聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第65話

《クロックアップ》

《クロックアップ》

 

同時に加速した2人の戦闘は、すぐにも私が視認不可能のものになった。

それは当然だ。私が見た限りでもこの能力に先手を取られる訳にはいかない。何はともあれまず同じ時間軸に存在しなければ同じ存在である以上勝ち目が無い。

 

《分身!》《分身!》

《高速化!》《マッスル化!》

 

続いて聞こえたのは分身と高速化、筋力強化。

これは確か赤青の私と似た能力持ちのライダーのやつだ。当然の様にマジェスティの能力圏内なのだろう。

見た感じ……というか感じた感じ……?ではまだ互角だ。

未来予知もあるだろうけど視認さえできない速度の攻防なら追いついてないだろうね。純粋に能力の勝負だ。

いやー、果たして最速の殴り合いはどっちが勝つのかなー……

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

知ってた。

衛宮士郎の悲鳴が木霊する。

んー、でもどーしてこんな差ができるんだろう?

転生とか踏まえても、シオンは能力頼り、自身の技術やら気力なんて言う意味のわからんもんに頼った事はない。

つまりは……その辺の高校生と大差無い。

なのになんで……ここまで互角なんだ?

能力が互角なら互角のはずだ。何故、所詮はこの数手で決着がついた……?勝つのは当然としても、もう少し長引くと思ってたのに……

 

「ふぅ。どうだ衛宮士郎。同じ能力に敗北するってーのは」

「く……同じなんて、バカにしやがって……何だ、その能力……!」

 

息を切らす衛宮士郎は一撃受けただけとは思えないほど疲れている様に見える。

 

「これか?『完成(ジ エンド)』って能力だ。認識した能力を文字通り完成したレベルで行使できる。だからお前の能力でお前に勝てたんだ」

「完成……?」

「お前はまだ能力を使い始めて日が浅い。実戦経験すらこの戦争からだろう。いくらアーチャーと擬似融合し、憑依経験を使いこなそうと……その能力は発展途上だ。その到達点にあるオレに勝てるわけないだろう」

「じゃー何さ、それだけで完璧じゃん」

「そうでもない。無限の剣製がまだ生きてたら他のを選ぶ」

「何で?それも使いこなせるんでしょ?」

「ん?」

「や、能力を使いこなして使用するならマジェスティリバイブも無限の剣製も変わらないでしょ」

 

使いこなす能力だってなら、シオンの能力なんてそもそも1枠でいい。

使うのは完成された能力。その種類は認識する限り全て。

シオンの能力なんて並行世界から引っ張るから劣化版だったりするしゴミみたいなもんだ。

 

「いいや、そうはならない。完成(ジ エンド)はあくまでオレの並行世界。極めてオリジナルに近い性能を持つが、並行世界のオレが自前で持つ特技に過ぎない。オレの鏡に映るもう一つを完成させるだけだ」

「ん……?」

 

シオンの使うもう一つを……?

 

「ねぇ、それってさ、意味無くない?」

「あ?」

「ジエンドのシオンはそれしか持ってないんでしょ?いらないじゃん」

「ああ」

「ああて……」

「話してるヒマなんて無いぞシオン!」

 

するっと返すシオンにため息をついた瞬間、衛宮士郎が超高速でシオンに迫る。

 

「あるから話してんだよ」

「ぐっ……!」

 

衛宮士郎の行き先に先んじて青い銃で弾幕を張るシオン。

……仮面ライダー召喚できるならオリジナル召喚して撃たせればいいのに……ああ、未来視できないからか。

 

「並行世界の能力はオレの未来視みたいなもんで、ただの特技だ。使える能力もあれば無意味なのもある」

「んんーー?」

「例えば……円周率を50,000桁暗唱できようが全く無意味。だがそれは相当な神秘である。オレを含め一般人が覚えてるのなんて100かそこらだ。1,000なんて覚えられる気がしない。そんなもんだ」

