聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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66話

「だが待て……ギルガメッシュ……?」

「ん……?シオン?どうしたの。さっさと砕けてきなよ」

「当たって砕けろじゃねぇ。姉さんもカンで分かるだろ。コイツの存在そのものがおかしな話だ」

「ん……この冬木ではあり得ない、的な」

「ああ。ラーニングしたところによるとだな」

「よると?」

「この英霊、元は男だ……」

「!!??」

 

 衝撃の事実。あの白髪の冷酷美人が元男……!?

 金一色の甲冑、蛇柄の装飾、そしてえっちゃんのような金とも銀とも言い難い長髪、この場全員を見つめているようで何も見ていない様な謎の視線……うん、趣味じゃない。

 

「いやでもアレか。セイバーだって元々男だとか言ったもんね。うんうん、カルデアも大変だ」

「いや……間違ってないが間違ってるぞ。奴もセイバーも生まれから女で、オレ達の知ってる同名が男ってだけだ」

「なるほど。並行世界のお話か」

 

 まぁ……私にとっては性別なんてどうでもいいことだ。

 

「で、どうするの」

「あ?オレの能力は十分に知ってるだろう。未来視、2つの能力。高々人間の英雄如きが神のオモチャに逆らうんじゃねぇ!」

「あーあ、それ負ける人が言いそうだー」

「うるせぇ!さぁまずは小手調べだ!無明三段突きッ!」

 

 シオンが消え、即座に即死技の名が叫ばれる。

 んー、多分だけど直死も乗せてるだろうし……ほんとに終わり?

 

「……!」

「え……」

 

 無明三段突き。

 3つの同じ刺突を同じ場所に同時に存在させる理不尽。

 同じ場所であるため刺突を防いでも残り2つが貫通してくる。意味不明である。銃弾を真後ろに重ねて撃つトリックショットなどと言うレベルではない。盾をその場に置いていても貫通してくるのだ。

 1つ防いだなら全部同じだろとかではないのだ。防ぐならその3つを正確に防がなければならない。未来視で相手の動きを先読みした上でそんな攻撃をされればまず負傷は免れないはずなのだ。

 そんな攻撃を、何故かシオンが外した。

 

『ふぉふぉふぉ。儂はこれで帰るがの。せいぜい足掻くが良い。ヴィーナスの』

「クソジジイ……」

『其奴は桜が1度取り込み再構築した英霊じゃ。取り込む前はお主らの知る傲慢な男じゃった。ふぉふぉ』

 

 初撃を外したのを確認すると、老体は無数の蟲となり霧散する。

 

(わたし)を知っていながら何故挑む?それは自殺に等しい行為である」

「うるせぇ!ギルガメッシュの宝具もラーニングした!ただの無限貯蔵庫だ!出してみろ!全力をよ!そっくりそのまま映してやっからよ!」

「では望み通り」

 

 シオンの挑発に冷静に乗るギルガメッシュオルタ。

 軽くてを挙げると周囲には無限の剣製を超える武具がこれでもかと敷き詰められていた。

 

「を……うそぉ……」

 

 包囲するなんてレベルじゃない。アリ1匹通さないをそのまま実現したような密度、刃物の壁、殺意の波。

 しかもそれらが並大抵以上の神秘を持つ。

 私のカンをして……無限に等しい魔力放出をして……これは単独で避けられないとアラートが鳴り響く。

 無限の剣製も同じ様な能力だけど……展開密度、神秘が桁違いだ……同じ様な能力でこれほど差があれば衛宮士郎はもれなく死ぬ……

 

「シオン!衛宮士郎が!」

「黙ってそこから動くな!爆風だけ防げ!」

「了解!」

【守れ】

 

 私は能力で私と衛宮士郎をあらゆる魔術、神秘から隔離した。

 直後シオンの周囲にギルガメッシュと同様の武具が発生、強烈な爆音と爆風を撒き散らして消滅していく。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「衛宮士郎うるさい!死にはしないから怯えるなら黙ってて!」

「ぐぅぅぅ……すまん、だがこの風圧は……!」

 

 うるさいとは言うが宝具のぶつかり合いで発生する爆音の方がうるさい。

 私の能力で隔離してなかったら私の声なんて聞き取れやしないでしょうね。

 

「……ふぅ、流石だな。最古の英雄というのもさながら嘘でも無い。相当な『負荷』をオレは負った……」

「げ……まさかもう電池切れ?」

 

 忘れてた……シオンの能力による負荷。

 衛宮士郎と戦ってのさっきの宝具連打……もうとっくに限界でおかしくない……

 

(わたし)はあらゆる宝物を持つ。この程度が限界ではまるで足りない」

「いいや……この負荷を受けるのはお前だ……ギルガメッシュ」

「……」

 

 シオンが手のひらを胸に当て……背中からピンクの半透明の肉球が滲み出てきた。

 ナニソレ……多分初めて見るよ?

