「お、フタガミ。昨日はその、ありがとうな」
「……」
「フタガミ?」
そもそもルーラーって単騎で行動するものじゃなかったかなーとか根本的な事を考えながらポーッと歩いていると、校門前で同じ学校の男の子に話しかけられた。えーっと……
《セイバーのマスターです。さっき話しましたよね?》
「ああ、うん。えっと、なんだっけ……」
「……?ああ、悪い、人が多いもんな。じゃ、俺は生徒会の手伝いあるから」
「……???」
セイバーのマスターはよく分からない。何がしたかったんだ……?
《察しが変な方向に良くて助かりましたね》
「どゆこと……」
《おそらく魔術、戦争に関することをどう誤魔化すかと考えていたように捉えたのでしょう。そして人前でウタネさんと話していること自体が不自然と考え早々に切り上げた、といったところです》
文系の想定能力が強過ぎる。狂化入ってて私より知性的なのどうにかならないかな。
《では、私はこれで。衛宮さんが死なないよう見張っておいてください》
えっちゃんの気配が遠のいていく。校舎とは別の方向、グラウンドにふらふら〜っと行ってしまった。衛宮さん、衛宮ね。多分覚えた。
でもさ、そういう見張りとかって普通サーヴァント側の役割じゃないの?えっちゃん遊びに行く気マンマンだよね?
……仕方ない。来たからには一応教室に行っておくか。
「お、今日はフタガミも来たか」
……全ての授業で全ての担当教師が逐一同じ反応をする。卒業できんぞ、と言われたが学校に行く必要が無いのだから別に評価はどうでもいい。就職なんかで時間売らなくても私には無限に湧くお金があるんだよ。
それらを聞き流して放課後。セイバーのマスターは何かしらの依頼を受け修理等の作業をしに教室を後にする。魔術師として、というかマスターとして警戒心が無さすぎる。
「さて……えっちゃんはいないし、私もちょっとは気を引き締めますか」
テキトーに気配を消すこと数時間……数時間?放課後数時間も学校で作業?ナニシテンノ?ヒマか?ヒマなのか?
いやまぁ私だって帰宅してからすることと言えばお風呂入ってお酒飲むくらいしかないが……なら作業した方が価値はあるな。
『おわっ⁉︎遠──⁉︎やめろ!俺は──戦う気は──』
『対抗し──無──よ!』
ちょっと目を離すと昨日聞いた声2つが叫んでる。
はぁ……まぁ、こんな時間には熱心な部活動もいなくなって戦闘には問題無いだろうけどさぁ……昨日もだけど学校だよ?個人宅ならともかく公共施設は誰の目があるか……
声を追うとそれはそれは破壊された壁とか床。どうすんのこれ。何かしらで隠蔽する用意はあるのかな……私が直しとくか。
さて、じゃあ突撃だ。
「よぉい!」
「っ⁉︎」
仕方ないので取り敢えず先回りして乱入、2人の間に入ってアーチャーのマスターに対峙する。
「お、お前……!」
「何のつもりかしら、ウタネ」
「何のつもり、と言われてもね。昨日言ったでしょ。誰も殺さないことって」
「まだソレを言うの?その話はもう無いわよっ!」
相手の左腕の魔術回路が活性化し、人差し指を前にして手を銃を模した形から魔術が放たれる。
コレは知ってる。えっちゃんの真のマスター、ソラでも使える初級魔術。たしか名前はガンド。『当たれば1ターン行動停止するガチンコ砲だよ!』って言ってた。多分。1ターンて何よ。
「でも単発がせいぜい……じゃないね⁉︎」
エゲツない。5発くらい飛んできてる。
首にかけた2つあるペンダントの1つ、刀型をしているものを引きちぎり、鞘から抜く。するとペンダントは瞬時に膨らんで真剣になる。そしてそれを魔力放出で思いっきり振る。
「ふぅー!」
「うそ……」
「つら……何やってんだろ……私」
5発分、一気に打てない分誤差があって助かった。防ぐというか逸らすようにガンドを流すことに成功した。何してんだほんと。というかなんだそのガンド。
「まーいいや、片腕くらいならいいでしょ」
「っ!」
視線を衛宮さんに誘導、それと同時に動きを見せない歩法で接近、光ってる左腕に振り下ろす。
「おぉ……流石にただの刀じゃ通らないか」
取り敢えず魔術回路を切断しようと左腕を狙うも当然のように通らない。
魔術回路は魔術師の命、ただの鉄で傷がつくようでは一流とは言えないね。
「ナメ過ぎね、甘いわよ!」
「っ……と。うん、まぁそうかも」
防がれたまま右腕で刀を掴まれ、蹴りを入れられる。
カンの先読みと魔力放出とで躱して距離を取る。筋力差で仕方ないけど刀は手放さざるを得なかった。
さてさてさて。魔力放出だけで対応できるかな?できれば片腕くらいで済ませたい。
……刀取られてるしな。
「形勢逆転ね」
「そう?」
「私は剣術も使えるのよ!」
「っとっと。ほー、魔術師らしくないねぇ。ゆーしゅーだ」
数度振られる刀を下がって避ける。
なんで剣術使えるのこの人……こわ。一応その刀本物よ?私魔力放出無しで振れないんだけどソレ。
「凛、手こずっているようだな」
「アーチャー」
「私が行こう。何、その男には手を出さんさ」
「……」
「行くぞ!」
「フタガミ!」
アーチャーが双剣を手にして私に襲いかかる。
ずっと思ってたけどなんでアーチャーが剣持つのかな?ミスリードか?
「まぁ、関係無いけども」
ペンダントの2つ目、鎌を防御に使う。
やれやれ……なんかアレだね、かっこよい実力者ムーブしてるな私な。
「何……?ハァッ!」
「っ〜〜!いった……」
そこから続く連撃。確かにパワーもスピードも私より遥かに上だけど、魔力放出でならパワーもスピードも対応できない筈がない。
けどまぁ痛い。振動や衝撃が凄い。
「アーチャー⁉︎何してるの⁉︎」
「……想定外だ、凛」
「まさか、生身でサーヴァントに張り合うなんて……あなたまさか……」
「?」
「ウタネ、あなたまさか、ヴィーナス……⁉︎」
「えぇ……?何で知って……」
ヴィーナス。んまぁ、そうと言えばそうだ。ロリコンに慰みとして転生させられる可哀想なオモチャ達。説明するのは面倒だな……何かしてるってわけでもないし。
というかえっちゃんは何してるの。数時間も散歩するとかヒマか?
「フタガミ?」
「まぁ……うん……?そう……です?」
「なるほどね、それで戦争を止めようとしてたのね。随分と悠長じゃない。聞くほど非道な存在でも無いのかしら?」
「聞きたいのはこっちなんだけども。私達はヴィーナスなんて一言も名乗ってないし、どこからそれ聞いたの?」
「とぼけてる?封印指定にされておいてよくそんなこと言えるわね」
「された覚えない新事実なんだけども。ヤバイヨソレ、なんで昨日言ってくれなかったの」
事実上の指名手配である封印指定。魔術のお偉いさんたちが価値有りとした魔術師を永久保存しようとするリスト。捕まれば最後、自由意志も無くホルマリン漬けの解剖祭りだ。そこまで非道じゃないかもだけど信用できない。
というか……なんで私が認識されてるんだろ……こわ。
「今あなたがヴィーナスだって知ったからよ!知ってたらそもそも話なんてしないわ!」
「じゃあどうする……?今日は引いてくれる?」