聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第70話

《Ready! GO!!!》

 

 シオンが飛び上がり……ベルトを外した……?

 

《チャオ》

 

 シオンの前回転蹴りは外したベルトを直撃し、直後に爆音。

 

「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

「な、何このエネルギー……!」

 

 砕けたベルトからギルガメッシュの宝具を超えるほどのエネルギーが放出される。信じられないと思うけれども生身の人間だと即死するくらい。

 

「これは……結界?」

 

 明らかに桁の違うエネルギーは爆発するわけでもなく、周囲に留まったまま制御されている様に感じる。

 それが決して広くない、野球のグラウンド程もない事はカンで分かる。

 

「これはエボルドライバー、エボルトリガー'に内蔵された馬鹿げてるエネルギーを球状の結界として利用したものだ……ここにいる、残った戦争関係者を逃がさないためのな……」

「逃げるだぁ?忘れたのか、俺たちサーヴァントには霊体化っつー選択もあんだよ!」

 

 ランサーが何故か意気込んで逃走を示唆する。

 この結界……異常な魔力量を中に充満させてるのか、薄暗いだけなのに妙に視界が悪い。十分見通せるはずなのに、見えてない……焦点があってないのかな。

 

「逃走は想定済みだ……だからこそ姉さんに傷を負わせてまで……卿にペナルティを与えて、サーヴァントシステムを取り込んだ。サーヴァントである限り、この結界は越えられない」

「ならマジェスティの力がある!最終的に撤退の選択肢は残されている!」

 

 どうやらブラックホールの驚異的能力を自ら放棄した事に危機感を覚えて逃走を考慮していた様子。多分もう無理だよこれ。私も出れそうにないもん。

 

「それも無い。マジェスティリバイブも取り込んだだろう……もうオーロラカーテンもヘルヘイムも……他も通じない。この結界には誰も入れず、誰も出られない。更にこの魔力密度、下手に出力を上げるとお前らごと焼けてしまうだろう……」

「何だと……宝具封じか!姑息なマネを!」

「高確率即死などというふざけたモンを許すわけがないだろう……代わりに、オレもエボルトの力を失った……今は生身だ……」

 

 エボルドライバーとやらが破壊されたエネルギーで作られた結界によってこの世界全ての逃走経路がシャットダウンされた。取り込んだ力で突破が不能だとするのなら、ギルガメッシュの宝具さえこの結界の前には無力という事になる。

 まぁそんな事はどうでもいいけれども……シオンは生身。能力を自分で破壊したせいか、次の能力を選択する感じも無い。

 

「マスターとも繋がらないか……だが!今お前はもはやそこの赤いガキより脆い!」

「ふざけるな青畜生が!サーヴァント如きが僕を批判するんじゃない!」

「うるせぇ!テメェが役に立った試しがねぇんだよ!」

「なんだとこの全身タイツがぁ!現代日本においてそのカッコーはヘンタイ真っしぐらなんだよ!何もしてなくても即ツーホーなんだよ!」

「んだとぉ!?この大英雄を変態呼ばわりたぁ死にてぇらしいな!」

「ん〜……」

 

 ランサーと私の部屋のオブジェが喧嘩を始めてしまった……知性が無いなぁ……この状況、互いのしがらみなんてほっといてシオン倒せばいいのに……これだから感情的な存在は……

 

「シオン!何のつもりだ!お前ならさっきの能力で俺たちを倒すなんて訳無いはずだ!」

「衛宮士郎。お前は『強さ』について……どう思う。今のオレと、エボルトブラックホール。どっちが強い?」

「……ブラックホールだ。今のお前なら、正直言って負ける気がしない」

「だろうな……だが、『強さ』とは『ワガママを押し通す力』だ。結果として自分の意思が通ること……それが強さだ。ブラックホールなら全てを消すのは容易い。だが、それではオレの望みは果たされない……ならばそれは、オレにとって強さではない」

 

 ……?意味不明だ。

 けれども今の私達にとっては全てを殺す事はメリットにはならない。

 

「それに……フェーズ4と謳ってはいるが、コレは別にエボルトの派生というワケでもない」

「ん〜……?」

「7段階あるオレと姉さんの切り替えのちょうど中間。話し合いと殺戮の中間地点。相手を殺したいわけじゃなく、相手と話す気も無い。これで解説することは終わり。これで戦争は終結する」

「んー……」

 

 シオンが何やら細々言ってるけどサッパリだ。

 私とシオンの中間……?

 

「さぁ行くぞ……オレに立ち向かうも良し、何もせず敗北するも良し……どうあれオレの望む未来以外にはならない。お前らの歩む未来はオレの望む世界だ……」

 

 シオンが刀を手にしたままゆっくりと歩きだす。

 その動きは戦うにしては緩慢過ぎる。さっきから話し方も。

 魔力密度が高過ぎて能力使ってるのかさえ分からないけど、カンとしては使ってない。

 

「ハッ!そのスピードで戦うつもりか!?最速の英雄を相手によくそんな対応ができるもんだ!」

 

 ランサーが我先にとシオンに走る。

 シオンは変わらずゆっくりと歩くだけ。

 

「ふぅ……」

「……!?バカな……!」

 

 ランサーの放った槍はシオンの髪を掠めるだけ。

 シオンの刀はランサーの顎下に添えられていた。

 おかしい……第三者視点、かつ距離も十分にあったのに……その瞬間が見えなかった……

 

「っ!何だ、斬る気はねぇのか!?」

 

 ランサーは持ち前の俊敏さで一歩で跳び退く。

 

「言っただろう……殺す気は無いと……く……」

 

 シオンは再びおもむろに歩き始める。

 一歩目でフラついたけど限界なのかな。まぁどっちでもいいけども。

 

「では私が!一度戦えばパターンは分かります!覚悟ッ!」

「同じ戦術で……オレが倒せるか」

 

 シエルさんの攻撃をことごとく避け、それでも後退しない。

 

「……!?まだです!」

《ラ・イ・ジ・ン・グ》

「はぁぁぁぁっ!」

「……無駄だ。どれだけパワーとスピードを上げても……当たらなければ意味が無い……」

 

 速度を増す攻撃にもシオンの対応は変わらない。

 攻撃を不明なプロセスで躱し続け、急所に刀を滑り込ませ、離す。

 もう少し力を込めれば殺せるところをシオンはしない。

 

「ああ……なるほどね」

 

 それで理解した。私達ってそう言う事ね。

 最初に設定した人数を変更できない結界にしたのもその為だ。

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