 

「コレはバーサーカーや衛宮士郎に使ったものだ……ニキュニキュの実。手のひらの肉球をぷにぷにする能力。癒しが欲しいなら後で飛ばしてやる」

「飛ばす……?」

「世界の端に永遠に飛ばし続けてやる」

「なんて素敵な提案なんだ。戦争終わったら即やろう」

 

 世界の隅っこの端っこから虚無を眺められるなんてなんて良い能力だ。私の世界と交換でもいいくらいだ。四象の存在とトレードしよう。両儀の一歩前だ、魔術師なら無限の価値があるらしいじゃないの。誰か無限円で買ってくれないか。私がその世界で死ぬまで毎月家賃込み10万でいい。

 

「やるかバカ。オレはどうなる」

「知らないよ。好きにすれば?私にくっついて虚無る?」

「やだ。まぁいい。最古の英霊よ!現代の癒しの1つ!肉球の力を思い知るが良い!」

 

 シオンはピンクの半透明を一心不乱に掌底で弾き、無数の小さな肉球として飛ばす。

 

「衛宮士郎、アレ知ってる?」

「あ、ああ……アレはシオンの体内にあるダメージ、能力の負荷なんかを弾き出して他人に飛ばす能力だ。オレもこのくらいのをくらっただけで2回は死んだような苦痛を味わった。バーサーカーにも使っていたが3回以上は殺していた」

「ほーん……」

 

 要は自分の負債を相手に押し付ける能力らしい。なんて悪意しかない技なんだ。

 だってアレでしょ、シオンは能力で負った負荷を弾いて相手に与える。その為に負荷を負う、その負荷を弾く、そして負荷を負う……同じ攻撃に対して+100の防御を得るバーサーカーにして3度。この能力だけでそれなりにドヤれる英雄3騎分の神秘と攻撃力だ。

 つまりは十分に即死、回避不能であるということ。

 どれほど強大な破壊力を持とうともバーサーカー、十二の試練はそれに耐性を持つ。そしてその持ち主はその攻撃を見切り対処する。ならばどの様な攻撃をして十二の試練を突破する方法は無い。あるなら2つのみ。

 ひとつ、極限まで攻撃力を高めた神秘A以上の攻撃を持って一撃で十二の試練全てを殺し切ること。

 ふたつ、十二の試練を持ってして無効化しきれず、その持ち主をして捌き切れない神秘と物量のゴリ押し。

 そしてシオンの能力を考えると、2つ目の攻略法はかなりマッチしている。

 まずあの能力に神秘A以上があるという前提だが、〇〇の実、というのは世界に1つしか存在しないらしい。私達基準において神秘とは唯一性、昔は貴重だった水や火が現代ではその存在はより下位に落ちているが、金は採掘量に限界があり総量が限られる為過去から現在において全く無価値となった事はなく、またその存在も上位に在り続ける。

 そして物量だが、攻撃手段が負荷を飛ばす事である以上、そのサイクルが途切れる事は無い。更に攻撃が苛烈になればなるほど負荷は大きく、攻撃力も飛ばす肉球の数も多くなる。足りないスピードや筋力は残り1つの能力枠でどうとでもなるだろう。つまり長期戦になればなるほどシオンの手数と火力が伸び続ける。

 よし、勝ったな。えっちゃん食べてくる。

 

 ♢♢♢

 

「オラ、オラオ、オラオラ、オラオラオラオラオラオラァ!」

 

 1発、2発、4発、16発、256発……段々と加速する身体の瞬間的破壊と回復。

『負荷』では身体は壊れない。だがそれに等しい苦痛と、限界を超えると死ぬ。それが一挙手一投足に発生し、瞬時に抜けていく。そしてその苦痛と速度は無限に増幅していく。

 だが相手には受けた負荷を摘出することは不可能なはず。この負荷は傷でもダメージでも呪いでも毒でもない。あらゆる宝具を持つ最古の英雄であろうと、負荷なんて概念を取り除く宝具は存在しない。

 

「おおおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 だというのに何だ。

 この手数を全て、無限に相殺されている。

 オレと同じ未来視か……?オレも以前の世界で弾道の予知と撃墜を指先一つでこなしたことがある。それに弾となる宝具が無限であるなら飛び道具に意味は無い。ただいたずらに時間と被害を食うだけだ。

 

「ならコレだろう。どれ程の存在であろうと、ゴッドハンドさえ殺して見せた並行世界の死を喰らえ……!」

 

