聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第73話

 ゲイボルグ──

 刺突として放てば──いや、放つ前に心臓を貫通しているその槍は、放つことでそれを確定させる。

 一度放たれてしまえばその過程は問題にならない。

 

「ゔっ……やはり……躱し切れないか……」

「シオン!」

 

 ランサーの槍は、シオンの心臓を正確に射抜いていた。

 受けた私なら分かる。あれは外力で強引にどうにかしないと死ぬ。一度受けたなら、その呪いは私の能力でも防げない。

 でもシオンは呪いを無にする能力を使える。私を瞬時に治してみせたのが証拠だ。

 けど……でも、今シオンがフェーズ4以外の能力を使えば、この4分超が無駄になる。せっかくここまで仕上げたのに、彼らがまた戦う力を取り戻してしまう。

 

「これが……英雄の戦闘センスか……正直、侮っていた……」

「ケ、それでもお前は治せるんだろ」

「はは……治そうと思えば、そうするだけの能力は十分にある……」

 

 シオンもまさか焼却ラインを下回り宝具を打つなんて妙技を称賛し、敗北を謳う。

 ランサーは私の傷を治したことを踏まえ、シオンが生き延びることを示す。

 けれどもシオンはそうしない。

 

「……いいや。お前らの勝ちだ。オレはここで脱落する……けれども、今この瞬間……5分が経過した……おめでとう、平和主義者。お前たちは宿敵VNAの1人を打ち倒し、争いから解放された……」

 

 シオンは自身で回復する余裕を示すも、それっぽいセリフを残し死んだ。

 

「……お、結界も消えた……」

 

 ガラクタが崩れると、周囲を囲ってた魔力も次第に密度を薄め、霧散した。

 

「ふぅ……とりあえず、この平和主義たちはまた私の家に封印かー……まぁ、数日とたたず目的達成できるしどーでもいいかぁ……」

 

《マジェスティ!エルサルバトーレ!》

 

「っ!?」

 

 有り得ない機械音。

 即座に吹き飛ぶシオンとえっちゃん。

 土煙から悠然と起き上がる英雄の姿。

 

「バカな……ありえない、マジェスティ、あなた……」

 

 5分。あの場で戦闘行為を行なっていないのは私だけだ。私だけがあの結界の後も戦闘を行える。

 なのに、マジェスティリバイブは必殺技でもってシオンの死体蹴りをした……

 

「次は……フタガミ、お前だ……」

 

 フェーズ4が私と同じだっていうなら、戦闘行為を行えるはずがない。戦闘の意思を持つことさえできない。変身したままなんてありえない。

 事実、えっちゃんもシエルさんも、赤いアマゾンも変身を解いて倒れてる。死んではないけど、それが限界のはず。

 

「何でまだ戦える?何でまだ変身できてる?何でまだ必殺技を使える?」

 

 必殺技なんて文字通り、殺意さえ込めての技だろう。なのになんで……

 

「お前は忘れたのか」

「……何を」

 

 帰ってきたのは私への問い。

 

「俺は直してもらってない」

「────!」

 

 思い出した。マジェスティはフェーズ4の5分どころじゃない。

 彼は、()とも3分戦ってる──

 私が高町なのはと同じ結末を、再起不能の絶望まで追い込もうとした時だ。彼は3分で戦意喪失した後、シオンの治療を拒んだ……

 

「しかもマジェスティ、貴方、確かフェーズ4の中でも必殺技を……」

 

 思い出せば思い出すだけ違和感が出てきた。

 ランサーの宝具は1度目、結界の焼却を招いた。えっちゃんの必殺技はそれに続いた。ランサーの2度目は威力を落として焼却を逃れた。

 でもマジェスティのエルサルバトーレは、私が覚えてる限り通常と変わらないレベルのまま使用していた……

 

「何で、いや、何をしたの?あなたはそこまで私やフェーズ4と戦って、仲間を気遣う余裕さえあった。えっちゃんでさえ仲間を見捨てろという状況で」

 

 ありえない。そんな言葉しか出てこない。

 えっちゃんやランサーだって戦場に身を置いてきた歴戦の猛者だ。そんな2人が自身や仲間を気にしてられない時にさえ、マジェスティは普段通りだった……

 

「言ったはずだ。ヴィーナスは倒しておかなければならない。そして、アーチャーの過去は俺が貰ったんだ」

「アーチャー……まさか、アーチャーの勝算はこの瞬間……」

「俺はお前の戦闘を克服した。抑止力で潰されるなら、抑止力となればいい。最上の救世主ともなれば、概念は補強され、影響を極めてゼロにできる」

「シオンの全力を引っ張り出して……極限まで弱るタイミングを待ってた……」

「お前はもうシオンという相棒と武器を失った」

「あ……ギルガメッシュ、鎌持ってったんだった……」

 

 あらら……ブラックホールの時テンション上がってたし忘れてたんだ……

 

「ん……まぁまぁ……いいや。とりあえずシオン攻略おめでとう。予備もなかったし多分ほんとに死んだよ」

 

 ライダーの体作るので忙しそうだったし……もうこの世界じゃ復活もしないかな。

 

「……っ!自分の分身が死んで!そんな感想しか出てこないのか!?」

「……?何が?」

「シオンが死んでお前は何を思ってる!それくらい話してみろ!」

「うーん?死んだって思ってるよ」

「俺を恨まないのか!?目の前で殺されて!」

「何怒ってるの。別にシオンはサーヴァントじゃないんだから死んでも問題ないよ。戦争に影響しない。えっちゃんも消えちゃったけど、正規でも追加でも無いから多分影響無い、と思いたいな」

「──もうわかった。すぐに終わらせてやる」

 

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