「んんんん〜〜〜〜??極め過ぎた趣味ってこと?」

「近いな」

「でも時間止めたりとか趣味どころじゃないでしょ。禁忌じゃん」

「そんなオレもいるがな、無数に存在する並行世界から見れば一握りだ。この世界でもよくわからん超人が数人は存在すると思えば時止めは必ずしも存在しないはずはない」

「わかんないや」

「だろうな、まぁ、無限って概念と想像力に付与するとオレの鏡になるってことだ……さて救世主、戦力差はハッキリしただろう。諦めてライダーを戻せ。別にお前や誰かをを殺すわけでも破壊活動をするわけでも無いんだぞ?オレの視点に立ってみろ、窮地にある奴らを救ってやろうと尽力してるのにそいつらは進んで自害し始めてる。わかるだろう?」

「だが……それはお前らだけが言ってる事だ」

「ふぅ……」

 

いつかしたようなやり取りに落胆のため息を吐くシオン。

ひたすらにダルそうながらそれでも知性体として説得するつもりなのか口を開く。

 

「もっと分かりやすく言うぞ?アル中を救ってやろうと色々考えてやってるのにオレ達の目を盗んで朝から晩までガブ飲みされてるんだ。多少の殺意で済んでるだけ温厚派だと思わないか?アル中にとってアルコールを止める事は自身に苦しみをもたらす悪い事だ。だが周囲の『常識』ってヤツからすれば正しい事でしかない。大多数が正しいと言えば正しいんだよ。どれだけ本質から離れていてもな。まぁ……この状態でオレ達を支持するのはVNA5人と卿とゴミで7人しかいない少数なんだが……でだ、少しでいいんだ、人間80だか100年だかは生きてられるよな。その内1の半分の半分の半分の半分を耐えるだけでいいんだぞ?お前が積み上げるものの総量から見ればほんの僅かだ。10000円持ってる時に駄菓子屋で10円足りないと泣くガキに恵んでやるより僅かな出費だ、何を惜しむ?そうまでして死にたいのか?死ねば楽になるだろうがこの世でも慎ましやかに生きれば幸福に過ごせるぞ?」

「長いー、わかりやすくー」

「正規参加者は諦めて死ね」

「んんんんん、意義あり、逆転裁判」

「自我を殺すだけで生命的に死ぬわけでは無い、QED」

「QEDの使い方に意義あり。わかった、私が衛宮士郎を拘束する、それで満足でしょう」

「ふざけんな、せっかくのマジェスティリバイブ(新能力)、アインスに自慢するまで極めるに決まってんだろ」

「んー、アインスはただ褒めてくれるだけだと思うなー。褒めるか呆れるかのどっちかだと思う」

「……まぁ、そうだろうな」

 

諦めたシオンが改めて衛宮士郎を見据える。

あのアインスがシオンの新能力見て嫉妬なんて絶対しない。

 

「さぁ救世主。無限の剣製は死んでるが……同じ能力を持ち、こちらには更に自由な能力を選択するアドバンテージがある。まだお前には力が足りない」

「……攻撃をやめていいのか?」

「ああ。オレは考えを改めた。お前の知性を評価しよう。それに、今ではお前も対話をしてみるべきと考えてるだろ?」

「……ああ。だが、リバイブとマジェスティの力を持ってして戦力が足りないと?」

「ああ。お前との戦いを考えてたんだ……アーチャーはどうもこの戦争を超えたお前だと思っていたんだが、そうするにはいささか不安の残る戦力だ。最終手段として姉さんが結界を殺すのは容易に想像が付くし、リバイブだけでオレ達を殺せるとは思えない。そこで、お前のプランを聞かせてもらおう。衛宮士郎(アーチャー)はどうやって聖杯戦争を終わらせる気だ?」

「……戦争を終わらせるつもりは無い」

「「……は?」」

 

私は当然、シオンにさえ予想外だっただろう解答。

戦争を終わらせない?

 

「待って?ならなんで私達と敵対するの?私達と組むならそれこそ、楽に終われる。戦争を終わらせないまま、平和に暮らせる。なのに……」

「何故ライダーをウォッチに封印した?キャスターと宗一郎を殺した?サーヴァントを減らすことが戦争を終了させる行いだと理解してるだろう?何故だ」

 

戦争を続けるつもりならサーヴァントとは戦わない。

そのつもりなら戦闘より威圧だけしておくべきだ。

全員が牽制するなら誰も動かず、私達もそれでオーケーなのに……

 