 手のひらをギルガメッシュへ向ける。

 

「ナハト・アンサラー」

 

 並行世界より死が確定した世界を統合させる。

 無限貯蔵庫の中には不死や残機くらいあるだろうが致命傷に変わりなく、隙くらいできるはずだ。その隙に懐に潜り込み、直死で確実に殺してやる。

 

「いくぞ!キング・クリムゾン!」

 

 アンサラーの命中直前に時をふっ飛ばす。

 そして背後に回り込み……スタンドと刀の直死込みの同時攻撃。オレが殺意を持てばこの程度は造作も無いって事を教えてやる。

 エピタフは女の背後に回り込んだオレが腰と肩に致命傷を負わせていることを予知している。そして同時にアンサラーも心臓を貫く。勝った!そして時は再び刻み始める!

 

「……ざ……!」

 

 結果で言うなら、失敗した。

 調子に乗ったのもあるが、ギルガメッシュの対応も想定外のものだった。

 オレの刀は見事ギルガメッシュの持つ短剣に弾かれ、スタンドは躱された。

 そして身体の脆弱性ゆえ、刀が弾かれた衝撃で刀持ってた右腕が肘から千切れてとんでった。その脆さに絶句してた。

 いや……そりゃそうだ。能力頼りに戦ってた今まで、直接的な力比べなんてしてなかった。してこなかった。

 オレの体は姉さんのものをコピーされたもの……をオレが急造で劣化コピーしたもの。バランスボールでノックアウトする姉さんの劣化版だ、その脆弱性は語るまでも無く。

 

「ザ!ワールドぉ!」

 

 とりあえず時間を止め、飛んでく腕をキャッチして距離を離すため走る。

 この4秒、しっかり使わないと即死もあるな……

 まず腕の接合。問題無い。

 アンサラーもスタンドも見えてないはずなのに見切られた様でダメージは無さそうだった。

 

「1秒経過……」

「シオン!大丈夫!?」

「ああ……姉さん、救世主は保護してるままか?」

「うん」

「2秒経過……よし、オレはこのままギルガメッシュと近接する。姉さんはいつでも逃げられるよう準備しててくれ」

「まじで」

「3秒……時間は無い。時は動き出す……」

 

 最古にして黄金の英雄。

 対するこちらも相応の相場が必要だろう。

 

マジェスティリバイブ'(プライム ウィンドミル)──変身」

 

 最新にして赤と青にちょっと金の救世主。

 

《ブレイブ》

 

 レベル100のガシャコンソードを召喚し、ギルガメッシュの次の動きを予想しながら突っ込む。

 

「愚かな」

 

 周囲にまたも無限の宝具が展開される。

 

「シオン!」

「オレにも同じ手は効かない」

 

 同様の宝具をぶつけて相殺する。

 王の財宝を持っていたかもしれない並行世界のオレよ……どんな世紀末にいるんだ?

 

「さぁ女!オレと近接武器格闘だぁ!」

「良い」

 

 無表情のまま肯定を示すギルガメッシュ。

 くそ、挑発のつもりで女呼ばわりしてるのにさっきから全然反応が無い。オレの知ってるオルタは比較的感情豊かな奴が多いんだがな。

 

「はあっ!」

「……」

 

 周囲の無限の宝具を相殺しつつ、かつ本体にも飛ばしつつで他のサーヴァントには手出しさえ不能である戦闘となる。

 

《クロックアップ》

 

 時が止まったに等しい程の加速度を得る。

 この状態で予知すれば通常時間で見るより手前の未来で止まってしまうが……時間経過が拡大されるから精度は上がる。

 これでアンサラーを見切った能力に追いつく!

 

「……愚かな。(わたし)を前にそのような小細工など」

「ふっ!はあっ!」

 

 右後方から槍が3本、右前方から剣4本はその発生を感知した。そしてギルガメッシュが左上段から斜めに大剣を振り下ろす……未来まで視えた。

 オレはそれに対して左下へ滑り込み、すれ違いで腰を切断する。終わりだ。

 

「通用しない、とまで言わなければならないか?」

「……!」

 

《クロックオーバー》

 

「くそ……ここまで先を読んでも足りないか」

 

 攻撃は躱したがオレの攻撃も捌かれてしまった。

 未来視持ちなら確かに納得だ。オレの未来視を超えるならオレの動作、速さに関しても目安がつく。超精度の未来視を使いこなす相手に速さや力、技術は全く無意味。未来視できるだけの雑魚にはゴリ押しが効くが……最古の英雄ともなれば完璧に予知、最適な宝具を引っ張ってくるだろう。

 マジェスティリバイブのパワーもサーヴァント相手には確実な有利とまではいかない。手数も完全に互角以上……神秘では圧倒的敗北……

 さてどうする……

 

「あー!アレ私の鎌────!」

「あ?」

 

 戦略思考を中断させる姉さんの声。

 鎌……?

