聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第71話

「無駄。同時の攻撃であっても……躱せないものだけ防げばいい」

 

 重複する5人の攻撃を不明な方法で回避し続け、それでも尚攻撃という攻撃はしない極めて特殊なスタイル。

 それがもたらす結果は、私が1番理解してる。

 

「な……っ!?」

 

 ランサーが突然膝を突く。

 当然、本人が意図した行動ではない。

 

「ランサー!?」

「坊主!テメェは前だけ見てろ!なんてこたぁねぇ!」

「……!」

 

《マジェスティ!エルサルバトーレ!》

 

「無駄だ。その攻撃を何度見たと思う」

 

 マジェスティの拳も今のシオン相手には遅すぎる、弱過ぎる……けれども、この結界の中ではほぼ最大に近い。

 

「……くそっ!」

 

 生身のシオンを殺すに十分な火力は出せているはず。

 数も質も、生身のシオンごときを、遥かに上回っているはず。

 多分、彼らはそんな思いでいっぱいのはずだ。

 直前までの圧倒的暴力ならば敗北しても言い訳が立つ。ブラックホールの複数操作だ、勝てる存在を探す方が難しいかもしれない。

 今の生身の人形をならば、それはどれだけ加減をするか、というレベルにまで落ち込む。

 けどそれでも、学生人気のアミューズメントパークの人口密度以上に過飽和な魔力が行動を制限する。

 一定以上のエネルギーを放出すればそれを中心に結界中が焼ける。それは突っ立ってるだけの私でも肌で感じられる。そうさせるだけの魔力がこの結界に押し込まれている。

『聖杯戦争を永遠に停滞させる』という私達だけの信仰(もくてき)をフタガミシオンに無理矢理ねじ込んだ結果。並行世界を救う英雄としてシオンは能力を発揮した。

 それは即ち……シオンは自分の存在を捨てた、という事だ。アーチャーやなのはと同じ様に。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「どれだけパワーを上げても無駄だ。当たらないなら意味は無い」

 

 赤いトカゲみたいになった部屋のオブジェが雄叫びを上げてシオンに突撃するも、例の如く不明な挙動で回避される。

 結果の見えた勝負に興味は無いので、私はシオンの挙動について考察することにした。

 まずシオンの行っているフェーズ4、それは私の戦闘そのものと同義だ。相手の全てを下回る存在によって相手の全てを無効化する。ただそれだけの戦闘だが、その結果は致命的。

 吹けば飛ぶような相手に自分の力が通じない、というのは体感すると相当に神経を擦り減らす。それを絶え間なく行われて、しかも自分側が人数有利であるなら尚更に早く、深く『自分は戦う力を持つ』という自尊心を抉り取っていく。

 

「は……なぁ……?」

「慎二!?しっかりしろ!」

「衛宮さん!そんなもの放っておいて下さい!庇っているヒマはありません!」

「く……!この人数差でも、ダメなのか……!」

 

 私は5分、体力の持つだけそれを続ければ相手は死ぬ。外傷を負わず、生きたまま、戦うことを拒絶する精神状態にまで追い込まれる。

 今まで当たり前にしていたこと……誰かと争うこと、競うこと、対峙すること、鍛えること、武器を持つこと、それらを見ること、それらを考えること……それを極端に避けてしまう。意図的だろうと、無意識だろうと、それらの行動を行えない。誰も傷つける事ができない。自分が傷つくしかない平和な人間になる。

 

「ヴィーナス!貴方はもはや吸血鬼どころではありません!どこぞの真祖と同じ様にバラバラにして差し上げます!」

 

 そんな事はどうでもよくて……シオンの回避方法だ。

 私は自分のカンを頼りに魔力放出で無理矢理身体を動かして攻撃を回避する。シオンにそれだけの魔力は無い……そして私の能力の様に体を即時的に修復、保護できなければ全身千切れてばらばらばら。

 だとしたらなんだろな……この魔力密度も関係してそーなんだよなぁ。

 回避動作を見ようにも何か見えないし……何で見えないのか、って事なんだよね……

 

「おらぁぁぁぁっ!ゲイ!ボルグ!」

「っ!まさか!ランサーさん!?」

 

 有り得ない。英霊レベルならば当然理解しているはず。まさかもうまともな思考能力も失った?この結界で宝具なんて発動したら、それを起点に……

 

「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

「くぅぅっ……!これは能力越しでも……!」

 

 結界内が瞬時に発火、超密度の魔力が爆風を起こす。

 流石ブラックホールを自在に操っただけのエネルギー、私の能力を超えはしないとは言え、衝撃はハンパじゃない。

 

「お……でもずっと燃えるわけじゃないんだ」

「ぐ……げほ……慎二、大丈夫か……!」

「おのれ青畜生……!分かってただろう!どれだけ足を引っ張るつもりだ!」

 

