……そしてシオンを越えようと成長してもそれさえコピーされ、何をしても同等以上が襲ってくる。
シオンを無力化するなら、先に自分や周囲を無力化しなければならない。
風車を止めるには、風を強めるんじゃなくて止めなければいけない。遥か地球の反対側だろうと、風は巡って風車を回す。
風が止んでも何処からか風は吹く。
風車が壊れようと代わりの風車はどこにでもある。
『風車が風を受けて回り続ける』という事象自体は永遠に変わらない。
それは変化を、代用を、進化を、変容を続ける世界。
私は何も無い、『観測されるモノも無く、観測する者も無い』世界。それと対極。
常に観測され、誰もが観測者であるが、何も変わらない世界……それは永遠だ。
「……意味がわからない。それじゃあお前は死なない。俺が無駄死にするだけだ」
「オレは世界だって言ってるだろ。二次創作の世界を消すためにニ次作家を数人殺したところで二次創作が死ぬのか?ならないだろ?でも二次創作を消すには作家を殺していかなきゃならない。お前がオレ達全員を殺すって言ったのはな、最低5つの世界を殺すことだ」
「……その話は不可能だ。いや、俺だからじゃない。人間にもサーヴァントにもそんなことはできやしない。神霊だってできるもんか」
「ああ。できないさ。オレ達は正真正銘の神に近い。オレ達はお前たちに認識されなければ何事もなく生きているだけ。その他大勢の隅っこにいる数合わせだ。だが認識したが最後、その権能により絶対不変の法を敷く。神は常に動物に、自然に、生命の類するものに再現不能な力を持つ。人間は真実を知った時に変化する……『認識する事』はそれだけ大きな変化だ。お前はオレのプライムによりより上位の能力を得た。だがそれでも実感しているだろう。お前じゃオレに勝てない。隙をくぐり抜ける事もない……」
シオンはウォッチの能力を使わず自前の刀を構える。
衛宮士郎の持つ能力はもうプライムのみ。であれば未来視のできるシオンはそれを全て相殺できる。
生身で戦うなら衛宮士郎に勝機は無い。
「関係無い!そんな言葉で諦めるなら俺は!この力を手にしちゃいない!」
「そうだな。その覚悟が無ければリバイブもマジェスティも手に入らない」
『マジェスティ!エルサルバトーレ!』
あくまで通常技として必殺技を使うつもりの衛宮士郎。
無造作にベルトを回すと飛び上がり、キックの体勢に入る。
「さっそくか……だが、同じ技なら相殺できる!」
『マジェスティ!エルサルバトーレ!』
対するシオンはベルトを回し、キックに合わせるよう拳を作る。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
ぶつかり合う2つの同じ必殺技。
数秒の拮抗時間を過ごすもすぐさま弾かれ、はじめの距離まで戻る。
「……お前が技のタイミングにおいてオレを超えることは無い。お前が持つのはプライムだけ。何度でも言うぞ。諦めてライダーを戻せ」
「何度言えば分かる。俺は世界を救う。邪魔をするならお前でも超えていく」
「分からないな。もはや残るサーヴァントも僅かだ。世界を想うなら現状維持が最適だと言うのに何故動く?」
「それはヴィーナスが勝手に言ってるだけだ。聖杯戦争じゃない」
「……対話とは同じ価値観、目的を持って成立するものだ。お前とはそこが明確に違う。知性体として会話を通して建設的に対話したいが……お前にもそのつもりはないのだろう?」
「あるはずが無い。俺はお前らほど賢くないからな」
「ならやるべきはひとつ……お前が正しい」
「……」
「……」
互いの目的は世界の平和。互いが互いの手段を否定して、互いの障害となる事が明文化された。
劇的な数秒から無の数秒を経て……2人の救世主の起こす動作は同じだった。