「戦争は終わらない。この冬木に完成する聖杯は1つだけだ」

「そんなの分かりきってる!マスターもサーヴァントもそれを目的に集まってる!そんなに私に殺されたい!?」

「俺の知性が低いとみなせばお前は無条件に殺意を見せる。フタガミ。お前のことはただの物静かな優等生だと思ってたよ。それが……本当はシオンが入れ替わってて、更にヴィーナスと認識した後は暴力と殺意の塊でしかない。認識してからというもの、真実を知ってからというもの、お前には驚かされてばかりだ。正直、俺はお前たちが怖くて仕方ない」

「……だから何。目的と手段を教えてよ。そんなんじゃ話にならない」

「俺は全てのサーヴァントを消す。そして聖杯を完成させない」

 

言葉を失った。

何も、その言葉の、文が意味するところを理解できなかった。

 

「救世主。そんな事ができると思うのか?お前はセイバーも殺したと?」

「いや、セイバーはまだ生きてる。いや、全てと言ったのは撤回する。セイバーだけは生き続ける」

「……勝者に仕立てたセイバーを令呪で縛り続ける気か?どれほどの恨みを買うか……いや、それなら聖杯は完成する。最終到達点は何だ」

「それはお前の知るところだろう。俺の言う話じゃない」

「……?オレが?何を知ってると?」

「お前の存在はそういうものじゃないのか?」

「オレの?オレ達の存在のことか?」

 

セイバーだけを残し、全てのサーヴァントを消して……聖杯を完成させずにいる?

それができれば確かに、セイバーは誰と戦っても聖杯には届かない。戦う相手がいないのだから、全サーヴァントを存命させるより遥かに恒久的な維持が可能だろう。

でもシオンの混乱原因は私もわからない。

 

「私達の存在ってなんのこと。シオンだけじゃないの……」

 

『ヴィーナスの存在じゃろ。存在するだけで世界の全てが崩壊する』

 

っと……対話フェイズに乱入するしわがれた声。

 

「蟲ジジイ……間桐邸から離れていいのか?それを自殺と言えばいいのか?」

『桜は置いてきた。儂を殺した所で何も変わりはせん』

「何しに来た?今更和解は無いぞ」

『ヴィーナスを消しに来たんじゃよ、コヤツの力でな』

 

老体の隣に霊基……ん、前の半裸の人じゃない……?

というかマトウってあの人以外にサーヴァント残ってたんだね。忘れてたよ。そもそも数えてもなかったよ。

 

「何だソイツ。そんなのいたか?オルタ化してるようだが?」

「えっちゃんと同じ?」

『コヤツの真名はギルガメッシュ。そう、さしずめギルガメッシュ・オルタと呼称するかの』

「ギルガメッシュだって……!?」

「知ってるのか姉さん!」

「聞いたことがある。ソラの異次元お菓子を超えた貯蔵量を持つお菓子英霊!」

 

なんかギルガメッシュの宝具が欲しいとか言ってた気がする!覚えてないけど!

 

「多分違うなそれはな。だがソラのくだりどっかで聞いたな。ソラにも用意できん極上和菓子があるだとか……ん!?マジの菓子英霊なのか!?金髪和菓子職人だと!?」

『そんなワケがなかろう!バカなのかキサマら!』

 

自慢のサーヴァントを菓子職人呼ばわりされたのが気に食わなかったのか、言葉遣いがアクティブになる老体。

菓子職人に失礼だとは思わないのか。

 

「おい救世主、ここは一時休戦といこう。この蟲ジジイは気に食わん。桜の救出もしてやるから黙って姉さんと観戦してろ」

「……何で急に桜の話なんだ?」

「いや……説得できるかと思って……」

「そうか……あの状態から桜を救えるんだな?」

「ああ。オレの能力であれば造作も無い」

「わかった」

 

シオンが変身を解いて衛宮士郎を下がらせる。

そして衛宮士郎も変身を解いて私へ近づいてくる。

交戦の意志が無いと言うつもりだろう。何度も敵対しといてふざけんなって感じだけど人間だからね。

 

『1人で相手する気か。この英雄は英雄の王とも言える。最古の王なのじゃからな』

「ふん、1対1はオレの専売特許だ。オレ以外に1対1が良いなんて言う奴は真っ先に殺す。誰でも多対1で責任を分散して思う存分いたぶりたいモンだ」

(わたし)の前に立つという事は死である』

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