 

「ねぇちょっとシオン!アレ!私の!」

「みたいだな」

「コントロール奪われてる!だから探せなかったんだ!」

 

 ギルガメッシュの展開してる宝具の中に、確かに姉さんの鎌が宝具ヅラして紛れ込んでた。中小ヤクザの冗談半分で作られたパチモンのクセに。

 となるとマトウの屋敷で屋根から攻撃してたのもコイツか……姉さんのカンが後先考えず投擲させるのも納得だな。

 

「だが姉さん、アレの奪取は可能であれば、というレベルまで諦めてくれ。あの女殺しちまえば多分一緒に消えるから」

「それ酷過ぎる。借りパクレベルマックスじゃん」

「あらゆる英雄の原型のオルタだ、そのくらいはするだろう」

「むぅ……」

 

 まぁだが、複数の世界を超えた武具としてなら姉さんの鎌も宝具と言えなくもないか……仕方ない。隙があれば取り返すか。

 

「だが私は諦めない。さぁ英雄王!私の能力は解除した!今なら私の鎌で一撃だ!さぁ!鎌返せ!」

「……良い」

 

 またも全体範囲……いや、今度は姉さんに全ての照準が合った展開だ。

 しかも何故姉さんは自殺まがいの事してまで鎌欲しいんだよ……!代わりがいるならオレが用意するってのに!

 

「クロックアップ!」

《clock up》《invisible》《ハイパームテキ!》

《マジェスティ!エルサルバトーレ!百烈!タイムバースト!》

 

 透明化に無敵、そして超高速の超光速。

 ギルガメッシュの宝具に負けない程の範囲と密度で必殺キックを叩き込む。

 姉さんを攻撃させやしない!

 

「お前には何も見えていない。全ての未来を見通すなら、その程度では不意を突くことにすらならない。お前に未来を変えられない」

「……!」

 

 何も見えてないだと……生身で未来視を持つオレに対して、そんな言葉は挑発にしかならねぇ!

 無意味に捌かれた必殺キックを記憶から消して次へ進む。

 予知で最も差が出るのは近接戦。一瞬一撃が全てを別つ。

 

「見えてるならこの攻撃を超えてみろ!オレの未来視を予知できるか!」

 

 オレの見える限りの未来を全て対処した。

 この5手はどうあってもオレの方が上のはず!

 

「ぐ……っ!バカな……!この数手、無限のパターンを攻略したはず……!」

(わたし)は並行世界を含む全ての未来を観る。たかだか人の身で争おうなどとは頭が高い」

「なら!ゴリ押し火力はどうだぁ!」

 

《クローズマグマ!》

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「この程度で……」

 

 拳の競り合い、ただ一撃だがこれが通れば……!

 

「サーヴァントは怯まない、とまで言っておいてやろう。お前たちにはその助言が必要だろうからな」

 

 何でもない、ただ握っただけの拳にオレのマグマも威力を超えられない。

 

「く……!そっ!パワーもまだ足りないか……!」

 

 パワーオブパワーでも防がれた。

 さてやれやれ……

 

「マジェスティリバイブではもう型落ちみたいだな」

『どーすんだシオン!これ以上無いだろ!?』

「黙れ救世主。救世主としてはこれ以上無いかも知れないが、ライダーの力は限界じゃない」

 

 所詮はディエンドを介さなければ全てとは言えない能力……所詮はお遊びだ。

 

『……?』

「オレは人間じゃない。だからこの地球の存在とも言い切れない」

「何言ってんの?私だから人間でしょ」

「とも限らないぜ。隕石がオレだった可能性も確かに存在する……」

 

《エボルドライバー!》

 

 ディエンドのカードがウォッチになるんだ、互換性はあるんだろ。

 マジェスティリバイブのウォッチを振ると赤青金でぐちゃぐちゃのボトルが生成された。

 

《マジェスティリバイブ!》《ライダーシステム》

《レボリューション!》

 

「幾つもの星を喰らう地球外生命体。命を捨ててでも守りたいものを守る不屈の救世主。今ひとつと……ぐ……ひとつとなりて、新たなライダーの生誕を祝福せよ」

 

 身体的には人間であるオレにはかなりの負担がかかる変身だが……致死量を超える負荷を耐え続けて来たオレには問題の無いレベルだ。

 

《are you ready?》

「変身」

 

《マジェスティ!》《リバイブ!》《エボルプライム!》

 

「エボル、プライム……フェーズ1、完了……」

 

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