 爆風はほんの数秒、それだけ耐えれば焼かれ続けることも無い。

 まぁでも、シオン生身だし……私の出番か。

 

「く……まさか本気で宝具を使うとはな。発動時の魔力がこの結界の魔力を巡り、爆破に近い事象を発生させた……」

「お、生きてる?さっきのも避けたの?」

「けほっ……ああ。必中宝具や爆風を避けるくらいわけない……」

「どーやって?それが分かんないんだよね」

 

 ランサーの宝具警戒で、みたいな触れ込みだったのに避けられるのね。

 

「フェーズ4だからできる無理だ。なのはもコレで聖王ヴィヴィオを超えた……」

「なのはも……?」

 

 高町なのは……プライムも受け取らずに生身の人間が私達と同じことを……?

 

「ああ……フェーズ4は人体スターライトブレイカーだ」

「は???????」

 

 意味不明。それしか言えない。

 スターライトブレイカーってアレだよ。戦闘で使って空気中に霧散した魔力を集めてかめはめは。

 

「なのはは自身に合わせてブラスター4と呼称した……周囲にバラ撒いた魔力を自身ごと収束することで身体能力に頼らず高速化を実現する……」

「それは……私と同じじゃない?」

「姉さんは放出して動作のブーストをしてるんだ……だから他の部位との齟齬が出て骨が簡単に砕ける。フェーズ4は魔力密度の特に高い座標に空間ごと吸い寄せるからそういうのが出ない。強烈なGで皮膚や内臓は破裂していくが、5分は持つ……」

「タイムリミットまで私に合わせなくても……」

「人体の限界ってとこだ。このガラクタで5分、高町なのはの体ならまだ多少の余裕はあっただろうが……」

「戦闘民族タカマチ人ね。それで?視界が死んでた理由は?」

「突然目の前が光れば目を開けてても見えなくなるだろ?完全な暗闇では当然見えないだろ?この結界の魔力密度は循環してムラがあるとは言え通常世界ではあり得ないレベルだ。収束の起点になる場所はブラックホールと同等のもの、生物の網膜には映らない」

「魔力密度が高過ぎて光が反射してないってことなのね」

「まぁそんなとこだ……さて、ランサーとライダーども、まだ2分残ってる……ちゃんとやり切れ……」

 

 説明はした、とばかりに続行を求めるシオン。

 

「シオン……その話はするべきではありませんでしたね。私たちの活路を示してしまった」

 

 えっちゃんが仮面の奥でメガネをキラリと光らせる。

 

「……?」

「いくらソラと同格であろうとその体は急造の粗悪品、5分のタイムリミットがあるのなら私たちは何もしない。それで貴方は動けなくなる!」

「ルーラー、本当か!?」

「……はぁ……そうはならない。5分っていうのはオレがフェーズ4を使用した時間だ。何もしないなら数えない。だからお前らは続けるしか無い」

「……抜け目の無い……」

「じゃあ卿のもうひとつの間違いを正してやる……5分経過後動けなくなるのはお前らだ。もう実感してきてるだろう……オレの言ってる未来は確実なものだと」

「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!女風情が調子に乗るなよ!黙って僕に平伏しろ!逆らうなぁぁぁぁぁぁあ!」

「……姉さん、アイツの口を塞いでくれ……と言うと、フェーズ4が切れるんだよな……」

「んー、まぁそうなっちゃうね。シオン単独でしないと意味ないかも」

 

 部屋のオブジェは何故か口だけは無限に元気だ……身体的にも知能的にも完全に劣った存在に大声で怒鳴られる苛立ちはゆっくりできる人たちにはよく理解できるはずだ……!潰せ……!潰せ……!

 フェーズ4……は多分、個人を相手にしている、という条件もあると思う。だから私は加勢しない。

 

「くそ……だが安心しろ。2分後、お前らは戦闘行為ができなくなるだけで日常生活に支障は無い。オレが死んだらこの結界も解除される。その後は好きにしろ……」

「し……?シオン!?貴方は何をしているか分かっていますか!?私たちの目的のために貴方の能力は必要です!」

「だから……お前の……オレ達の目的は達成する……コレが終われば間桐桜とその他だ……姉さんの敵じゃない……諦めてかかってこい。仮にオレを倒せたならそれはそれでお前らを尊重してやる……」

 

 シオンが死んでも問題なんて何も無い。何も変わらず私は間桐を殲滅して戦争を永久に停止させる。

 仮にシオンを打倒したなら……私もそれを良しとする。シオンを越えるなら、その未来は私達のものじゃない。

 

「ボ、坊主……」

「ランサー……?」

「掴めたぞ、結界に焼かれないラインを……!」

「「……!」」

 

 シオンと同時に驚愕する。

 私でさえ朧げな火力ラインを見切った……?

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